同じ10%の体重減少でも、食事の種類で肝臓と血糖の改善が違う|ケトジェニック食・地中海・低脂肪食を比較した最新研究

Cell Metabolism誌に2026年に発表されたランダム化臨床試験のタイトルは「体重減少時の心臓・代謝への効果に、食事の栄養素バランス(炭水化物・脂肪・タンパク質の割合)がどう影響するか」という内容の研究。

■研究の背景

肥満で「代謝的に不健康」な人(肥満+前糖尿病+脂肪肝)が体重を減らすと、血糖やインスリン、肝臓の脂肪などが改善します。

しかし、同じくらい体重が減っても、食事の種類(炭水化物が多いか少ないかなど)によって改善の度合いが違うのかはよくわかっていませんでした。

そこで研究者たちは、人気のある3種類の食事で約10%の体重減少を起こし、心臓・代謝の指標(特に肝臓やインスリンの働き)を比較しました。

※前糖尿病とは、血糖値が正常値よりも高いものの、糖尿病と診断される基準には達していない中間段階の状態で、境界型糖尿病や糖尿病予備群と呼ばれています。

■研究の方法

18〜55歳の肥満で前糖尿病と脂肪肝がある人たちを対象に、3つのグループに分けました。(すべてカロリーを制限して体重を約10%減らすように調整。)(最終的に約42人が完了)

1)超低炭水化物ケトジェニック食:炭水化物約4%、脂肪約73%、タンパク質約23%(ほぼ炭水化物を極端に減らしたケトン食)。
2)地中海食:炭水化物約50%、脂肪約35%、タンパク質約15%。
3)植物性中心の低脂肪食:炭水化物約70%、脂肪約15%、タンパク質約15%。

期間は平均約5ヶ月程度。体重減少量は3グループでほぼ同じ(約10%)。

主な測定項目:筋肉と肝臓のインスリン感受性、肝臓の脂肪量、血糖・インスリンの1日の動き、HbA1c(長期の血糖指標)など。

■結果

●体重減少と筋肉のインスリン感受性に関しては、3グループともほぼ同じくらい改善(筋肉のインスリン感受性は約50%向上)。体重を減らすこと自体が大切だということが確認されました。

●肝臓のインスリン感受性の改善は、ケトジェニック食で他の2倍〜3倍大きかった。

●肝臓の脂肪量の減少は、ケトジェニック食で約67%減、他の2グループは約45%減。

●肝臓での新しい脂肪の作り方の低下もケトジェニック食で最も大きかった。

●1日の血糖やインスリンの値、HbA1cの低下もケトジェニック食で最も大きかった。

●前糖尿病の改善(寛解)率もケトジェニック食で高かった(ケト約50%、地中海約29%、植物性低脂肪約7%(報告値))。

●LDLコレステロールやアポリポタンパクB、1日の中性脂肪の値にはグループ間で大きな差はなし。

今回の研究では、同程度の体重減少を達成した条件で比較すると、ケトジェニック食のグループでは、特に肝臓の代謝や血糖に関する一部の指標で、ほかの2つの食事グループより大きな改善がみられました。

■まとめ

今回の研究で分かったことは、1)体重を減らすこと自体はどの食事でも代謝をよくすること、2)食事の栄養素のバランス(特に炭水化物をどれだけ減らすか)によって異なること、3)特に脂肪肝や前糖尿病がある人では、ケトジェニック食が肝臓の健康により効果的な可能性があることです。

【参考文献】
Petersen MC, et al.
Effect of diet macronutrient content on the cardiometabolic response to weight loss: A randomized clinical trial
Cell Metabolism, 2026; 0

■補足

ケトジェニックダイエット(糖質制限+脂質を主なエネルギー源とする食事法)を長期的に続けると高脂血症や脂肪肝、糖尿病のリスクが高くなる可能性!によれば、ケトジェニックダイエットが短期的には体重減少に効果的でも、長期的に続けると、高脂血症や脂肪肝、耐糖能異常(糖尿病のリスク増加)といった健康リスクを引き起こす可能性があります。

ケトジェニック食は「良い・悪い」と一括りにするのではなく、対象となる人、目的、実施期間などによって分けて考える必要がありそうです。

ハクライドウでは以前、ケトジェニックダイエットを長期間続けたマウスで、高脂血症、肝機能障害、耐糖能異常などがみられた研究を紹介しました。

今回紹介した研究だけを見ると、「ケトジェニック食は脂肪肝や血糖改善にいい」という印象を持つかもしれません。

以前の記事とは反対の結果のようにも見えます。

ただし、2つの研究は同じ条件で行われたものではありません。

以前紹介した研究はマウスを対象に長期的なケトジェニック食の影響を調べた研究です。

一方、今回紹介したのは肥満、前糖尿病、脂肪肝のある人を対象として、減量時の食事の栄養素バランスによる違いを調べたランダム化臨床試験です。

そのため、この2つの研究だけから「ケトジェニック食は良い」「悪い」と単純に結論づけることはできません。

■健康習慣として考えたいこと

今回の研究から考えてみたいのは、

「健康に良い食事は一つなのだろうか?」

ということです。

ある人に、ある目的で、ある期間行った食事が有効だったからといって、すべての人が同じ食事を長期間続ければ同じ効果が得られるとは限りません。

また、一つの研究で「良い」という結果が出たからといって、一生その食生活を続けた方がよいという意味でもありません。

健康情報を見ると、

「○○は体に良い」

「○○は体に悪い」

と二択で考えてしまいがちです。

でも実際には、

誰が?

何のために?

どのくらいの期間?

という条件によって、結果の意味は変わってきます。

健康習慣も同じではないでしょうか。

「良い・悪い」だけで決めるのではなく、「今の自分の目的や体の状態に合っているかな?」と、ときどき見直してみる。

それも健康習慣の一つなのかもしれません。

※肥満、前糖尿病、脂肪肝などがある場合の食事療法については、自己判断で極端な食事制限を行うのではなく、医師や管理栄養士などの専門家に相談してください。







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