ビフィズス菌が含まれるヨーグルトを摂取すると腫瘍抑制効果があることが示唆されていますが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院および米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の研究によれば、長期にわたって週2回以上ヨーグルトを摂取している人は、腫瘍組織中のビフィズス菌の量に応じて、今回のケースでいえばビフィズス菌陽性(現れるという意味)の場合、大腸がんの発症リスクが20%低いことがわかりました。
【参考リンク】
- Ugai, S., Liu, L., Kosumi, K., Kawamura, H., Hamada, T., Mima, K., … Ugai, T. (2025). Long-term yogurt intake and colorectal cancer incidence subclassified by Bifidobacterium abundance in tumor. Gut Microbes, 17(1). https://doi.org/10.1080/19490976.2025.2452237
この研究結果をわかりやすくまとめます。
■今回の研究のポイント
ヨーグルトに含まれるビフィズス菌はがんを抑える力があるかもしれないといわれており、今回の研究ではがんの種類やビフィズス菌の量に着目し、ヨーグルトを長く食べると大腸がんになるリスクがどう変わるかを調べました。
■結果
ビフィズス菌が多い腫瘍組織:ヨーグルトを週2回以上食べる人は、ほとんど食べない人に比べて、大腸がんになるリスクが少し低い(約20%減)。
ビフィズス菌が少ない腫瘍組織:逆に、ヨーグルトをたくさん食べてもリスクはほとんど変わらないか、少し高いくらい。
特に、腸の「近位結腸」という部分のがんでは、この違いがはっきり見えたことから、がんの場所やビフィズス菌の量によって、ヨーグルトががんに効くかどうかが変わるということが考えられます。
つまり、今回の研究によれば、ヨーグルトに含まれるビフィズス菌が大腸がんを抑制する可能性が示唆されたものの、がんの種類や場所によって効果が違うので、すべてに効くわけじゃなく、ヨーグルトが特定の種類のがんにだけ効くと考えられます。
■まとめ
もう一つ別の視点から見てみます。
大腸がん予防に役立つ食べ物は乳製品(カルシウム)!で紹介した英国オックスフォード大学が学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」で発表した研究によれば、乳製品が大腸がん予防に役立ち、それは主にカルシウムによるものと結論付けています。
カルシウムと大腸がんの関係については以前から取り上げられており、カルシウムを多く摂取するグループで大腸がんのリスクが低下|国立がん研究センターによれば、男性において、カルシウムの摂取量が最も少ないグループに比べ、摂取量が最も多いグループで大腸がんのリスクが低くなり、カルシウムの摂取量が最低(300mg未満)のグループと比べると、最高(700mg以上)のグループで大腸がんのリスクが40%近く低いことがわかっています。
カルシウムが大腸がんを予防するメカニズムとしては、腸管内腔の上皮細胞を刺激し、がんの発生を促進する二次胆汁酸を吸着することと、細胞増殖や分化に直接作用することなどが考えられているそうです。
2つの研究をもとに比較してみます。
●最初に紹介した研究によれば、ヨーグルトに含まれるビフィズス菌が大腸がんのリスクに影響を与える可能性があることがわかりました。特に、ビフィズス菌が多いタイプの大腸がんでは、ヨーグルトを週2回以上食べる人はリスクが約20%減る一方、ビフィズス菌が少ないタイプではあまり効果がない、という結果でした。また、この効果は腸の「近位結腸」という部分で特に目立っていました。
●オックスフォード大学と国立がん研究センターの研究
一方、オックスフォード大学の研究では、乳製品が大腸がん予防に役立つとされ、その主な理由が「カルシウム」にあると結論づけています。国立がん研究センターのデータでも、カルシウムをたくさん摂る人(1日700mg以上)は、ほとんど摂らない人(300mg未満)に比べて大腸がんのリスクが約40%低いことがわかりました。カルシウムは、腸の中でがんを促す物質(二次胆汁酸)を吸着したり、細胞の増殖を調整したりすることで予防効果を発揮すると考えられています。
●2つの研究を合わせると何が言える?
これらを総合すると、ヨーグルトや乳製品が大腸がん予防に役立つ可能性があるという点で一致していますが、その仕組みには2つの要素が関係しているようです。
ビフィズス菌の役割:ヨーグルトに含まれるビフィズス菌が、特にビフィズス菌が多いタイプのがんや近位結腸がんに対して予防効果を持つ可能性。
カルシウムの役割:乳製品全般に含まれるカルシウムが、腸全体で大腸がんのリスクを下げる効果を持つ可能性。
つまり、ヨーグルトが大腸がん予防に効く理由は、ビフィズス菌とカルシウムの両方が働いていると考えられます。ビフィズス菌は特定の種類や場所のがんに効き、カルシウムはもっと広く全体のリスクを減らす、という感じです。
ヨーグルトや牛乳などの乳製品を食べることは大腸がんになりにくくすると考えられるので、ぜひとってくださいね。
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