くも膜下出血後に生じ、重い後遺症の原因にもなる脳の血管収縮メカニズム解明|岡山大


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■くも膜下出血後に生じ、重い後遺症の原因にもなる脳の血管収縮メカニズム解明|岡山大

ExeterUniMedSch April2013-16

by University of Exeter(画像:Creative Commons)

くも膜下出血後の脳血管攣縮のメカニズムを解明 治療法開発に向けた大きな一歩に

(2016/11/22、岡山大学プレスリリース)

本研究グループは、ラットで作製されたくも膜下出血モデルで、脳血管の収縮メカニズムに、収縮を誘発する受容体グループの発現上昇が関与すること、それらの上昇が、血管壁の平滑筋細胞*から放出される細胞内タンパク質 High Mobility Group Box-1 (HMGB1)*の働きによることを明らかにしました。また、出血2日後に生じる血管攣縮は、HMGB1の働きを中和する抗 HMGB1 抗体の投与によって強く抑制され、随伴する神経症状も劇的に改善させることが分かりました。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の西堀正洋教授(薬理学)と伊達勲教授(脳神経外科学)の研究グループが行なったラットの実験で、くも膜下出血後に脳血管で生じる遅発性脳血管攣縮(持続的に脳動脈血管が一定の範囲で収縮する現象)のメカニズムを明らかにしました。




■用語解説

●平滑筋細胞

血管壁には、収縮あるいは弛緩能を持つ細胞があり、血管平滑筋細胞と呼ばれる。自律神経や血管作用物質の働きで平滑筋の収縮が起こると内腔が狭まり、逆に弛緩が起こると血管は拡張する。

●HMGB1

High mobility group box-1 (HMGB1)は、細胞の核内にある染色体 DNA と結合して存在するタンパク質で、DNA の構造維持、遺伝子の転写調節や DNA の修復等で重要な役割を果たす。一方、細胞・組織障害に応じて細胞外に放出された HMGB1 は、多様な炎症惹起作用を発揮すると考えられている。

■くも膜下出血とは?

脳動脈の壁にできた瘤状のふくらみ(動脈瘤)が破裂すると、破裂部位からの出血が脳表面を覆うくも膜下腔と脳室内に出て、髄膜刺激や脳圧亢進で、激しい頭痛や意識消失をきたす。これをくも膜下出血と通常呼ぶ。脳内出血がくも膜下腔や脳室に達する場合もある。

くも膜下出血とは、脳を覆うくも膜と軟膜のすき間に出血を起こす病気。

多くは脳の動脈にできた瘤(こぶ)、いわゆる動脈瘤(りゅう)が破裂して起こります。

【くも膜下出血の症状】

  • 突然、激しい頭痛に襲われる
  • その頭痛がいつから始まったかわかる
  • 頭痛の原因は分からない
  • 吐き気を伴うような頭痛である
  • 冷や汗を伴うような頭痛である
  • 意識を失ったりもうろうとしたりする
  • ものが二重に見えたり、手足が麻痺したりする

■研究の背景

くも膜下出血は、突然の脳動脈瘤の破裂によって激しい頭痛と意識障害によって発症し、急性期に亡くなる場合もありますが、手術によって破裂した脳動脈瘤を処理した後、1週間から10日をピークとして生じる脳血管攣縮によって重篤な後遺症を残したり、死に至ることもまれではありません。

くも膜下出血の手術後に、1週間から10日をピークに脳血管攣縮(脳動脈血管が一定の範囲で収縮する)によって、身体のまひなどの重篤な後遺症が残ることがあるそうです。


また、最近の臨床研究で、遅発性脳血管攣縮の抑制のみでは患者の予後を改善するのに必ずしも十分ではないという問題も生まれてきたそうです。

■研究内容・結果

●脳血管の収縮メカニズムに、収縮を誘発する受容体グループの発現上昇が関与すること

●血管攣縮を起こしている血管壁の平滑筋細胞から細胞内タンパク質 「High Mobility Group Box-1 (HMGB1)」が放出され、HMGB1の働きで血管の収縮を誘導する受容体の発現量が上昇すること

●HMGB1の働きを抑える抗HMGB1抗体を投与することによって受容体の発現量の上昇を抑制し、随伴する神経症状も劇的に改善させることが分かったこと







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