口臭と認知症との関連(国立がん研究センター)によれば、重度の口臭を持つグループは、認知症発症のリスクが約4.4倍高いことがわかりました。
【参考リンク】
- Ho DSM, Zaitsu T, Ihira H, Iwasaki M, Yoshihara A, Suzuki S, Inoue M, Yamagishi K, Yasuda N, Aida J, Shinozaki T, Goto A, Tsugane S, Sawada N. Association Between Oral Malodor and Dementia: An 11-Year Follow-Up Study in Japan. J Alzheimers Dis Rep. 2024 May 17;8(1):805-816. doi: 10.3233/ADR-240015. PMID: 38910945; PMCID: PMC11191629.
似たような研究を紹介すると、奥歯を失うとアルツハイマー型認知症になるリスクが高まる?によれば、奥歯のかみ合わせが全てそろっている人に比べ、歯の欠損でかみ合わせが一部失われた人は、認知症の症状が1.34倍表れやすく、前歯も含めてかみ合わせが全くない人だと1・54倍高かったそうです。
この二つに共通するのは口腔ケアができていないと認知症リスクが高くなるということ。
先ほどの国立がん研究センターの記事では、「口臭が社会的交流に影響を与え、社会的孤立を引き起こし、結果として認知症リスクが高い」と書かれていたのですが、このブログでは、口臭の原因となる歯周病によって認知症が悪化しているのではないかと考えます。
歯周病で認知症悪化の仕組み解明|歯周病治療と口腔ケアによるアルツハイマー病発症予防に期待|#名古屋市立大学によれば、マウスの実験で、歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の原因となるアミロイドβを増やし、認知機能が低下したことがわかりました。
歯周病がアルツハイマー病の原因の一つ!?|歯周病菌が作る「酪酸」が酸化ストレスを引き起こすによれば、1)歯周病の原因菌「ジンジバリス菌」などが作る酪酸が細胞内に取り込まれる→2)「鉄分子(ヘム)」「過酸化水素」「遊離脂肪酸」が過剰に作り出される、3)細胞に酸化ストレスを起こして壊してしまう→アルツハイマー病というメカニズムがあると考えられています。
またもう一つの仮説として「脳糖尿病仮説」があります。
九州大の生体防御医学研究所によれば、アルツハイマー病患者は、脳内の遺伝子が糖尿病と同じ状態に変化することがわかったそうです。
【参考リンク】
- アルツハイマー病脳における糖尿病関連遺伝子の発現異常-糖尿病がアルツハイマー病の危険因子となるメカニズムが明らかに-(2013/5/7、九州大学)
糖尿病患者の半数でアルツハイマーの初期症状を確認で紹介した加古川市内の病院に勤務する医師らの臨床研究によれば、糖尿病の通院患者の半数以上に、「海馬傍回(かいばぼうかい)」と呼ばれる脳の部位が萎縮(いしゅく)するアルツハイマー病の初期症状がみられることがわかったそうです。
インスリンには記憶、学習機能を高める作用もあり、糖尿病でインスリン反応性が低下することが、アルツハイマー病発症につながっている可能性があるようです。
インスリン抵抗性を伴った2 型糖尿病にアルツハイマーのリスク|九大研究によれば、インスリン抵抗性を伴った2型糖尿病の場合、アルツハイマーの発症に関係があるとされるプラークが形成されるリスクが高くなるという研究結果が発表されたそうです。
九州大学の研究によれば、血糖値の異常が認められた患者にはプラークが形成されるリスクが高いという結果がでたそうです。
論文を執筆した九州大学の佐々木健介さんによれば、インスリン抵抗性がプラーク形成の原因と結論するにはさらに研究を進める必要があるものの、糖尿病をコントロールすることによってアルツハイマーを予防できる可能性があるとしています。
【関連記事】
- アルツハイマー病の「脳糖尿病仮説」の実証|「メマンチン」が脳インスリンシグナルを改善|東北大
- 糖尿病患者の半数でアルツハイマーの初期症状を確認
- インスリン抵抗性を伴った2 型糖尿病にアルツハイマーのリスク|九大研究
最近の研究では、歯周病は糖尿病の合併症の一つといわれており、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周病にかかっている人が多いといわれています。
それは、糖尿病になると、唾液の分泌量が減って歯周病菌が増殖したり、免疫機能や組織修復力が低下して、歯周病が発症・進行しやすくなるからだと考えられます。
糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加によれば、糖尿病と歯周病の関連性は疫学調査や動物実験などで明らかにされており、糖尿病を多く発症する米アリゾナ州のピマインディアンを対象にした調査では、歯周病の発症率が糖尿病ではない人に比べて二・六倍高い、といったことも分かっているそうです。
なぜ、糖尿病の人は歯周病になりやすく、また治りが遅いのでしょうか?
高血糖状態が長く続くと、血液中に体内のタンパク質に糖が結合した糖化たんぱくが増加し、体内に侵入した細菌やウィルスを捕食・消化し、その情報をリンパ球に伝える働きを持つマクロファージを刺激し、ある特定のサイトカイン(細胞同士の情報伝達を担うタンパク質で、過剰に分泌されると、自らの組織が破壊されることがある)の分泌量が増え、歯周病が悪化するのではないかと考えられるそうです。
糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加で紹介した愛知学院大歯学部歯周病科(名古屋市)の野口俊英教授によれば、糖尿病と歯周病には5つの共通点があるそうです。
- 初期に顕著な自覚症状がない
- 罹患率が高い
- 生活習慣病
- 慢性疾患
- 病気の進行のメカニズムが似ている
今回の研究では口臭によって社会的に孤立し認知症が進行するというものでしたが、口臭の原因が何によるものか、例えばそれが歯周病であったり、さらに元をたどれば糖尿病から来るものであるとしたら、糖尿病と歯周病とではアルツハイマー型認知症になるメカニズムが違ったとしても、糖尿病と歯周病には共通点が多いということですから、アルツハイマー型認知症を予防するには、歯周病・糖尿病になる生活習慣を改善することが大事ということが言えそうです。
→ 歯周病は糖尿病の合併症の一つ!?糖尿病と歯周病の関係 について詳しくはこちら
→ 歯周病を予防する方法(歯磨き・歯ブラシ) について詳しくはこちら