青魚(さんま)

「バランスの良い食事にしましょう」は最も正しいメッセージであり、最も伝わりづらいメッセージ?


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■「バランスの良い食事にしましょう」は最も正しいメッセージであり、最も伝わりづらいメッセージ?

あさイチやNHKスペシャルで「オメガ3」が健康に良いと取り上げられ注目されています。

しかしツイッターの反応を見てみると、「一つの食品で健康になるとは言いすぎだ」というような反対意見もありました。

これは、一面では正しくて、一面では大きく間違っています。

国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、食事バランスガイドの遵守得点が高いほど総死亡のリスクが低下し、遵守得点が10点増加するごとに総死亡リスクが7%減少するという結果が出ているそうです。

食事バランスガイドとは、一日に何をどれだけ食べたら健康に良いかをコマをイメージにして、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストでわかりやすく示したものです。

食事バランスガイド|農林水産省
食事バランスガイド|農林水産省

参考画像:食事バランスガイド|農林水産省|スクリーンショット

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この研究を参考にすれば、バランス良い食事をすることで健康になれるということなのですが、「バランスの良い食事」とは具体的に個人としてどんな食事をしたらいいのか、わからないのです。

何を増やして、何を減らしたらいいのかさっぱりわかりません。

『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)によれば、「もっと健康的な食生活を送る」といった総括的な目標は、不明瞭であり、その曖昧さが感情に言い逃れの余地を与え、失敗を正当化しやすくしてしまうそうです。

つまり、「健康のためにはバランスの良い食事をしましょう」というメッセージは、正しいものの、受け取る側としてはわかりづらいもので、結果どうしたらよいかわからず、今まで通りの生活をしてしまうことになってしまいます。

『スイッチ!「変われない」を変える方法』では、「もっと健康的に行動しよう」は解釈の仕方がいくらでもあるので、「次にスーパーの乳製品コーナーに立ち寄ったら、ホールミルクではなく低脂肪乳に手を伸ばしなさい」というように飲食行動を変えるのではなく、購入行動を変える提案をしています。

よくテレビで紹介されているような、○○の不足が病気や太るなどの原因となる恐れがあるので、△△を食べましょうというのは、見ている人に伝わりやすく、行動(購入行動)を変えやすいということなんですね。(これがいいか悪いかは別の話です)

■シンプルで効果的なワン・メッセージがカンボジアの人を貧血から救った!

一つ変えたことで地域の人たちの健康向上に大きく貢献した取り組みを紹介します。

それが、デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」です。

カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったそうです。

その原因は食生活にありました。

カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。

そこで役立ったのがデザインの力です。

「魚は幸運の印である」という地元の俗説を利用して、普段の食事の調理中にカントロップという魚の形に成形した鉄の塊(Lucky Iron Fish)を入れるだけで、この地域では鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。

メッセージは1つのほうが相手は受け取ってくれます。

紙をいくつか丸めて相手に投げてみることをイメージしてみてください。

丸めた紙がいくつもあると、相手は受け取れず、落としてしまいます。

そう、その丸めた紙こそが「メッセージ」なのです。

つまり、「バランスの良い食事にしましょう」というのは最も正しいメッセージですが、最も伝わりづらいメッセージでもあるので、もっとシンプルで効果的なワン・メッセージを考えていく必要があるのでないでしょうか?

■多くの人に健康的な生活をしてもらうようにするためには、もっと皆さんの生活の現状を知り、人々の心理を知ることが大事

バランスの良い食事をすることは健康に良いということは多くの人はわかっていると思います。

ただ、多くの人に健康的な生活をしてもらうようにするためには、もっと皆さんの生活の現状を知り、人々の心理を知ることが大事だと思います。

例えば、ミシェル・オバマ大統領夫人が推奨する「ダイエット・プロジェクト」とは?で紹介した元アメリカ大統領夫人のミシェル・オバマ夫人のシカゴ時代のエピソードが興味深いです。

疲れた夜にドライブスルーの誘惑

ミシェル・オバマ夫人が、記者団に語るシカゴ時代の自分自身のエピソードにこんなものがあります。

「弁護士の仕事を持つ母親として、会議と子供たちのサッカーやバレー教室と駆け回った日の夜には、簡単で安いファーストフードのドライブスルーや、電子レンジで温めるだけの栄養バランスのとれていない食事を子供たちに出していた」--。

自分がそうだったからこそ、多くのアメリカ人が、栄養バランスのとれた食事の大切さは知ってはいるものの、新鮮な野菜や魚などを買うための支出と、手に入れた素材を調理する手間と時間を考えるとき、それよりも数百円で手に入れることができる完成したファーストフードの魅力が大きいと感じてしまう。

これは実感としてとてもよく理解できることだ、というのです。

健康について関心がある人は、新鮮な魚や野菜を買って、料理を作った方が良いということはわかっていると思います。

しかし、仕事・家事をして疲れてしまうという生活をしていると、調理する時間や家計のことを考えてしまい、ファストフードの魅力を感じてしまう人も多いと思います。

そこで、手軽で安いファストフードや冷凍食品に頼りがちの生活になってしまいがちです。

貧乏な人ほど生活習慣は不健康!?|人は(時間・お金・食べ物など)不足を認識したとき行動が変わる!で紹介した歴史家のルトガー・ブレグマンさんの動画で紹介されているプリンストン大学のエルダー・シャフィア教授によれば、人は不足(時間・お金・食べ物を含む)を認識したとき行動が変わるそうです。

貧困は「人格の欠如」ではなく「金銭の欠乏」である|TED

その人が愚かだから 愚かな選択をしているのではなく どんな人であっても 愚かな選択をしてしまうような 状況に置かれているからです

つまり、低所得者の人たちはわざわざ野菜を摂取しないライフスタイルを選択しているわけではなく、低所得だからこそ野菜を摂取しないライフスタイルを選択してしまうような状況に置かれているということです。

そのように考えると、バランスの良い食事というのは個人の問題ではなく、社会の問題ということが分かります。

それではどのような対策をしたらよいのでしょうか?

東京との足立区の取り組みが興味深いです。

「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルによれば、東京都足立区の平均年収は23区で最も低い300万円台前半(港区の3分の1程度)で、健康寿命は23区の平均よりも2歳短く、糖尿病の治療件数が最も多いそうです。

そこで足立区は区民が「自然と」健康になるようにする対策として行なったのが、飲食店にはお客のお通しに野菜を提供すること、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうようにお願いをし、また、区立のすべての保育園で野菜を食べる日を設け、調理は子ども自身が担当することで、楽しみながら野菜を摂取してもらうようにしたそうです。

この取り組みによって、足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたそうです。

このように、個人の選択に任せるのではなく、社会全体として自然と健康的な食事を摂ってしまうような社会に変えていくというアイデアが考えられます。

■健康や美容のためにオメガ3の食品を摂りましょう!というのはシンプルなメッセージ

健康や美容のためにオメガ3の食品を摂りましょう!というのはシンプルなメッセージであり、購入行動を変える提案をしています。

食生活はご飯が多く塩分が多い食事から次第に脂質が多い食事へと変化しています。

1975年ごろの食事が和食と洋食のバランスの良い食事として注目を集めているのですが、その一つが「魚介類」の摂取量の減少です。

1975年型の日本食を食べると健康になる!ヒトの実験でも証明|その食事の特徴とは?|東北大【論文・エビデンス】

1960年代はご飯が多く塩分が多い食事
1975年は和食と洋食が並ぶ食事
2000年代は脂質が多い

国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁
国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁

参考画像:水産物の消費動向|水産庁(スクリーンショット)

麻布大学の守口徹教授によれば、オメガ3は青魚などの魚から摂るのが一番効率よいそうですが、水産庁による国民一人当たりの魚介類と肉類の摂取量推移によれば、平成18年には初めて肉類の摂取量が魚介類を上回り、21年には肉類と魚介類の摂取量が上回り、その差が拡大しているそうです。

厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2010年版)によれば、オメガ3EPA・DHA)を1日に1000mg以上摂取することが望ましいのにもかかわらず、現状は少ない摂取量です。

【#あさイチ】オメガ3の上手な摂り方!美と健康に良いアブラの新常識によれば、理想のオメガ3:オメガ6の比率は「1:2」ですが、多くの日本人の比率は「1:10」以上の割合になってしまっています。

青魚などのオメガ3を含む食品を摂るようになれば、オメガ3:オメガ6のバランスは改善され、魚介類と肉類の摂取量がバランスよくなるでしょう。

結果として、バランスよい食事になっていくのです。

■行動変容をいかに促すか?

そして、もう一つ理由があります。

「#NOOM」|人工知能(AI)と専門コーチが行動変容をサポートするヘルスケアアプリ|特定保健指導プログラムも開始で紹介した「習慣の力」(著:チャールズ・デュヒッグ)によれば、

”デューク大学の学者が2006年に発表した論文によると、毎日の人の行動の、じつに40%がその場の決定ではなく習慣”

なのだそうです。

「スイッチ 変われないを変える方法」(著:チップ・ハース ダン・ハース)によれば、私たちはあらゆる場面でセルフ・コントロールを消耗するものであり、一つ一つの行動をいちいち決定してしまうと疲れてしまうため、人は習慣として自動化された行動をしてしまうそうです。

つまり、行動変容を起こしたいときには、自動化された行動=習慣を変えなくてはならないのです。では、どのようにすれば習慣を変えることができるのでしょうか?

「習慣の力」(著:チャールズ・デュヒッグ)によれば、人間の心理には、2つの基本原則があるそうです。

1.シンプルでわかりやすいきっかけを見つけること

2.具体的な報酬を設定すること

ただ「きっかけ」と「報酬」そのものには新しい習慣を長続きさせる力はなく、「〇〇したい」「〇〇がほしい」というような明確な欲求が習慣のための原動力となるのです。

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オメガ3でいえば、健康になるためにはオメガ3の食品を摂るといいというシンプルなメッセージであり、これまでに様々な研究でオメガ3の健康効果が紹介されていますが、オメガ3の食品がいいとわかっていても、継続しない人が多いことが問題です。

生活習慣を改善するという行動変容を促したいのであれば、いかに変わりたいという感情を生み出すのか=いかに「動機づけ」を行うかがポイントになってきます。

■行動変容を促した後、いかに継続させるかが課題!

国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることで紹介した厚生労働省「人口動態調査」, 「医療給付実態調査報告」, OECD Health Data 2014 OECD Stat Extractsによれば、国全体医療費の23%(9.2兆円)が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めているそうです。

高齢化が進む中、生活習慣を改善し、それを継続することは医療費を削減することにもつながります。

そのためには、健康に良いとされる生活習慣をするように行動変容を促し、なおかつそれを継続させる取り組みこそ欠かせないのです。

AIで糖尿病患者の症状が悪化する原因の一つである「受診中断」を予測するシステムを開発|NTT・東大で取り上げましたが、NTTと東京大学は共同で、NTTグループのAI技術を活用し、約900名の糖尿病患者の電子カルテデータを利用して、糖尿病患者の症状が悪化する原因の一つである患者行動「受診中断」を予測するシステムを開発したそうです。

このシステムは、受診中断を7割の精度で予測できることから、通院をやめる可能性がある患者に対して、受診させるアプローチをとりやすくしてくれることが期待されます。

糖尿病予備軍に電話で予防のアドバイスを続けることで発症率が4割下がる|国立病院機構京都医療センターで紹介しましたが、国立病院機構京都医療センターによれば、糖尿病予備軍の人に電話で予防のアドバイスを続けることで、発症率が4割下がったそうです。

糖尿病患者の治療継続は半数にとどまる|なぜ治療が続けられないのか?によれば、糖尿病の合併症を予防するには、医師と相談しながら、治療を継続していく必要があり、患者の大半もその治療方針を理解し、治療の重要性を認識しているのですが、治療を継続していくことができない人が半数もいるそうです。

その理由としては、治療に伴う経済的な負担や治療継続へのストレスから治療を続けていくことができないないことが主な理由でしたが、その他の理由としては、継続するのが面倒という人もいるのではないでしょうか。

多くの医師や医療機関も生活習慣・環境を見直して病気を予防することの重要性は十分承知のはずです。

しかし、病気の治療に比べて病気の予防に対する医師たちのインセンティブ(報酬)が足りないという問題があり、取り組むのが難しいのです。

どんなに病気の予防に取り組みことが大事だと思っても、医療従事者(医師や看護師など)を養い、医療機関も生活し、経営を行なっていかなくてはなりませんので、現状では予防ではなく治療を選択せざるを得ないのです。

つまり、「病気の上流を診る医療」を実現するためには、病気の予防につながる医療を行った医師や病院・医療機関にこれまでの医療費の代わりになるインセンティブ(例えば「予防医療費」)が得られる仕組みを作り上げる必要があります。

これらの考えをまとめると、病院の仕事が治療から予防へと移行するためには、よい生活習慣をやめることを予測し、励ますことにより、良い習慣が継続できたら報酬を与えるという仕組みにするとよいのではないでしょうか?

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その取り組みのはじめとして、国、行政機関、企業、街全体で「オメガ3」の食事を取り入れるようにするというのはいかがでしょうか?

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