by Steven Depolo(画像:Creative Commons)
放射線が健康に与える影響を減らす食品がほんとうにあるのかという記事をご紹介します。
<食の安全>「放射線に効く」本当?
(2011/9/13、毎日新聞)
●みそ
よく知られているのが「玄米とみそ汁、海藻の食事には効果がある」という説だ。
1945年8月9日、長崎に原爆が投下された後、長崎市内の病院の医師だった故秋月辰一郎氏が献身的に進めた食事療法が基になっているようだ。
秋月氏は塩をふった玄米のおにぎりや、ワカメやカボチャなどをたくさん入れた濃いみそ汁を患者らに勧め、砂糖の摂取を禁じた。
この食事療法を実践した人たちが「長く生き延びた」とされている。
福島県郡山市で婦人科・心療内科「ロマリンダクリニック」を開業する富永国比古院長は秋月氏の食事療法について、「今の科学的な根拠から見ると、塩の取り過ぎは健康によくない。
しかし、穀類や豆類、野菜、果物を中心とした食事は、今でも健康によい食事であり、貴重な歴史的体験だった」と評価する。
みそを食べると放射線の障害を軽減できる、との説は他にもある。
渡辺敦光・広島大原爆放射能医学研究所元教授らが90年代に実施したマウスの注目すべき実験がある。
乾燥させた赤みそを10%混ぜたえさをマウスに1週間食べさせた後、放射線の一つであるX線(6000~1万2000ミリシーベルト)を照射したところ、普通のえさや食塩を混ぜたえさを食べたマウスに比べ、小腸の細胞がより多く再生されたという。発酵時間が長く熟成されたみそほど再生の効果が高かった。
詳しいメカニズムは分かっていないが、X線を照射した後にみそを食べさせた実験では再生効果はなかった。
「事前にみそを食べれば、放射線の害が軽くなる」という実験結果だが、渡辺さんは「人に当てはまるかは分からない」と話す。
ただ「みその料理を食べること自体に害はないので、個人的には勧めたい」とする。
記事を見ると、「事前にみそを食べると、放射線の害を軽減できる」という説があるものの、実際にそうした効果があるかどうかはわからないようです。
ただ、みその料理はからだに悪いものではないので、良いということみたいです。
●ビタミンC
抗酸化作用のあるビタミンCが放射線障害を防ぐ、との説もある。
防衛医科大などの研究グループは、マウスに大量の放射線を当てた場合、事前にビタミンCを与えておくと、胃腸の粘膜がはがれ落ちる度合いが減って生存率が上がる、という実験結果を昨年発表した。
ビタミンCが放射線の急性障害を軽くしたといえる。
海外でも、ビタミンCの事前投与でマウスの精子の生存率が上がるなど、ビタミンCの効果を示す動物実験の報告例が多数ある。
東京都健康長寿医療センター老化制御研究チームの石神昭人・研究副部長は「マウスの実験を人に適用できるかは疑問だ。現状では確実なことを言えるデータはない」とする。ただ、ビタミンCは健康維持に必要であるうえ、精神的なストレスなどで消費されやすいのも事実。
石神さんは「放射線障害の問題とは別に、被災者はビタミンCの摂取を心がけた方がよい」とする。
マウスの実験によれば、事前にビタミンCを与えておくと放射線の急性障害を軽くするという結果が出ているそうですが、それが人間に当てはまるかどうかはわからないようです。
ただ、みその場合と同様、ビタミンCは健康維持に必要なので良いようです。
●ペクチン
「食物繊維の一種であるリンゴのペクチンがよい」という説はどうか。
チェルノブイリ原発事故で被ばくした子供たちの治療の一環として、ウクライナの学者グループがリンゴなどに含まれるペクチン(1日2グラム)を加えた食品を18~25日間与える試験をした。
ペクチンを摂取した子供たちは、比較のため偽の食品を摂取した子供たちより、体内のセシウム量が減少した。「ペクチンがセシウムと結合して排せつを促した」とされた。
この結果を疑問視する専門家もいる。
だが、ペクチンの作用を約30年間研究した田澤賢次・富山大名誉教授は「人の試験なので貴重なデータだ。
水溶性ペクチンは加熱すると増えるので、電子レンジでリンゴを温め、1日1~2個食べれば効果的ではないか」と話す。
ただし、ペクチンの取り過ぎは有用ミネラルを減らすため注意した方がよい。
ウクライナの学者グループによる試験によれば、食物繊維の一種であるペクチンを摂取した子供たちの胎内のセシウム量が減少したという結果が出ているそうです。
ただ、ペクチンを取り過ぎると、有用ミネラルを減らすために注意が必要なようです。
■サプリメント
各種のサプリメントに関する情報も多いが、動物実験が中心で、人に応用できるほど科学的根拠が確かなデータはほとんどない。
島田義也・放射線医学総合研究所医療被ばく研究プロジェクトリーダーは「低線量の放射線で問題になるのはがんになる可能性だ。がんを促す喫煙、食べ過ぎ、紫外線、運動不足などに注意すれば十分だ」と強調する。
現時点では、動物実験が中心で、人に応用できるほど科学的根拠がしっかりしたものはないようです。
■家庭でできる放射性物質を減らす方法とは
まず、台所では「水洗い」が基本。
ホウレンソウなどの野菜や魚を水洗いすれば、表面に付着した放射性物質は半分程度が除去できるとされる。
煮れば煮汁に溶け出すのでさらに減る。
ただし煮汁は捨てること。
また野菜は皮をむくことも大切。
ジャガイモやニンジンは皮をむけばセシウムが半分に減るという。
セシウムがどの部位に多いかを知っておくと便利だ。
米については、根からセシウムを吸い上げた場合、セシウムの約7割は茎に移り、食べる部分である白米には約7%しか移行しない。
「セシウム汚染は玄米より白米の方が少ない」(畜産草地研究所)ともいわれる。
魚は内部に放射性物質を取り込んだ場合、「内臓や骨より、身の部分に多く含まれる」(水産庁)という。ただ、魚の身には脳血管疾患の予防になるDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれており、健康維持には必要だ。
消費生活アドバイザーの蒲生恵美さんは「放射性物質を避けようとして野菜や魚を食べないと、逆に健康にマイナスになることもある。冷静な判断が必要だ」と強調する。
ポイントを纏めてみます。
- 基本は、水洗い。
野菜や魚の表面に付着した放射性物質は水洗いすれば半分程度が除去できるそうです。
- 野菜は皮をむいて。
- 玄米より白米。
■まとめ
期待して読んだ記事でしたが、現在の段階では、放射線・放射性物質に効く食品があるとは言えないようです。
大事なことは、放射性物質を取り込まないようにすることのようです。