「寝起きの時の機嫌の悪さがその人の本性」は本当?




寝起きの機嫌悪さこそが本性みたいな言い方をしますが、本当なのでしょうか?

寝起きが悪い人というのは自律神経の切り替えの悪い人じゃないかなと思うんですよね。

例えば起立性低血圧。

その人の性格が悪いわけじゃなくて本当に病気の場合もありうるんです。

どちらが正しいのかわからないので、論文をベースに調べてみることにしました。

■寝起きの機嫌悪さは「その人の本性」ではありません。

寝起きの機嫌悪さ(イライラや不機嫌)は「その人の本性」ではなく、多くの場合、脳と体がまだ完全に起ききっていない「睡眠慣性(すいみんかんせい)」による自然な反応です。

性格が悪いわけではなく、脳の覚醒が不完全な状態や睡眠の質・タイミングの問題が原因の、誰にでも起こりうる体の仕組みです。

■睡眠慣性って何?

睡眠慣性は、眠っている状態から完全に目が覚めるまでの「切り替え時間」のことです。

この間は次のようなことが起こります。

・認知・パフォーマンスの低下(反応時間の延長、注意・ワーキングメモリの悪化)
・頭がぼんやりする・眠気・意欲の低下
・イライラしたり機嫌が悪くなったりする(イライラ、不快感、不安感など)

通常は15〜30分くらいで良くなりますが、深い眠りから急に起こされたときや、睡眠が足りないときは1-4時間続くこともあります。

これは脳の一部(特に判断や感情をコントロールする前頭前野)がまだ十分に活動していないために起きる現象で、PETや脳波の研究でも確認されています。

■「本性」ではなく体の反応

「寝ぼけているときの態度が本当の性格だ」という話をよく聞きますが、科学的には正しくありません。

普段優しい人が寝起きに不機嫌になるのは、脳がまだ覚醒しきっていない一時的な状態です。

性格との関連を調べた研究では、神経症傾向が強い人や睡眠の質が悪い人で睡眠慣性が強く出やすい傾向はありますが、「性格が悪いから機嫌が悪い」というわけではありません。

夜型の人は朝の目覚めが特につらくなりやすく、それが気分の落ち込みや不安につながりやすいこともわかっています。

つまり、寝起きの態度だけでその人の本質を判断するのは、誤った見方になりやすいのです。

■自律神経や病気の可能性もある

睡眠中はリラックスする神経(副交感神経)が優位で、起きると活動する神経(交感神経)に切り替わります。

この切り替えがスムーズでないと、起床時に不調や不機嫌が出やすくなります。

起立性低血圧(立ち上がったときに血圧が急に下がる状態)の人は、特に朝に症状が強く出やすいです。

こうした体の問題がある場合、性格とは無関係に寝起きがつらくなります。

■主な原因

・睡眠時間が足りない・質が悪い
・深い眠りから急に起こされる
・体内時計と生活リズムのズレ(特に夜型の人が朝早く起きる場合)
・不安や気分の落ち込み

個人差も大きく、同じ人でも日によって強さが変わります。

■まとめ

寝起きの機嫌悪さは、ほとんどの場合「体の自然な反応」や「睡眠・自律神経の問題」です。

「こいつの本性はこれだ」と決めつけるより、「今は脳がまだ起ききっていないだけなんだな」と理解する方が、科学的にも正確で、人間関係も穏やかになります。

P.S.

なぜこのように考えるようになったのかといえば、ある人がやる気がないように見えて、ずっと「もっと頑張れ」と声をかけていたら、実は「やる気が出ない」病気だったと判明したことがあり、反省したからなんです。

【参考文献】

  • Trotti LM. Waking up is the hardest thing I do all day: Sleep inertia and sleep drunkenness. Sleep Medicine Reviews. 2017.
    (睡眠慣性の基本的なレビュー)
  • Ritchie HK, et al. Trait interindividual differences in the magnitude of subjective sleepiness from sleep inertia. Sleep. 2021.
    (睡眠慣性の個人差が安定した特性であることを示した研究)
  • Carciofo R. Morning affect or sleep inertia? Comparing the constructs and their measurement. Chronobiology International. 2023.
    (起床時の気分と睡眠慣性の関係を詳しく調べた研究)
  • 大規模疫学研究(UK Biobankなど):夜型の人と睡眠慣性・精神的な不調の関連を示した論文群(2024年頃発表のもの)
    起立性低血圧に関する総説:JACC State-of-the-Art Review on Orthostatic Hypotension(2018)など
    (朝の自律神経や血圧の変化との関連)







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