なぜビル・ゲイツの1999年の予測は的中したのか?|ネットワークの視点から考えてみた!


Bill Gates. TED2011

by Gisela Giardino(画像:Creative Commons)




■なぜビル・ゲイツの1999年の予測は的中したのか?|ネットワークの視点から考えてみた!

恐ろしいほどに的中、ビル・ゲイツの1999年の予測

(2018/1/19、Business Insider)

1999年、ビル・ゲイツは『Business @ the Speed of Thought.』(邦題『思考スピードの経営』)を出版。その中で15の大胆な予測を行った。

ビル・ゲイツが著書の中で行なった15の未来予測が恐ろしいほど的中していることをブログのエントリー「Business @ the Speed of Thought」(2015/4/12)で指摘されています。

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内容は元記事をご覧いただくとして、未来予測について考えてみたいと思います。

「魔法の世紀」(著:落合陽一)では、コンピュータの歴史やメディアに影響を与えた人物について挙げられています。

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コンピュータの歴史やメディアに影響を与えた人物には、バネーバー・ブッシュ、クロード・シャノン、アイバン・サザランド、ボブ・スプロウル、ジェームズ・クラーク、アラン・ケイ、ジョン・ワーノック、エド・キャットムル、ダグラス・エンゲルバート、マーク・ワイザーがいると紹介されています。

詳しい内容は本著をご覧いただきたいのですが、すごいと感じたのは、今の世界は彼らの思想の外を飛び越えていないということです。

大げさに言えば、彼らが思い描いているものを実現しているのが今の世界なのです。

これはある意味で怖いくらいですが、逆に考えると、彼ら(チームを含めて)につながる人物に関する研究を追いかけることができれば、未来予測ができるのではないかという仮説が立てられます。

AIが世界を作り上げる世界という未来を除けば、人間が想像したものによって世界は作り上げられているのですから、人を追いかけることが未来を考えるヒントになるのです。

クレディスイス「わずか4%が、ビットコインの97%を所有」についてネットワークの性質の視点から考えてみたではネットワークに関する2冊の本を紹介しました。

●「枝分かれ (Branches)」(著:Philip ball)

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既に多くのリンクを持つノードほど選ばれやすいのである。

リンクが2つあるノードが選ばれる可能性はリンクが1つしかないノードの2倍になるのだ。

と言う事は既に多くの接続を持つノードほどネットワークが成長するにつれてさらに接続を増やしていくわけである。p230

ページがリンクを獲得するのは誰かがあらゆるページを検討してそれが最良の参照サイトだと決めるからではなくそれがすでに有名だからなのである。

同じことが科学文献の引用にも言える。これにもべき乗則統計がある。

人は他人が引用しているからその著作や論文を引用するのであって自分がそれを読んだからではない。p231

多くの人が引用しているページや論文は有名であることが引用のされやすさと関係しているように、ネットワークの性質上、すでに多くのリンクを持つノードほど選ばれやすい、つまり、良質な情報源と多くつながっている人ほどネットワークを広げやすいのです。

●「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」(著:ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー)

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エヴェット・ロジャーズ『イノベーションの普及」の中で、人々にとってテクノロジーとは、コップの水に垂らした一滴の青い染料のようなものだと論じた。ロジャースの理論によると、テクノロジーが広がるスピードは最初のうちは遅いが、やがて速くなり、全ての人に行き渡る頃にはまた遅くなるという。だが、社会的ネットワークの構造を考慮に入れた最近の研究では、そう単純ではないことがわかっている。

一つの特許が別の特許に引用されている事例を200万件以上調べた結果、発明家の間でアイデアが広がる際、社会的ネットワークがどんな影響を及ぼすかが明らかになった。直接協力した発明家同士は、互いに引用し合う可能性が極めて高かったのだ。何しろ、偶然に引用しあう可能性の約4倍である。だがこうした影響はネットワークを通じてさらに先まで及んでいた。二次の隔たりがあると、互いに引用しあう可能性は約3.2倍、三次の隔たりがあると2.7倍になるのだ。三次の隔たりを超えると、影響はほぼ無くなる。

直接協力した発明家同士は、互いに引用しあう可能性が極めて高かったそうです。

つまり、何かしらのつながりがあることによって「選ばれやすい」ということなのです。

このことを考えると、「ビットコインの97%は4%のアドレスが保有している」というのは極端なのかもしれませんが、不思議でもないのです。

「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」(著:ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー)

「豊かなものはますます豊かに」という力学が意味するのは、社会的ネットワークを通じて、私達の社会に存在する二種類の不平等が劇的に拡大してもおかしくないということだ。

つまり、状況的不平等(一部の人は社会経済的によりよい状況にある)と位置的不平等(一部の人はネットワーク上でよりよい位置を占めている)である。

社会的ネットワークにおける状況的不平等と位置的不平等によって、「豊かなものはますます豊かに」になるというのです。

ネットワークの持つ性質上、状況的不平等と位置的不平等は存在するわけですから、いかに人とつながっていくかが大事なことになるのです。

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先ほどのコンピュータの歴史やメディアに影響を与えた人物は、指導教官と指導学生という関係・つながりがあります。

『#落合陽一「日本人とお金」を語る』まとめ|日本人はお金が大好き(拝金主義)!?|お金ではなく価値を見るとよい!?|研究・リサーチになぜお金が集まるのか?|知名度は価値に変換できる?|金融教育は小学生からやるべき|人間に投資するのが一番価値が高い!では、今回のことにつながる2つことが紹介されています。

一つは、研究・リサーチにお金が集まる理由、もう一つは、最大の投資は人間に投資することです。

将来的に大きな投資をする前に、できるだけ小さい形で作って、いち早く未来の価値を定めることができれば、未来における商材の価格を予想することにつながるからこそ研究・リサーチにはお金が集まるということなのです。

そして、最大の投資は「学生(投資価値のある人間を育てること)」と落合さんは語ります。

先日、日本の歴史上の偉人である高杉晋作、久坂玄瑞を生み出した松下村塾を作った吉田松陰が亡くなった年齢を知って驚きました。

なんと29歳の若さです!

吉田松陰は後の明治維新で重要な働きをする多くの若者に影響を与えた人物ですが、このことを考えても、人間に投資をするのが最もパフォーマンスとして価値が高いといえるのではないかと思います。

ビル・ゲイツともなれば、優秀な人材とお金があり、いうなれば、ネットワークの中心に近いところにいる人物なのであり、未来予測を最もしやすい人物だと考えられます。

つまり、その意味でいえば、未来予測をビル・ゲイツが外すことが逆に難しいともいえるのではないでしょうか。







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