歯垢がつきやすい人は「舌苔」が多い?舌苔量は約1.2倍、アミノ酸にも違い|花王・島津製作所

「同じように歯磨きをしていても、なぜか歯垢がつきやすい気がする」

そんな歯垢の「つきやすさ」には、歯だけでなく舌の表面に付着する「舌苔(ぜったい)」が関係しているかもしれません。

花王と島津製作所の共同研究により、歯垢がつきやすい人では舌苔の量が多く、さらに舌苔に含まれるアミノ酸などの成分にも違いがあることが報告されました。

研究成果は2026年10月16~17日に開催された第69回秋季日本歯周病学会学術大会で発表され、10月20日に花王、10月21日に島津製作所から公表されています。

■歯垢がつきやすい人は、舌苔が約1.2倍多かった

研究では2025年6~8月、健康な男女40人を対象に、まず歯垢を除去。その後、飲食物を統一したうえで2日間ブラッシングなどの口腔清掃を停止しました。

そして、歯垢・舌苔・唾液の量だけでなく、細菌の種類や存在割合、代謝物などを網羅的に解析しました。

分析には質量分析装置なども使われ、細菌を含めて合計1,000を超える成分・菌種が検出されています。

そのうえで、2日後に歯垢の蓄積量が多かった15人を「歯垢がつきやすい群」、少なかった15人を「歯垢がつきにくい群」として比較しました。

すると、

歯垢がつきやすい人では、舌苔量が約1.2倍多い

ことがわかりました。

■舌苔は「量」だけでなく「中身」にも違いがあった

興味深いのは、単に舌苔が多かったというだけではありません。

さらに、同量の舌苔に含まれる細菌の栄養となりうる成分にも違いがみられ、その一例として、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸は歯垢がつきやすい群で約1.8倍でした。

アスパラギン酸は私たちの体や食品にも普通に存在するアミノ酸です。

そのため、

「アスパラギン酸が悪い」
「アスパラギン酸を含む食品を食べると歯垢が増える」

という意味ではありません。

今回注目したいのは、歯垢がつきやすい人では、舌苔の「量」だけではなく、舌苔に含まれる成分にも違いが認められたということです。

しかも試験中の2日間は両群で飲食物を統一していました。花王は、この結果から舌苔中の細菌の栄養となりうる成分のうち、アミノ酸が歯垢のつきやすさに関与している可能性を考えています。

■最初に舌苔が多い人ほど、2日後の歯垢が増える可能性

さらに研究チームは、比較対象となった30人について、舌苔から得られた500を超える細菌種や代謝物などのデータを統計解析しました。

すると、試験開始時の舌苔量が多いと、2日後の歯垢量が増える関係が推定されました。

解析には主成分分析、重回帰分析、ベイジアンネットワークモデリング、piecewise SEM解析などが使われています。

ここから考えられるのは、歯垢のつきやすさには、舌苔の量や質など、舌を含めた口腔内環境が関係している可能性があります。

ただし、ここには重要な注意点があります。

今回示されたのはあくまで舌苔と歯垢のつきやすさとの関連や統計的な推定です。

「舌苔が多いから歯垢が増えた」という因果関係を直接証明したわけではありません。

また、今回の研究成果自体は2026年10月時点では学会発表・企業発表の段階です。今回確認した範囲では、この研究そのものを報告した査読論文は確認できませんでした。

今後、査読論文として詳細なデータが公表されることにも注目したいところです。

■そもそも「舌苔」とは?

舌苔は、単なる「食べかす」ではありません。

2025年に発表された舌苔に関するレビューでは、舌苔は剥離した上皮細胞、食物残渣、微生物などから構成されるバイオフィルムと説明されています。年齢、食事、喫煙、全身状態なども形成に影響する可能性があります。

つまり、舌の表面にはさまざまな細菌や物質からなる複雑な環境が存在しているのです。

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■舌苔は以前から「口臭」との関係が研究されている

舌苔で比較的よく研究されてきたもののひとつが口臭です。

2018年のレビューでは、舌苔と歯周病が口腔内の揮発性硫黄化合物(VSC)の主な発生源として取り上げられています。

また2020年の研究では、口臭がある人とない人の舌苔を16S rRNA解析で調べたところ、両群で細菌組成や細菌多様性に違いが確認されています。

さらに2025年の研究では、口腔内口臭のある人と健康な対照群の舌苔を質量分析したところ、両群で舌苔中の代謝物に違いがみられました。

今回の花王・島津製作所の研究も、単純に「舌苔が多い・少ない」だけを見るのではなく、舌苔の中にどのような細菌や代謝物が存在するのかという「質」まで調べている点が興味深いところです。

■舌苔とアセトアルデヒドについても研究されてきた

HAKURAIDOUでは以前、舌苔と口腔内のアセトアルデヒドとの関係についても紹介しています。

関連記事:

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その元になった2015年の岡山大学・北海道大学の研究では、健康な65人を調べたところ、舌苔が多い人では口腔気中のアセトアルデヒド濃度が高く、舌苔除去後には濃度が有意に低下しました。

ただし、この研究で示されたのは「舌苔量とアセトアルデヒド濃度との関連」であり、舌苔を除去することで口腔がんや咽頭がんを予防できることが証明されたわけではありません。

過去記事についても、「舌苔除去=がん予防」と受け取られないように読むことが重要です。

■では、舌を磨けば歯垢が減るの?

ここが今回のニュースでもっとも注意したいポイントです。

今回の研究から、

舌苔が多い → 歯垢もつきやすかった

という関連は示されました。

しかし、

舌磨きをする → 舌苔が減る → 歯垢も減る

というところまで証明されたわけではありません。

実際、この問題を直接考えるうえで非常に興味深い研究があります。

2014年に日本の研究グループが30人を対象に行ったランダム化クロスオーバー研究では、舌清掃によって舌苔中の細菌量は減少しました。

しかし、研究では舌清掃による歯垢形成の明確な抑制効果は認められませんでした。

これは今回のニュースを理解するうえでかなり大切なポイントではないでしょうか。

つまり現段階では、

舌苔が多い人ほど歯垢がつきやすい可能性はある。しかし、だからといって舌苔を取れば歯垢形成を防げるとは、まだ言い切れない。

というのが科学的に慎重な読み方です。

■舌苔が気になる場合、舌磨きはどうすればいい?

舌清掃そのものには、舌苔や口臭を減らす方向の研究があります。

2022年に発表された研究では、

歯ブラシ
舌スクレーパー
歯ブラシ+舌スクレーパー

の3つの方法を調べ、いずれのグループでも舌清掃後に舌苔と口臭の指標が有意に低下しました。一方、この研究では3つの清掃方法の間に有意な差は認められませんでした。

また、国内19文献を対象にした2019年の系統的レビューでは、舌苔除去に使用された器具として舌ブラシが最も多く、清掃方向については舌の後方から前方へ向けて一方向に擦過する方法が共通していました。

一方で、適切な圧力や擦過回数、どの清掃器具がもっとも効果的なのかについては、まだ十分確立されていません。

レビューでは、舌表面を傷つけないよう、強くこすらないことにも注意が必要だと指摘されています。

そのため、舌苔が気になる場合には、

舌ブラシや舌クリーナーなどで、舌の奥から手前へ優しく清掃する

くらいに考えておくのがよさそうです。

舌を完全にきれいな色にしようとして、痛みや不快感が出るほど強くこする必要はありません。

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■歯だけでなく「口の中全体の環境」を考える

今回の研究で興味深いのは、歯垢のつきやすさには、舌苔の量や質を含む口腔内環境も関係している可能性が見えてきたことです。

歯垢がつきやすかった人では、

舌苔の量が約1.2倍多く、さらに舌苔に含まれるアミノ酸などにも違いがありました。

これまで舌苔については、口臭、細菌、代謝物などさまざまな側面から研究されてきました。

今回そこに、

「歯垢のつきやすさ」

という新しい視点が加わったと考えると、この研究の面白さが見えてきます。

ただし、「舌苔が歯垢の原因である」「舌を磨けば歯垢を防げる」と証明されたわけではありません。

歯垢対策の基本となる歯の清掃を続けながら、歯だけではなく舌も含めた「口の中全体の環境」を考える。

今回の研究は、そんなオーラルケアの新しい視点として注目したいですね。

今後、唾液の分泌量や口の乾燥、ストレスなどによる口腔内環境の変化が、舌苔の量や成分、さらに歯垢のつきやすさとどのようにつながっているのかが明らかになれば、「きちんと歯を磨いているのになぜか歯垢がつきやすい」という個人差を理解する手がかりになるかもしれません。

【参考文献・参考資料】

花王「歯垢がつきやすい人は『舌の汚れ(舌苔)』が多く、舌苔中に細菌の栄養となりうるアミノ酸も多いことを発見」、2026年10月20日。第69回秋季日本歯周病学会学術大会発表。

島津製作所「花王との共同研究で“舌ケア”の重要性を示唆 機器分析で歯垢のつきやすさに関する新知見」、2026年10月21日。

AlBeshri S. Perspectives on tongue coating: etiology, clinical management, and associated diseases – a narrative review. Saudi Dent J. 2025;37(7-9):41. doi:10.1007/s44445-025-00048-5.

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Lo K, Liman AN, Zhang Y, Ye W. Tongue coating metabolic profiles of intra-oral halitosis patients. Oral Dis. 2025;31(1):298-309. doi:10.1111/odi.15034.

Matsui M, Chosa N, Shimoyama Y, et al. Effects of tongue cleaning on bacterial flora in tongue coating and dental plaque: a crossover study. BMC Oral Health. 2014;14:4. doi:10.1186/1472-6831-14-4.

Choi HN, Cho YS, Koo JW. The Effect of Mechanical Tongue Cleaning on Oral Malodor and Tongue Coating. Int J Environ Res Public Health. 2022;19(1):108. doi:10.3390/ijerph19010108.

米澤知恵. 舌苔除去における舌清掃道具,実施方法,評価方法の現状と課題に関する系統的レビュー. 日本健康医学会雑誌. 2019;28(1):2-9.

Yokoi A, Maruyama T, Yamanaka R, et al. Relationship between acetaldehyde concentration in mouth air and tongue coating volume. J Appl Oral Sci. 2015;23(1):64-70. doi:10.1590/1678-775720140223.

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