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■内臓脂肪の量が限度を超えると、「ミンクル」を介して脂肪組織の線維化が起こり、脂肪肝になる|東京医科歯科大学
by Guian Bolisay(画像:Creative Commons)
過剰に摂取した脂肪はどこへ行くのか 鍵分子「ミンクル」解明
(2014/11/5、産経新聞)
毎日の食事で、過剰に摂取した脂肪はどこへ行くのか。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人の場合、内臓脂肪の量が限度を超えると、「ミンクル」という分子を介して脂肪組織の線維化が起こり、糖尿病など生活習慣病の原因につながる恐れがあることが日本発の研究で示された。
東京医科歯科大大学院医歯学総合研究科の菅波孝祥特任教授と小川佳宏教授のグループによる研究によれば、内臓脂肪の量が限度を超えると、「Mincle(ミンクル)」を介して脂肪組織の線維化が起こり、糖尿病など生活習慣病の原因につながる恐れがあるということ、そして「Mincle(ミンクル)」が第三の脂肪といわれる異所性脂肪の蓄積に重要な役割を担っていることが分かったそうです。
今回の記事のポイントは、「ミンクル」が脂肪組織の線維化のカギとなるということです。
ミンクルを取り除いたマウスとそうでないマウスで高脂肪食を食べさせて太らせる実験をしたところ、ミンクルを取り除いたマウスは肝臓への脂肪の蓄積や糖代謝異常(血糖値の異常)が軽減されたことがわかりました。
過剰に摂取した脂肪はどこへ行くのか 鍵分子「ミンクル」解明
(2014/11/5、産経新聞)
この実験を踏まえて、「肥満の人の内臓脂肪の量が限度を超えると、ミンクルを介して脂肪組織の線維化が起こり、脂肪が肝臓に蓄積して脂肪肝になる。その結果、脂質代謝異常(コレステロール値の異常)などを経て、糖尿病になったり、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に発展したりする」というメカニズムを突き止めた。
つまり、この結果から、内臓脂肪の量が限度を超えると、「Mincle(ミンクル)」と呼ばれる病原体センサー分子を介して脂肪組織の線維化が起こり、肝臓に脂肪が蓄積して脂肪肝になることがわかりました。
では、メタボの人や肥満の人は、どのようにすれば、生活習慣病を予防することができるのでしょうか。
一つは食事の工夫だ。脂肪は就寝中にたまりやすい。このため、就寝前の食事や間食を避けることを心がける。また、油分の多い食事は減らし、油の種類も不飽和脂肪酸のオリーブオイルなどに切り替えることが推奨される。
もう一つは運動だ。
<中略>
菅波特任教授は「歩けば歩くほど、体内の脂肪分の燃焼が促進され、脂肪組織の線維化を防ぐことができる」と説明する。
高脂肪食などの食生活を改めることや運動をすることで脂肪を燃焼させることが重要になります。
週250分の運動で脂肪肝改善 「やせなくても効果あり」―筑波大研究グループによれば、肥満の人は、週250分以上早歩きなどのやや強めの運動をすると、体重が減らなくても、肝臓に蓄積した脂肪が減少したり、善玉コレステロールや肝臓の炎症を防ぐ物質が増えていることがわかっています。
また、週150分の早歩きを続けるだけでも、肝臓の中性脂肪が減っており、脂肪肝・NAFLDの改善が期待できる今回の研究によれば、週150分の早歩きを続けるだけでも、肝臓の中性脂肪が減っており、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の改善が期待できることがわかったそうです。
将来的には、Mincle活性化分子が何であるかを見つけることにより、メタボリックシンドロームにおける慢性炎症のメカニズムが解明できれば、ミンクルをターゲットとしたメタボリックシンドロームの治療薬が開発されるようになることが期待されます。
そして、今回の研究を参考にして考えられる仮説が一つ。
それは、糖尿病やNASHになる前の重要なラインがわかったことです。
糖尿病やNASHは次のような流れで進んでいくと考えられます。
栄養の摂りすぎ・運動不足
→脂肪の蓄積=肥満
→ミンクルを介した脂肪組織の線維化
→脂質代謝異常(コレステロール値の異常)や耐糖能障害(血糖値の異常)
→動脈硬化
脂肪にはいくつかの種類があり、腹部の筋肉の外側にあってつまむことができるのが皮下脂肪であり、大腸や小腸のまわりについているのが内臓脂肪。皮下脂肪や内臓脂肪の貯蔵量が限度を超えると、毒性の高い「異所性脂肪」が肝臓などに蓄積される。
人によって内臓脂肪の量の限度がどのくらい違うのかはわかりませんが、内臓脂肪の量が限度を超えるとミンクルを介して脂肪組織の線維化が起こることは明らかになっているわけですから、定期的な検査で内臓脂肪の量をチェックしたり、どのくらい肝臓に脂肪が蓄積しているかをチェックすることで、糖尿病やNASHの予防ができる可能性があるということではないでしょうか?
食生活の見直し、運動不足の解消、そして定期的な検査で肝臓の脂肪蓄積をチェックして、糖尿病やNASHなどの生活習慣病を予防しましょう。
→ 内臓脂肪を減らすには|内臓脂肪の落とし方 について詳しくはこちら
【追記(2016/12/10)】
肝臓に蓄積した脂肪が多いほど、他の臓器におけるインスリン抵抗性が強い!?|金沢大学で紹介した金大医薬保健研究域の篁俊成教授と金子周一教授らの研究グループによれば、次の3つのことがわかりました。
1.肝臓の脂肪量は、肝臓だけでなく、骨格筋のインスリン抵抗性と強く関連する
肝臓に蓄積する脂肪量が多いほど、肝臓および肝臓と離れて存在する骨格筋のインスリン抵抗性が強いそうです。
2.骨格筋についた脂肪は、肝臓などのほかの臓器のインスリン抵抗性と関連しない
3.体脂肪量は、脂肪組織のインスリン抵抗性と関連しない
以上のことから、脂肪肝の悪化は、肝臓だけでなく、全身のインスリン抵抗性の悪化において中心的な役割を果たしており、また肝臓と骨格筋を結ぶ何らかのネットワークの存在があることが考えられます。
つまり、肝臓の脂肪量をいかにコントロールするかが生活習慣病を予防するカギといえるのではないでしょうか。
【参考リンク】
参考画像:肥満に伴う脂肪組織の線維化を招く鍵分子を発見~メタボリックシンドローム治療の新たな分子標的~(2014/9/19、科学技術振興機構(JST)・東京医科歯科大学)|スクリーンショット
肥満に伴う脂肪組織の線維化を招く鍵分子を発見~メタボリックシンドローム治療の新たな分子標的~
(2014/9/19、科学技術振興機構(JST)・東京医科歯科大学)
JST 戦略的創造研究推進事業において、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科の菅波 孝祥 特任教授は、小川 佳宏 教授らと共同で、Mincle注1)と呼ばれる病原体センサー分子が肥満に伴う脂肪組織の線維化を促進させる鍵となる因子であること、“第三の脂肪”ともいわれる異所性脂肪注2)の蓄積に重要な役割を担うことを明らかにしました。
肥満の脂肪組織炎症におけるMincleの役割を調べるために、Mincle欠損マウスと野生型マウスに高脂肪食を与えて、肥満を誘導しました。
両者は同程度の体重増加を示しましたが、対照の野生型マウスと比較してMincle欠損マウスでは以下の点が異なっていました。
(1)CLSの形成数の減少(図2)や(2)慢性炎症の結果として生じる組織の線維化の減少が認められ(図3)、(3)また脂肪細胞径が大きく、脂肪蓄積能が増加していることが示唆されました(図4)。一方、(4)肝臓の脂肪蓄積は顕著に抑制され(図5)、(5)全身の糖代謝も良好に保たれました(図6)。
このように、Mincle欠損マウスでは、脂肪組織の慢性炎症が軽減した結果、肝臓に異所性脂肪蓄積とそれに伴う糖代謝異常の発症が抑制されたと想定されます。
そこで試験管内で培養した培養マクロファージに、Mincleを活性化するTDM(トハレロースジミコール酸:結核菌由来糖脂質)注7)を投与し、遺伝子発現の変化を検討しました。
その結果、TGF-β注8)などの組織線維化にかかわる遺伝子群が顕著に誘導されることが明らかになりました。
組織線維化におけるMincle活性化の役割を確認するため、TDMを非肥満マウスの脂肪組織に直接投与したところ、それだけでCLSが形成され、組織の線維化が誘導されました(図7)。
これは、マクロファージにおけるMincleの活性化のみでも、脂肪組織の線維化を引き起こすのに十分であることを示しています。
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【参考リンク(論文・エビデンス)】
- Tanaka M, Ikeda K, Suganami T, Komiya C, Ochi K, Shirakawa I, Hamaguchi M, Nishimura S, Manabe I, Matsuda T, Kimura K, Inoue H, Inagaki Y, Aoe S, Yamasaki S, Ogawa Y. Macrophage-inducible C-type lectin underlies obesity-induced adipose tissue fibrosis. Nat Commun. 2014 Sep 19;5:4982. doi: 10.1038/ncomms5982.
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