■脳震盪を起こすリスクは誰もが抱えている!?
by University of the Fraser Valley(画像:Creative Commons)
脳震盪(のうしんとう)に対してあまり身近な印象を持っていない人もいるかもしれません。
しかし、武道やスポーツを行なっている子供は誰しも脳震盪を起こすリスクを抱えています。
脳震盪の知識とその対処法~ 女子のスポーツで起こる脳震盪について正しい知識を ~
(2016/4/19、東邦大学プレスリリース)
脳震盪はラグビーや柔道など体を激しくぶつけ合う競技で起こりやすいことから、一般的に男子に目が向きがちです。しかし近年、武道や格闘技、またサッカーやラグビーなどでも女子の競技人口が増加しており、それらを中心に女子の脳震盪が増加しています。
・武道、格闘技
柔道、空手、相撲、テコンドー、レスリング、ボクシング
・体と体の接触の多いスポーツ
サッカー、ラグビー、バスケットボール、ホッケー、アイスホッケー、ラクロス
・飛び込みや落下により殴打する恐れのあるスポーツ
バレーボール、チアリーディング、乗馬
脳震盪を起こすイメージがある競技としては、柔道などの格闘技や体と体の接触の多いサッカーやラグビーなどのスポーツがありますが、そのほかのスポーツにも飛び込みや落下によって脳震盪を起こすリスクがあります。
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(Summer 2013、RGA)
軽度外傷性脳損傷(MTBI)は、一般に脳震盪と呼ばれるもので、外傷性脳損傷全体の約75%を占めています。
19歳未満の子供では、外傷性脳損傷による救急受診に関連する活動の中で最も多かったのは、自転車事故でした。
19歳未満の子供において、外傷性脳損傷による救急受診に関連する活動の中で最も多かったのは自転車事故だったそうです。
参考画像:<中高生の自転車事故実態調査>高 1 の 5・6 月は要注意。高 3 の約 2 倍事故が起きている!(2017/5/18、自転車の安全利用促進委員会)|スクリーンショット
<中高生の自転車事故実態調査>高 1 の 5・6 月は要注意。高 3 の約 2 倍事故が起きている!
(2017/5/18、自転車の安全利用促進委員会)
通学時の事故については、新生活が始まり、慣れない道を運転する利用者が多い 4 月に事故の発生が多いと思われましたが、実際は 5・6 月に突出して多いことが分かりました。
自転車の安全利用促進委員会によれば、中高生の自転車事故発生件数は5月、6月に集中するそうです。
参考画像: 《6 月は通学・通勤時の自転車事故の多発時期》(2017/6/8、K D D I 株式会社・au 損害保険株式会社)|スクリーンショット
(2017/6/8、K D D I 株式会社・au 損害保険株式会社)
新生活にも慣れ、緊張が緩み始める 5 月、6 月に、中高生の自転車事故発生件数が集中(注 3)することがわかっています。
au損保によれば、18歳以下の自転車事故月別受付件数は、6月が1年の中で最も多く、4月の2倍以上になるそうです。
■脳震盪の怖いところとは?
脳震盪の怖いところというのは後遺症がある点です。
(Summer 2013、RGA)
外傷性脳損傷を生じる人々の大半が、長期的な影響を受けることなく完治します。しかし、そのうちの約15%が、結果として長期的な障害や損傷を負うことになります。
Concussion: Not So Minor an Injury. Jon E. Bentz, PhD, Edward J. Purzycki, PhD 2008, The Journal of Lancaster General Hospital.
脳震盪を経験する人のほとんどは完治する一方、約15%は長期に及ぶ後遺症に悩まされてしまいます。
日本人の大半が何らかの武道やスポーツを経験するわけですから、脳震とうのリスクは決して遠い存在ではなく、身近な存在といえるでしょう。
■将来的には病気の問診や保険商品の質問項目に「これまで脳震盪を経験したことがありますか」が追加される!?
脳震盪によって死亡するリスクがあり、また、脳震盪を経験したことのある人の一部には死亡率の上昇などのリスクを伴いますので、脳震盪を経験したことがある人が多いということは、医療業界にも保険業界にも影響を与えることが考えられます。
出典:Surveillance for Traumatic Brain Injury – Related Deaths – United States, 1997-2007. Centers for Disease Control and Prevention. 2001, Morbity and Mortality Weekly Report.
出典:Centers for Disease Control and Prevention. Nonfatal Traumatic Brain Injuries Related to Sports and Recreation Activities Among Persons Aged ≤19 Years — United States, 2001–2009. s.l. : Morbitiy and Mortality Weekly Report, 2011.
参考画像:外傷性脳損傷とその保険への影響(Summer 2013、RGA)|スクリーンショット
(Summer 2013、RGA)
生命保険や災害死亡保険金などの商品は、外傷性脳損傷によって年間5万2千人の米国人が命を落とすことによって生じるリスクにさらされています。
また、外傷性脳損傷を克服した受傷者の一部においても寿命の短縮、すなわち死亡率の上昇などのリスクを伴います。
同様に、外傷性脳損傷を生じた人々は、他の疾患の罹患率が上昇する可能性があるため、介護保険、障害保険金、特定疾病保険などの保険商品に影響を及ぼします。
将来的には、病気の問診や保険商品の質問項目に、「これまで脳震盪を経験したことがありますか」という項目が追加されるようになるかもしれません。
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P.S.
2017年2月21日放送の「ダボス会議2017人生100年時代」(NHK BS1)の中でパネリストの佐藤康博みずほフィナンシャルグループCEOが提案していたのは、健康的な人には金利を上乗せするという健康を金利に反映するアイデアでした。
(2015/12/23、ZUU ONLINE)
全国の金融機関で国民健康保険加入者の「特定健康診査(メタボ健診)」や、健康診断などを受けた預金者を対象に、定期預金等の金利上乗せをするサービスが増えている。
健康な人ほどリスクが少ないと考えれば、金融機関にとってもメリットがあるアイデアだと思います。
今回のパネリストには、平均年齢100年時代をどう生きるかということを問われている本「ライフシフト」の著者リンダ・グラットンさんも出演されていましたが、長寿社会において健康であることは価値が高くなり、行政機関や銀行、保険会社などの取り組みによって、健康であることが数字として表れることで本当の意味での資産になる日も近いかもしれません。
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ただ、「健康格差」という問題もあります。
健康格差とは、所得や学歴など社会経済的な地位が低いと不健康が多くなるといわれている格差のことです。
#健康格差 とは|所得や学歴など社会経済的な地位が低いと不健康が多くなる!?によれば、健康格差の研究は1980年代から始まり、WHO(世界保健機関)によって健康格差の要因についてまとめたレポートもあるほど、すでに欧米では深刻な格差の一つとして受け止められているそうです。
健康格差の問題は個人個人で受け止めるだけでなく、社会全体で受け止めるべき問題だと思います。
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