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■緑内障の進行を抑える化合物「KUS剤」を発見 マウス実験で効果|京大グループ
by Les Black(画像:Creative Commons)
緑内障抑える化合物 京大開発、マウス実験で効果
(2016/4/20、日本経済新聞)
緑内障抑える化合物、マウスで効果 京大グループ発見
(2016/4/21、朝日新聞)
傷ついた神経細胞では、細胞に不可欠なATPという分子が少なくなっている。グループは細胞内のATPの量を高める化合物を開発。遺伝的に眼圧が高く、緑内障になるマウスに生後2カ月から毎日飲ませると、神経の減少は、生後10カ月の時点で2割減にとどまった。化合物を与えないマウスは6割以上減っていた。薬剤で目の神経を傷つけたマウスでも、神経細胞の減り方を抑えられた。
京都大学のチームによるマウスの実験によれば、開発した神経保護作用のある化合物「KUS(Kyoto University Substance)剤」に、緑内障の進行を抑える働きがあることがわかったそうです。
この研究についてのプレスリリースをチェックしてみます。
緑内障の進行を抑制、マウスで成功-新規の化合物を用いた難治性眼疾患の進行抑制に期待-
(2016/4/18、京都大学プレスリリースPDF)
参考画像:緑内障の進行を抑制、マウスで成功-新規の化合物を用いた難治性眼疾患の進行抑制に期待-(2016/4/18、京都大学プレスリリースPDF)|スクリーンショット
緑内障の発症要因の 1 つは、体内で産生される(内在性)興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸による神経の過剰興奮が網膜神経の細胞死を招くためだと考えられています。
そこで今回の実験では、マウスの眼内にグルタミン酸と同じ神経興奮をもたらす NMDA4 という物質を注射し、緑内障で観察される網膜神経節細胞障害を起こしたうえで、KUS 剤を投与しました。
その結果、KUS 剤を投与したマウスでは投与しなかった個体に比べ、網膜神経節細胞の減少が抑制されることが分かりました。
緑内障の発症要因の1つは、グルタミン酸による神経の過剰興奮が網膜神経の細胞死を招くためと考えられており、今回の実験では、緑内障の時に見られる網膜神経節細胞障害を起こして、KUS 剤を投与したところ、投与しなかったマウスに比べて、網膜神経節細胞の減少が抑制されたそうです。
参考画像:緑内障の進行を抑制、マウスで成功-新規の化合物を用いた難治性眼疾患の進行抑制に期待-(2016/4/18、京都大学プレスリリースPDF)|スクリーンショット
KUS 剤の投与がないマウスでは、網膜の神経節細胞の数や網膜の神経線維の数が減少し緑内障兆候が見られますが、KUS121 を 10 カ月間投与したマウスでは、その減少が抑制されていました(図2)。
KUS剤投与マウスにおいては、神経線維・神経節細胞の減少が抑制されています。
■KUS剤(KUS化合物)とは
新規神経保護剤により網膜色素変性の進行を抑制することに成功 -難治性眼疾患の進行抑制に期待-
(2014/8/6、京都大学)
体中の細胞に大量に存在し、細胞内のエネルギー源であるATPを消費する蛋白質(ATPase)の一つである、VCPという蛋白質に着目し、そのATP消費を抑制するような物質(低分子化合物)を新規合成し、その中から、細胞・神経保護活性のあるものを同定、網膜色素変性モデルマウスに投与することで、網膜色素変性の進行抑制効果を確認しました。
KUS化合物とは、細胞内のエネルギー源であるATPを消費する蛋白質(ATPase)の一つである、VCP蛋白質のATP消費を抑制する化合物です。
2014年には網膜色素変性に対する治療薬の開発につながる研究として紹介されていますが、今回は、緑内障の治療において、眼圧を下げるというアプローチで治療をするのではなく、視細胞の変性・死滅を予防・抑制することにより病気の進行を食い止める、つまり、神経保護による緑内障の進行抑制という視点から研究が勧められています。
今回の研究のポイントは、ポイントは2つ。
一つは、緑内障は目が受け取った光の信号を脳に伝える網膜の神経節細胞が、保持するエネルギー(ATP)を失って死滅し、進行するということ。
もう一つは、池田准教授らのグループが目の病気「網膜色素変性」の治療のために開発した、細胞内のATPの量を高める(またはエネルギーの消費を抑制する)低分子化合物「KUS剤」を緑内障を発症したマウスに投与したところ、神経節細胞の減少が抑えられたこと。
緑内障の主な治療法といえば、眼圧を下げることでしたが、今回の発見によって、神経細胞を守るというアプローチから緑内障を治療できる可能性が出てきました。
今後の研究に期待したいですね。
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