■子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い!
by FaceMePLS(画像:Creative Commons)
「OPTION B」(著:シェリル・サンドバーグ/アダム・グラント)では、日本(特に女性)の貧困に関する記述があります。
日本では6人に1人が相対的に貧困とされる。女性とひとり親の場合、割合はさらに高い。
<中略>
世界全体で2億5800万人いる寡婦のうち、1億1500万人以上が貧困のなかで暮らしている。女性の賃金格差をなくすことが重要な理由は、ここにもある。
OPTION B(オプションB) 逆境、レジリエンス、そして喜び 新品価格 |
【参考リンク】
- Japan’s Worsening Poverty Rate(2014/9/24、Nippon.com)
参考画像:貧困率の年次推移|グラフでみる世帯の状況|平成26年国民生活基礎調査(平成25年)の結果から|厚生労働省|スクリーンショット
平成24年相対的貧困率は16.1%となっています。
参考画像:子どもの貧困|平成26年版子ども・若者白書|内閣府|スクリーンショット
OECDによると,我が国の子どもの相対的貧困率はOECD加盟国34か国中10番目に高く,OECD平均を上回っている。子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高い
内閣府の「平成26年版子ども・若者白書」で紹介されているOECDのデータによれば、ひとり親家庭など大人1人で子どもを育てている家庭が貧困に陥っていることがわかります。
以上のデータを参考にすると、日本における特徴としては、子どもがいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率はOECD加盟国中最も高いという点です。
ただ、ここで大事なのは、日本の相対貧困率を改善していくために声を上げていくことも重要ですが、人は離婚や死別、病気などのアクシデントが重なれば誰でも貧困に陥る可能性があるということです。
【参考リンク】
- 元財務官僚がグラミン銀行と挑む日本の貧困——根付くかマイクロファイナンス(2017/10/31、Business Insider)
ひとり親家庭など大人1人で子どもを育てている家庭には母子家庭が多いというデータがあり、そのデータを踏まえて考えると、アクシデントでひとり親になってしまった母子家庭がなぜ貧困に陥りやすいのか、その原因を探り、どのような対策を行なっていく必要があるのかを考えていく必要があると思います。
【関連記事】
参考画像:就労収入の状況(母子家庭)|ひとり親家庭の現状と支援施策の課題について|厚生労働省|スクリーンショット
ひとり親家庭の現状と支援施策の課題について|厚生労働省
父子家庭の91.3%が就業。「正規の職員・従業員」が67.2%、「自営業」が15.6%、「パート・アルバイト等」が8.0%。
母子家庭の80.6%が就業。「正規の職員・従業員」が39.4%、「パート・アルバイト等」が47.4%(「派遣社員」を含むと52.1%)と、一般の女性労働者と同様に非正規の割合が高い。
父子家庭(もちろん父子家庭でも貧困に悩む人がいるということを忘れてはいけません)と母子家庭を比べると、母子家庭のほうが、非正規の割合が高いということがわかります。
ただ、大事なことは、「一般の女性労働者と同様に」という言葉です。
つまり、母子家庭であるかどうかに限らず、女性の場合、非正規の割合が高いという現状があることがわかります。
そこで、離婚や死別、病気などのアクシデントが重なれば誰でも貧困に陥る可能性があるという視点から、「女性だからこそ向いている適材適所の仕事は何であるか?」「女性が働きやすい環境こそ男性にとっても働きやすい環境ではないか?」という考えで改善を行っていく必要があると思うのです。
なぜ企業はジェンダーダイバーシティ(男女の多様性)を重要視するようになったのか?|ACCENTUREやGOOGLEは社内男女比「50対50」を目指すでは、男女の多様性など、ダイバーシティが視点の多様性で会社が近視眼的になるのを防ぐことにつながり、クリエイティブな人々を惹きつけることにつながるということ、そして、問題をフィフティフィフティで解決しようとすると、無駄が多い社会になってしまう可能性があるため、適材適所で採用することが重要であることについて紹介しました。
●ダイバーシティが視点の多様性で会社が近視眼的になるのを防ぐことにつながり、クリエイティブな人々を惹きつけることにつながる
社会学者のセドリック・ヘリングによれば、人種のダイバーシティと売上高、顧客数、市場シェア、利益の増加には相関があることを発見しています。
職場の均質性は悪い結果を招きやすく、視点の多様性で会社が近視眼的になるのを防ぐと考えられます。「How Google Works」より pic.twitter.com/MVfPsFTMuM— ハクライドウ (@hakuraidou) 2017年6月16日
「How Google Works」(著:エリック・シュミット ジョナサン・ローゼンバーグ)
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「いい人ばかり」の職場は均質的なことが多く、職場の均質性は悪い結果を招きやすいからだ。視点の多様性、すなわちダイバーシティは会社が近視眼的になるのを防ぐ、極めて効果的な政策だ。
社会学者のセドリック・ヘリングによれば、人種のダイバーシティと売上高、顧客数、市場シェア、利益の増加には相関があることを発見しています。
職場の均質性は悪い結果を招きやすく、視点の多様性で会社が近視眼的になるのを防ぐと考えられます。
もう一つは、クリエイティブな人材をひきつけるには多様性に対して開放的な環境である必要があるということです。
「クリエイティブ資本論」(著:リチャード・フロリダ)
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経済競争力を持ちたいと望むコミュニティには、むしろ真に開放的で包容力のある人的環境が必要である。
それはクリエイティブ・クラスのみならず、アメリカ社会そのものを構成している多様な人々を引きつけることなのである。
すでに移民やボヘミアンを引きつけること、そしてゲイを含めたあらゆる類の多様性に対して開放的な場所になることの重要性を示してきた。
優秀なクリエイティビティを発揮する人材が求めるものは、思考の多様性であり、寛容さがあるところです。
わかりやすい例えでいえば、大学のような雰囲気でしょうか。
大学は、クリエイティブ・クラスを惹きつけ、抱えておくのに役立つような進歩的、開放的、そして寛容な空気を作り出すことにも一役買っている。ゲイやその他のアウトサイダーの居場所でもあり続けた。
新しいものが学べたり、いろんな人々がいることを許される雰囲気がある場所というのは、自然とクリエイティブな人々をひきつけてしまうものなのでしょう。
そのコミュニティがどれだけ開放的であったり、クリエイティブな人たちが集まっているのかを示す指標として、ゲイ指数やボヘミアン指数というものがあるそうです。
●ゲイ指数
ゲイコミュニティへの開放度は、クリエイティビティを喚起しハイテク産業の成長を促す人的資本への垣根が低いかどうかのよい指標となりうる
●ボヘミアン指数
作家、デザイナー、ミュージシャン、俳優、映画監督、画家、彫刻家、写真家、ダンサーなど芸術を職業とする人口の比率を測定するもの
つまり、多様性があるということは、視点の多様性で会社が近視眼的になるのを防ぐことにつながり、クリエイティブな人々を惹きつけることにつながるのです。
●適材適所が重要
最近のトレンドとしては、企業の社員における男女比を50対50にしましょうというのがトレンドであり、良い考え方だと思っていました。
しかし、落合陽一さんの講演を聞いた後、考え方が変わりました。
【SoftBank World 2017】特別講演 落合 陽一 氏
男女比をフィフティフィフティにしようという考え方は標準化しようという考え方であり、あるところでは男女比が9:1のところがあったほうがよいところもあるはずです。
重要なのは、その時々によってその割合のバランスを変えられるということです。
問題をフィフティフィフティで解決しようとすると、無駄が多い社会になってしまう可能性があるというのが落合陽一さんの意見です。
企業を評価する人たちは「社員の男女比50対50」というような数字はわかりやすくて評価しやすいのだと思いますし、私もそのうちの一人でした。
多様性(ダイバーシティ)を考える際には、何が標準かを決める考え方(この場合には「社員の男女比50対50」)によって多様化を目指すのではなく、その時々によってその割合のバランスを常に変え続けるようにすることで、本来の意味での多様性が実現するのではないでしょうか。
(2017/5/19、クーリエ・ジャポン)
落合 対して日本には、「適材適所」という考え方があります。聖徳太子の時代からおこなわれていたことで、たとえば会社は必ずしも男女半々じゃなくてもいい、女性が9割の会社があってもいいじゃないかと考える。それを無理やり対等にもっていこうとすると、むしろ多方面に歪みが出てくる。
「平等」にロジカルに対抗しうる唯一の概念が「適材適所」だと僕は考えていて、しかもそれは、日本人の多くが納得できる考え方だと思うんです。だから「適材適所」は一つの突破口になる概念じゃないでしょうか。
恣意的にではなく、”自然と”男女比が50:50になったとしたら、それは問題ないことだと思いますが、男女比が50:50であることが平等だから制度としてやらなければならないというのはゆがみが出てきてしまうのではないでしょうか。
企業側は適材適所でその人を選んだことをしっかりと説明できるようにすることのほうが重要なのかもしれません。
その他にも、この問題については、子どもは「社会で育てる」のか、それとも「自己責任」かということや金融の仕組みからはじき出されているのではないかということについても考える必要があります。
●「子どもは社会で育てる」のか、それとも「自己責任」か
待機児童はゼロ、学費も医療費も無料。なぜデンマークは子どもの貧困率が低いのか?その驚きの政策たち
(2017/1/2、Buzzfeed)
「子どもは社会が育てるという価値観が根付いているんです」。
その根本には、子どもは将来、タックスペイヤーに、社会を支える存在になる、という考え方があるという。
母子家庭の子供が貧困に陥っているということについて、「自己責任である」ということは簡単です。
そうではなく、その子供たちは将来社会を支える存在になるという考えをもつと、社会全体で子供を育てていくことを選択することに賛成する人は多くなるのではないでしょうか?
●インクルージョンの考え方を知る
「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたの周りの世界はやさしくなる!?で紹介した、「インクルージョン(Inclusion)」とは、包含・含有・包括性・包摂・受け入れるといった意味を持ち、誰も排除せず、様々な人を受け入れるという、「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)で初めて知った考え方です。
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか 新品価格 |
ロボアドバイザー(投資・資産運用アドバイスサービス)とは?|IT・金融の活用度が低い日本はフィンテックの手前!?|#Fintechでは、日本のフィンテックは「貧テック」だと呼び、弱者から搾取する仕組みだと表現する人もいると紹介しました。
ただこれを逆に考えると、それだけ多くの人が金融の仕組みからはじき出されているということではないでしょうか?
「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)
貧しい地域の人たちにとって、銀行口座を持つための最低残高や、決済の最低支払い額、システム手数料といった壁はあまりに高すぎる。金融機関のインフラにコストがかかりすぎるせいで、貧しい人たちのささやかな経済活動は犠牲になっているのだ。p66
今の仕組みではある程度のまとまった金額を貸さないと企業としては合わない計算であるため、貧しい人々向けに少額の貸し出しなどをするマイクロファイナンス(小規模金融)の分野は手つかずのままでいるのではないでしょうか。
技術の最先端にいる人たちだけを考慮していたのでは、分散ネットワークの力を十分に活用できない。もっと厳しい利用環境も考慮してあらゆる側面をデザインすることが必要だ。インフラが十分に整っていない地域の人たちをも含めて設計する時、初めて本当の意味でのインクルージョンが可能になる。p69
解決しなければ問題を抱えているかもしれませんが、金融の仕組みから外れた人が一定層いて、その人たちがさらに悪い状況にならないための手段として何らかのテクノロジーで解決するというのは考えるべきではないでしょうか。
そして、そうした問題を解決するための根底にある考えとして「インクルージョン」があれば物事の考え方が変わってくると思います。
■まとめ
以前、ドラマ「コウノドリ」で女性の医師や看護師さんは自分のための幸せ(結婚や出産。結婚したから幸せとか子供がいるから幸せであるという意味ではないです。)を犠牲にしないといけないというセリフから、働き方について話し合ったことがあります。
その中で出てきた話題として、女性の働きやすい職場作りの邪魔をするのが女性ということがあり、例えば、「私が育児してた時はもっとこうしていたのに」「私は毎月体調が悪くてもきちんと仕事してるのに」というような発言があるような、高校の部活での昔のエピソードに多い、自分がやってきた苦労を下の世代にもしてほしいという人がいて、ある層(今回でいえば母子家庭)へのケアを手厚くしようとすると、それ以外の層や以前その時期を通ってきた層に不公平感が出てきてしまい、その点をケアする必要があるのではないかという意見がありました。
世界銀行が設立した発展途上国で女性起業家や女性が運営する中小企業のサポートを目的とした基金である「女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)」に対して日本政府が資金を供出するといったニュースに対して、批判の声が挙がっていました。
【参考リンク】
- 「イバンカ氏基金に57億円、安倍首相が表明」ってホント? (2017/11/3、ハフィントンポスト)
- 世界銀行グループ、女性起業家支援のファシリティを新設、10億ドル超を動員へ(2017/7/11、ハフィントンポスト)
先ほども紹介した通り、日本の母子家庭における貧困の問題があるにもかかわらず、なぜ基金にお金を出すのだ、というような、ある種の不公平感が現れているのかもしれません。
しかし、大事なのは、これは発展途上国で女性起業家や女性が運営する中小企業のサポートを目的とした基金であり、つまりは女性を助けるための基金なのですから、まわりまわって女性を支援していこうという機運がさらに高まるものになるかもしれないということです。
「女性の敵は女性」ということにならないように、「女性だからこそ向いている適材適所の仕事は何であるか?」「女性が働きやすい環境こそ男性にとっても働きやすい環境ではないか?」「子供は将来の社会を支える存在という点から子供を守る」というように考えて、少しずつ良い方向に進んでいくといいですね。
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