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パリ市、2027年より学校給食を100%オーガニックに移行し、食事に含まれる砂糖や塩分の削減を目指す




パリ市、2027年より学校給食に含まれる砂糖や塩分の削減を目指す
パリ市、2027年より学校給食に含まれる砂糖や塩分の削減を目指す

AnnieSpratt|unsplash

パリ最新情報「パリ市、2027年より学校給食を100%オーガニックへ」(2022/6/9、Design Stories)によれば、パリ市議会で2027年から公立校の学校給食を100%オーガニックに移行することが決議されたそうです。

このニュースの中で気になったのはこの部分です。

内容はオーガニック食だけではなく、週2回のベジタリアン食も含まれる。さらには食材の50%を首都から250キロメートル以内で生産されたものに限定すること、食事に含まれる砂糖や塩分などの削減も目指す。

1つは早いうちから食意識を高めることで、フランスでしばしば問題となる高コレステロール血症や肥満のリスクを減らす狙いがある。

砂糖や塩分の削減は世界的な流れになっていますね。

○砂糖

例えば、WHOが体重の増加による肥満の数が増加傾向にあることや虫歯など健康上のリスクを防ぐため「一日の糖類25グラムまで」とする新指針を2015年に正式決定しました。

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世界全体で肥満の数は増加しており、また肥満は、糖尿病脂肪肝高血圧などの生活習慣病だけでなく、脳卒中、心疾患、そして腰痛などのケガの原因になっています。

そして、医療費もそれに合わせて増加しています。

○減塩

「カップヌードル」がレシピを変更し、塩分を2020年までに15%減らす取り組み|なぜ減塩に取り組み始めたのか?|日清食品によれば、FDAは米国人のナトリウム摂取量を1日あたり3400mgから2000mg未満に削減する食品業界のための自主的なナトリウムの削減目標ガイダンス案を発表しているそうです。

また、高血圧治療ガイドラインによれば、食塩摂取量は一日6グラム未満となっていますが、WHOの掲げるナトリウム摂取量はさらに低く5グラム未満となっているそうです。

こうした流れを受けてでしょうか、社会で健康的なライフスタイルにシフトチェンジしようという動きが出ています。

「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルで紹介しましたが、イギリスでは脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功したそうで、その理由としては、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことにあるそうです。

また、健康寿命は23区の平均よりも2歳短く、糖尿病の治療件数が最も多い足立区では、区民が「自然と」健康になるようにする対策として、飲食店にはお客のお通しに野菜を提供すること、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうようにお願いをし、また、区立のすべての保育園で野菜を食べる日を設け、調理は子ども自身が担当することで、楽しみながら野菜を摂取してもらうようにしたことにより、足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたそうです。

健康の問題はその人個人の自己責任というのは簡単ですが、自分を律するというのは大変難しいもの。

「スイッチ 変われないを変える方法」(著:チップ・ハース ダン・ハース)によれば、セルフ・コントロールは消耗資源であり、例が挙げられています。

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例:ウェディングレジストリ(アメリカで結婚時に新郎新婦が作る結婚祝儀のほしいものリスト)の作成やコンピュータの購入など複雑な選択や検討をさせられた人々はさせられていない人々よりも集中力や問題解決能力が落ちる事が分かっている。

例:ある研究によると、感情を抑えるように支持された被験者は、自由に涙を流した被験者と比べて、その後の身体持久力が低下することがわかった。

健康は大事とはわかっていても、セルフ・コントロールは消耗資源であり、毎日疲れている人が自分の健康のために食材一つ一つを吟味するというのは難しく、結果的にいつもと同じものを選んでしまうわけです。

だからこそ、パリ市の公立校の学校給食のように、高コレステロール血症や肥満のリスクを減らすために、食事に含まれる砂糖や塩分などの削減を行なうことにより、自然と健康的な食事を1食摂れるというのは重要なことだと思います。

これからは、健康の問題を自己責任とするのではなく、個人が意識的に健康的な生活習慣を選ぶという時代から、自然と選んでいるものが健康的なものという時代に変わっていくのではないでしょうか?(もちろんコストは高くなるものの、それによって健康的な人が増えれば結果的に医療費が下がることも期待しているのではないでしょうか?)

【追記(2025年10月11日)】

区立小中学校の給食の全野菜をオーガニックに 東京・品川区(2025年2月5日、朝日新聞)によれば、東京都品川区は区立小中学校の給食の全野菜を有機農産物(オーガニック)にすると発表しました。

その理由としては、森沢恭子区長とのタウンミーティングで、中学生から「給食を無償化してから質が落ちた」「おいしい給食が食べたい」などの意見が出ていて、給食の質に対する意見があったため。

改めて気になったのがなぜパリ市も品川区もオーガニック食という結論になったのか?

パリ市の学校給食がオーガニック中心になる動きは、1)子どもの健康促進と食育の向上、2)環境保護と持続可能な食システムの構築、です。

1)子どもの健康促進と食育の向上

早い段階からオーガニック食を摂取させることで、肥満や高コレステロール血症などの生活習慣病リスクを減らし、健康的な食習慣を身につけさせる狙いです。

2)環境保護と持続可能な食システムの構築

オーガニック食材の使用拡大と肉消費の抑制(ベジタリアン食の増加)により、温室効果ガスの排出を削減し、地球温暖化対策を図ります。

〇環境負荷の軽減

オーガニック農業は、化学肥料や合成農薬の使用を最小限に抑え、土壌の健康や生物多様性を重視します。これにより、土壌劣化や水質汚染、温室効果ガス排出が減少し、長期的な食料生産の持続可能性が向上します。例えば、オーガニック農法は従来の農法に比べ、温室効果ガス排出を20~30%削減できるとする研究(Rodale Institute, 2020)があります。

〇地元産とフードマイレージ

オーガニック食の推進は、地元産食材の利用を促進します。パリ市のように、食材を地元(250km以内)から調達することで、輸送に伴うCO2排出(フードマイレージ)を削減。これにより、食のサプライチェーンが持続可能になり、地域経済も支援されます。

〇食品廃棄物の削減

オーガニック食の導入は、持続可能な食システムの一環として、食品廃棄物の管理を改善します。パリ市では給食の食品廃棄物が2017年から54%減少しており、持続可能性目標(SDG12: 持続可能な消費と生産)に貢献しています。

〇動物福祉と資源効率

オーガニック畜産は、動物福祉を重視し、過剰な抗生物質使用を避けます。また、ベジタリアン食の導入(パリでは週2回)により、肉の消費量を減らし、土地や水の使用効率を高めることで、食の持続可能性を強化します。

つまり、オーガニック食は、環境負荷の軽減や地域経済の支援を通じて、食の持続可能性に大きく貢献すること、肥満や高コレステロール血症のリスク低減については、オーガニック食が直接的な治療効果を持つ証拠は乏しいものの、バランスの取れた食事や食育を通じて間接的に予防効果が期待できます。