ソニーのロボット・プログラミング学習キット「KOOV」

#SONY ロボット・プログラミング学習ができるSTEM教育キットKOOV|「Tinkering(ティンカリング)」とデザイン力を育てる





【目次】

■Sony ロボット・プログラミング学習ができるSTEM教育キットKOOV

ソニーのロボット・プログラミング学習キット「KOOV」
ソニーのロボット・プログラミング学習キット「KOOV」

参考画像:KOOV Play. Code. Create|YouTubeスクリーンショット

ソニーのロボット・プログラミング学習キット「KOOV」は、簡単に言うと、ブロックと電子パーツを組み合わせてロボットを作る学習キットです。

KOOVアプリは、ロボットの動きを直感的に理解し組み立てることができる「ビジュアルプログラミング」を採用されています。

プログラムをロボットに転送すると、プログラミングされた動きを行ない、思い通りの動きのロボットを作ることができます。

【参考リンク】

■KOOVの価格設定は高すぎる?

ブロックと電子パーツの全種類を揃えたKOOVアドバンスキットの価格は49,880 円+税となっています。

正直子供向けの教材としては高いと感じる人も多いのではないでしょうか?

実際にそうした反応もあるようですが、ただ、この価格設定にも意味があるそうです。

KOOV――「300年前」と「300年先」をつなげるプログラミング教育

(2017/2/21、ハフィントンポスト)

実はKOOVは、発売の発表以降、予想通りに「価格が高い」という反応をいただいているんですが、モデリングと学習コースをひと通りやるには、早い子でも30時間近くかかります。

ロボット教室だと1年分のカリキュラムくらいの内容が、オールインワンで最初から入っているのが、KOOVです。

ロボット・プログラミング教室に1年通わせる内容が入っているのが「KOOV」であるというのを考えると、値段相応の価値があるといえそうです。

■KOOVを実際に試してみました

KOOVが届いたのでやってみました。

まずは「はじめてのロボットプログラミング」からスタートしました。

プログラミングとはどういうものなのか、わかりやすく説明してくれたので、すんなりと理解することができました。

(人間は他人に対していかにあいまいにお願いをしているのかも改めて感じることができました。)

ロボットレシピにある「ギター🎸」と「UFO」、「機関車🚂」を試してみました。

このロボットレシピはすでにプログラミングが行なわれているので、ブロックを組み立てるだけなのですが、このブロック組み立てが大変で、プログラミングで試行錯誤する前に、ブロックの組み立てで試行錯誤を繰り返しました。

出来上がり、動いたときは達成感があるもので、子供たちもこんな感情を抱くのではないかと期待できるものです。

ロボットレシピ「機関車」を試した際には、どうしてもDCモーター[V0]のみが回転し、DCモーター[V1]が回転せずに何か問題があるのかどうか、KOOVヘルプセンターに問い合わせたところ、赤外線フォトリフレクタに関する認識不足であることが勘違いであることがわかりました。

赤外線フォトリフレクタの値が
80未満の場合は、DCモーター[V0]のみが回転し、
80以上の場合はDCモーター[V1]のみが回転
するようにプログラミングされております。

※赤外線フォトリフレクタのセンサーを遮断することで数値が変化し、回転するDCモーターが変更いたします。

簡単にいえば、故障しているわけではなくて、「初めてのプログラミング」をすべてチェックせずに、いきなりロボットレシピに進んだために、センサーについてよく理解できていなかったことが原因でした。

LEDライト(緑・赤)についてはチュートリアルのような形でチェックができるものの、そのほかのセンサーについてはチェックが後回しになっているように感じ、こうしたセンサーに対して慣れていない私のような人にとっては残念な説明になっているように感じます。

こうした知育玩具に興味を持つ親御さんには関係がないのかもしれませんが、2020年には小学校でプログラミング教育が必修化していくといわれていますので、関心が低い子供にとってはひとつのハードルになってしまう可能性があります。

最近のゲームでは説明書がなく、チュートリアルで使い方を説明していくそうです。

そこで、KOOVアプリでも、センサーやモーター、電子部品をいったん全てチェックして、理解を深めるチュートリアルがあるといいのではないかと思いました。

【追記(2017/6/25)】

以前はこのように書きましたが、「はじめてのプログラミング」を順を追って行なえば、センサーなどについても理解できる内容になっていました。

このような失敗をしないためにも、きちんと「はじめてのプログラミング」で学ぶようにしてくださいね。

■KOOVでは「Tinkering(ティンカリング)」とデザイン力を育てる

このキットのメリットは「Tinkering(ティンカリング)」にあると考えられます。

ティンカリングの定義と性質|ティンカリングの観点を取り入れた生徒主体の「ものづくり」に関する研究|日本科学教育学会研究会

Wohlsen(2011)は「ティンカー」を、何でもいじらずにいられないという性質を持つ者、あるいはそうした振る舞いの呼称であり、「ティンカリング」は創造性(creativity)の本質であると述べている。さらに、Wohlsenは「ティンカー」は傍目には遊んでいるように見えても、すでに完成しているエンジンパーツやコンピュータ・コードの一部をまったく新しいものにつくり変えようとしており、遊戯性を伴うが、新しい何かを創りだそうとと熱意と才能を注ぐ知的競争と表現している。

Marcus Wohlsen(2011), Biopunk: Solving Biotech’s Biggest Problems in Kitchens and Garages

小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議(第2回) 議事録(2016/5/19、文部科学省)

少し手前みそなんですけれども、弊社で開発している商品の簡単な紹介をさせていただきたいんですけれども、KOOVという名前で、ブロックを使ったロボットプログラミングキットを、今、開発中でして、今年中には発売する方向で、今、準備を進めているところです。このブロックを使ってロボットを作るというところなんですけれども、教材としてのメリットは、いわゆるティンカリングと言われている、手探りをしながら試行錯誤、トライ・アンド・エラーしながら自分なりにいろいろなロボットを作っていって課題に対処するみたいな、そういった手触りで試行錯誤する過程が非常に教育効果が高いということで、このブロックを使ったロボットというのは、レゴさんなんかもそうですけれども、海外でも高い評価受けているところになります。

試行錯誤する課程を通じて課題に対処することが教育効果が高いということであり、KOOVはその「Tinkering(ティンカリング)」の観点を取り入れたキットといえると考えられます。

子供の頃に、時計や家電製品を分解したことがある人もいるのではないでしょうか。

これも一種の「Tinkering(ティンカリング)」と考えると、分解することでモノの構造を知り、大きく言えば世界を知ろうという好奇心や創造力を育てることにつながっているのではないでしょうか。

【参考リンク】

KOOV――「300年前」と「300年先」をつなげるプログラミング教育

(2017/2/21、ハフィントンポスト)

それに、一度できあがったものをもったいながって崩さないんですね。1回で終わってしまう傾向があるようです。

―― ある意味、粘土みたいな感覚で扱えるのかな?

礒津 「また違うのをつくろう」とあまり抵抗なく思えるようです。そのあたり、つくっていじくりまわして、またつくっての「ティンカリング」※10に向いているキットになっているかと思います。

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「ファンタジア」(著:ブルーノ・ムナーリ)

集団で作った作品を壊すのは、特に幼年期の場合、模倣のモデルを作らせないため。

保存されるべきは、そのやり方であり、企画を立てる方法であり、出くわす問題に応じて、再びやり直すことを可能にさせる柔軟な経験値である。

礒津政明(株式会社ソニー・グローバルエデュケーション 代表取締役社長)さんによれば、他のロボット教材は一度出来上がったものをもったいないと思って崩さない傾向にあるようです。

しかし、ブルーノ・ムナーリによれば、保存しなければならないのは、作品ではなく、そのやり方や企画の立て方であり、問題に対して何度もやり直せると感じられることが重要だとあります。

できたものを壊したくないという気持ちはわかります。

でもそれにこだわることなく、壊れても作り方はわかっているのだから何度もやり直せばいいと思うことは大事なことなのではないでしょうか。

そうした意味でも、緻密すぎず、パーツが多すぎないというKOOVはロボット教材としての設計が上手といえそうです。




■まとめ

「Tinkering(ティンカリング)」の重要なポイントは、「頭で考えるだけでなく、手を使い触りながら考えることも大事である」ということなのではないでしょうか。

手を動かし、組み合わせながら考えることがクリエイター、メイカーへの入り口になるTinkering Studio

(2016/3/14、fabcross)

Tinkeringには「いじり回す」という意味合いもあり、目的に一直線に進むと言うよりは、なんとなく触ってみる、しっかり考えるより触りたいという感覚や手を優先させるニュアンスがある。

頭で考えしっかりと設計図を作ってからモノを作ることも大事ですが、とりあえず手を動かしたり、素材に触れているうちにアイデアが思い浮かぶということもあるのだと思います。

おもちゃと触れて遊んでいるうちに、好奇心をもって試行錯誤をしながら、自然と学ぶというのがこれからの教育の形になっていくのではないかと思っているのですが、KOOVでも、手を動かして、触れあっていくうちに、ロボット・プログラミングについて自然と学んでいくことを大事にしているように感じます。

これからの教育は「遊びながら学ぶ」という方向に進んでいくのではないでしょうか。

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉第6回「もう一つの“体育”で、『身体的知』(身体を固定しない“知性”)を鍛えたい」

(2016/3/1、ほぼ日刊惑星開発委員会)

これまでの学校や知的な訓練って、身体を固定して、もっと具体的に言えば椅子に座って働かせる知性なんだと思うんだよ。

<中略>

「図書室は静かに」というじゃない。この言葉に象徴されるように、従来の知性というのは、まさに美術館でパースペクティブのある絵画を見るときのように身体を固定して、他者も意識していなくて、インプットの情報量がほとんどない中で大脳をフル回転させる知性なんだよね。そもそも文章や記号というもの自体が、情報量としてはバイト数のほとんどないものだしね。でもさ、一方でたとえば、「IQよりも社会性のほうが社会的成功には関連性がある」みたいな主張の論文なんかがあるんだよ。
 それって、「社会性」がバズワードになっているだけで、要は椅子に座っていなくて、図書館みたいな特殊な状況ではない――外部からのインプット情報が極めて多くて、目も耳も感覚を全て使っているような――状態での、人間の能力のことなんじゃないかな。

従来の知性というのは、身体を固定して働かせる知性が重視されていましたが、その状態というのは、自分自身が固定されていた状態で、相手も意識していない状態のため、インプットされる情報量が限られています。

『身体的知』(身体を固定しない知性)というのは、自ら移動しながら(身体が固定されておらず)、相手を意識した状態であるため、そこには五感をフルに働かせたことでおびただしい量のデータのインプットが得られます。

最近ではSTEMにARTを加えたSTEAMといわれるようになっていますが、KOOVもArtの要素が含まれていて、ものがどのようにしたら変化をするのか、お互いがどのように影響しあうのかなどを遊ぶように体験する中で自然と学んでいくことができる、アートでありながら、いろんなことを学ぶことができる新しい形の教育のように感じます。

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もう一つ、「Tinkering(ティンカリング)」が重要だといわれているのは、もしかすると不器用な子供が増えていることも関係しているのかもしれません。

近年不器用な子供が増えているといわれているのですが、園児の紐を結べない、箸が使えないといった日常生活の技能が低下|手を動かすことが、いかに脳を使うことにつながっているかで紹介した全国国公立幼稚園・こども園長会が公表した調査によれば、幼稚園に通う子供たちに、紐(ひも)を結ぶ、箸(はし)を正しく持って使うといった日常生活の技能の低下が起きているそうです。

その理由の一つとしては、紐を結ばずに済む靴が普及したことや握る動作が必要なジャングルジムなどの遊具の減少によって、手足を使う遊びの機会が少なくなり、手先の器用な動かし方や力加減を学びにくくなっているからであると紹介しましたが、もしかすると、とりあえず手を動かしてみることや手で触れるということ自体が少なくなっていることも原因のひとつかもしれません。

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手先を使う動作が減ったことで、生活技能が低下していることが心配されていますが、もう一つ心配されるのは手や指を動かすことが脳の発達とも関係している点です。

こちらの画像は有名なホムンクルス人形です。

homunculus

by Mike(画像:Creative Commons)

「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、ホムンクルス人形(体のそれぞれの部分を支配している「神経細胞の量」の割合を身体の面積で示した図)によれば、手や舌に関係した神経細胞が非常に多いそうです。

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また、「愛撫・人の心に触れる力」(著:山口創)でも同様の説明がなされています。

解剖学者のワイルダー・ペンフィールドによる有名なホムンクルスの図である。様々な身体部位を司る脳の部位は異なっており、その大きさも異なる。そこで、それぞれの身体部位に占める脳の割合の大きさから逆算して、体の大きさを描いたものである。これをみると、脳の中で背や腹よりもいかに手と口の周辺が占める割合が大きいかがよくわかるだろう。

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「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、指をたくさん使えば使うほど、指先の豊富な神経細胞と脳とが連動して、脳の神経細胞もたくさん働かせる結果になるそうです。

現代の幼児はスマホやタブレットなどを簡単に使いこなしているため、手先が器用なように見えるかもしれません。

ただ、それは同じような動作をしているから、うまくできるように見えるだけであって、実は手先が不器用な子供が増えているのです。

手(指)を使うことは脳の発達にもつながりますし、頭でわかったような気にならず、とりあえず手を動かしているうちに、試行錯誤を繰り返しながら、でてくるアイデアもあるということを子供のうちから学ぶためにも、KOOVのような学習キットをお子さんにプレゼントしてみてはいかがですか?




■創造力溢れる子供に育てたいなら、多くのデータを記憶させるべき

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子供を創造力溢れ、のびのびしたファンタジアに恵まれた人間に育てたいなら、可能な限り多くのデータを子供に記憶させるべきだ。記憶したデータが多ければ、その分より多くの関係を築くことができ、問題に突き当たってもそのデータをもとに毎回解決を導き出すことができる。

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■MESH|ソニー

【追記(2017/6/16)】

MESH Introduction

MESH:小さな便利を形にできる、ブロック形状の電子タグ|ソニー

MESHとは、IoT(モノのインターネット化)を活用した仕組みを実現できる、特定の機能(動きセンサー/ライト/ボタン/明るさセンサー/温度・湿度センサーなど)を持ったブロック形状の電子タグ「MESHタグ」を「MESHアプリ」で無線でつなげることにより、「あったらいいな」を実現できるものです。

サイトでは、暮らしに役立つものやオフィスで役立つものなどさまざまなレシピが紹介されています。

例えば、トイレの空き状況チェック

「お腹虚弱体質」なエンジニアがIOT駆使してオフィスのトイレ空き状況をスマホでリアルタイムに確認できるシステムを開発では、扉の開閉を感知する自作のセンサーを設置し、センサーを超小型コンピュータ・Raspberry Piに接続して扉の開閉情報をAPIサーバに記録し、クライアントアプリを通じてAPIにアクセスすることで、スマートフォンのWebブラウザから一目でトイレの空き情報が分かるようにしていましたが、このレシピでは、「明るさタグ」と「IFTTT」を活用して作られています。

ソニーからは面白い製品が出ていますね。

■人への説明の仕方はプログラミング思考を持つと変わる

まさに「はじめてのロボット・プログラミング」をやっているところですが、プログラマーでお子さんをお持ちの方は自分自身の仕事を伝える上で、こうした製品をプレゼントしてあげるといいんじゃないかなと思います。

プログラマーの仕事を伝えるのは難しいことだと思いますが、KOOVのようなロボット・プログラミングができるおもちゃでテクノロジーのことを学べば、子供はこんなことができるんだと感じることができるでしょう。

そして、きっと私たちが疑問を持つことなく受け入れている身の回りにあるテクノロジーの仕組みに対して、疑問を持ち、理解しようとするのではないでしょうか。

「なぜ自動ドアは開くのか?」「どのようにしてスマホが動いているのか?」という疑問が生まれた時に、大人になるにつれて「そういうものだ」とそこで思考停止してしまいがちになりますが、こうしたキットに触れることによって、知的好奇心が活発になり、こういうメカニズム・仕組みで動いているんじゃないかなという仮説を立てるなど自然と考えるようになるのではないでしょうか。

プログラマーとは、どんな職業かわからなかった子供も、どういうことに使われるのかがわかることにより、その専門家の能力・知識についてのすごさを実感することができるでしょう。

もう一つプログラミングについて触れているうちに気づいたのは、人への説明の仕方ってプログラミング思考を持つと変わるだろうなということ。

人は親しい人に対して、「アレとって」というようなあいまいなお願いをしてしまいがちですよね。

でも、プログラミングにおいては「アレ」が何かきちんと説明してあげないと行動が実行されません。

もしあなたが上司だとして部下へ仕事を頼んだ時にうまく伝わってないなという経験をしたことがありませんか?

もしかすると、それは部下が悪いのではなく、あなた自身の説明が上手くできていなかったのかもしれないのです。

この話を少し専門的な言葉で話すと、日本の文化はハイコンテクスト文化であるため、お互いの意図を察することで、コミュニケーションスキルがなくても、通じてしまうというのが背景にありそうです。

ハイコンテクストの場合、受け手(聞き手)の能力が重要であるのに対して、ローコンテクストの場合、話し手が上手く意図を伝えることができなければ受け手に伝わらないというものです。

世界の様々な人々と働くようになる時代において、プログラミング思考によって、ローコンテクスト文化を取り入れることができれば、受けて(聞き手)にとってより正確に伝える力がつくのではないでしょうか。







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