低タンパク質食 × 腸内細菌でベージュ細胞を誘導! 肥満治療の新しい可能性/慶應義塾大学




ベージュ細胞を誘導する食餌と腸内細菌を同定

(2026年3月5日、慶應義塾大学)

慶應義塾大学の本田賢也教授が、2026年3月に世界的な科学誌『Nature』に発表した研究成果によれば、「食べ物(低タンパク質食)」と「腸内細菌」が協力して、私たちの体脂肪を「溜め込むモード」から「燃やすモード」に変える仕組みを明らかにしました。

■背景

私たちの体には「白色脂肪」(エネルギーを溜め込む普通の脂肪)と「褐色脂肪」(エネルギーを燃やして熱を作る脂肪)、その中間に位置する「ベージュ脂肪細胞」(beige adipocytes;白色脂肪の中に現れてエネルギーを消費する「燃焼モード」の脂肪細胞)があります。

このベージュ細胞を増やす(褐色化=browning)と、肥満や糖尿病、脂肪肝などの代謝疾患の改善が期待されます。

これまでの研究で、低タンパク質の食事(タンパク質を制限した食事)がベージュ細胞を誘導することがわかっていましたが、なぜ起こるのか、特に腸内細菌がどう関わっているかは不明でした。

■結果

〇低タンパク質食がベージュ細胞を強く誘導する

マウスに低タンパク質食を与えると、皮下の白色脂肪組織でベージュ細胞がたくさん現れ、エネルギー消費が増えました。

体重増加や脂肪肝の抑制にもつながります。

〇腸内細菌が「必須」である

腸内細菌を全く持たない無菌マウスでは、低タンパク質食の効果が大幅に弱まりました。

つまり、食事だけではなく、腸内細菌が一緒に働いてベージュ細胞を作っていることがわかりました。

また、ヒト由来の4つの菌株(Bilophila属、Adlercreutzia属、Eubacteriaceae科、Romboutsia属)が特に重要であることが判明しました。

これら4菌株を無菌マウスに定着させ、低タンパク質食を与えると、ベージュ細胞の誘導がしっかり再現されました。

■メカニズム

腸内細菌が低タンパク質食のシグナルを感知して、2つの主な経路で体に指令を出します。

1)胆汁酸-FXR経路

細菌が胆汁酸(肝臓で作られる消化液の成分)を代謝し、脂肪細胞の前駆細胞にあるFXRという受容体を活性化。

これがベージュ細胞への分化(変化)を促進します。

2)アンモニア-FGF21経路

特にBilophilaなどの細菌が、低タンパク質条件下でアンモニアを産生(nrfA遺伝子が関与)。

アンモニアは門脈を通って肝臓に届き、FGF21というホルモンの産生を促します。

FGF21は血流に乗って白色脂肪組織に届き、ベージュ細胞の誘導を強力に引き起こします。

つまり、腸(細菌)→ 肝臓 → 脂肪組織という臓器間のネットワークが働いているのです。

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■まとめ

今回の研究で分かったことは、脂肪を燃やすには、「ただ低タンパク質食にすればよい」ということではなくて、腸内細菌の状態をチェック・改善、具体的には、特定の細菌(プロバイオティクス的な菌株カクテル)と低タンパク質食を組み合わせた「マイクロバイオーム製剤」が、肥満・糖尿病脂肪肝の新しい治療法になるかもしれません。

【参考文献】

  • Tanoue T, Nagayama M, Roochana AJA, Zimmerman S, Ashenberg O, Jain T, Igarashi R, Sasajima S, Takeshita K, Hetherington N, Okahashi N, Ueda M, Konishi M, Nakayama Y, Minoda A, Skelly AN, Minokoshi Y, Pucci N, Mende DR, Arita M, Yamamoto H, Watanabe S, Miura K, Behie SW, Suda W, Sato T, Atarashi K, Matsushita M, Kajimura S, Plichta DR, Saito M, Xavier RJ, Honda K. Microbiota-mediated induction of beige adipocytes in response to dietary cues. Nature. 2026 Mar 4:10.1038/s41586-026-10205-3. doi: 10.1038/s41586-026-10205-3. Epub ahead of print. PMID: 41781619; PMCID: PMC13051337.







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