■エストニアでは医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用すべく試験運用が行なわれている
by Sebastiaan ter Burg(画像:Creative Commons)
エストニアでは、医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用すべく試験運用が行なわれているそうです。
【参考リンク】
- Estonia prescribes blockchain for healthcare data security|Health Matters(2017/3/16、pwc)
その前に、ブロックチェーン技術について簡単な説明を行ない、なぜ医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用するのか?について紹介したいと思います。
ブロックチェーンについては「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット)の著者であるドン・タプスコットさんのTEDでのスピーチが一番印象に残ると思い紹介します。
Don Tapscott(ドン・タプスコット):ブロックチェーンはいかにお金と経済を変えるか|TED
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか 新品価格 |
簡単に言うと、ブロックチェーンとは、中央管理者を必要とせず、全ての取引履歴をみんなで共有して、信頼性を担保するシステムといえばよいでしょうか。
参考画像:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料(2016/4/28、経済産業省)|スクリーンショット
参考画像:平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)報告書概要資料(2016/4/28、経済産業省)|スクリーンショット
【参考リンク】
私たちが今利用しているウェブを「情報のインターネット」だとすれば、ブロックチェーンが実現するものは「価値のインターネット」とも表現されたりもしています。
【関連記事】
- The Internet of Value: What It Means and How It Benefits Everyone(2017/1/21、Ripple)
このブロックチェーン技術に個人や企業・政府による関心が集まっており、エストニアでは医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用しようと試験運用が始まっているのです。
医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用するとどう変わるのでしょうか?
Estonia prescribes blockchain for healthcare data security|Health Matters(2017/3/16、pwc)を参考にまとめてみます。
●個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができる
First, health records can be stored securely in a ledger on which all participants (health professionals, patients, insurers) can rely.Doctors, surgeons, pharmacists and other medical professionals all have instant access to an agreed set of data about a patient.
ブロックチェーン技術を活用することで医療情報の偽造・改ざんを防止すると同時に、暗号化技術によって非常に重要な情報である個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができます。
これまでは医療情報のような個人情報は巨大な仲介役が管理していましたが、ブロックチェーン技術を活用すれば、そのデータは自分が管理することができるようになります。
データを企業に受け渡すことでサービスを利用している現代ですが、ブロックチェーンが浸透すれば、自分の情報を自分でコントロールすることができるようになるのです。
「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット)では次のように表現されています。
ビッグデータの時代は終わり、プライベートな「リトルデータ」の時代がやってくるのだ。
●医療従事者が患者のデータに即座にアクセスできる
必要な情報だけを医療従事者が即座にアクセスすることができるようになります。
あまりなりたくはないものですが、病気や事故になったとしても、即座に医療従事者がそのデータにアクセスすることにより治療が受けられるようになるわけです。
Its Patient Portal gives citizens access to medical documents, referral responses, prescriptions, and insurance information.Individuals can also use the Portal to declare their intentions regarding blood transfusions and organ donation.
エストニアの患者ポータルでは、医療文書・処方箋・保険情報にアクセスができ、輸血や臓器提供に関する意向も宣言することができるそうです。
エストニアで行われているような動きは日本でも始まっており、福岡市では市民の医療データと東京海上日動火災保険のデータを連携させるための実証事業を開始しているそうです。
(2017/1/24、東京海上日動火災保険プレスリリース)
具体的には、FDCの協力を得て福岡市域の医療機関と連携し、傷害保険金請求書に記載の医療機関に対し、ブロックチェーンを通じて入通院期間などの医療情報の提供を要求し、データ連携基盤を通じて医療情報等のデータを受領することで、医療情報に対するセキュリティを確保しつつ、保険金支払業務の簡略化、迅速化が可能かを検証します。
保険業務で扱われる秘匿性の高いデータ(契約内容・医療情報)のやり取りに対して、ブロックチェーン技術を活用することによって、セキュリティを確保しながら、事務手続きを効率化・簡略化・迅速化していくことが可能か検証していくそうです。
【参考リンク】
- エストニア電子政府の仕組みを福岡で導入 孫泰蔵氏が支援するプロジェクト本格始動(2017/1/21、Business Insider Japan)
- ブロックチェーン技術を活用した損害鑑定業務の実証実験を開始(2017/6/1、時事ドットコム)
火災保険等の保険金支払時の損害調査業務は、損害保険会社と損害保険鑑定人(※2)(以下「鑑定人」)との間で多くの情報共有のやりとりが発生するものの、電子化には十分に対応できておらず、FAXや郵送等の紙によるやりとりが中心となっており、情報共有等に多くの時間を費やしているほか、情報漏洩リスクや紛失リスクが潜在するなどの課題があります。
三井住友海上火災保険では、損害鑑定業務へのブロックチェーン適用に関する実証実験を行なうそうです。
■まとめ
医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用することにより、次のような変化が起こります。
- 医療情報の偽造・改ざんを防ぐ
- 個人の医療情報・健康記録を安全に保管
- 医療情報などの個人情報が自分の手に戻ってくる
- 患者や医療従事者が医療情報に即座にアクセスできる
また、ブロックチェーン技術を活用すると医療・ヘルスケア分野では次のような変化が起こると考えられます。
「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット/アレックス・タプスコット)
医療情報管理や病院の運営にブロックチェーンが活用され、医療記録、設備管理、薬剤や器具の発注と支払いなどが全て自動化される。
ただ、気になるのは新しいテクノロジーに対する不安・セキュリティへの懸念によって普及が遅れてしまう可能性があることです。
モバイル決済の現状と課題(2017年6月、日本銀行)によれば、モバイル決済利用状況が日本🇯🇵、アメリカ🇺🇸、ドイツ🇩🇪が約5%である一方、中国🇨🇳98.3%、ケニア🇰🇪76.8%であるそうです。
その理由としては、新興国のほうがインフラが十分でないことや現金を持つことへのリスクがあることによって普及しているということと、先進国では既存の方法で満足していたり、セキュリティに対する懸念や新しいテクノロジーのメリットが感じられないなどが挙げられています。
しかし、もしかすると、新しいテクノロジーを受け入れるか受け入れないかの心理的背景には各国の平均年齢が関係しているかもしれません。
35歳以降に発明されたテクノロジーに対しては自然に反すると感じられるというダグラス・アダムスの法則によれば、日本の平均年齢は46歳であるため、新しいテクノロジーであるブロックチェーン技術に対して不安を感じる人も出てくるかもしれません。
国全体で医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用していくためには、テクノロジーに対するセキュリティやプライバシーに対する信頼性を上げる、簡単に利用できるように設定を簡単にしたりする、新しいテクノロジーであるブロックチェーン技術を使った医療管理システムのほうが便利であるということを認識させることが重要になってくるでしょう。
【参考ツイート】
発展途上国でモバイル決済が普及した理由
1.銀行口座や固定電話網の普及が十分でない
2.現金を受け取り、保管し搬送することに伴うコストやリスク
先進国ではインフラが整い、お店も現金支払いのメリットがあるため、モバイル決済が普及しないhttps://t.co/Wv1HjVebZH pic.twitter.com/bbSPK31DnB— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月21日
#アメリカ 🇺🇸スマホの支払・決済機能を利用しない理由
1.現金やカードでの支払いが簡単
2.モバイル決済のセキュリティに懸念
3.モバイル決済を使う利点が感じられないhttps://t.co/Wv1HjVebZH
新しいテクノロジーを好むイメージがあったが否定的な意見が多い。— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月21日
モバイル決済利用状況📱が日本🇯🇵、アメリカ🇺🇸、ドイツ🇩🇪が約5%である一方、中国🇨🇳98.3%、ケニア🇰🇪76.8%である。インフラや治安が関係していると思っていたけど、もしかするとダグラス・アダムスの法則が当てはまったりして。https://t.co/Wv1HjVebZH https://t.co/5VTQtmXo4m
— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月28日
各国の平均年齢
日本🇯🇵46歳
アメリカ🇺🇸38歳
ドイツ🇩🇪46歳
中国🇨🇳37歳
ケニア🇰🇪19歳— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月28日
対策💳
●セキュリティやプライバシーに対する信頼性を上げていくこと
●初期設定を簡単にすること
●現金よりもモバイル決済のほうが便利であるという優位性を認識させる
●簡単に使いこなせるユーザーエクスペリエンス
●利用可能場所を増やすhttps://t.co/Wv1HjVebZH— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月21日
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