歯医者の椅子横のうがい水は本当に細菌だらけ?鶴見大学の研究が明らかにした「歯医者のうがい水」の細菌汚染実態




歯医者の椅子の横にある「うがい水」が細菌だらけ——そんな投稿が話題になり、「海外だけの話で日本は違う」という反論も見られます。しかし、日本国内の大学病院でも同様の結果が確認されています。

鶴見大学歯学部附属病院の研究(2009年発表)によれば、2003年に附属病院内の17台すべての歯科用ユニット(デンタルチェア)の給水系水(うがい水など)の微生物汚染状況を調査したところ、フィルターや逆流防止装置の有無にかかわらず、全ユニットから微生物が検出されました。

菌数は 2.4×1022.4 \times 10^{2}2.4 \times 10^{2}
〜6.1×1046.1 \times 10^{4}6.1 \times 10^{4} CFU/ml(240〜61,000 CFU/ml)に達し、フラッシング(水を流すこと)で汚染度は減少したものの、フラッシング後も汚染が残るユニットがあることがわかりました。

■背景

チューブ内にバイオフィルムが形成され、タービン・シリンジ・うがい水(含嗽水)などに汚染水が出やすいことが指摘されています。

米国ではCDCが500 CFU/ml以下、ADAが(当時)200 CFU/ml以下を推奨していましたが、日本では当時も現在も、歯科ユニット水に特化した法的水質基準はありません(水道水の一般細菌基準100 CFU/ml以下や従属栄養細菌の管理目標2,000 CFU/ml以下を参考にしているケースが多いです)。

■対策

2004年から「ショックトリートメント」(診療終了後に洗浄液を満たして一晩放置し、翌日排出。3日間連続実施)を導入。

実施後は汚染が著しく改善しましたが、詰まり・水漏れ対策や定期的な繰り返しが必要とされました。

ショックトリートメントとフラッシングの併用効果(中野雅子ほか, 日本歯科保存学雑誌 2017):洗浄後は菌数が大幅に減るが、数週間で再増殖しやすい。500 ppm次亜塩素酸ナトリウムなどが有効だが、部材への影響も考慮が必要。

微酸性電解水の長期使用(中野ほか, 日本衛生学雑誌 2020):7年間の調査で、従属栄養細菌数を低く抑えられる有効性が示された。

使用年数が長いユニットほど菌数が多い傾向(鹿児島大学関連の2022年報告など):古いユニットではフラッシング効果が低く、消毒機能付きユニットは菌数が少ない。

■海外の状況とガイドライン

汚染は世界的に報告されており、バイオフィルム形成が主因です。

過去に小児歯科などで非結核性抗酸菌感染のアウトブレイク報告があり、水ライン管理の重要性が強調されています。

CDCは非外科処置で≤500 CFU/mlを推奨しています。

■まとめ

歯科用ユニットの給水系水(うがい水など)は、細いチューブ内の滞留水によるバイオフィルム形成で汚染されやすいことが、複数の研究で示されています。

フラッシングや化学洗浄(ショックトリートメントなど)で低減可能ですが、定期的な管理が必須で、一度きれいにしても再汚染しやすいのが特徴です。

2009年以降、消毒機能付きユニットや電解水システムの導入が増え、管理は改善傾向にあるとの指摘もありますが、施設・ユニットの年数・管理状況により差が大きいのが実態です。

【参考文献】

  • 小澤寿子, 中野雅子, 新井高, 前田伸子, 斎藤一郎. 歯科用ユニット水ラインのショックトリートメントの効果:鶴見大学歯学部附属病院での実践. 日本歯科保存学雑誌. 2009;52(4):363-369.
    DOI: 10.11471/shikahozon.52.363
  • 中野雅子, 高尾亞由子, 前田伸子, 細矢哲康. 歯科用チェアユニット給水管路の細菌汚染に対する衛生管理の取組み―ショックトリートメントおよびフラッシングの併用効果―. 日本歯科保存学雑誌. 2017;60(6):306-312.
    DOI: 10.11471/shikahozon.60.306
  • 中野雅子, 高尾亞由子, 前田伸子, 細矢哲康. 歯科用チェアユニットの水回路の汚染に対する微酸性電解水の有効性―7年間にわたる継続調査―. 日本衛生学雑誌. 2020;75:19021.
    DOI: 10.1265/jjh.19021
  • 神之田理恵, 渡邉温子, 松尾美樹, 小松澤均, 宮脇正一. 歯科診療用ユニット給水系中の微生物汚染に関する検討. 日本環境感染学会誌. 2022;37(5):183-189.
    DOI: 10.4058/jsei.37.183
  • Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Guidelines for Infection Control in Dental Health-Care Settings—2003. MMWR. 2003;52(RR-17):1-61.







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