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風呂キャン・歯磨きキャンセルはうつ病のサインかも? 不衛生になる本当の理由




「風呂キャンセル」「風呂キャン界隈」といった言葉を目にする機会が増え、最初は「お風呂に入るのを嫌がる、めんどくさがる人がいるんだな」程度に受け取っていました。

しかし、ある投稿で「うつ病で一番怖いのは風呂キャンじゃない、歯磨きキャンセル。これはガチ」という言葉を目にし、調べてみると、うつ病になると「入浴しない」「歯を磨かない」「着替えない」「ごみをためる」など、身だしなみを気にしなくなり、不衛生な状態に陥ることがあると知りました。

品川メンタルクリニックの解説によれば、

何かを計画して行動する能力が低下することで入浴などの連続的作業がおっくうになる、エネルギーが枯渇して「疲れやすい」「やる気が起きない」状態で行動できない、自分自身への関心が薄れることで「良い衛生状態を維持しなければ」というモチベーションを喪失する、などうつ病のさまざまな症状が複合的に影響している

とのことです。

調べてみたところ、うつ病の症状である疲労感・意欲の減退・興味・関心の喪失、実行機能の低下、自己価値感の低下などが、入浴や歯磨きといった「複数のステップを要する日常動作」を特に困難にさせることが研究で指摘されています。

自己ケアの低下はDSM-5の正式な診断基準項目には含まれませんが、意欲低下や興味の喪失といった症状の表れとして臨床現場ではよく観察され、回復を妨げる要因にもなり得ます。

【解説】DSM-5とは、アメリカ精神医学会が作成した、精神疾患の診断基準と分類をまとめた国際的なマニュアル(第5版)です。うつ病や発達障害などの診断において、医師が客観的で統一された判断を下すために世界中で広く使われています。

つまり、「風呂キャン」や「歯磨きキャンセル」は、単に「めんどくさい」という人もいれば、中にはうつ病をはじめとする精神的な不調のサインである可能性も十分にあるのです。

実際、厚生労働省の「2025(令和7)年国民生活基礎調査」では、高齢層で「健康上の問題で日常生活に影響がある」と答えた人の割合が改善している一方、若年層(特に25〜44歳)では悪化傾向が明らかになっています。

若年層の通院理由の上位に「うつ病やその他のこころの病気」が挙がり、その症状を挙げた人の約半数以上が日常生活に影響があると回答しています。

「風呂キャン」「歯磨きキャン」が目立つ背景には、こうした若年層を中心としたメンタルヘルスの負担増加が関係しているのかもしれません。

不衛生な状態が続くと、感染症リスクが上がるだけでなく、特に口腔衛生の悪化は深刻です。

歯磨きを怠ると歯周病のリスクが高まり、歯周病は糖尿病と双方向の関係にあることが多くの研究で示されています。

歯周病による慢性炎症が血糖コントロールを悪化させ、逆に糖尿病が歯周病を進行させるという悪循環が存在します。

また、うつ病と口腔疾患(歯周炎・う蝕・歯の喪失など)にも関連があり、うつ病の人が口腔衛生を疎かにしやすい一方で、口腔の問題がうつ病のリスクを高める可能性も指摘されています。

日本国内の研究でも、高齢者において浴槽入浴の頻度が高い人はうつ病発症リスクが低いことや、口腔衛生習慣とうつ症状の関連が報告されています。

「風呂キャンセル」「歯磨きキャンセル」を単なる流行語やネットミームとして消費するのではなく、むしろこれらの言葉が広まる背景に、日本社会全体でうつ病リスクやメンタルヘルスの負担を抱える人が増えている可能性を読み取るべきではないでしょうか。

ストレスフルな社会環境を個人の努力だけに押しつけるのではなく、働き方、地域のつながり、早期の相談・支援体制など、社会全体で改善していく視点が求められます。

もし身の回りで「なかなかお風呂に入れない」「歯が磨けない」といった状態が続いている人がいたら、まずは「怠けている」と決めつけず、優しく声をかけ、必要に応じて専門機関への相談を促すことが大切です。

そして、自分自身も「ちょっとした自己ケアの困難さ」をサインとして捉えられる社会になればと思います。

【補足】

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加によれば、糖尿病と歯周病には悪循環を起こす関係があるそうです。

  1. 糖尿病が進行すると、免疫機能が低下し、歯周病を起こす細菌が増えることから。
  2. 歯周病が重症化すると、その細菌と戦おうと「TNF-α」と呼ばれるタンパク質が出されるが、そのTNF-αがインスリンの働きを悪くして、血糖値のコントロールをも悪化させるから。

【関連記事】

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加で紹介した愛知学院大歯学部歯周病科(名古屋市)の野口俊英教授によれば、糖尿病と歯周病には5つの共通点があるそうです。

  1. 初期に顕著な自覚症状がない
  2. 罹患率が高い
  3. 生活習慣病
  4. 慢性疾患
  5. 病気の進行のメカニズムが似ている

さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化する、という逆の関係も明らかになってきて、糖尿病を持つ歯周病患者に治療を行うと血糖値が改善したという報告もあるそうです。

→ 歯周病を予防する方法(歯磨き・歯ブラシ) について詳しくはこちら

【参考文献】

  1. Gibbs, A. (2024). Why Is It So Hard to Shower When I’m Depressed? The New York Times
    (うつ病時の入浴・衛生行動の困難さについての解説)
  2. 品川メンタルクリニック. 「お風呂がめんどくさい」のはうつ病だから?
    (入浴困難とうつ病症状の関連を解説したクリニックコラム。引用部分の出典)
  3. 品川メンタルクリニック. うつ病の早期発見に関するコラム
    (記事内で引用した説明の関連ページ)
  4. Medical News Today (2022). “I can’t shower because of depression”: Tips and coping strategies
    (うつ病によるシャワー困難の理由と対処法)
  5. Everyday Health (2023). Why Does Depression Make It Hard to Shower?
    (個人衛生の維持が難しくなるメカニズムと工夫)
  6. Psych Central (2022). Poor Hygiene in Depression: Is It a Formal Symptom?
    (衛生低下が正式な診断基準項目ではないが、関連症状として現れる点の解説)
  7. Stewart, V. et al. (2022). Practitioners’ experiences of deteriorating personal hygiene standards in people living with depression in Australia: A qualitative study. Health & Social Care in the Community
    (うつ病患者の衛生低下に関する実践者視点の質的研究)
  8. Hayasaka, S., Ojima, T., Yagi, A., & Kondo, K. (2023(Advance)). Association between Tub Bathing Frequency and Onset of Depression in Older Adults: A Six-Year Cohort Study from the JAGES Project.
    The Journal of The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
    DOI: https://doi.org/10.11390/onki.2359
    (高齢者の浴槽入浴頻度とうつ病発症リスクに関するJAGESコホート研究)
  9. Kloeckner, F. L. et al. (2026). Depression is associated with periodontitis, dental caries and edentulism: A systematic review and meta-analysis of observational studies.
    Community Dental Health
    (うつ病と歯周炎・う蝕・無歯顎の関連を調べた系統的レビュー・メタ分析)
  10. Cademartori, M. G. et al. (2018). Is depression associated with oral health outcomes in adults and elders? A systematic review and meta-analysis.
    Clinical Oral Investigations
    (うつ病と口腔疾患の関連に関する系統的レビュー)
  11. NIDDK (National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases). Diabetes, Gum Disease, & Other Dental Problems
    (糖尿病と歯周病の双方向の関係についての公式解説)
  12. Psychiatric Annals (2024). Mood Disorder and Oral Health
    (気分障害と口腔健康の関連レビュー)
  13. Cureus / WHITE CROSS関連 (2024). Brushing Away the Blues: Self-Reported Oral Hygiene Practices Are Associated With Mild Depressive Symptoms in Airline Pilots.
    (口腔衛生習慣と軽度うつ症状の関連を示した研究例)
  14. 厚生労働省. 2025(令和7)年国民生活基礎調査の概況.
    (若年層におけるうつ病による日常生活への影響に関するデータ)







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