2025年11月13日放送のテレビ朝日「モーニングショー」では「糖尿病治療薬を使って老化細胞を除去する研究」について取り上げました。
臨床応用可能な老化細胞除去薬の同定に成功―アルツハイマー病などの加齢関連疾患への治療応用の可能性―(2024年5月30日、順天堂大学)
順天堂大学の勝海悟郎特任助教、南野徹教授らの研究グループによれば、糖尿病の治療薬として開発されたSGLT2阻害薬が、加齢や肥満ストレスに伴い蓄積する老化細胞を除去することで、代謝異常や動脈硬化、加齢に伴うフレイルを改善し、早老症マウスの寿命を延長しうることを確認しました。
【参考リンク】
- Katsuumi G, Shimizu I, Suda M, Yoshida Y, Furihata T, Joki Y, Hsiao CL, Jiaqi L, Fujiki S, Abe M, Sugimoto M, Soga T, Minamino T. SGLT2 inhibition eliminates senescent cells and alleviates pathological aging. Nat Aging. 2024 Jul;4(7):926-938. doi: 10.1038/s43587-024-00642-y. Epub 2024 May 30. PMID: 38816549; PMCID: PMC11257941.
■背景
●これまで加齢により組織に老化細胞が蓄積し、慢性炎症が誘発されることで様々な加齢関連疾患の発症や進行につながることが少しずつ明らかになってきている。
●老化細胞除去薬は、抗がん剤として使用されているものが多く、副作用の懸念があった。
●カロリー制限によって寿命が延長した個体では、加齢に伴う老化細胞の蓄積が抑制されている。
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■仮説
尿への糖の排出を促進することで、血糖を低下させる糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬)の投与によって、カロリー制限を模倣した状態となり、老化細胞の蓄積が抑制され、その除去が促進されるのではないか?
■結果
高脂肪食によって肥満させたマウスにおいて、短期間の糖尿病治療薬SGLT2阻害薬の投与を行ってみたところ、内臓脂肪に蓄積した老化細胞が除去されるとともに内臓脂肪の炎症が改善し、糖代謝異常やインスリン抵抗性の改善がみられました。
SGLT2阻害薬の老化細胞除去メカニズムのポイントは、SGLT2阻害薬が直接老化細胞を除去しているのではなくて、SGLT2阻害薬は、免疫チェックポイント分子を制御することで免疫系による老化細胞除去を促進して、慢性炎症を改善していることです。
■まとめ
今回の研究のポイントは、「新薬」で「直接」老化細胞を除去をするのではなく、「すでに実績がある薬」で「人間に備わっている免疫システム」を活用して老化細胞除去を促進しているところです。
この発想を聞いて思い出したのが、「ゲームボーイ」生みの親として知られ任天堂の開発者である横井軍平さんが言ったとされる「枯れた技術の水平思考(テクノロジーというものがあって、縦に技術を掘っていくのではなく、水平にそれをどう使って、どう演出して、コンテンツ化していくか、その発想力というのがとても重要)」です。
常に新しいテクノロジーを使えばいいわけじゃなくて、すでに一般化・陳腐化した技術を使うことによって、開発・製造コストを安くすることができるというもの。
これは安全性においても同じことが言えますね。
新薬に比べて、すでにある程度の実績がある薬を応用することは安全性やコストの面でメリットが大きいですね。
こうした発想で医療が進歩するといいなぁと思います。
もう一つ言えることは、この研究を参考にすれば、糖尿病と老化が密接に関係していて、糖尿病にならないような生活習慣をすることが老化予防につながるのではないかと考えられます。
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