映画「トランセンデンス」を見て、人工知能(コンピュータ)について考えたこと


transcendence

参考画像:Transcendence – Official Trailer 2 [HD]|YouTubeスクリーンショット




映画「トランセンデンス」から人工知能(コンピュータ)について考えたこと、疑問についてまとめておく。

トランセンデンスのストーリーのあらすじはこちら。

映画「トランセンデンス」

死すべき運命だった科学者ウィル。しかしその意識は、死の間際に妻エヴリンにとってスーパーコンピュータへとインストールされた。意識だけの存在になったウィルは、オンラインにつながる軍事機密、金融、政治から個人情報まで、世界中のあらゆる情報を手に入れ、究極的な進化を遂げる。そしてナノテクノロジーを駆使し、現実の世界にまで及んだ彼の力は、遂に生命までもコントロールし始めた。常人を遥かに超える力で増殖し、拡散し、支配するウィルに「彼は私の愛した人だったの?」と信じる心が揺らぎ始めるエヴリン。まるで神のごとき力を手にし、変わり果てた男に世界は恐怖を感じ、密かに抹殺計画が進行し始める。そしてエヴリンにも選択の時が・・・

※ネタばれはしていないと思いますが、書いてあることの中に映画の内容が含まれていることがあるので、その点はご注意ください。

●人間は非論理的であるから、人間の脳と同じような人工知能(この場合はコンピュータ)を作ることができない。

コンピュータとは論理性のあるものという視点から作っているが、この考え方は、実に西洋的な考えのもの。

■西洋人=分析的

西洋人の知覚や志向は分析的で、身の回りのうち比較的小さな部分、何らかの方法で影響を与えたいと思う物事や人に意識を集中させる。

そして、その小さな部分の属性に注意を向け、それを分類したりその振る舞いをモデル化しようとしたりする。

また、形式的な論理規則を使って推論することが多い。

もし、人間の脳と同じような人工知能(コンピュータ)を必要とするならば、ここに、東洋的な思想を入れることが必要なのではないか。

■東洋人=包括的

東洋人は幅広い物事や出来事に注意を払い、物事や出来事同士の関係や類似性に関心を持つ。

また、対立する考え方の「中庸」を探すなど、弁証法的な考え方を使って思考する。

東洋人は他者に注意をはらう必要があるため、外部の幅広い社会環境に目を向け、その結果として物理的環境にも意識を注ぐ。

人間は論理的な生き物ではない。

どんなに失敗する確率が高くても、やってしまうことがある生き物である。

もし、人間と同じようなコンピュータを作るとしたら、そうした非論理的な要素を入れる必要がある。

ただ、それが本当に必要なのかはわからない。

【関連記事】

 

●問題は、ある一人の人間の意識とつないで人工知能を作ったことである。

人は偏見を持っている。

人工知能を人に近づければ近づけるほど、偏見を持ってしまう。

人工知能(AI)を人間に近づければ近づけるほど、偏見を持ったやり方を学んでしまう!?で紹介したユタ大学のコンピューター・サイエンス研究者のSuresh Venkatasubramanian准教授によれば、「人工知能AI)を人間に近づければ近づけるほど、私たちの持つ偏見や制限も含んだやり方をAIが学んでしまうのは皮肉なことです」とコメントしている。

だからこそ、人が人工知能を作るときには、人間の脳のような人工知能を作るのか、それとも、コンピューターオリジナルの人工知能を作るのかを考える必要がある。

 

●センサーによって人間の状態を把握することを恐れる人も出てくるだろう。

すでに現在でもヘルスケア業界ではあらゆるデバイスにセンサーを付けて、データを収集・分析しようとしている。

【関連記事】

ただ、そのデータをすべて集めてしまうと、その人自身が今どんな感情でいるかがわかってしまうことにもつながるだろう。

中にはそうした世界を恐れる人が出てくる。

自分の考えていることを知られたくないからだ。

それは時間が解決することなのか。

それとも決して譲れない一線なのか。

【関連記事】

 

●同じ記憶・同じ顔・体を持つコピーは全く同じ人間なのか。

映画の中で、科学者の記憶を他人にアップロードした場合は、それは彼ではないとパートナーである彼女は判断をしている。

ただ、同じ顔・同じ身体・同じ記憶を持つ再生した人のコピーは、その人なのだろうか。

 

●その人のアイデンティティを確立させるものとは

その人の記憶(思い出)こそがアイデンティティ(「自分は何者であるのか」)なのだと思っていた。

しかし、この映画を見た後、その考えは間違っていると感じた。

自分自身を証明するものは何なのだろうか。

【参考リンク】

アイデンティティを形作るものは記憶ではなく、その人のモラル

(2015/10/12、TROPE)

回答を分析した結果、 家族やパートナーは患者の記憶が失われても「(患者は)人が変わった」とは感じていませんでしたが、患者のモラルに関する特徴が変化したとき、人が変わったと感じていることがわかりました。

 

●人は理解できないものを恐れる。

ホーキング博士やイーロン・マスクといった優れた人の中には、人工知能を脅威に思っている人がいる。

それは、ただ単に、人は理解できないものを恐れているからなのか、それとも、本当に脅威となるのか。







【追記(2017/6/29)】

■人工知能とは?

人工知能について調べてみると、現時点では人工知能は定義されておらず、また、そうした状況が背景にあるからか、AIとAIもどきの区別がつかないと思って、AIもどきの製品が商品化されている状況にあるそうだ。

AIもどきではなく本当のAIを作るために重要なことは、1.世界に共通した人工知能(AI)の定義を作ること、2.学習用データ(現実世界の情報)を持っていることをを示すこと、だと思う。

最初の時点で言葉の定義がはっきりしていないことにより、計算能力が高いものをAIと呼んでしまっているのではないだろうか。

もう一つは、ネット上に転がっている情報はそのままの情報ではなく、加工された情報である可能性があり、そのデータを基にした場合、間違っているかもしれない情報で学習してしまう恐れがある。

そのためにも、加工されていないリアルな世界の一次情報を持つ必要がある。

人工知能(AI)に本気で取り組んでいるとすれば、自分たち自身で大量のリアルな学習用データを収集する、もしくはどこかの機関(行政・医療機関など)や大量のデータを蓄積している企業と提携しているはずである。

人工知能に関わる人々はAIもどきによって人々の期待を裏切る結果とならないようにするためにも、ぜひ1.世界に共通した人工知能(AI)の定義を作ること、2.学習用データ(現実世界の情報)を持っていることをを示すことを行なってくれるといいなと思う。

【参考リンク】