【追記(2024年10月17日)】ベジファーストの誤解とは?
ベジファーストは“悪魔変換”された? 「見出ししか見てない」から誤解する?「野菜を先に食べる効能」を専門家解説(2024年10月17日、ABEMA TIMES)では糖尿病内科医の大坂貴史さんがベジファーストについていくつか指摘をしています。
今回のポイントは、こちら。
ベジファーストは『野菜だけを食べて10分休んで米だけを食べる』が『米だけを食べて10分休んでから野菜だけを食べること』よりも血糖値が低くなる、というもの。これがなぜか『野菜を先に食べることが良い』と単純化されて広まっている。
ベジファーストは血糖値だが、気がついたら“ダイエットに効果がある”という話になっていた。ここには全くエビデンスがない
元々ベジファーストは『野菜だけを食べて10分休んで米だけを食べる』が『米だけを食べて10分休んでから野菜だけを食べること』よりも血糖値が低くなるということだったのですが、その中から野菜を先に食べることが血糖値の上昇を抑えるということだけが抜き出されてしまい独り歩きしてしまったんですね。
お米より先に魚や肉などを食べると血糖値が抑制される!?|関西電力医学研究所【論文・エビデンス】で紹介した関西電力医学研究所によれば、お米よりも前に魚や肉を食べると、血糖値の急上昇が抑制されるそうです。
関西電力医学研究所の研究グループは、、お米よりも前に魚や肉を食べるという「食べる順番」により、胃の動きがゆるやかになり、食後の血糖上昇が抑制することを明らかにしました。
また、食べる順番により糖尿病の予防や治療で注目されているインクレチン(GLP-1、GIP)の分泌を促進し、その結果、胃の運動が緩やかになるため、胃で分解された米飯が小腸に移動して吸収されるまでの時間(胃排出時間)が 2 倍以上延長することもわかりました。
またベジファーストは血糖値の上昇を抑制することだったのが、ダイエットに効果があるという話になっている点も問題です。
ベジファーストの情報では、1)炭水化物を食べる前に野菜や肉を先に食べると血糖値の上昇を抑制する、2)野菜を食べるきっかけになる、この2点を大事にしたいですね。
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ベジファーストが糖尿病診療ガイドライン2024や食事摂取基準から削除されたことが誤ったメッセージにならないか心配!
ベジファーストが糖尿病診療ガイドライン2024から消えた理由はわかりませんが、なくしたことで野菜を食べることは糖尿病予防につながらないという誤ったメッセージになる可能性もありそうです。糖尿病に限らなければベジファーストは食卓に野菜をつける理由としてすごくわかりやすいので。 https://t.co/YqW5hkcncG
— 健康美容ブログ「HAKUR」|女性の知りたいがココにある! (@4050health) October 16, 2024
Xで興味深い投稿を見つけました。
それは「ベジファースト」が糖尿病診療ガイドライン2024から消えたというもの。
【参考リンク】
投稿と記事を参考にすると、「ベジファーストが糖尿病診療ガイドライン2024や食事摂取基準から削除されたのは間違っているから」ではなく、ほかの項目からすると優先すべき内容ではないというのが正確なのではないでしょうか?(あまりにも基準・ガイドラインが膨大すぎる?)
ただ人によってはエビデンス不足や間違っていたからベジファーストは削除されたのだと思ってしまうでしょう。
ここでは健康的な食生活において、野菜自体を否定しているのか、それとも野菜を先に食べることが血糖値上昇抑制効果があるのかを分けて考えることが大事です。
野菜を食べることを否定する人はほとんどいないでしょうから、今回のポイントは野菜を先に食べることが血糖値上昇抑制効果があるのかははっきりとはわからないけど、野菜を食べることは健康的な食生活において大事なことだよというメッセージを伝えることです。
「ベジファースト」は実はもう一つ大事なメッセージが隠されています。
それはベジファーストを語る際にすでに食卓に野菜を使った料理が並んでいるという前提です。
「野菜を食べましょう」という時にはその食卓には野菜が並んでいない可能性がありますが、「ベジファースト」は野菜はある前提でその食べる順番にフォーカスが当たっていますから、野菜が食卓に並んでいるのは当然という状態が作られています。
「バランスの良い食事にしましょう」は最も正しいメッセージであり、最も伝わりづらいメッセージ?でも書きましたが、「バランスの良い食事にしましょう」は実はわかりづらいメッセージなのです。
テレビなどで「○○」を食べましょうというと、SNSでは「一つの食品で健康になるとは言いすぎだ」というような反対意見があります。
これは、一面では正しくて、一面では大きく間違っています。
国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、食事バランスガイドの遵守得点が高いほど総死亡のリスクが低下し、遵守得点が10点増加するごとに総死亡リスクが7%減少するという結果が出ているそうです。
食事バランスガイドとは、一日に何をどれだけ食べたら健康に良いかをコマをイメージにして、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです。
参考画像:食事バランスガイド|農林水産省|スクリーンショット
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- ハーバード公衆衛生大学院の「健康的な食事プレート」を健康的でバランスの良い食事をする参考にしてみてはいかが?
- 1975年型の日本食を食べると健康になる!ヒトの実験でも証明|その食事の特徴とは?|東北大【論文・エビデンス】
- バランスの良い食事をしている人ほど、病気の死亡リスクが減る|脳血管疾患なら2割減
この研究を参考にすれば、バランス良い食事をすることで健康になれるということなのですが、「バランスの良い食事」とは具体的に個人としてどんな食事をしたらいいのか、わからないのです。
何を増やして、何を減らしたらいいのかさっぱりわかりません。
『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)によれば、「もっと健康的な食生活を送る」といった総括的な目標は、不明瞭であり、その曖昧さが感情に言い逃れの余地を与え、失敗を正当化しやすくしてしまうそうです。
つまり、「健康のためにはバランスの良い食事をしましょう」というメッセージは、正しいものの、受け取る側としてはわかりづらいもので、結果どうしたらよいかわからず、今まで通りの生活をしてしまうことになってしまいます。
『スイッチ!「変われない」を変える方法』では、「もっと健康的に行動しよう」は解釈の仕方がいくらでもあるので、「次にスーパーの乳製品コーナーに立ち寄ったら、ホールミルクではなく低脂肪乳に手を伸ばしなさい」というように飲食行動を変えるのではなく、購入行動を変える提案をしています。
よくテレビで紹介されているような、○○の不足が病気や太るなどの原因となる恐れがあるので、△△を食べましょうというのは、見ている人に伝わりやすく、行動(購入行動)を変えやすいということなんですね。(これがいいか悪いかは別の話です)
■シンプルで効果的なワン・メッセージがカンボジアの人を貧血から救った!
一つ変えたことで地域の人たちの健康向上に大きく貢献した取り組みを紹介します。
それが、デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」です。
カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったそうです。
その原因は食生活にありました。
カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。
そこで役立ったのがデザインの力です。
「魚は幸運の印である」という地元の俗説を利用して、普段の食事の調理中にカントロップという魚の形に成形した鉄の塊(Lucky Iron Fish)を入れるだけで、この地域では鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。
メッセージは1つのほうが相手は受け取ってくれます。
紙をいくつか丸めて相手に投げてみることをイメージしてみてください。
丸めた紙がいくつもあると、相手は受け取れず、落としてしまいます。
そう、その丸めた紙こそが「メッセージ」なのです。
つまり、「バランスの良い食事にしましょう」というのは最も正しいメッセージですが、最も伝わりづらいメッセージでもあるので、もっとシンプルで効果的なワン・メッセージを考えていく必要があるのでないでしょうか?
その意味でいえば、「ベジファースト」は実にいいメッセージだったと思います。
今回「ベジファースト」が削除されたことで野菜を食べる必要がないという誤った情報が広がらないことを望みます。
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