「協会けんぽ」タグアーカイブ

健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン




■健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン

Numbers And Finance

by Ken Teegardin(画像:Creative Commons)

健保、4分の1超が解散危機=25年度試算-健保連

(2017/9/25、時事通信)

健康保険組合連合会(健保連)は25日、大企業が社員向けに運営する健康保険組合の4分の1を超える380組合が、財政悪化で2025年度に解散危機を迎えるとの試算を発表した。

健康保険組合連合会(健保連)は、2025年度に団塊の世代が全て75歳以上となり、健保組合が高齢者医療に拠出するお金が急増するため、健康保険組合の4分の1超が解散危機を迎えるという試算を発表しました。

試算では、健保組合の平均保険料率は15年度の9.1%から25年度に11.8%に上昇。380組合の25年度推計保険料率は12.5%以上になり、中小企業の社員らが加入する「協会けんぽ」の保険料率を超える計算だ。
 健保組合の保険料率が協会けんぽより高くなると、企業は自前で健保を運営する必要がなくなり、解散につながる。

健保組合の保険料率が協会けんぽの保険料率を超えると、企業は健保組合を運営する必要がなくなるため、解散につながっていくそうです。




■まとめ

健康保険組合の財政悪化、高齢者医療費負担増で(2008/10/9)によれば、健康保険組合(健保組合)の中には、高齢者医療費の増加による負担増により、健保組合を解散したところも出ていて、例えば、西濃運輸健保組合は、高齢者医療への拠出金が増加したため、赤字となり、保険料率を引き上げる必要に迫られたため、解散し、保険料率の低い政管健保に移ることとなりました。

国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることで紹介した日本経済新聞社などが実施したアンケート調査によれば、医師の半数が国民皆保険による医療が「持続不能」と答えているそうです。

年齢階級別一人当たり医療費(平成25年度)
国民医療費の約2割が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めている。(年齢階級別一人当たり医療費(平成25年度))

参考画像:不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~|経済産業省PDF

厚生労働省「人口動態調査」, 「医療給付実態調査報告」, OECD Health Data 2014 OECD Stat Extractsによれば、国全体医療費の23%(9.2兆円)が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めているそうです。

つまり、高齢化は今後も進んでいき、医療費の増大が見込まれることから、健康保険組合の財政が悪化していく傾向は変わりないでしょう。

この状況を変えるためにも、大きく舵を切る必要があるのではないでしょうか?

そのプランとしては2つあり、1つは、現役世代は予防医療・予防医学・予測医療に変えていくということ、もう一つは、高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことです。

■予防医療・予防医学・予測医療に変えていく

「日本は予防型医療へのパラダイムシフトを」

(2017/9/13、日経デジタルヘルス)

2017年版の白書では、疾病の予防や早期発見、早期治療を柱とする「予防(志向)型医療」への転換の重要性を訴えた。これにより、国民の生産性向上と社会的コストの引き下げが可能になるとしている。

在日米国商工会議所(ACCJ:The American Chamber of Commerce in Japan)と欧州ビジネス協会(EBC:European Business Council in Japan)は、持続的な経済成長を促すことを目的に、健康寿命を延ばし病気による経済的負担を軽減するための政策を提言した「ACCJ-EBC医療政策白書2017年版」を共同で発表し、病気の予防や早期発見、早期治療を柱とする「予防型医療」への転換の重要性を訴えています。

例えば、がん検診といった予防医療・予防医学に取り組んでいくことは医療費の削減するためにも今後重要になっていくと考えられますし、また、QOL(生活の質)の向上といった間接的なコスト削減も期待できると考えられます。

積極的に計画・実行する人はがん・脳卒中・心筋梗塞の死亡リスクが低い|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターによれば、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の行動をとる人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低く、また、脳卒中リスクが15%低く、脳卒中心筋梗塞などで死亡するリスクが26%低いという結果が出たそうです。

その理由としては、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の人は、がん検診や健康診断を受診するため、病気の早期発見につながり、病気による死亡リスクが低下して可能性があるようです。

つまり、定期検診などの予防医学・予防医療を導入するということは、病気による死亡リスクが減少し、医療費の削減にもつながるということです。

【関連記事】

■高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なう

「フレイル(高齢者の虚弱)」の段階で対策を行ない、要介護状態の高齢者を減らそう!で紹介した厚生労働省によれば、多くの高齢者が中間的な段階(フレイル)を経て、徐々に要介護状態に陥るそうです。

高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。

そこで、フレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できるというのが今注目されている考え方です。

ただライフスタイルを自分一人で変えていくのは難しいものですので、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことによって脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功したように、また、東京都足立区の取り組みで足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたように、アメリカでは鉄欠乏症を予防するためにも鉄分を加えた強化小麦粉を義務付けているように、普段のライフスタイルの中で自然と健康に良い取り組みに変わっているというのが良いのではないでしょうか?

●イギリス食品基準庁、食品に塩分量の目標値を設定

「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルによれば、イギリスでは脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功したそうですが、その理由としては、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことにあるそうです。

NHKスペシャルの低所得者の疾病リスクに迫った「健康格差特集」に反響の声

(2016/9/21、マイナビニュース)

2006年に85品目の食品に塩分量の目標値を設定し、メーカーに自主的達成を求めた。その理由は、主食であるパンが国民の最大の塩分摂取源となっていたためだが、メーカー側は売れ行き減を懸念。見かねた医学や栄養学などを専門とする科学者団体「CASH(塩と健康国民運動)」がメーカー側に徐々に塩分を下げるように提言した。

この提言に大手パンメーカーによる業界団体も納得し、7年でパンを20%も減塩。こういった取り組みの結果、国民1人当たりの塩分摂取量を15%減らすことにつながり、年間で2,000億円の医療費削減につながったと考えられている。

現在、日本人の一日の塩分摂取量として推奨されているのは、10g未満です。

ただし、高血圧患者ではさらに基準が厳しく、1日6g未満となっています。(日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインより)

減塩のための食事を自分で作るのは大変ですが、食品メーカーが減塩に取り組むことによって、全体的に塩分摂取量が減らすことができるというのは大変いい取り組みだと思います。

→ 高血圧の症状・食事・数値・予防・原因 について詳しくはこちら

→ 血圧を下げる方法(食べ物・サプリメント・運動) について詳しくはこちら

●糖尿病患者を減らした東京都足立区の事例

NHKスペシャルの低所得者の疾病リスクに迫った「健康格差特集」に反響の声

(2016/9/21、マイナビニュース)

まず実行したのは飲食店巡り。お客のお通しに野菜を提供するようにお願いし、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうように店側にお願いした。

その理由は血糖値の変化にある。野菜を炭水化物よりも先に摂取することにより、食物繊維が糖の吸収を遅らせて血糖値の変化量を約30%抑えられる。

東京都足立区の平均年収は23区で最も低い300万円台前半(港区の3分の1程度)で、健康寿命は23区の平均よりも2歳短く、糖尿病の治療件数が最も多いそうです。

そこで足立区は区民が「自然と」健康になるようにする対策として行なったのが、飲食店にはお客のお通しに野菜を提供すること、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうようにお願いをし、また、区立のすべての保育園で野菜を食べる日を設け、調理は子ども自身が担当することで、楽しみながら野菜を摂取してもらうようにしたそうです。

この取り組みによって、足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたそうです。

●鉄欠乏症を予防するアメリカの事例

鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!【#みんなの家庭の医学】

鉄欠乏症を予防するためにも、鉄分を加えた強化小麦粉を義務付けている国があり、アメリカもそのうちの一国。

番組で紹介したアメリカのシリアルの中にはFDA(アメリカ食品医薬品局)が推奨する一日の鉄分摂取量を100%満たすものがあるなど、ほとんどのシリアルに鉄分が豊富に含まれているそうです。

その他の食品も日本と比べると鉄分が多く含まれているそうです。

●鉄分不足による貧血を予防するカンボジアの事例

カンボジアではサプリメントとして鉄分を補給したり、強化小麦粉を義務付けるのではない別の方法によって、鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。

デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」によれば、カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったのですが、カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。

そこで、「Lucky Iron Fish」という鉄の塊を鍋に入れることにより、摂取する鉄分を増やすことができたそうです。

ある業界だけ、自治体だけが医療費の減少のために取り組むのではなく、社会全体で医療費の減少に取り組む時が来ていると思います。

『サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る』(著:スティーブ・ケース)では、第三の波(あらゆるモノのインターネット)によって、あらゆるモノ・ヒト・場所が接続可能となり、従来の基幹産業を変革していく中で、企業や政府とのパートナーシップが重要になると書かれています。

サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

第二の波では、インターネットとスマートフォンの急速な普及によってソーシャルメディアが激増し、盛況なアプリ経済が誕生した。その中でもっとも成功を収めたスナップチャットやツイッターのような企業は、小規模なエンジニアリング・チームからスタートして一夜にして有名になり、第一の波の特徴であったパートナーシップをまったく必要としなかった。しかし、こうしたモデルは現在がピークであり、新たな時代は第二の波とはまったく違う―そして最初の波とよく似た―ものになることを示す証拠が増えている

この第三の波には「インパクト投資」も含まれているそうです。

社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド)とヘルスケア分野(認知症・がん)の可能性|#サキドリ↑(NHK)によれば、「社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド、SIB)」とは、障がい者支援や低所得者(貧困)支援、難民、失業、引きこもりの人の就労支援などの社会問題の解決と収益の両立を目指す社会貢献型の投資のことです。

例えば、福岡県大川市の高齢者施設では、学習教材を使っての認知症予防への取り組みに社会的インパクト投資が使えるのかの実証実験として、高齢者100人が参加して、5か月間実験したそうです。

実験に参加した多くの高齢者の要介護度が下がり、公的介護費用が削減するという結果になったそうです。

【参考リンク】

みんなが安心して過ごせる社会にするためにも、1.現役世代は予防医療・予防医学・予測医療に変えていくということ、2.高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうこと、について考えてみてほしいです。







【関連記事】
続きを読む 健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン

「データヘルス・ポータルサイト」に6773万人分の健康診断、医療費、生活習慣などのデータを統合|#東大




■「データヘルス・ポータルサイト」に6773万人分の健康診断、医療費、生活習慣などのデータを統合|#東大

データヘルス・ポータルサイト
データヘルス・ポータルサイト

参考画像:データヘルス・ポータルサイト|スクリーンショット

<健保情報>サイトに統合 6773万人分、病気予防に活用

(2017/11/20、毎日新聞)

1399の健康保険組合(2946万人)と、中小企業の全国健康保険協会(協会けんぽ、3827万人)が持つデータを統合することで、業界別・地域別の健康状態の傾向や、どの健保組合がどれぐらい医療費を使い、どんな対策を取っているかを比較検討できる。

東京大は、国内6773万人分の健康診断、医療費、生活習慣などのデータを集計した分析・支援するウェブサイト「データヘルス・ポータルサイト」を運用するそうです。

厚生労働省、個人の医療データの一元管理で医療の効率化目指す 2020年度からでは、厚生労働省は、過去の病院での治療歴や薬の使用状況、健診結果など様々な情報を一元化したデータベース「PeOPLe(ピープル)」(仮称)を2020年度からの運用を目指すということについて取り上げましたが、今回、1399の健康保険組合(2946万人)と、中小企業の全国健康保険協会(協会けんぽ、3827万人)が持つデータを統合し、今後は、1880ある市町村国民健康保険(3294万人、国保組合含む)も加入も検討することから、ほぼ全国民がデータヘルス・ポータルサイトに参加することになり、医療・健康・介護を把握できるプラットフォーム作りの基盤となりそうです。

健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省
健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省

参考画像:「新産業構造ビジョン」(2017/5/29、経済産業省)|スクリーンショット

経済産業省の「新産業構造ビジョン」によれば、個人が自らの生涯の健康・医療データを経年的に把握するため、また、最適な健康管理・医療を提供するための基盤として、健康・医療・介護のリアルデータプラットフォーム(PHR:Personal Health Record)を構築し、2020年度には本格稼働させていくことが必要と提案されています。

【参考リンク】

■健康医療に係るリアルデータプラットフォーム-ICTを活⽤した「次世代型保健医療システム」の整備

健康医療に係るリアルデータプラットフォーム|ICTを活用した「次世代型保健医療システム」の整備|新産業構造ビジョン|経済産業省
健康医療に係るリアルデータプラットフォーム|ICTを活用した「次世代型保健医療システム」の整備|新産業構造ビジョン|経済産業省

参考画像:「新産業構造ビジョン」(2017/5/29、経済産業省)|スクリーンショット

Layer1:つくる

  • 最新のエビデンスや診療データを、AIを用いてビッグデータ分析し、現場の最適な診療を支援する「次世代型ヘルスケアマネジメントシステム」(仮称)を整備。

Layer2:つなげる

  • 個人の健康な時から疾病・介護段階までの基本的な保健医療データを、その人中心に統合する。
  • 保健医療専門職に共有され、個人自らも健康管理に役立てるものとして、すべての患者・国民が参加できる「PeOPLe」(仮称)を整備。

Layer3:ひらく

  • 産官学のさまざまなアクターがデータにアクセスして、医療・介護などの保険医療データをビッグデータとして活用する。
  • 「PeOPLe」(仮称)や目的別データベースから産官学の多様なニーズに応じて、保険医療データを目的別に収集・加工(匿名化等)・提供できる「データ利活用プラットフォーム」(仮称)を整備。




■ブロックチェーン技術を活用した医療データの記録・管理

エストニア、医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用すべく試験運用中|日本で導入するにはどのようなことが必要か?によれば、エストニアでは、医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用すべく試験運用が行なわれているそうです。

【参考リンク】

医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用するとどう変わるのでしょうか?

Estonia prescribes blockchain for healthcare data security|Health Matters(2017/3/16、pwc)を参考にまとめてみます。

●個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができる

First, health records can be stored securely in a ledger on which all participants (health professionals, patients, insurers) can rely.Doctors, surgeons, pharmacists and other medical professionals all have instant access to an agreed set of data about a patient.

ブロックチェーン技術を活用することで医療情報の偽造・改ざんを防止すると同時に、暗号化技術によって非常に重要な情報である個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができます。

これまでは医療情報のような個人情報は巨大な仲介役が管理していましたが、ブロックチェーン技術を活用すれば、そのデータは自分が管理することができるようになります。

データを企業に受け渡すことでサービスを利用している現代ですが、ブロックチェーンが浸透すれば、自分の情報を自分でコントロールすることができるようになるのです。

●医療従事者が患者のデータに即座にアクセスできる

必要な情報だけを医療従事者が即座にアクセスすることができるようになります。

あまりなりたくはないものですが、病気や事故になったとしても、即座に医療従事者がそのデータにアクセスすることにより治療が受けられるようになるわけです。

Its Patient Portal gives citizens access to medical documents, referral responses, prescriptions, and insurance information.Individuals can also use the Portal to declare their intentions regarding blood transfusions and organ donation.

エストニアの患者ポータルでは、医療文書・処方箋・保険情報にアクセスができ、輸血や臓器提供に関する意向も宣言することができるそうです。

つまり、まとめると、医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用することにより、次のような変化が起こります。

  • 医療情報の偽造・改ざんを防ぐ
  • 個人の医療情報・健康記録を安全に保管
  • 医療情報などの個人情報が自分の手に戻ってくる
  • 患者や医療従事者が医療情報に即座にアクセスできる

【関連記事】

■まとめ

遺伝子は、変えられる。――あなたの人生を根本から変えるエピジェネティクスの真実

新品価格
¥1,944から
(2017/6/26 10:36時点)

コデインの作用は個人が遺伝によって受け継いだものによって大きく異なることが判明したが、それと同時に、ほぼすべての医学的介入の影響もひとりひとり非常に異なることが分かっている。それは、よい方向に作用する場合も、悪い方向に作用する場合もある。

G Rose (1985).Sick individuals and sick populations. Int J Epidemiol. 1985 Mar;14(1):32-8.

「遺伝子は、変えられる。」(著:シャロン・モアレム)で紹介されている英国の医師ジェフリー・ローズさんが「予防医学のパラドックス」と呼んだ考え方を簡単に言えば、遺伝子的に数が勝っているグループに効く薬があったとしても、その薬があなた自身にも効くかどうかはわからず、よい方向に出ることもあれば、悪い方向に出るかもしれないということです。

医師は研究で集められたエビデンスに基づいて書かれたガイドラインに沿って医療を行ないます。

その医療は全体に対しては病気を治す方法であるのですが、ある個人に対しては良い結果を持たらさないかもしれないのです。(確率がどれくらいかはわかりませんが)

そのように考えると、自分自身の健康を守る方法としては、いろんな健康情報にアクセスするよりも、遺伝子検査を受けたり、自分自身の家族・親戚など血縁関係にある人の病気や薬に対する家族歴を知ることが重要なのかもしれません。

創薬は、ビッグデータ活用で激変する〜奥野恭史・京都大学教授/理化学研究所副グループディレクター

(2017/1/17、Top Researchers)

ゲノムの配列には個人個人の体質を区別する情報が入っていますので、その医学的解釈が出来れば、私たち一人一人の体質にあったオーダーメードの医療が可能になります。この夢の医療を「ゲノム医療」と呼んでいるのです。

遺伝的に特定の病気になりやすい体質、よくいわれるのが、家族歴とかある病気になりやすい家系というものは存在していて、そうした遺伝情報がゲノムに書かれており、ゲノムを解析することによって病気の原因を知ったり、治療法を選んでいくことを「ゲノム医療」と呼ぶそうです。

また、遺伝子検査は病気の早期発見にも期待ができます。

家族性高コレステロール血症の重症化しやすい遺伝子の特徴が解明|国立循環器病研究センターによれば、家族性高コレステロール血症(FH)の患者は、急速に動脈硬化が発症・進行する危険性があります。

早く家族性高コレステロール血症(FH)と診断を受けて適切な治療(LDLコレステロールのコントロール)を受けはじめ、動脈硬化の進行を抑えることです。

そのためにも、遺伝子検査で重症化しやすいと診断できれば、家族性高コレステロール血症を早期に治療ができるようになるのではないかと考えられます。

遺伝子検査で思い出されるのは、病気(がん)のリスクを下げるために卵巣と卵管の摘出手術を行なったアンジェリーナジョリーさんです。

アンジェリーナ・ジョリー(ANGELINA JOLIE)、がんリスクを減らすため卵巣と卵管の摘出手術をしていたことを告白によれば、BRCA1遺伝子変異を持つ人は、乳がんや卵巣がんの発症リスクが「とてつもなく高い」ことから、がんの発症リスクを低下させるために、健康な卵管と卵巣を摘出する手術を受けました。

【関連記事】

遺伝子検査についてポジティブな面について紹介してきましたが、考えなければならない問題もあります。

アンジェリーナジョリーさんは、遺伝子検査についてポジティブに受け取り、病気になるリスクを予め下げるために手術をいう選択をしましたが、将来的に病気になるリスクがあっても現時点では病気が起きていない健康な体にメスを入れることにより傷をつけてよいのかという倫理的な問題があります。

なぜなら、医師たちは今まで「primum non nocere(プリムム・ノン・ノケレ)」という格言に従って医療を行ってきたからだ。*

*「まずは害をなさざること」という意味のラテン語[医学的介入によって患者の体を傷つける前に、まず様子を見るべき、という意味合いがある]。

ただ、遺伝子検査をすることによって、病気のリスクを下げる期待ができる一方、遺伝子情報は究極の個人情報ともいえるため、その扱いには慎重にならざるを得ません。

例えば、保険会社が遺伝子情報を要求すれば、生命保険や身体障害保険に関する影響があるかもしれません。

また、「遺伝子スクリーニング(ふるい分け)」や「生命の選択」といった問題もあります。

結婚をして子供を持つことを予定している未来のカップルが、将来生まれてくる子供の健康のことを考えて遺伝子検査を行なった際に、二人の間にできる子供には遺伝子の問題を抱える可能性が高いとなった場合にどうするかという問題も生まれるかもしれません。

「将来の子」遺伝病検査、商業主義に懸念…学会が批判・声明発表へ(2017/7/5、読売新聞)によれば、日本人類遺伝学会、日本産科婦人科学会、日本遺伝カウンセリング学会、日本家族性腫瘍学会など9学会・団体が、生まれる子どもについての遺伝病の発症確率を予測する遺伝子検査サービスに対して声明を発表するそうです。

これからは、遺伝子情報による差別の問題をどうするかを継続して考えながら、遺伝子情報を守るテクノロジー(例えばブロックチェーン)を並行して開発していく必要があると思います。







【関連記事】
続きを読む 「データヘルス・ポータルサイト」に6773万人分の健康診断、医療費、生活習慣などのデータを統合|#東大