> 健康・美容チェック > 糖尿病 > 糖尿病の治療 > 糖尿病アプリで行動が変化し、空腹時血糖値や収縮期血圧が試験前より改善|東大病院
【目次】
■糖尿病アプリで行動が変化し、空腹時血糖値や収縮期血圧が試験前より改善
参考画像:DialBetics ―ダイヤルベティクス―|YouTubeスクリーンショット
(2016/9/20、日経デジタルヘルス)
ICT医療を研究する東大の健康空間情報学講座では、糖尿病患者向けに生活習慣の改善や糖尿病の自己管理のためのアプリ「DialBetics」を開発した。血糖値や血圧、歩数などの計測値に対して自動応答するもので、リスクの高いデータは「ドクターコール」として医師に転送するシステムである。東大の工学部と共同で開発しており、例えば、食事の記録に関しては、撮影画像を認識して料理を提示し、ユーザーの入力を補助する機能も備えた。
脇嘉代さん(東京大学大学院 医学系研究科 健康空間情報学講座 特任准教授)は、糖尿病患者向けの生活習慣の改善や糖尿病の自己管理のためのアプリ「DialBetics」を開発し、東京大学医学部附属病院の2型糖尿病患者を対象に、測定(DialBetics利用)・非測定(非利用)の2群に分けて、3カ月間のHbA1cなどの変化を比較するという実験を行なったそうです。
試験の結果、体重や血圧、血糖値、運動などを記録した測定群では、食生活で食物繊維を多く摂取し、炭水化物は減らすなど行動変容が見られ、空腹時血糖値や収縮期血圧などが試験前より改善する傾向があった。
測定群では、食物繊維を多く摂取し、炭水化物は減らすなど生活習慣に変化が見られ、また測定結果も空腹時血糖値や収縮期血圧などが試験前より改善する傾向があったそうです。
被検者のアンケートからは、毎日の測定と測定結果へのフィードバックが、生活改善につながっていることが分かったとする。「医薬の試験は投与が終われば効果もなくなるが、行動変容が起きると、実験後も効果が続きやすい」(脇氏)。
この結果からどういうことが考えられるでしょうか。
- どういう行動をするとどういう結果が出るのかというのが明確になったことで、健康的な生活習慣を選択するようになったのではないか。
- 測定するということで、健康的な生活習慣を選びがちになるのではないか。
糖尿病予備軍に電話で予防のアドバイスを続けることで発症率が4割下がるで紹介した国立病院機構京都医療センターによれば、糖尿病予備軍の人に電話で予防のアドバイスを続けることで、発症率が4割下がったそうです。
保健指導で4人に1人が脱メタボに成功(2012/3/17)によれば、生活習慣病になりやすいメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と判定され、保健師らによる特定保健指導を受けた人を対象に、厚生労働省が行った大規模な追跡調査で、約4人に1人が1年間でメタボ状態を脱していたことがわかっています。
自分自身で意識的に行動を変えることやアドバイス・指導を受けることで行動を変えたことにより成果を出ているという例はいくつかあります。
しかし、それが長く続かないのが人間です。
脇さんによれば、「行動変容が起きると、実験後も効果が続きやすい」とありますが、肥満の人への減量指導効果は2年で失われる!?-筑波大(2014/12/9)によれば、肥満の人に半年間、専門家が集団での減量指導をした効果は2年で失われることがわかっています。
糖尿病患者の治療継続は半数にとどまるによれば、糖尿病の合併症を予防するには、医師と相談しながら、治療を継続していく必要があり、患者の大半もその治療方針を理解し、治療の重要性を認識しているのですが、糖尿病の治療を継続していくことができない人が半数もいるそうです。
つまり、自分自身ではどんなに治療の重要性を認識していても、継続するのは難しいのです。
人は忘れる生き物であり、また習慣の生き物です。
だからこそ、継続的に指導をすることが重要になってきます。
以上のことをまとめると、次のようになります。
一人だけの意志で治療継続するのは難しく、生活習慣の改善には何かの手助けが重要であるということ。
そして、保健指導は効果を発揮するものの、その指導効果は2年で失われるため、指導自体も継続することが必要なこと。
■ICTを活用した個人の健康管理がカギ!
医療・健康分野におけるICT化の今後の方向性(平成25年12月、厚生労働省)によれば、
健康寿命を延伸するためには、ICTを利用した個人による日常的な健康管理が重要
だと書かれています。
ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー:情報通信技術)の略です。
ICTを活用した医療分野への活用の例としては次の通り。
- 電子版お薬手帳や生活習慣病の個人疾病管理など患者・個人が自らの医療・健康情報を一元的、継続的に管理し活用する仕組み
- 地域包括ケアシステム(電子カルテ情報を地域の診療所が参照する)
- ICTを活用してレセプト等データを分析し全国規模の患者データベースを構築し、疾病予防を促進
ICT医療においては、ICTを活用した個人の健康管理がスタートであり、カギとなります。
今回紹介したような糖尿病患者向けに生活習慣の改善や糖尿病の自己管理のためのアプリが活用される機会が増えていくのではないでしょうか。
→ 糖尿病の症状・初期症状 について詳しくはこちら
→ 糖尿病危険度チェック について詳しくはこちら
【ビッグデータ関連記事】
- 「GLUCONOTE」|東大とドコモ、RESEARCHKITで糖尿病と生活習慣の関連性を研究するアプリを開発
- 過去の糖尿病患者のビッグデータを用いて、新たな患者の症状の進行や薬の効果を予測するシステムを開発|国立病院機構長崎川棚医療センターと富士通など
- 人工知能(AI)を使って糖尿病の改善や予防につなげる助言システムの開発|経済産業省
- 人工知能(AI)で糖尿病患者の電子カルテを分析|日本IBMと藤田保健衛生大学など
- ビッグデータを活用してメディカル業界は劇的な発展を迎える?
- ディープ・ラーニングでがんを見つける?|がん検診を人工知能が行なう時代になる!?
- 未来では、デバイスか、自らの身体にセンサーを内蔵する選択を迫られる?
糖尿病関連ワード
■薬局でもできる糖尿病の検査|検尿(尿糖検査)と採血による血糖検査