立ったり座ったりしている時間が長いと、重力の影響で脚に血や水分が溜まりやすくなります。
そこで「脚を心臓より高い位置に上げて休む」方法がおすすめです。
この姿勢がもたらす効果について、科学的な研究で比較的しっかり確認されているものをまとめました。
1. 脚のむくみ(浮腫)の軽減・静脈還流の改善(エビデンスが比較的強い)
これは最もよく裏付けられている効果です。
立ったり座ったりしていると、重力のせいで脚に血や水分が溜まりやすくなります。
重力を利用して脚に溜まった血液やリンパ液を心臓方向へ戻すことで、下肢の静脈圧が下がり、過剰な水分が排出されやすくなります。
結果として、脚のむくみが軽くなり、重だるさも和らぎます。
複数の研究で、脚の周囲径や体積の減少が確認されています。
例えば、慢性的な静脈の問題(慢性静脈不全(CVI)や静脈性浮腫)がある人でも、脚を上げて安静にするだけで脚の体積が減ることが報告されています。
運動を併用するとさらに効果が高まるという結果もあります。
【参考文献】
- Quilici BC, Gildo C Jr, de Godoy JM, Quilici BS, Augusto CR. Comparison of reduction of edema after rest and after muscle exercises in treatment of chronic venous insufficiency. Int Arch Med. 2009 Jul 14;2(1):18. doi: 10.1186/1755-7682-2-18. PMID: 19602249; PMCID: PMC2717934.
高齢者女性を対象とした研究では、仰向けで膝を上げて下腿を水平またはそれ以上に挙上する姿勢で、下腿・足部の周囲径減少と水分量減少が有意に認められました。
心拍や血圧への負担は増加しませんでした。
【参考文献】
- Muraki S, Kuroda K, Noto H, Ookura M, Saito S. Effects of various knee-raising postures in a supine position on swelling in the lower legs and feet in elderly women. J Hum Ergol (Tokyo). 2011 Dec;40(1-2):109-17. PMID: 25665215.
入院患者を対象とした研究でも、中等度の脚挙上(約15°程度)で下腿・足首の周囲径が減少し、脚の重だるさや不快感が改善したと報告されています。
【参考文献】
- Ielapi, N., Andreucci, M., Bracale, U. M., Costa, D., Bevacqua, E., Giannotta, N., … Serra, R. (2022). Elevate to Alleviate – Evidence Based Vascular Nursing Study. Nursing: Research and Reviews, 12, 39–45. https://doi.org/10.2147/NRR.S345076
2. 血の巡りがよくなる(中程度のエビデンス)
脚を上げることで、脚から心臓へ戻る血液量が増えます。
臨床では「受動的脚挙上(Passive Leg Raising)」と呼ばれ、一時的に心臓への血液戻りを増やす方法として使われています。
脚から約150〜300mL程度の血液が中枢へ移動し、一回の拍出量が増えることが多くの研究で示されています。
これにより、全体的な血の巡りが少し改善されやすいと考えられます。
3. 夜間頻尿の軽減につながる可能性(中程度のエビデンス)
日中、立ったり座ったりしていると脚に水分(むくみ)が溜まりやすくなります。
夜、横になるとこの水分が体の中心部へ戻り、血液量が増えます。
腎臓がその余分な水分を尿として処理するため、夜中の尿量が増え、トイレに起きやすくなる(夜間多尿・夜間頻尿)ことが知られています。
この仕組みを利用して、就寝前に脚を心臓より高く上げて休むことで、脚に溜まった水分を先に体の中心へ戻し、腎臓で処理しておけば、夜中の尿量を減らせる可能性があります。
【主な研究・ガイドライン】
〇日本の研究(Kibaら、2018年)では、横になった直後の脚の水分移動量が大きい人ほど、就寝後最初の尿量が増え、連続して眠れる時間が短くなる傾向が示されました。
脚のむくみが夜間頻尿の一因であることが裏付けられています。
〇国際禁制学会(ICS 2018)で発表された前向き研究では、心血管疾患のある高齢者に就寝前の脚挙上を2週間実施したところ、下肢のむくみが有意に減少し、夜間頻尿に関連する生活の質が改善。
夜間尿量も減少傾向(平均約180mL減)が見られました。
〇カナダ泌尿器科学会のベストプラクティス報告(2022年)では、夜間多尿の行動療法として明確に推奨されています。
「午後遅く〜夕方に脚を心臓より高く上げる(就寝の1〜3時間前に1〜3時間程度)、弾性ストッキングの使用」を行うと、夜間の排尿回数が減る場合が多い、と記載されています。
これらの報告から、特に「脚のむくみがある人の夜間頻尿」に対して、就寝前の脚挙上は有用な対策のひとつと考えられます。
実践する場合は、就寝の数時間前に20〜60分程度、脚を心臓より高く上げて休むのが一般的です(壁に脚を立てかける姿勢でも可)。
※効果には個人差があり、むくみの原因(心不全など)によっては医師への相談が必要です。
【参考文献】
- Kiba K, Hirayama A, Yoshikawa M, et al. Increased Urine Production Due to Leg Fluid Displacement Reduces Hours of Undisturbed Sleep. Low Urin Tract Symptoms. 2018 Sep;10(3):253-258. doi: 10.1111/luts.12176. PMID: 28675633.
- Nguyen LN, Randhawa H, Nadeau G, et al. Canadian Urological Association best practice report: Diagnosis and management of nocturia. Can Urol Assoc J. 2022 Jul;16(7):E336-E349. doi: 10.5489/cuaj.7970. (PMC版: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9328849/)
- Ervin CF, Murphy M, Rose GE, et al. Reducing Nocturia in Community Dwelling Older People with Cardiovascular Disease: A Prospective Study to Measure the Effects of active Leg Elevation. ICS 2018 Abstract #16.
■まとめ
脚を上げて休むことは、「むくみを取る」「血の巡りをよくする」「少しリラックスする」という点で、手軽で役に立つ方法です。
長時間立ち仕事・座り仕事の人、静脈不全、妊娠中、術後などにおすすめです。
「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」
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