ポケモンを創った男 田尻智さんへのインタビュー|ポケモンは2つのアイデアの組み合わせ|クリエイターに必要なこと|ゲームデザインの哲学は新しい動詞の提案|ゲームセンターCX




【目次】

■ポケモンを創った男 田尻智さんへのインタビュー|ゲームセンターCX

Noah and Kaden at Table 1 - Pokemon National Championships 2014

by Nabeel H(画像:Creative Commons)

2004年5月30日放送された「ゲームセンターCX」は、ポケモンを創った男 田尻智さんへのインタビューでした。

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ポケモンは、「交換」や「育てる」「コレクション」といった要素が子供たちの心をつかんだゲームであり、アニメ化や映画化もされ、海外でも人気となったコンテンツです。

そのポケモン生みの親「田尻智」さんのインタビューを見ると、ポケモンがどのようにして生まれたのか、任天堂の横井軍平さんとの興味深いエピソード、クリエイターに必要なことなどいろいろと学ぶところが多いです。

■横井軍平さんのエピソード|ヨッシーのたまごはプロの道を開いた

ポケモンに当たるものはクインティの後にすぐ思いついていて、糸井重里さんが任天堂とエイプというコラボレーションの会社を立ち上げて、糸井さんのところにポケモンのアイデアを持っていき、作ることになったそうですが、完成までに時間がかかりそうだということで、任天堂の横井さんのところでヨッシーのゲームを作るという予定があるから、勉強のつもりで、ワンアイデアでワンパッケージでしかも半年で完成させるという、期日が決めて半年で全力を尽くして、短くてもきちんとやるプロの仕事にチャレンジしたそうです。

田尻:ヨッシーがエサを食べるっていうゲームを任天堂の横井軍平さん(当時の部長)にお見せしたんですよ。

最初はファミコンのコントーラーを動かすと、エサがフラフラ動いていたんですよね。

それを見た時に、横井部長が「受け取る方を動かしたらええんやないの」っていうようなことを言ってくれたんですよね。

有野:その時に横井さんに教えられたことっていうのは何すかね?

田尻:僕のオヤジくらいの年の差だったんですよ。

でも人柄としては全然年上じゃなくて、頭が柔軟で、心は中小企業っていうのかなぁ。

アイデア一つで何かが爆発するっていうかね、人に影響与えられるんや、っていうようなね。

アイデアが浮かぶようなヒントを与えてくれるっていうのが、凄く上手い人でしたね。

有野:『ヨッシーのたまご』でゆうたら、逆にいいんちゃうの…みたいな。

田尻:好きに作らせてくれる所と、ここはこうした方がいいっていう時のコメントの強弱がハッキリしてましたね。

Nintendo Labo(ニンテンドーラボ)|Nintendo Switch×ダンボール工作で新しい遊び方の発明!で紹介した横井軍平さんは「ゲームボーイ」生みの親として知られる任天堂の開発者で「枯れた技術の水平思考(テクノロジーというものがあって、縦に技術を掘っていくのではなく、水平にそれをどう使って、どう演出して、コンテンツ化していくか、その発想力というのがとても重要)」という言葉でも有名な方です。

「ヨッシーのたまご」のエピソードでも、アイデアが浮かぶようなヒントを与えてくれています。

■ポケモン(1996年)は2つのアイデアの組み合わせ

2つのアイデアとは、ゲームボーイに搭載された「通信機能」と「昆虫(虫取り)」です。

田尻:「通信ゲームの可能性っていうのは絶対ある」っていうふうに僕は確信を持っていたところがありまして。

有野:じゃあ『ポケモン』ってタイトルも何も無かった時期に考えてたのは「通信を使って何か」ってことだったわけですか。

田尻:はい。『ドラクエ2』で遊んでいて、凄く低い確率でラッキーな道具をもらえることがあって。

「ふしぎなぼうし(魔法を数十%節約してかけられる)」っていうのがあって、それをウチのグラフィックの担当のスギモリは2つ持ってて、俺は持ってないわけ。

低い確率でもらえるから価値があるんだけど、俺は無くて、スギモリは2つ持ってる。

で、「どうにかして、そのうち1つを貰えねぇかなあ」っていう話を、当時よくしてたわけよ。

有野:どうにもしようが無い、独立したカセットですものね。

田尻:その時の「ふしぎなぼうし、俺も欲しい」と思っていた体験と、ゲームボーイの通信機能を見た時に、「あっ、これでふしぎなぼうしのやり取りができるぞ!」っと。

有野:「ぼうし」ではないですけどね

田尻:それで、ぼうし的な「俺欲しい!」っていう物を1000個や2000個考えんとあかんなあって、その時思ったんですよ。

有野:こういうものというのはすぐに見えたんですか?

田尻:ほしいものは魅力のあるものであると。ゲームフリークの普通の総務とかありとあらゆる人が自分なりのポケモンを考えたりして、300ぐらいとりあえず考えて、人気投票とかをやった。

有野:「モンスターだ!」っていうことには、すぐ行き着いたんですか?

田尻:ある程度実験したんですよ。通信で欲しいと思えるようなものは何なのか。何だったら、そういう感情が一番沸き起こるか。

たとえば、ポケモンの他にお金とかね、ピカチュウに千円つけて売り買いするとどうかとかね。儲かったと本当に思うかとかね。

それだったら、純粋にポケモンが変わった技を持っているとか、ちょっと進化して変わってるとか強そうだってことの方がわかりやすくて、みんな同じように欲しいと思う。

交換した時に「あいつはこんな育て方をしていたのか」ということが分かれば、同じポケモンでも交換しても楽しい、と。

有野:育ちが違うと。

田尻:そういう方向が見えた時に、このゲームはイケそうだと思いましたね。

ポケモンはモンスターがきっかけだったわけではなくて、ドラクエ2のレアアイテム「ふしぎなぼうしをほしい」と思った体験があり、ゲームボーイに搭載された通信機能を見て、その時の記憶がよみがえったことが一つ目のきっかけです。

ポケモンの場合は、「通信したい」「交換したい」というアイデアが前提としてあり、通信でほしいと思えるようなモノは何かを実験していった結果、交換する付加価値として「育てる」「進化」の要素を加えたモンスターというアイデアに行き着くことになります。

そして、ポケモンのアイデアが生まれたもう一つの原点には少年時代の虫取り体験が影響しているそうです。

田尻さんは、虫博士と思うくらいマニアックだったそうで、子供の頃に木のふもとに大きめの石を置いておくと虫(クワガタ)が隠れているというようなアイデア一つで虫がとれる、やればできるんだなという経験・体験があったそうです。




■ポケモンに点字を使ったのはどうしてですか?

「ポケモンに点字を使ったのはどうしてですか?」という質問に対して田尻さんは次のように答えています。

触るっていう触感で読めるというのは人間らしくて素晴らしいと思う。

点字だって文字の一つで文化の一つなので、あくまで翻訳の一つ。

志としては、普通のポケモンのシステムが点字に自動翻訳されてポケモンに触るとポケモンの形がわかるというバージョンもやりたいと思っている。

点字を言い換えると、触れることで理解できる言語です。

この発想を使うと、もしかすると、点字は、発声に依存しない、世界共通語になるのかもしれません。

■クリエイターに必要なこと

得意分野が二つ以上あると、クリエイターとしてはやりやすい。

好きなことを仕事にしたときに、もう一つの好きなことが、転用というか、うまく昇華して使うことができる。

二つ以上あると胸を張って言えるとクリエイターとしてはいけるんではないかと。

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人間の認識は感性も含めて記憶の組み合わせでできています。

ですから、創造性も記憶力から来るということが出来ます。

新しい認識を受け入れてネットワークを綿密にしていくことが、クリエイティブな仕事というものに近づいていくヒントになるのです。

ひとつ認識のパターンが増えると、組み合わせの増え方は、統計学的には莫大な数になる。

「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)では、センスとは記憶の組み合わせであり、認識のパターンが一つ増えると、その組み合わせは膨大なものに成ると書かれています。

得意分野とは認識のパターンであると考えると、その2つを組み合わせることによって、様々な組み合わせができると考えられます。

■ゲームデザインの哲学は、新しい動詞の提案

有野:次に作ろうと思っているソフトも、動詞がヒントになったりするんですか?

田尻:僕のゲームデザインの哲学でいうと、新しい動詞の提案になると思います。

有野:「これや!」っていうのは見えてるんですか?

田尻:ゲームデザイナーとしての育ちの特性として、新しい動詞を発見していく旅になるし、これからゲームデザイナーを目指す人たちも、英語の動詞の表がゲームの新しいアイデアにつながっていくとしたら、まぁ勉強する気も起きてくるから、将来のゲームデザイナーにもお薦めしたい。

物事のアイデアを考える時に、名詞ではなく「動詞」にフォーカスを当てて考えてみると、また違ったアイデアが出てくるのではないでしょうか。

例えば、あるサービスがリリースされると、そのサービス名が動詞として使われるようになることもありますよね。

『「無意識」があなたの一生を決める 人生の科学』(著:デイヴィッド・ブルックス)によれば、

英語圏では、親は子供に話をする時、名詞や物事の分類を重視するが、韓国の親が重視するのは、動詞や物事の関係

なのだそうです。

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アジアの人々は英語圏の人と比べると、動詞や物事の関係を重視するということであれば、この点を活かすとよいのではないでしょうか。

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