糖尿病の人の皮膚の傷が治りにくい原因の一つが「OSM-OSMRβ経路の低下」だった!




糖尿病で治りにくい傷を治す新しい仕組みを発見―OSMというタンパク質が傷をふさぐ細胞を助ける―(2025年10月31日、和歌山県立医科大学)で紹介されている和歌山県立医科大学の近藤稔和教授らのグループの研究によれば、糖尿病の傷が治りにくい原因の一つが「OSM-OSMRβ」という信号の弱まりだとわかり、この信号を補うと傷の治りが大幅に改善したそうです。

【参考文献】

■背景

健康な人の場合、傷ができると、白血球が炎症を起こし、線維芽細胞(せんいがさいぼう)が活性化して、コラーゲンを作り、新しい組織を作り、血管が新しくできて(血管新生)、肉芽組織ができ、皮膚が再生します。

しかし、糖尿病の人は、血流が悪かったり、炎症によって、線維芽細胞の働きが弱くなるため、傷がいつまでも治らない「難治性創傷(なんちせいそうしょう)」が起こり、場合によっては足などにできた傷が感染や壊疽を起こし、切断に至る場合があります。

しかし、なぜ糖尿病で傷が治りにくくなるのか、その分子レベルの原因はこれまで十分にわかっていませんでした。

糖尿病患者は日本で約1000万人にとって大きな問題となっています。

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■研究の目的

• 糖尿病になると、けがや傷がなかなか治らなくなりますが、その原因となる「治す力」がどのように失われているのかを
明らかにすること。

• 特に、皮膚の修復を担う「線維芽細胞」という細胞の働きに注目し、どのような仕組みで傷が治るのかを調べる。

• 「オンコスタチンM(OSM)」という傷の修復を指示する「メッセージ物質」が「OSM受容体β(OSMRβ)」を通して、線維芽細胞を活性化させ、血管の新生や肉芽組織(傷をふさぐ組織)をつくる働きを助けていることを解明する。

• 糖尿病ではこのOSM–OSMRβ(線維芽細胞の表面にある「受信アンテナ」)の働きが弱まり、治癒に必要なタンパク質であるHGF(血管を作る成長因子)やTIMP-1(コラーゲンを壊しすぎないように抑える物質)などが十分に作られず、結果として治りが遅くなることを明らかにする。

• この仕組みを理解することで、糖尿病などで治りにくい傷を「早く治す」新しい治療法(たとえばOSMを使った薬)を開発する基盤をつくる。

■実験結果

1)OSMRβがないマウスは普通のマウスより(HGFとTIMP-1の量が減っているため)明らかに傷の治りが遅い

→ OSMRβが傷の治癒に必須であることが証明されました。

2)OSMが線維芽細胞を刺激してHGFとTIMP-1を誘導し、血管新生と肉芽形成を促進

糖尿病マウスにOSMを直接塗る傷にOSMを塗っただけで、HGFとTIMP-1が増加し、血管新生と肉芽形成が回復、傷の治りが大幅に速くなったことから、外からOSMを補うと線維芽細胞のスイッチが入り、治癒が促進されることがわかりました。

3)OSMRβ欠損マウスでは線維芽細胞も新生血管も少なかった

■まとめ

糖尿病の人の傷が治りにくいのは、線維芽細胞に「治して!」という信号(OSM→OSMRβ)が届きにくくなっているからということがわかりました。

OSMを塗ることにより、この信号を人工的に補えば、傷を早くふさぐことができることがわかったことにより、糖尿病の傷を治すことだけではなく、将来的には、高齢者の褥瘡(床ずれ)や手術後の傷など、他の難治性創傷にも応用できる可能性がありそうです。

→ 糖尿病の症状・初期症状|糖尿病とは について詳しくはこちら







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