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NASHや肝硬変を改善するホルモン「IGF-I」を発見|神戸大グループ

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【目次】

■NASHや肝硬変を改善するホルモン「IGF-I」を発見|神戸大グループ

IGF-IのNASH、肝硬変への治療応用とその作用のメカニズム
IGF-IのNASH、肝硬変への治療応用とその作用のメカニズム

参考画像:肝臓の線維化を改善するホルモンの同定に成功-非アルコール性脂肪性肝炎・肝硬変の治療応用の可能性-|スクリーンショット

肝硬変改善のホルモンを発見 神戸大グループ

(2016/10/11、神戸新聞)

研究チームは、脳下垂体から成長ホルモン(GH)が分泌されない「成人GH分泌不全症」の患者にNASHが多いことに着目。NASHや肝硬変のマウスに、GHによって肝臓で作られるホルモン「IGF-1」を投与したところ、炎症や脂肪沈着、線維化の改善が確認できたという。

神戸大医学部の高橋裕准教授らのグループによれば、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)肝硬変の改善ができるホルモン「IGF-1」を見つけたそうです。

NASHや肝硬変のマウスに「インスリン様増殖因子-I(IGF-I、アイジーエフワン)」を投与したところ、炎症や脂肪沈着、線維化の改善が確認できたそうです。

肝臓の線維化を改善するホルモンの同定に成功-非アルコール性脂肪性肝炎・肝硬変の治療応用の可能性-

(2016/10/11、神戸大学)

当研究グループはまず、肥満NASHモデルマウスを用いてIGF-Iの効果を調べました。

その結果、1ヶ月間の投与によって、NASHの特徴である脂肪沈着、炎症、線維化に対して劇的な改善を認めました。

さらに進展した肝硬変モデルマウスにおいても線維化改善効果を認めました。

その作用機序を調べたところ、IGF-Iは線維化の進展において重要な役割を果たしている肝臓の星細胞に対して、細胞老化を引き起こすことにより活性を抑制し、線維化を防止していることを見出しました。

またIGF-IはNASHの原因のひとつである肝細胞のミトコンドリア機能低下や酸化ストレス亢進状態を改善するとともに脂肪沈着や炎症を改善しました。

IGF-Iを肥満モデルのマウスに1か月投与したところ、脂肪沈着、炎症、線維化に対して劇的な改善を示し、また、肝硬変モデルマウスも線維化改善効果があったそうです。

その仕組みとしては、IGF-Iは肝臓の星細胞に対して、細胞老化を引き起こすことにより活性を抑制し、線維化を防止していることがわかったそうです。

■IGF-I(アイジーエフワン、インスリン様増殖因子—I)

肝臓の線維化を改善するホルモンの同定に成功-非アルコール性脂肪性肝炎・肝硬変の治療応用の可能性-

(2016/10/11、神戸大学)

主に肝臓で作られ、成長を促進する増殖因子、ホルモン。神経細胞の生存を促進したり、インスリン作用を促進するなど様々な作用がある。

■まとめ

今回注目したポイントは、「肝硬変にも効果がある」という点です。

高橋准教授は「完治には肝移植しか方法がなかった肝硬変にも効果がある。3~5年後をめどに、治療薬の臨床試験を始めたい」と話す。

線維化すると元に戻ることはないと考えられていますが、今回の発見により、他の薬剤との組み合わせによって線維化を改善する画期的な治療法ができることが期待されます。

マイクロRNAを使った肝線維化の治療・予防を行う方法を開発|マイクロRNA-29Aは肝星細胞の活性化の抑制、治癒促進を助ける|大阪市立大で紹介した大阪市立大などの研究グループの研究によれば、肝線維化の進行に伴って減少するマイクロRNA-29aを補充することによって、TGF-βによる肝星細胞の活性化が抑制されることがわかったそうです。

肝硬変の治療法ができる日もそう遠くないかもしれません。

→ 肝硬変とは|肝硬変の症状・原因・食事 について詳しくはこちら

→ NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)の症状・食事・改善方法 について詳しくはこちら







【関連記事】
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<脳卒中>「孤独な酒」 リスク2倍|厚労省調査

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lonely me :)

by Pym Tồ(画像:Creative Commons)

<脳卒中>親友なき「孤独な酒」 リスク2倍 厚労省調査

(2009/5/21、毎日新聞)

親友がおらず、お酒好きな人が脳卒中になる危険性は飲まない人に比べて、約2倍高いことが、厚生労働省研究班の調査で分かった。

また、頼れる人がいる人が適量に飲酒していると脳卒中が少なかった。

「孤独な酒」は大敵と言えそうだ。

米医学誌アルコーリズム6月号に掲載される。

厚生労働省研究班の調査によれば、親友がおらず、お酒好きな人が脳卒中になる危険性は飲まない人に比べて、約2倍高いことがわかったそうです。

頼れる人がいる人が適量に飲酒していると脳卒中が少なかったそうです。

飲酒と循環器疾患発症との関連への社会的な支えの影響|多目的コホート研究|国立がん研究センター

脳卒中の発症リスクに関して、少量~中等量のグループ(エタノール換算で週に1~299g)において、支えが多い場合はリスクが低いのですが、支えが少ない場合には、約1.2~1.8倍と高いこと、またその一方で、大量飲酒のグループ(週に300g以上)では、社会的な支えが多い場合でもリスクが高い傾向があることがわかりました(図2)。

この研究では、社会的な支えによる好影響は、週にエタノール換算で1-299gの少量~中等量の飲酒の場合でのみ認められました。週に300g以上になると社会的な支えの多少に関わらず脳卒中の発症リスクが増加する傾向となりました。

国立がん研究センターの多目的コホート研究によれば、脳卒中のリスクに関して、社会的な支えが多い場合には、週にエタノール換算で1-299gの少量~中等量の飲酒のグループの場合はリスクが低いという結果が出たそうです。

ただし、週に300g以上になると、社会的な支えに関係なく、脳卒中のリスクが増加する傾向があることがわかったそうです。

孤独は老化を促進し心臓病のリスクを上げる?によれば、孤独は老化を促進し、心臓病のリスクをあげるということがわかったそうです。

孤独は健康に対して悪影響を与える可能性がありそうです。

→ 脳卒中 について詳しくはこちら







P.S.
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卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功|体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材の開発に期待




■卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功|体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材の開発に期待

卵白たんぱく質凝縮体の形成
鶏卵より作成した卵白たんぱく質水溶液に、2種類のイオン性界面活性剤を加えると、水相と分離した透明な液状物質である卵白たんぱく質凝縮体が形成される。

参考画像:卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功~卵白たんぱく質の機能性材料や新食感の食品開発に期待~(2018/1/10、JST)

卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功~卵白たんぱく質の機能性材料や新食感の食品開発に期待~

(2018/1/10、JST)

卵白たんぱく質に、これまでに本研究グループが開発した陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤を一定の割合で添加すると、ゲル化現象に関わるたんぱく質を含む透明液状物質(卵白たんぱく質凝縮体)が水相と分離して発生しました(図1)。その後、卵白たんぱく質凝縮体をX線小角散乱測定注5)で解析すると、散乱ピークを示したことから、その内部でたんぱく質が一定の間隔で集積していることが判明しました。

次に卵白たんぱく質凝縮体を70度で加熱すると、白く不透明に固まりました(図2)。この物質は内部に80パーセントの水を含むハイドロゲル注6)であることが確認されました(卵白たんぱく質凝縮体ゲル)。さらに卵白たんぱく質凝縮体ゲルは、たんぱく質分解酵素によって分解されたため、たんぱく質によってネットワーク構造が形成された生分解性物質であることが確認されました。

続いて、卵白たんぱく質凝縮体ゲルの強度を解析するために、圧縮強度を測定しました(図3)。通常のゆで卵の白身は0.2メガパスカルの圧縮強度を示す一方で、今回作製した卵白たんぱく質凝縮体ゲルは、荷重をかけると17分の1の厚みに薄くつぶれるほどの柔らかさを持ちつつも、最大で34.5メガパスカルと通常のゆで卵の白身の150倍以上の強度を示しました。34.5メガパスカルは、1円玉に1,000キログラムの圧力をかけている状態です。卵白より作製された物質の強度としては世界最高であり、化学的に合成された高強度ハイドロゲル材料とも遜色ない強度であることが確認されました。

東京工業大学 科学技術創成研究院 野島達也 特任助教(研究当時、現:中国・東南大学 生物電子学国家重点実験室 准教授)、彌田智一 教授(研究当時、現:同志社大学 ハリス理化学研究所 教授)らの研究グループは、鶏卵の卵白たんぱく質から高強度ゲル材料である「卵白たんぱく質凝縮体ゲル」を作製することに成功しました。

卵白を加熱すると固まる(ゲル化する)現象はよく知られていますが、その圧縮強度は低いため、これまで卵白は材料開発の素材として用いられてきませんでした。

本研究グループは、独自のイオン性界面活性剤をたんぱく質溶液に加えることで、水中のたんぱく質を一瞬で凝縮する技術を2016年に開発しており、このたんぱく質凝縮化技術を応用し、卵白に含まれる特定のたんぱく質を、一定間隔に集積させることができました。

この状態のたんぱく質を加熱したところ、通常のゆで卵の白身の150倍以上の圧縮強度を示す生分解性(物質が微生物によって分解される性質であること。)ゲル材料を作製することに成功しました。

今後たんぱく質を素材として、体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材や実用的な強度を持つ新たな機能性材料、新たな食感の食品の開発への応用が期待されるそうです。




■まとめ

アスリートの体の熱と汗に反応して微生物細胞が開閉する換気フラップ付きトレーニングスーツ・ランニングシューズをデザイン|MITでは、MITメディアラボの石井裕さんは、バイオロジーを活用して、ダンサーの体温上昇や発汗に合わせて開閉するウェアを開発したと紹介しました。

[vimeo]https://vimeo.com/142208383[/vimeo]

体内で溶ける外科手術向けクリップ開発|神戸大では、神戸大学大学院工学研究科の向井敏司教授は、体内で溶ける外科手術用金属製クリップを開発したと紹介しました。

バイオロジーの研究が進み、今回の研究のようにタンパク質を素材とした医療用素材になれば、度々目にしてきた手術に関するものが体内に置き忘れていたといった問題も、そもそも生体に置き忘れたとしても健康に影響がないものが使われれば問題がないわけですから、こうした開発はますます重要になってきそうです。







【参考リンク】
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コレステロールを下げる医療を推進する他の学会に対して、ガイドラインを改めるように緊急提言-日本脂質栄養学会

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■コレステロールを下げる医療を推進する他の学会に対して、ガイドラインを改めるように緊急提言-日本脂質栄養学会

Finance - Financial injection - Finance

by Doug Wheller(画像:Creative Commons)

コレステロール下げる医療推進のガイドライン改めるよう緊急提言

(2014/8/28、FNN)

日本脂質栄養学会は、コレステロールを下げる医療を推進するほかの学会に対して、ガイドラインを改めるように緊急提言をした。
提言では、「コレステロール値を上限未満に保とうとする医療には根拠がなく、コレステロールを下げるための投薬こそ、心不全など多くの副作用を引き起こす」と主張していて、コレステロールの上限値などを定めている、日本動脈硬化学会に対して、ガイドラインを改めるように緊急提言した。

以前日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は、健康な人であっても、性別や年齢によっても基準値を超えてしまうことがあり、現在使われている基準値は厳しすぎるとの研究結果をまとめ、健康診断の新たな基準範囲を発表したことが話題になりました。

【関連記事】

今回、脂質栄養学会はコレステロールの上限値を決めることは良くなく、コレステロールを下げるための投薬こそが健康にとって良くないと、コレステロールの上限値を定めているその他の学会のガイドラインを改めるように提言を行いました。

以前紹介した高コレステロール=長寿、脂質栄養学会が指針(2010年)によれば、脂質栄養学会は、高コレステロールの方が長生き(コレステロールが高いほど死亡率が低かったとの大規模研究)であることやコレステロールを下げる薬を服用しても心臓病の予防効果は見られないとする海外の近年の研究から指針をまとめていました。




■コレステロールは体にとって必要な栄養

コレステロールに関しては、あまりにも悪者というイメージがつきすぎている印象がありますが、コレステロールは細胞膜を作る原料であったり、筋肉を作るホルモンの材料であり、体にとって欠かせないものです。

高コレステロールは健康にいい?悪い?でも書きましたが、若い女性の中には、ダイエットのために、動物性食品や油脂類を摂取することを過剰に避けたりする人もおり、また高齢者になると自然と動物性たんぱく質や油脂をとらない食事をしてしまい、低栄養になってしまう人がいるようです。

コレステロールは全く必要ないものではなく、体にとって必要な栄養です。

【関連記事】

高コレステロールは健康にいい?悪い?

3 お肉を食べよう

動物性食品や油脂類を摂ることにより、コレステロール値が上昇すると心配する人が多いようですが、血清コレステロール(血液中のコレステロールの濃度)は加齢に伴って自然と減少するため、高齢者が動物性たんぱく質や油脂をあまり摂らずにいると、栄養状態は悪くなってしまいます。

高齢者における総死亡(全死因)の危険率と血清コレステロールの関係をみると、75歳以上の女性では、コレステロール値の低い群ほど総死亡危険率が高く、男性ではコレステロール値と総死亡危険率は無関係でした。

高齢期でも、コレステロールを摂取することがとても大切です。

ですから、これからは、単独の数値だけをみるのではなく、悪玉コレステロールと善玉コレステロールの比率のLH比のようなバランスでみるような提案をしてみてはどうでしょうか。

【関連記事】

コレステロールの新常識(LH比・悪玉コレステロールを減らす食事・善玉コレステロールを増やす運動)|主治医が見つかる診療所 4月21日

LH比が注目を集めるようになってきたのは、最近の研究で、LDLコレステロールが140未満の人でも心筋梗塞になるケースがあり、またHDLコレステロールが高い人でもまれに動脈硬化を起こすこともわかってきたからです。

つまり、これまで推奨されてきた基準値内でも動脈硬化になる可能性があり、新たな診断基準が必要になってきたということです。

そこで、注目されたのが、「LH比」です。

LH比は、「LDL(悪玉コレステロール)」÷「HDL(善玉コレステロール)」で求められます。

2・0以下が基準値で、それ以上は動脈硬化を起こしやすくなり、2.5以上になると、心筋梗塞などのリスクが急増します。

→ コレステロールとは|コレステロール値を下げる食品・食事 について詳しくはこちら

→ 悪玉コレステロールを減らす方法|LDLコレステロールを下げる食品・食事 について詳しくはこちら

HDLコレステロールを増やす方法と善玉コレステロール吸う力をアップする方法 について詳しくはこちら

→ 高脂血症とは|高コレステロール血症の症状・原因・食事 について詳しくはこちら







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手術時にゴミとして捨てられていた「滑膜」がひざ痛治療の救世主になる!?

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■手術時にゴミとして捨てられていた「滑膜」がひざ痛治療の救世主になる!?

curious Kylee and her scraped knee

by Jesse Millan (画像:Creative Commons)

手術時にゴミとして捨てられていたものが膝痛治療の光明となる

(2015/4/15、ギズモード)

着目したのは滑膜。これまで膝の手術ではゴミとして廃棄されていたものです。これを培養して幹細胞を採取し、膝の患部に注入して組織の再生をうながすという治療法が考案され、2014年8月から臨床治療が始まりました。

東京医科歯科大学再生医療研究センター長の関矢一郎教授は、これまで膝の手術ではゴミとして廃棄されてきた滑膜を培養して幹細胞を採取し、膝に注入して組織の再生を促す治療法を考案したそうです。

■滑膜幹細胞による膝半月板再生

半月板|膝の滑膜|ブタ半月板損傷モデルに対する縫合後の滑膜幹細胞移植
半月板|膝の滑膜|ブタ半月板損傷モデルに対する縫合後の滑膜幹細胞移植

参考画像:滑膜幹細胞による膝半月板再生~再生医療の実現化ハイウェイ(課題A ) ~|科学技術振興機構スクリーンショット

滑膜幹細胞による膝半月板再生~再生医療の実現化ハイウェイ(課題A ) ~|科学技術振興機構

半月板は膝関節の大腿骨と脛骨の間にある三日月形の線維軟骨です(左下図1)。血行が辺縁部に限られ、体重によるストレスにさらされるため、損傷すると治りにくい組織です。

半月板損傷の患者に滑膜幹細胞を移植して半月板の治癒を促進したり、半月板の一部が切除されている患者の膝関節に滑膜幹細胞を移植し、膝半月板の再生を目指す研究が行なわれています。




■まとめ

変形性膝関節症とは、膝関節のクッションである軟骨のすり減りなどが原因となって、関節が変形したり、膝関節に炎症が起きたりすることで痛みが生じる病気です。

同じ動作を繰り返す職業や趣味、スポーツを長年続けている人にも関節痛の方が多いので、今回の研究は多くの方に関係してくると思います。

膝の痛みから解放される時が来るといいですね。

→ 膝が痛い・変形性膝関節症 について詳しくはこちら