■「代謝年齢が若ければ長生きする?」
私たちには「実年齢」がありますが、同じ50歳でも、体の状態まで同じとは限りません。
2026年に『Science Translational Medicine』に掲載された研究では、1~96歳の18,476人を対象に血液中の代謝物を調べ、56種類の年齢に関連する代謝物を特定。さらに機械学習を使って「代謝年齢(metabolomic age)」を推定するモデルを開発しました。
研究チームは、推定された代謝年齢が実年齢からどのくらいずれているかを「代謝年齢の加速(metabolomic age acceleration:mAA)」として評価しました。
そして興味深いことに、代謝年齢の加速が大きいことは、健康状態の悪化や好ましくない生活習慣と関連していました。
さらに2019~2025年の追跡では、代謝年齢の加速がみられた人では、脂肪肝、高血圧、糖尿病などの慢性疾患の発症リスクだけでなく、全死亡リスクも高くなっていました。
では逆に、
「代謝年齢が若ければ、長生きできるのでは?」
と考えたくなります。
ただ、ここは注意が必要です。
今回の研究は、代謝年齢を若返らせることで寿命が延びることを証明した介入研究ではありません。
つまり、
代謝年齢が若い
↓
長生きする
という因果関係が証明されたわけではありません。
現時点では、
代謝年齢の進み方が、その人の現在の健康状態や将来の健康リスクを捉える指標になる可能性がある
と考えるのが適切でしょう。研究者らも、血漿メタボローム解析から得られる老化指標が、健康状態、慢性疾患リスク、死亡と関連する可能性を示した研究と位置づけています。
■「運動を増やす」「揚げ物を減らす」と代謝年齢は若くなる?
今回の研究では、生活習慣と代謝年齢との関係についても調べられています。
そのため、
「だったら運動を増やしたり、食生活を改善したりすれば、代謝年齢を若くできるのでは?」
という疑問が出てきます。
実際、今回の研究では、代謝年齢の加速(mAA)が大きいことと「好ましくない生活習慣」との関連が報告されています。
ただし、
「運動を増やす」「揚げ物を減らす」
↓
「代謝年齢が若返る」
↓
「長生きする」
という一連の因果関係まで、今回の研究によって証明されたわけではありません。
そのため、「運動を増やして揚げ物を減らせば老化を逆転できる」と結論づけるよりも、生活習慣と代謝年齢との関連が見つかり、さらに代謝年齢の加速と慢性疾患や死亡リスクとの関連も示されたと捉えるのがよさそうです。
■まとめ
今回の研究で特に興味深いのは、「何歳なのか」だけでは捉えきれない体の状態を、血液中の代謝物から評価できる可能性を示したことです。
同じ50歳でも、体の中では同じように年を重ねているとは限りません。
将来的には「実年齢」だけではなく、こうした生物学的な老化の違いから健康リスクを捉える研究がさらに進んでいくのかもしれません。
ただし現時点では、「代謝年齢を若返らせれば長生きできる」とまでは言えないことも押さえておきたいところです。
【参考文献・資料】
Cao L, Chen Y, Zhang W, et al. Metabolomic aging and mortality clocks based on ensemble learning identify systemic aging risk across the human life span in 18,476 individuals. Science Translational Medicine. 2026. DOI: 10.1126/scitranslmed.adz4815. Science Translational Medicine掲載論文
Huang H, Chen Y, Xu W, et al. Decoding aging clocks: New insights from metabolomics. Cell Metabolism. 2025;37(1):34-58. 代謝物を利用したaging clockの考え方、特徴、限界などをまとめたレビューです。
Metabolomic-based aging clocks. npj Metabolic Health and Disease. 2025. 分子老化時計にはエピジェネティック、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなど複数のアプローチがあることを整理したレビューです。
■「体の年齢」を測る研究はいろいろある
今回紹介した「代謝年齢」は、血液中の代謝物から体の老化状態を捉えようとするものです。
一方で、これまでにもAGE(終末糖化産物)の蓄積から体の「糖化」を評価する研究や、血液中のタンパク質が年齢によってどのように変化するのかを調べる研究が行われています。
つまり、「実年齢は50歳」というひとつの数字だけではなく、代謝、糖化、タンパク質など、さまざまな角度から「体がどのように年を重ねているのか」を捉えようとしているわけです。
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