■ウェアラブルデバイスは伸びている!?
by Hideto KOBAYASHI(画像:Creative Commons)
(2017/6/1、TechCrunch)
ウェアブルデバイスの勢いは増すばかりで、米国人の25%が所有している(2016年の12%から上昇)。一番多いのが移動速度を追跡するデバイスで、心拍数の測定がそれに続いている。
シリコンバレーの老舗ファンドKPCBのパートナーであるメアリー・ミーカー(Mary Meeker)のインターネット・トレンド・レポート最新版(2017年)によれば、ウェアラブルデバイスはアメリカ人の25%が所有しているというデータ(スライド294)があり、TechCrunchの記事ではその勢いは増すばかりであると書かれています。
(2017/7/3、IDC Japan)
IDCが発行する「Worldwide Quarterly Wearable Device Tracker」の予測によると、2017年には1億2,550万台と予測されるウェアラブルデバイスの出荷台数は、2021年には2億4,010万台に成長すると見込まれ、好調なペースでの市場拡大が期待されています。
IDC Japanによれば、ウェアラブルデバイスの出荷台数は今後も堅調に成長するという予測が立てられています。
ウェアラブルデバイスには、腕時計型、リストバンド型、耳掛け型、靴・衣類型、その他と分類できます。
健康管理に対する関心は高いのに、なぜウェアラブルデバイス市場の成長は鈍化しているのか?ではFitbitが業績見通しの引き下げというニュースを紹介しましたが、リストバンド型のウェアラブルデバイスの成長の伸びが鈍化し、ウェアラブルデバイスのトレンドはリストバンド型から腕時計型へと移り、今後数年は腕時計型が主流になりそうです。
将来的には、SIREN CARE|糖尿病患者の足の炎症や傷害を温度センサーでリアルタイムに見つけるスマートソックスで取り上げた、グーグルの先進技術プロジェクト部門、ATAP(Advanced Technology and Projects)が取り組んでいる「Project Jacquard」という伝導性繊維をあらゆるファッションアイテムに搭載できるような技術の開発によって、全ての衣類がウェアラブルデバイスになる日も遠くないかもしれません。
■健康データを共有する意思がある
多くの人々が健康アプリをダウンロードして、健康データを共有する意志を持っている。
ミーカーのレポートによると、2016年には60%の人たちが健康データをGoogleと共有してもよいと考えている。
スマホユーザーの約58%が健康関連アプリをダウンロード|どんなアプリが人気なのか?で紹介したNYU Langone Medical Centerが2015年にスマホ所有者を対象に実施した調査によれば、スマホユーザーの約58%がフィットネスや健康アプリをダウンロードしたことがあるそうです。
このころから健康管理アプリに対する関心は高い傾向にありました。
アメリカでは高齢者が健康維持・増進に特化したウェアラブルテクノロジーをいち早く取り入れているで紹介したアクセンチュアのデータによれば、健康状態やバイタルサイン((血圧・心拍数など)の追跡のためにウェアラブルデバイスを使用している人は65歳以上の17%で、65歳未満では20%となっており、アメリカでは高齢者はテクノロジーに対する恐怖心があるわけではなく、若者と同様に、健康管理のためのテクノロジーや機器を取り入れる、または取り入れたいと思っているようです。
今回のレポート(スライド295)のポイントとしては、有名テクノロジー企業と重要な個人情報である健康データを共有することに抵抗を感じないという人の数字が出ている点です。
健康データを共有してもよいと考えられるブランド力があるのかどうかの一つの基準になるかもしれません。
■医療データの増加により、医学研究・知識は3.5年ごとに倍増
医療に役立つデータ量は3.5年ごとに倍増している(1950年には50年で2倍だった)
利用可能な健康データが増加したことで臨床試験が加速され、科学者との共同研究も促進されることが期待される。
レポート(スライド300)によれば、インプットのデジタル化の増加によって、医療データは年間成長率は48%となっているそうです。
レポート(スライド302)によれば、インプットされるデータ量が増えていくことで、科学論文引用が増加しており、医学研究・知識は3.5年ごとに倍増しているそうです。
今回のレポートとは直接関係ないかもしれませんが、RESEARCHKIT、50以上の医療機関が協力しても1年以上はかかることを24時間で達成によれば、医学・医療研究用のiPhoneアプリを開発するためのオープンソースのソフトウェアフレームワークであるResearchKit公開後24時間で1万人以上が心臓血管研究にサインしたということで、この数字のすごいところは、通常の方法で医学研究の協力者を1万人集めるには、50以上の医療機関が協力しても1年以上はかかるという規模のことを24時間で達成したという点です。
もう一つのポイントは、データ数が少なくて進んでいなかった研究が、医療に役立つデータが増加し、医学研究が加速していることにより、これまで正しいと思っていた常識が覆ることも出てくるのではないかという点です。
「世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史」(著:スティーブン・ジョンソン)
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ヨーロッパでは中世から二〇世紀になるまでほぼ一貫して、水に体を浸すのは明らかに不健康どころか危険であるというのが、衛生についての社会通念だった。毛穴を土や油でふさぐことによって、病気から身を守るとされていたのだ。「水浴びをすると頭が蒸気でいっぱいになる」と、一六五五年にフランス人医師が助言している。
体を清潔に保つということは現代人からすればさも当然なことであっても、当時の人、それはたとえ医師であっても「きれいにする」ことは当然ではなかったのです。
他の例を挙げると、C型肝炎の治療薬は劇的に進歩し、今では90%近くの患者が治る!によれば、C型肝炎治療薬は劇的に進歩し、今では90%近くの患者が治るようになっているそうですが、その一方で、古い知識を持った医師によって、治療が勧められないというケースもあるそうです。
C型肝炎治療薬(インターフェロン)自体があることを知っていても、肝臓の専門医以外はその治療薬の進歩について知らないということがあるそうです。
このように、医師であっても専門医でしか知りえない情報があったり、医学に対する勉強がおろそかになっている医師もいるわけであり、人々がセンサーが付いたウェアラブルデバイスなどを今まで以上に活用するようになれば、これまで以上に医療に役立つデータが増加し、医学研究が進むとなると、昨日まで常識だった医学知識が次の日には非常識になってしまうようになることが予想されます。
おそらくそのスピードは日単位ではなく、時間単位になっていくことでしょう。
現在でも医療機関が提供するサイトの中には10年以上アップデートされていないサイトを目にしたことがありますが、もし昨日まで常識だった医学知識が次の日には非常識になってしまうような時代が来た時には、医療機関が提供するサイトでさえも誤った情報を提供してしまうこともありえます。
そう考えると、人が医療に関する情報を提供するということは事実上不可能になる時がいつかくることになり、研究者の論文発表やニュースリリースをもとにAI(人工知能)が情報を精査し、すべての情報を更新していくしか医療情報の正確性を担保する方法はないのではないでしょうか。
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■まとめ
ヘルスケア分野でIoTを活用する実証実験開始|IoTで市民の健康データを取得し、新サービス創出、雇用創出、生活習慣病の予防を目指す|会津若松市によれば、スマホアプリやウェアラブルデバイスなどから取得した市民の様々な健康データを集約し、オープンデータ化し、そのデータを活用して新サービスの創出、医療費の削減などを目指していくというニュースを取り上げましたが、この実証実験でもスタートとなっているのは、スマホアプリやウェアラブルデバイスなどから生体データを取得することです。
今回のレポートによれば、ウェアラブルデバイスは伸びていて、ユーザーは健康データを共有する意思があり、医療データの増加により、医学研究・知識は3.5年ごとに倍増しているというトレンドがあることから、ますますテクノロジーと医療分野は成長していくのではないかという期待をしてもよいかもしれません。
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