『世界から「重力、ゲート、繋ぎ目」はなくなる。』について考えてみた


Rainy Morning, NoMad – September 2015

by Jeffrey Zeldman(画像:Creative Commons)

『世界から「重力、ゲート、繋ぎ目」はなくなる。』について考えてみた

世界から「重力、ゲート、繋ぎ目」はなくなる。メディアアーティスト落合陽一さん2

(2015/11/3、東大新聞オンライン)

落合陽一さんはこのインタビューでデジタルネイチャー研究における目標として、世界から3つのものをなくすことを目標としていると語っています。

その3つとは、「重力」・「ゲート」・「繋ぎ目」です。

今回はこの3つについて考えてみたいと思います。




1.重力をなくすこと

1つ目は、重力をなくすこと。

人間は、いかに3次元に生きているとはいえ重力下では平面性のある空間にしか生きられない。

重力があるから、人間は二次元空間に固定されちゃうんですよ。机を挟んで話をできるし、二次元平面に違和感を感じない。でも、発想や想像の自由が奪われている。

一方で、コンピュータって生来的に多次元的なんですよね。
どういうことかというと、人間にとっては横と縦と奥行きって全然違うものだけど、コンピュータにとっては全部たかが配列の中に入ったデータの問題でしかなくて、時間と空間の差すらないんですよ。

だからコンピュータと人間が融合すると、人間の価値観も変わってくるはずだし、上と下の区別がなくなったっていいはずだよね。

重力があるから、人間は二次元空間に固定されてしまうという考えは興味深いですよね。

『マジックにだまされるのはなぜか 「注意」の心理学』(著:熊田孝恒)には、マジックの基本となる知識の中に「上に投げたものはやがて落ちてくる」というものがあります。

重力をなくすというのは、この常識が覆る世界ということです。

常識であったものが非常識になることで、人はきっと何らかの影響を受けるでしょう。

重力をなくすことによって、二次元思考から解放され、多次元に物事を考える思考に変化することで人の価値観が変わっていけば、また新しい発想が生まれるでしょう。

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2.ゲートをなくすこと

2つ目、ゲートをなくすこと。

この世界にはゲートが多すぎる。大体が人の労働コストに縛られた改札構造だと思う。都市の特徴。

本当は電車から降りた瞬間に、改札なんかに集まらずに自由な方向に向かって行ったっていいわけじゃん?
なのになんで改札があるかというときっとホワイトカラー時代の名残で、誰かが観察して、警備して、管理する必要があったから。つまりそれって、マンパワーの労働力を基準にして人間の行動が束縛されてきた訳で。

でもそんな束縛はコンピュータ時代には不要だと思っていて、人間は自由な方に自由に行っていいはずだし、ゲートが一個もない地下鉄とか、レジがないコンビニとかがあってもいいよね。

こういった都市構造自体の再定義をデジタルネイチャー時代にどうやっていくかには、すごい興味がある。

「黒川紀章ノート」にこのように書かれています。

黒川紀章ノート―思索と創造の軌跡

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農業化社会は実は工業化社会に非常に近いということに気づいたのである。

両方共、人は、決まった時間に決まったことをやっていればいい。農業は、月が出たらどうするとか、何月にはこうすると、季節によってきちんとすべきことが決まっている。

それは、工業も同じだ。工場も、屋内の畑のようなもので手順がきちんと決められていて、それにしたがって作業が行われている。

だが、情報化社会は違う。ここでは決まったやり方というものはない。人々は、常に情報を集め、それによってアドホックに動く。

※アドホック:「特定の目的のための」という意味

今回の記事を見て思ったのは、現在存在する都市は、決まった時間に決まったことをやる、人々はそれを実行し、管理していくという農業化社会・工業化社会の考えに基づいて作られて都市が作られているのではないかということ。

情報化社会といわれて久しいですが、実際の私たちの都市は情報化社会に合わせた都市づくりにはなっていないのかもしれません。

情報化社会では、生きるために必要な情報をより早く仕入れ、それに基づいてすばやく動いていくという遊牧民(ノマド)のような人が生き残る社会です。

そういう人たちにとっては、「ゲート」というものは行動を制限してしまうかもしれません。

メタボリズムの方法論では、都市の遊びの空間について、こう展開している。

「高度に秩序化された都市は、同時に魚釣りを楽しみ、虫の音を聞き、スポーツを楽しむ都市でなくてはならない。高度に機能化されたオフィスや工場は同時に、自由な思索の場であり、遊びの場でなくてはならない。しかしこの両端を妥協的に調和させるのではなく、それを対立的に劇的に共生させることが都市の中にドラマティックな緊張感を作り出す」

(「黒川紀章ノート」より)

今は働く場所と生活する場所、遊ぶ場所は分かれています。

これは、ある種「ゲート」で管理されているともいえるのではないでしょうか。

新しい都市の発想から考えれば、新しい都市では、働きながら(働くということも将来はどうなるのかわかりませんが)、遊びながら、生活しながらということを一続きに行なえるようになっていくでしょう。

■Amazon Go の例

アマゾンの「レジなしでの買い物」は実現間近!Amazon Goの仕組みをYouTube動画から考える|#Bloomberg

Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology

■スマホアプリでチェックイン

●Amazonアカウント(クレカ情報や個人情報をあらかじめ登録)

●Beacon(店舗内でのユーザーの滞在証明)

PayPal、iBeacon、Hands Free、Origami Payもすでに利用

■棚から商品をとる

●カメラとセンサーで商品位置と顧客の動きを読み取る

●一度とったものを戻すというような動作もディープラーニングで学習

●リアルタイムでオンライン上の仮想ショッピングカートに加える

●電子タグ(RFID)は使わない

■レジを通らずに決済→Just walk out

●入り口付近のセンサーでアプリを認識し、顧客を識別

●データを転送してAmazonアカウントで決済

●#uber のように降りるときに支払う作業がいらない

【Amazon Goの先の未来】

●アプリを起動する必要もない

ライブや万引き防止用の顔認識システムや生体認証、歩く姿で個人がわかる「歩容認証」を活用する

http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/22_letter/data/news_2014_vol2/p12.pdf

但し、それではBeaconが使えないので滞在証明を別の方法でする必要がある。

●「これからの世界をつくる仲間たちへ」(著:落合陽一)には、テラヘルツ電波と画像認識技術を組み合わせて一人ひとりをスキャニングして検札を済ませ「どこからでも出入りできるシステム」というアイデアがありました。

■「CUBIC」|”ゲートなしの改札機”というコンセプト

facial recognition to be your future ticket on the london underground

ロンドンの地下鉄が顔認証でチケットやカードいらずに?

(2017/10/6、Fashionsnap.com)

「CUBIC」がデザインしたそんな画期的なシステムは、現在ユーザーテスト中ではあるが、”ゲートなしの改札機”というコンセプトを掲げ、物理的な改札ゲートの代わりに、毎分およそ65〜75人が通ることができる長めのコースを設計。そこを通過すると顔がスキャンされ、支払いはスマートフォンに同期されるという時間と手間を省く効率的な仕組みになっている。

■ゲートの無いフラットな駅の改札|三菱電機

参考画像:「将来の駅・車両の円滑で快適な交通システム」コンセプトを提案(2017/11/20、三菱電機ニュースリリース)

「将来の駅・車両の円滑で快適な交通システム」コンセプトを提案

(2017/11/20、三菱電機ニュースリリース)

・認証内容により、通過可否(通過できる場合は青く表示)や通過する方向をわかり易くLEDで床面に表示

ユーザーの持つ交通系ICカードの残高に応じて、通れる場合には床が青く、残高不足の場合には赤く光るそうです。

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3.繋ぎ目をなくすこと

3つ目が、繋ぎ目をなくすこと。

ガラスだけで出来ている家がないように、物体と物体の間には必ず繋ぎ目があるんですよね。

だけど、人間の身体には繋ぎ目はほとんどない。

だから、コンピュータはやがて繋ぎ目のない世界を作るはずなんですよ、3Dプリンタみたいに。

コンピュータはつなぎ目のない社会を作るという発想は飛躍しすぎた発想だと思う人もいるかもしれません。

しかし、人はそれを知らず知らずのうちに求めていると思います。

最近目にする機会が増えた言葉に「オムニチャネル」という言葉があります。

電通が怒られたオムニチャネルの言葉

オムニチャネルとは、消費者がモノを買う時に、すべて(オムニ)の接点(チャネル)を継ぎ目なく(シームレスに)買えるようになるための環境のことです。

世界からつなぎ目をなくすという視点から見ると、オムニチャネルが求められるのは当然といえます。

そして、未来では、人間の身体にはつなぎ目がほとんどないように、コンピュータは物体と物体の間につなぎ目のない社会を作り、そして、さらには人間と物体とのつなぎ目もなくしていく世界になるというのがこの記事で書かれていることです。

■まとめ

こうした未来予測をもとにいろいろなことを考えるとワクワクしますよね。

落合陽一さんの東大生へのメッセージとして語っていることが印象的です。

自分のやりたいことに哲学を見つけ、アウトプットしてください。

重要なのは自分のキャラクターと世界観を作ることであって、誰かに言われた哲学や誰かへの憧れではないです。

落合さんは自分の哲学をもとに今回3つの目標を掲げているのだと思います。

落合さんの哲学・発想をもとに何かを考えるのは重要なことですが、決して迎合することなく、一人一人が自分の哲学をもとに新しいものを生み出すように考えて、行動しないといけないのです。

それこそが多様性のある社会であり、クリエイティビティにあふれた社会なのだと思います。







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