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■最高血圧「120未満」とする米の治療目標が医療現場に波紋
by Quinn Dombrowski(画像:Creative Commons)
最高血圧120未満で病死する割合が27%下がる|米国立心肺血液研究所によれば、米国立心肺血液研究所が発表した大規模調査の結果によれば、最高血圧を「120未満」に下げることで、心不全や心臓麻痺など高血圧がもとで発症する病気の発症を大幅に抑えられるというニュースが話題になりました。
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しかし、最高血圧120未満ということが基準になれば、高血圧患者と診断される人がさらに増えることになってしまうことになり、論争が起きるのではないかと思っていましたが、実際起きているようです。
■現状
最高血圧「120未満」!?…米の「治療目標」波紋、大半が病人扱い?
(2015/11/20、読売新聞)
国内の高血圧患者は4300万人とも言われる。
<中略>
2014年に改定された日本高血圧学会の治療指針では、若年者・中年者の治療目標は、従来の「130未満」から「140未満」に緩和された。
<中略>
厚生労働省の国民健康・栄養調査(2013年)によると、男性の最高血圧の平均値は135、女性は130。
日本人の男性の最高血圧の平均値は135、女性は130であるため、もし最高血圧が120未満になれば、高血圧と診断される人は大幅に増えてしまうことが予想されます。
■米国立心肺血液研究所の研究
研究は、50歳以上の血圧が高く、心筋梗塞などのリスクのある約9400人が対象。血圧を「120未満」に下げる患者と、「140未満」に下げる患者の2群に分け、平均で3年余り追跡し、比較した。
その結果、「120未満」にした患者の方が心不全や心筋梗塞、脳卒中などの発症率が低く、死亡リスクが27%低かった。
今回の研究対象に対して、まず50歳以上で血圧が高い人を対象にしているというのがポイントです。
すでに血圧が高い人を対象にしているわけですから、血圧を下げたほうが心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが下がるのは自然なことだと思います。
本来、今回の研究で考えるべきなのは、すでに血圧が高い人は血圧をどれくらい下げたほうがよいのかという点であって、正常血圧範囲にいる人達が血圧を下げるべきかということではないのではないでしょうか。
ただ、今回の研究を拡大して考えると、最高血圧を120未満にしたほうが良いのかもしれないとも考えられるようです。
心不全などの発症率は、120未満では5・2%。140未満では6・8%。死亡率は、120未満が3・3%。140未満が4・5%だった。死亡は、120未満にした方が90人当たりで1人少なくなる計算になる。
一方、急性腎障害などの発生率は120未満の方が4・1%と、140未満の2・5%より高まった。腎臓の血流が減りすぎて障害が起きた可能性がある。
米国の研究参加者は体格指数・BMI(正常18・5~25未満)が約30で、肥満傾向が強かった。
血圧は低ければ低いだけ良いというわけではなく、血圧が低すぎると、血流が減りすぎて腎臓に障害が起きる可能性があります。
腎動脈の動脈硬化のサインは「音」!?チェック方法・治療法によれば、腎臓は血液を届けてもらうために、「レニン」という物質を出して、血圧を上げるように働きかけることで、血圧が上がります。
血圧が下がり過ぎると、血液が届かないため、血圧を上げるように働きかけてしまい、血圧が上がってしまうということもあるようです。
■高血圧の主な治療目標
75歳未満 140/90未満
75歳以上 150/90未満
同年に出た欧州の高血圧学会などの指針や、日本高血圧学会が昨年改定した治療指針も「140未満」を原則とした。
糖尿病を持つ高血圧患者を対象とした北米の研究など数千人規模の大規模試験で、血圧を厳しく下げても、心臓病などによる死亡率の減少につながらないとの研究報告もあったためだ。
米国立心肺血液研究所の治療方針や欧州の高血圧学会の指針の流れに沿う形で日本高血圧学会の治療方針も140未満を原則としているそうです。
なお、糖尿病を持つ高血圧患者に対しては、血圧を厳しく下げても心臓病などによる死亡率の減少につながらないという研究結果もあり、米国立心肺血液研究所の研究の対象患者は50歳以上の高血圧患者約9400人(糖尿病患者は除外)となっていたと考えられます。
健康診断の新たな基準値(血圧・BMI・肝機能・総コレステロール・LDLコレステロール)とは?|健診基準値が厳しすぎて健康な人でも上限超えてしまう!?(2014年)で紹介した日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は、健康な人であっても、性別や年齢によっても基準値を超えてしまうことがあり、現在使われている基準値は厳しすぎるとして、血圧に関しては最高血圧を147にするとしたことが話題になりました。
■まとめ
現時点では「血圧」に関しては専門家の間でも意見が分かれているようです。
現状では、「140未満」を原則とした治療が行われると思います。
しかし、「120未満」の方が死亡率が低いという研究結果も一つの参考となります。
今後様々な議論が行われていくのではないでしょうか。
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