■これからの介護のための車イスはどのように変わっていくの?
by SOZIALHELDEN(画像:Creative Commons)
介護予防・生活支援サービス市場は2025年に1兆3000億円によれば、今後高齢者人口と高齢者世帯の増加に伴いサービス市場は拡大し、介護予防・生活支援サービス市場は2025年に1兆3000億円に迫るそうですが、介護職員 2025年に約38万人不足のおそれ|介護人材確保のための対策とは?で紹介した厚生労働省の推計によれば、介護職員が10年後には約38万人不足する恐れがあるそうです。
介護に携わる人が不足する中で、介護を必要とする人はこれからも増え続けていくことが予想されます。
この問題を解決するためにも、テクノロジーによる介護支援が必要になってくると思います。
そこで、今回は、「これからの車いす(介護のための)はどのように変わっていくのか?」について考えてみたいと思います。
●遠隔操作可能な電動車いす
(2017/9/12、ニュースイッチ)
身体の不自由な人を抱きかかえて入浴するには腕力がいるし、車いすで移動する時には絶えず周囲に注意が必要。コミュニケーションで高齢者の気持ちを明るくし、生活を活発化することなど、技術の活躍する場は多い。
介護作業を支援するロボットや介助者がいなくても使える車いす、コミュニケーションロボットなど介護の現場で役立ちそうなアイデアが紹介されています。
Telewheelchair at Laval Virtual Awards
そこで筑波大の落合研究室では、既存の電動車いすに介助者の目の代わりとしてリコーの全天球カメラ『シータ』を組み合わせた「Telewheelchair(テレウィールチェアー)」の研究を進めている。特別ではないハードウエアの組み合わせを、ソフトウエアで結合して機能を追加したのが特徴だ。映像を転送して遠隔操作したり、障害物を検知して自動で停止する。
例えば、Digital Nature Groupでは、「Telewheelchair」というアイシン精機の電動車いすとRICOHの360°すべてを撮影する全天球カメラ『THETA』を組み合わせて、ソフトウェアで結合し、VRでリモートコントロールしたり、障害物を検知して自動で停止するという車いすを開発しているそうで、この車いすであれば、介助者の負担を軽減することになることが期待されます。
●トイレへの移動が困難
排泄のタイミングをお知らせするウェアラブルデバイス「DFREE」|高齢者・介護分野・車いすユーザーに役立つ期待によれば、車いすの利用者はトイレへの移動が困難である場合があるようです。
車いすの人に限らず、高齢化社会の日本では排泄トラブルは珍しいことではありません。
排泄トラブルが健康寿命を阻害する?|ユニ・チャーム
ユニ・チャームの調査では、排泄トラブルを経験したことがある人が全体の24.9%。約4人に1人が経験していることがわかりました。
4人に1人が排泄トラブルを経験したことがあるそうで、誰しもが経験する可能性があります。
(2017/6/11、毎日新聞)
厚生労働省の13年のまとめによると、尿失禁の経験者は約153万人で、このうち65歳以上は121万人と全体の約8割を占めている。
厚生労働省のまとめによれば、尿失禁の経験者で65歳以上の人は121万人いるそうです。
(2017/6/11、毎日新聞)
軽失禁ケア商品の市場が拡大している。2016年度の販売金額は約300億円とされ、前年比110%の伸びだ。
尿もれ、便漏れといった軽失禁商品の市場は前年比110%の伸びを見せ、団塊世代が後期高齢者となる2025年にはもっと多くの人が排泄トラブルを経験することが予想されます。
しかし、排泄トラブルを抱えているにもかかわらず、その対処をしていない人が46.3%いるという結果が出ています。
排泄トラブルが健康寿命を阻害する?|ユニ・チャーム
月1回以上排泄トラブルを抱えている人で、排泄トラブルに対するケア(排泄ケア)を「特に何もしていない」人が半数近い46.3%で、半数近い人が、トラブルを抱えているにもかかわらずケアをしていないことがわかりました。
<中略>
排泄トラブルを抱える18.7%の人が「排泄トラブルが気になって外出を控えた経験がある」と応えています。
排泄トラブルを抱えている人は、根本的な対処をすることができずに、外出を控えたり(運動不足の可能性)、水分補給を控えたり(熱中症リスクが高まる可能性)といった健康にとってリスクある行動を選びがちになってしまうようです。
排泄ケアに取り組むことは高齢化社会の真っただ中にいる私たちにとって考える必要のある問題なのです。
そこで、考えたのは、要介護者の排泄の自立支援、介助者の負荷軽減の目的で作られた『ベッドサイド水洗トイレ』|トイレに自分が行くのではなく、トイレの方が自分のところに来るというアイデアです。
『ベッドサイド水洗トイレ』は、要介護者の排泄の自立支援、介助者の負荷軽減の目的で作られた製品です。
このアイデアで一番素晴らしいと感じたのは、「トイレに自分が行くのではなく、トイレの方が自分のところに来る」という点です。
排泄のタイミングをお知らせするウェアラブルデバイス「DFree」|高齢者・介護分野・車いすユーザーに役立つ期待では、排泄がコントロールできない高齢者の方やトイレへの移動が困難な車いすの利用者、介護が必要な方向けの排泄を予知するデバイスを紹介しました。
「お腹虚弱体質」なエンジニアがIOT駆使してオフィスのトイレ空き状況をスマホでリアルタイムに確認できるシステムを開発では、IoTを活用したトイレの空き情報がわかるアプリを紹介しました。
オストメイト(人工肛門保有者、人工膀胱保有者)のための生活支援アプリ「オストメイトナビ」では、オストメイト(人工肛門保有者、人工膀胱保有者)のための生活支援アプリ「オストメイトなび」を紹介しました。
この3つに共通するのは、自分からトイレに行く必要があるという考え方です。
それが現時点での自然なものの考え方だとは思います。
しかし、救急医療システムに無人飛行機「ドローン」を活用|「救急ドローン」のメリットとは?で紹介したドローンでAEDを運ぶ救急救命ドローンというアイデアや今回の『ベッドサイド水洗トイレ』という考え方を知ると、今後は、必要な時に必要なものが自分のところに届いて、使用すると元に戻るというアイデアをもとに、先の未来にはなってしまうかもしれませんが、車いすに排泄を予測するセンサーをつけておき、そのタイミングになると、車いすの人が使いやすいトイレが近づいてくるようになっていくという方向に進むのではないでしょうか。
●新しい操作方法
舌で車いすやパソコン操作する方法を開発|米ジョージア工科大では、米ジョージア工科大などの研究チームが開発した、脊髄損傷などで頭部しか動かせなくなった人が舌で車いすを操作する方法を紹介しました。
Georgia Tech Tongue Drive System
Tongue Drive – Patty West – GE FOCUS FORWARD
舌で操作する技術のメリットは、舌はより素早く、器用に動かせるということがあげられるそうで、ハンドル型やジョイスティック型の車いすの操作が難しい人は、こうした新しい操作方法を選択するようになるかもしれません。
●ベッドから車いすに乗り移るときや車いすからトイレに移るときに転倒事故にあう可能性が高い
(2017/10/16、みんなの介護ニュース)
ベッドから車椅子に乗り移るときと車椅子からトイレに移るとき、高齢者が転倒事故に遭う可能性が高いそうなので、スムーズに移乗ができるためには、どういった変形形態を持たせておくべきか、ということを考えています。ベッドと車椅子のどちらに変形機能をもたせるかなど、まだほとんど決めきれていないんですけれど。
ベッドから車いすに乗り移るときや車いすからトイレに移るときに転倒事故にあう可能性が高いそうです。
福祉用具の安全な利用を考えるための教材作成 |テクノエイド協会
ハンドル型電動車いすは、周囲の状況を把握して常に危険性を予測し、的確に操作をしなければならない道具ですので、適切な認知・判断・操作の能力が必要です。
ハンドル型の電動車いす列車との接触事故や道路上での車両との接触(交通事故)や歩行者との接触、単独での路肩からの転落事故があるそうです。
また、ジョイスティック型の電動車いすの場合には、転倒防止の補助輪が後部に設けられているのですが、急発進などの操作や後方に荷物を載せているなどの状況によって、後方に転倒することがあるそうです。
〇製造メーカーでは転倒防止の補助輪を後部に設けています。この転倒防止の補助輪が適切に機能していれば、この種の事故の多くは防げたと考えられます。
〇このような事故の要因を考えるにあたり、単に「介護者が戻し忘れた」という人為的なミスのみに原因を求めるのではなく、「なぜ補助輪を機能しない位置に格納してしまうのか」という、「そもそも」に視点を移すことも大切です。
送迎車のリフトには転落防止用の脱輪止めといった安全装置が付いていますが、送迎車のリフトに関する事故もあるそうです。
しかし車いすの特性として、車輪が止められても人の身体は座面部分とともに後方にバランスを崩しやすく、イラストのような状態で転落して後頭部から地面に落ちることが予測されます。
その他にも、車いすのフットプレートの上に立ち上がろうとして転倒するという事故や被介助者の足が車いすのフットサポートのプレートの裏側に接触し、皮膚損傷が発生したというケースもあるそうです。
立ち上がる際にはフットプレートを持ち上げ足を下すという使い方が習得できず、危険の予測ができていない状態です。
人為的なミスに原因を求められていますが、こういう時には後方に転倒しやすいというデータに基づき補助輪が自動的に出る設計にする、フットプレートに対する使い方を習得しなくても安全を確保できる設計にするといった改善が必要になってくるのではないでしょうか。
【参考リンク】
- 事故に関する情報提供(手動車いすのフットサポート) (2017/3/14、消費者安全調査委員会)
- 長谷川 大悟、藤田 好彦、坂本 晴美、巻 直樹、若山 修一、稲田 晴彦、奥野 純子、柳 久子 介護老人保健施設入所者の転倒発生状況― 移動手段に着目して ― 日本転倒予防学会誌 Vol.2 No.3:23-32
●車いすと一体型になれる
車いすであるかどうか関係なく利用できるようになれば、車いすの人もストレスフリーで利用できるようになり、行動範囲が広がりますよね。
■まとめ
福祉用具である車いすも使い方によっては事故を招く道具になっているケースが多いようです。
車いすを使い慣れていない人や車いすの使用に慣れていない介助者、重度の身体機能障害のある人、機能の低下があっても活動的な人、認知機能の低下がみられる人など様々なケースを想定して、車いすの使用における習熟度に限らず、テクノロジーが安全をサポートする車いすができるといいですね。
大人用紙オムツの売上が子供用オムツの売上を追い抜いた!?|日本の紙おむつが国際規格化|高齢化社会がビジネスチャンスに変わる!?によれば、大人用紙おむつの評価方法に関する規格「ISO15621尿吸収用具―評価に関する一般的指針」が改訂し、欧米の「テープ止め型(体にテープで固定するタイプ)」ではなく、日本が提案する装着車の症状や生活環境に合わせたきめ細かい高齢者介護学科脳になるパンツ型やテープ止め型のおむつに吸着パッドを挿入するタイプなどを規格化されました。
そこで、「少子高齢化による高齢化社会は日本にとってのビジネスチャンス(医療・介護など)になる!」と発想を転換してみない?では、世界に先行して高齢化社会に突入している日本は、医療費削減のアイデアやよりよい介護の方法を実行できる立場にあり、それらのやり方をスタンダードにすることができるというビジネスチャンスがあるのではないか?と提案しました。
テクノロジーが安全をサポートする車いすのようなアイデアが標準的なものになると考えれば、車いすの人の世界も広がっていくのではないでしょうか。
また、日常の買い物に困る「買い物弱者(買い物難民とも呼ばれる)」や移動手段に困る「交通弱者(移動弱者とも呼ばれる)」も増えていて、そうした社会的問題を解決する一つのアプローチとして、スマートモビリティやパーソナルモビリティについて考えられていますが、こうした問題を解決する際に、「一人乗り用のシェアできる無人自動運転が可能な車いす」といった新しいアイデアが役立つようになるかもしれません。
【参考リンク】
- 買物弱者応援マニュアルver3.0|経済産業省
ただ、もしかすると、未来の車いすは、車いすではなくて、ロボットスーツのようになっていく可能性もありますね。
もう一つ考えなければならないのは、あまりにも安全性について考えるあまり、車いすに乗る人の可能性を狭めてしまわないようにしなければならないということです。
「安全性を高めるために、○○はしてはならない」というような制限を設けるのでは苦しくなってしまうと思いますので、自由度がありながら、大事なポイントをテクノロジーを活用して守り、生き生きとした生活ができるようになるといいですね。
健常者や障害者、若者と高齢者というような分け隔てなく、車いす(もしくはロボットスーツ)が未来の乗り物の一つとして選択する未来もあるかもしれません。
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