【高血圧治療ガイドラインの改訂】75歳以上の患者で最高血圧を130未満、最低血圧を80未満にしたのはなぜ?血圧を下げる方法とは?




高血圧治療ガイドライン 75歳以上の治療目標130未満に(2025年8月29日、NHK)によれば、日本高血圧学会は治療のガイドラインを6年ぶりに改訂し、今回、新たに75歳以上の患者で最高血圧を130未満、最低血圧を80未満と、これまでより10ずつ引き下げました。

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なぜ目標値を引き下げたのでしょうか?

国内外の最新の研究で高齢であっても血圧を下げると脳卒中などの予防につながるとする結果が報告されていることから、75歳以上についても引き下げを決めたということです。

ガイドラインでは最高血圧130未満を目標に治療すると、脳卒中や心臓病のリスクが17%下がるとしています。

以前最高血圧120未満で病死する割合が27%下がる|米国立心肺血液研究所では、米国立心肺血液研究所が発表した大規模調査の結果によれば、最高血圧を「120未満」に下げることで、心不全や心臓麻痺など高血圧がもとで発症する病気の発症を大幅に抑えられると紹介しました。

ただ血圧を厳格に下げることにはデメリットもあるとその時の課題として挙げられています。

高血圧診療に詳しい臨床研究適正評価教育機構の桑島巌・理事長は「血圧を厳格に下げた方が心不全や死亡が減ることが示されたが、一方で、急性腎障害などの有害事象が増える側面も見受けられた。高齢者は持病や健康状態の個人差が大きい。一律に血圧120未満を目指すことには慎重になるべきだろう。

今回のガイドラインの改訂においても、75歳以上については血圧を下げることで腎障害などが起こるおそれもあるため、最高血圧を140未満、最低血圧を90未満としていましたが、最新の研究で高齢であっても血圧を下げることで脳卒中などの予防につながるとする結果が報告されていることから今回、75歳以上についても引き下げを決めたそうです。

■厳格化に警鐘を鳴らす声も

高血圧の新目標「75才以上で血圧130未満」に引き下げへ 降圧剤の副作用による転倒や心血管疾患リスクに専門家が警鐘(2025年8月29日、介護ポストセブン)によれば、血圧を下げすぎるデメリットを示す論文が発表されているそうです。

Douros A, Tölle M, Ebert N, Gaedeke J, Huscher D, Kreutz R, Kuhlmann MK, Martus P, Mielke N, Schneider A, Schuchardt M, van der Giet M, Schaeffner E. Control of blood pressure and risk of mortality in a cohort of older adults: the Berlin Initiative Study. Eur Heart J. 2019 Jul 1;40(25):2021-2028. doi: 10.1093/eurheartj/ehz071. Erratum in: Eur Heart J. 2020 Dec 7;41(46):4422. doi: 10.1093/eurheartj/ehaa008. PMID: 30805599.

降圧治療中の血圧値が 140/90 mmHg 未満の場合、80 歳代の高齢者や過去に心血管イベントを経験した高齢患者の死亡リスクが増加する可能性があります。

Jaeger BC, Bress AP, Bundy JD, Cheung AK, Cushman WC, Drawz PE, Johnson KC, Lewis CE, Oparil S, Rocco MV, Rapp SR, Supiano MA, Whelton PK, Williamson JD, Wright JT Jr, Reboussin DM, Pajewski NM. Longer-Term All-Cause and Cardiovascular Mortality With Intensive Blood Pressure Control: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Cardiol. 2022 Nov 1;7(11):1138-1146. doi: 10.1001/jamacardio.2022.3345. PMID: 36223105; PMCID: PMC9558058.

■血圧を下げる方法とは?

●食塩の摂取量を1日6g未満に

高血圧患者の塩分摂取量は1日6g未満を推奨|高血圧治療ガイドライン

●カリウムを含む食品を積極的に食べる

※野菜を1日350グラム、果物を1日200グラム、低脂肪牛乳や乳製品などを組み合わせて摂取する

高血圧を予防・改善する食事療法「DASH(ダッシュ)食」とは?増やす食品・減らす食べ物によれば、DASH食とは、米国立保健研究所などが提唱している高血圧患者のための食事療法のことで、簡単に言えば、1 野菜・果物・低脂肪の乳製品を充分摂る、2 肉類および砂糖を減らす、という食事をすることです。

カリウム・カルシウム・マグネシウム・食物繊維には、増えすぎた塩分を効率よく体外へ排出させる効果があります。

カリウムは、血液での濾過装置である腎臓に作用すると考えられており、余分な塩分をより多く体外へ排出すると考えられています。

クールベジ(夏野菜)で体温下げて夏を乗り切ろうによれば、夏野菜にはカリウムを多く含んだ野菜が多く、ミニトマト、ゴーヤ、なす、きゅうりなどが代表的です。

カリウムには利尿作用があり、水分とともに体の余分な熱を体外に放出し、体をクールダウンさせる効果があるそうです。

熱を加えると、カリウムの30%程度が失われてしまうと言われているため、カリウムを食べ物から摂るためには、生のままが適しているそうです。

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●毎日30分以上の有酸素運動(ウォーキング・ジョギング)

”#血圧サージ”が危ない~命を縮める血圧の高波~|タオルグリップ法(ハンドグリップ法)|#NHKスペシャル #ガッテンによれば、高血圧の代替療法として効果的なのはウォーキングなどの「有酸素運動」と「ハンドグリップ法」であるとして、その理由として、有酸素運動やハンドグリップ法をすると、血管の内皮細胞から血管の壁を柔らかくして血管を広げる作用がある一酸化窒素が出てくるためと紹介されています。

●週2,3回1日20分の筋トレ(スクワット・腕立て伏せ)

高血圧やダイエットに「8秒ジャンプ」が効果的!その隠れたメリットとは?8秒ジャンプのやり方によれば、高血圧対策は中強度の運動が推奨される=ジャンプがいい(有酸素運動と筋トレの両方できる)そうです。

また、ある研究によれば、有酸素運動または筋力トレーニング単独と比較して、12 週間の有酸素運動と筋トレの組み合わせ運動は、高血圧のリスクが高い人にとってより効果的だったことがわかりました。

●飲酒量を減らす

厚労省が初の「飲酒ガイドライン」/ビール一杯で大腸がんリスクが高くなる/生活習慣病のリスクを高める飲酒量はどれくらい?/純アルコール量を計算する方法によれば、高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまいます。

●禁煙

喫煙で全身の血管での動脈硬化のリスクが高くなる|滋賀医科大で紹介した国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、タバコを吸っているグループでは、狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患リスクが高くなることがわかっています。

喫煙によって、動脈硬化が促進されて、虚血性心疾患の発症リスクが増加すると考えられます。

●家庭で血圧を測定し、アプリを使って管理する

「家庭血圧」による診断を優先する|高血圧治療ガイドライン2014で紹介した2014年4月に5年ぶりに改訂された「高血圧治療ガイドライン」(日本高血圧学会)での大きな変更点は、「診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」という「家庭血圧」を重視している点です。

家庭血圧とは、病院ではなく家庭で血圧を測ることです。

家庭血圧が重視される一つの理由は、診察室血圧・白衣高血圧という現象があります。

白衣高血圧(白衣現象)とは|病院で緊張して血圧が上がるによれば、白衣高血圧とは、通常は血圧が正常なのに、病院で血圧を測定すると血圧の値が高くなってしまうことです。

そうしたことから、平常の血圧を測定する方法として、病院ではなく家庭で血圧を測ることが重視されるようになったようです。

また、家庭血圧を測定することによって見えてきたものもあります。

それは、「仮面高血圧」という新しい病態(病気のぐあい)です。

仮面高血圧とは?健診では正常、職場では高血圧によれば、健診や病院では正常血圧なのに、職場や家庭で血圧を測ると135/85mmHg以上になる状態を「仮面高血圧」といいます。

仮面高血圧は、正常血圧とされる一般成人の10~15%が相当するといわれており、脳卒中や心筋梗塞を併発する危険性は、正常血圧の2~3倍あり、心臓の肥大や動脈硬化の進行が非常に早いこともわかってきています。

そのため、現在では、家庭血圧(病院ではなく家庭で血圧を測ること)のほうが正しい血圧の数値がわかり、また病気の発見にもつながるため、家庭血圧が重要だと考えられているようです。

血圧の測り方

  • 血管を圧迫させないように気を付ける
  • 腕に巻くときの目安は、指が1本か2本入る程度
  • 一日2回朝と夜に測る

家庭用血圧計で朝一番から血圧をチェックして早朝高血圧を予防しよう!によれば、心筋梗塞脳梗塞は朝に起こることが多いことから、早朝高血圧が注目されているようです。

■まとめ

日本高血圧学会によれば、国内で高血圧の治療が必要な人はおよそ4300万人にのぼると推計され、このうち4割以上は治療を受けていないとみられ、年間17万人が高血圧が原因の病気で亡くなっていると推計されるそうです。

高血圧対策を若いうちからやっていきましょう。

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