by Maryland GovPics(画像:Creative Commons)
(2016/6/27、WIRED)
「マーケットが下落し始めるとすぐに、それは市場のムードに、そして大衆の心情に影響し、次いでそれがオンラインで増幅される」と、インディアナ大学情報科学・コンピューティング学科でソーシャルメディアとマーケットの研究をする科学者ヨハン・ボレンは言う。
「そこに自己充足的予言(予測が、予測に適合する行動に人を向かわせ、予期された状況を現実のものとしてしまうプロセス)のような効果があるという考えを完全に否定することはできない」
<中略>
2008年の株価大暴落ののち、ボレンはその年の1,000万近くのツイートを分析した。彼は、Twitter上のパニック度が上がると、その3~4日後にダウが下がることを発見した。
インディアナ大学情報科学・コンピューティング学科でソーシャルメディアとマーケットの研究をする科学者ヨハン・ボレンによれば、「マーケットが下落し始めるとすぐに、それは市場のムードに、そして大衆の心情に影響し、次いでそれがオンラインで増幅される」そうです。
by Kārlis Dambrāns(画像:Creative Commons)
あなたがネット(LINE・FACEBOOK・TWITTER)に書いた感情が伝染して世界を変えてしまうかもしれない!?で紹介したカリフォルニア大学サンディエゴ校、イェール大学、それにフェイスブックの研究者のチームが行なった米国の1億人以上の人々と、フェイスブックへ投稿した10億件のメッセージを対象にした新たな研究によると、ネット上で表わされた感情は人から人へと伝染する可能性があることが分かったそうです。
感情が人から人へと伝染することを「情動感染(じょうどうかんせん)」といいますが、直接会った人だけでなく、ネット上であらわされた感情も人から人へと伝染する可能性があります。
Facebookはこうした感情の伝染に対する影響がどれほどのものかを研究したいと思い、実験を行なったようですが、一部の人々からユーザーに無断でこのような実験を行なったことに対して批判があったようです。
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恐慌や取り付け騒ぎというのは、人々が抱えている不安や本当かどうかわからない噂などによって、不安の感情が増幅され、社会全体が混乱を起こした状態のわかりやすい例ですが、インターネットやソーシャルメディアはそうした不安を増幅させる可能性があるというのが今回の記事のポイントではないでしょうか。
『つながりすぎた世界 インターネットが広げる「思考感染」にどう立ち向かうか』(著:ウィリアム・H・ダビドウ)によれば、インターネットが推し進める環境では、物事は超高速で進展するため、問題はもっと早くに積み上がり、頻度も高くなるそうです。
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インターネットが物理的な結びつきをより強固で効率的なものにしている。
この21世紀の情報化社会の神経網は、情報を事実上ただで効率良く運び、かつて独立していたシステム同士を結びつけては相関関係を強めていく。
その結果、社会に存在する正のフィードバックは大幅に増幅される。事故が起きやすく、激しやすく、感染に対して脆弱な社会は、こうして生み出されるのである。
インターネット以前の社会では、情報の伝達スピードが遅いことが「ブレーキ」の役目を果たしていましたが、インターネット後の社会は情報の伝達スピードが速く、今出た情報もすぐに世界に広がってしまう可能性があります。
つまり、インターネットは情動感染・思考感染を促すのです。
ブレーキのような存在がなくなってしまった現代では、自らの判断力がそのブレーキの役目を果たす必要がありますが、世界的にパニックに陥った状況で、冷静な判断をするというのは大変難しいことだと思います。
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P.S.
そして、人々は無自覚に誤っているかもしれない情報を拡散していることも分かっています。
現代人は読まない…。リンク先を見ずにリツイートしまくる人が大半であると判明
(2016/6/22、ギズモード)
リツイートがリツイートをよんでニュースは拡散しても、そもそもツイートに含まれているリンクから元のニュース記事へジャンプして内容を確かめたりしない人が、全体の59%にも達することが示されています。
米国のコロンビア大学、フランスのFrench National Instituteのコンピュータ・サイエンス共同研究チーが、Twitterで拡散されていく、CNN、New York Times、Huffington Post、BBC、Fox Newsへのリンク(短縮URL)が含まれたツイートを分析し、どのようにニュースがSNSの力で拡散されていくかの研究調査を実施したところ、元記事のリンクを読まずにリツイートしている人が全体の59%をしめていることがわかったそうです。
同研究チームのArnaud Legoutさんはこのようなコメントを発表しています。
記事を読むよりもシェアするだけで満足する人が増えている。これこそが現代の情報活用の典型的なかたちだ。ただ要約か、その要約の要約を見ただけで、それ以上は深く調べようともせず、人々の思考が形成されていく。
私たちは知らず知らずの間に間違っているかもしれない情報を拡散してしまい、その情報をもとに判断してしまう人もいるのかもしれません。
真実を見極める目を持つことが重要だといわれますが、これほど情報にあふれた世界では大変難しいことだと思います。
「自分の中に毒を持て」(著:岡本太郎)ではこのように書かれています。
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人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。過去の蓄積にこだわると、いつの間にか堆積物に埋もれて身動きができなくなる。
情報にあふれる世の中だからこそ、情報を収集することに追われるのではなくて、反対に情報を捨てていくことがこれからの時代を生きる上では大事なことなのではないでしょうか。