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【未来ビジョン】今後「生命保険業界の未来」はどうなる?|遠隔医療・予防医療・個人情報を一カ所に集約するサービス




■【未来ビジョン】「生命保険の未来」はどうなる?|遠隔医療・予防医療・個人情報を一カ所に集約するサービス

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by InstituteForApprenticeships(画像:Creative Commons)

落合陽一(筑波大学 学長補佐・助教)さんと岩瀬大輔(ライフネット生命社長)さんの対談では「生命保険の未来」をテーマに対談をされています。

そこで、今回は、“現代の魔法使い”が予測する「生命保険の未来」――落合陽一×岩瀬大輔対談(2017/9/15、ライフネット生命)の記事の中で出たキーワードをもとに、「生命保険の未来」について考えてみたいと思います。

■電子化された診療システムのインターフェイス

“現代の魔法使い”が予測する「生命保険の未来」――落合陽一×岩瀬大輔対談

(2017/9/15、ライフネット生命)

落合:最近よく考えているのが、電子化された診療システムのインターフェイスをどこが作るのかってことなんです。診察料が安いとか、どこの病院のベッドが空いているのかとか、そういった情報を統合してくれるものです。

【現状の医療システムの問題】総合病院に軽症から重症までの患者が集中し、治療を必要する患者に専門的な治療が届いていないによれば、現状の医療システムの問題は、総合病院に軽症から重症までの患者が集中することで、本当に専門的な治療を必要としている患者に治療が届いていないということです。

なぜ軽症にもかかわらず大病院に行く患者が多いのか、その原因をしっかりと把握しておく必要はありそうです。

  • 「自分の病気はさぞかし大変な病気だろう」という自分の病気・症状に対する過度の評価
  • 大病院だからという安心感(ブランド信仰)・期待
  • 話を聞いてもらいたい
  • アクセスの便利さ
  • かかりつけ医がいない
  • どの病院に行ったらわからないから、とりあえず大病院に行くという考え

このようにまず大病院へ行くことを選択する患者側の考えはいろいろとありそうです。

本来であれば、地域のかかりつけ医で診断してもらい、どうしても治療できない患者を大病院が治療をするというのが地域医療の考えなのですが、その仕組み・ネットワークがうまくいっていないのかもしれません。

そこで、保険会社と病院が連携して、電子化された診療システムのインターフェイスを作り上げるというのもありそうな未来ですね。

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■遠隔医療

遠隔医療を保険会社のサービスとして提供する形も考えられそうです。

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■生命保険と予防医療

保険とIOTを融合した健康増進サービスの開発に注目!|ウェアラブルデバイスをつけて毎日運動する人は生命保険・医療保険の保険料が安くなる!?では、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険株式会社はFitbitを導入し、健康と運動データとの関係を分析する取り組みを行い、今後の新しい保険商品の開発を検討しているというニュースを取り上げましたが、保険会社各社が健康状態や生活習慣改善の取組みを考慮して保険料が設計される「パーソナル保険」の開発に取り組んでいるようです。

また、第一生命が取り組む「InsTech」とは?|保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)|医療ビッグデータの解析・健康な人ほど得をする保険商品の開発では、PHYSIO HEALTH|従業員向けの健康コーチをするモバイルヘルスプラットフォームのような、雇用主の健康保険料に対するコストを減らし、健康奨励プログラムに励む従業員に報酬を与えるシステムを企業と保険会社が組み合わせるということもあるのではないかという予測を紹介しましたが、実際にこうした取り組みが始まったようです。

「健康ポイント制度」に医療費を抑制する効果があることが初めて実証されるによれば、運動や検診など健康づくりに取り組んだ人がポイントを受け取って商品券などに交換する「健康ポイント制度」に、医療費を抑制する効果があることが初めて実証されたそうです。

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積極的に計画・実行する人はがん・脳卒中・心筋梗塞の死亡リスクが低い|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターによれば、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の行動をとる人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低く、また、脳卒中リスクが15%低く、脳卒中心筋梗塞などで死亡するリスクが26%低いという結果が出たそうです。

その理由としては、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の人は、がん検診や健康診断を受診するため、病気の早期発見につながり、病気による死亡リスクが低下して可能性があるようです。

これからは保険会社の立ち位置が「病気になってからの保険」ではなく、「予防のための保険」というものになっていき、保険会社が予防医療における大事なプレーヤーになっていくのではないでしょうか。

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■何歳の時に何をしていましたよということを共有できるサービス

■個人情報を一カ所に集約するサービスのプレーヤーを保険会社が担う

情報銀行・PDS等のデータ流通市場の構築
個人からデータを預かり、それらを集約し提供する仕組みである「情報銀行」やPDS(パーソナルデータストア)等の新たなデータ流通の枠組みの実現に取り組む企業や、データ利活用企業等との取引を仲介するデータ流通事業者等が登場。

参考画像:「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)

「新産業構造ビジョン」(2017/5/30、経済産業省)によれば、個⼈からデータ(購買・金融・移動・健康データ)を預かり、それらを集約し提供する仕組みである「情報銀⾏」やPDS(パーソナルデータストア)などを担う事業者として、通信事業者や金融機関などが挙げられていますが、保険会社は長期にわたって付き合うことを前提としているので、こうした事業に向いているのかもしれません。

エストニア、医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用すべく試験運用中|日本で導入するにはどのようなことが必要か?で紹介しましたが、エストニアでは医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用しようと試験運用が始まっています。

医療データの記録・管理にブロックチェーン技術を活用するとどう変わるのでしょうか?

●個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができる

ブロックチェーン技術を活用することで医療情報の偽造・改ざんを防止すると同時に、暗号化技術によって非常に重要な情報である個人の医療情報・健康記録を安全に保管することができます。

これまでは医療情報のような個人情報は巨大な仲介役が管理していましたが、ブロックチェーン技術を活用すれば、そのデータは自分が管理することができるようになります。

データを企業に受け渡すことでサービスを利用している現代ですが、ブロックチェーンが浸透すれば、自分の情報を自分でコントロールすることができるようになるのです。

●医療従事者が患者のデータに即座にアクセスできる

必要な情報だけを医療従事者が即座にアクセスすることができるようになります。

あまりなりたくはないものですが、病気や事故になったとしても、即座に医療従事者がそのデータにアクセスすることにより治療が受けられるようになるわけです。

Its Patient Portal gives citizens access to medical documents, referral responses, prescriptions, and insurance information.Individuals can also use the Portal to declare their intentions regarding blood transfusions and organ donation.

エストニアの患者ポータルでは、医療文書・処方箋・保険情報にアクセスができ、輸血や臓器提供に関する意向も宣言することができるそうです。

エストニアで行われているような動きは日本でも始まっており、福岡市では市民の医療データと東京海上日動火災保険のデータを連携させるための実証事業を開始しているそうです。

ブロックチェーン技術の活用領域拡大に向けた実証事業を開始

(2017/1/24、東京海上日動火災保険プレスリリース)

具体的には、FDCの協力を得て福岡市域の医療機関と連携し、傷害保険金請求書に記載の医療機関に対し、ブロックチェーンを通じて入通院期間などの医療情報の提供を要求し、データ連携基盤を通じて医療情報等のデータを受領することで、医療情報に対するセキュリティを確保しつつ、保険金支払業務の簡略化、迅速化が可能かを検証します。

保険業務で扱われる秘匿性の高いデータ(契約内容・医療情報)のやり取りに対して、ブロックチェーン技術を活用することによって、セキュリティを確保しながら、事務手続きを効率化・簡略化・迅速化していくことが可能か検証していくそうです。

【参考リンク】

厚生労働省、個人の医療データの一元管理で医療の効率化目指す 2020年度からによれば、厚生労働省は、過去の病院での治療歴や薬の使用状況、健診結果など様々な情報を一元化したデータベース「PeOPLe(ピープル)」を2020年度からの運用を目指すそうです。

ICT医療においては、ICTを活用した個人の健康管理がスタートであり、カギとなります。

医療・健康分野におけるICT化の今後の方向性(平成25年12月、厚生労働省)によれば、

健康寿命を延伸するためには、ICTを利用した個人による日常的な健康管理が重要

だと書かれています。

ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー:情報通信技術)の略です。

ICTを活用した医療分野への活用の例としては次の通り。

  • 電子版お薬手帳や生活習慣病の個人疾病管理など患者・個人が自らの医療・健康情報を一元的、継続的に管理し活用する仕組み
  • 地域包括ケアシステム(電子カルテ情報を地域の診療所が参照する)
  • ICTを活用してレセプト等データを分析し全国規模の患者データベースを構築し、疾病予防を促進
健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省
健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省

参考画像:「新産業構造ビジョン」(2017/5/29、経済産業省)|スクリーンショット

経済産業省の「新産業構造ビジョン」によれば、個人が自らの生涯の健康・医療データを経年的に把握するため、また、最適な健康管理・医療を提供するための基盤として、健康・医療・介護のリアルデータプラットフォーム(PHR:Personal Health Record)を構築し、2020年度には本格稼働させていくことが必要と提案されています。

ブロックチェーンが必ずしも医療データの記録・管理に用いられる技術になるかはわかりませんが、個人の医療データの一元管理を厚生労働省が目指しているように、個人の健康情報を一元管理することに関しても興味を持つ人は多いのではないでしょうか?

そうした長期的に保存する必要のある情報に関して保険会社がキープレイヤーになる可能性がありそうです。

■未来の保険会社に支払う保険料は健康を維持するために必要なデジタルデータの保管料と利用料を支払うという形に変わっていく

未来の保険会社が健康・医療・金融分野と隣接する分野との連携をしていくと、私たちは保険料という形でお金を払っていますが、実際には個人の健康を守るためのデータの保管料・利用料を払うという形に変わっていくかもしれません。




■まとめ

保険会社が導入している健康増進活動で付与されたポイントがデジタル通貨となれば、キャッシュレス社会に近づき、医療費が削減され、老後の資産形成に対する不安が減る!?では、保険業界がヘルスケア業界、医療業界、銀行などの金融業界、行政機関と手を結んで、「保険会社が導入している健康増進活動に応じてポイントを付与する仕組みに加えて、そのポイントをデジタル通貨にする」というアイデアを採用すれば、高齢者にとっても健康的なライフスタイルを積極的に行うことで医療費の削減にもつながるでしょうし、ポイントが付与されることで老後資産が形成できないという老後に対する不安も少なくなっていくのではないかと書きました。

『サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る』(著:スティーブ・ケース)では、第三の波(あらゆるモノのインターネット)によって、あらゆるモノ・ヒト・場所が接続可能となり、従来の基幹産業を変革していく中で、企業や政府とのパートナーシップが重要になると書かれています。

サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

第二の波では、インターネットとスマートフォンの急速な普及によってソーシャルメディアが激増し、盛況なアプリ経済が誕生した。その中でもっとも成功を収めたスナップチャットやツイッターのような企業は、小規模なエンジニアリング・チームからスタートして一夜にして有名になり、第一の波の特徴であったパートナーシップをまったく必要としなかった。しかし、こうしたモデルは現在がピークであり、新たな時代は第二の波とはまったく違う―そして最初の波とよく似た―ものになることを示す証拠が増えている

この第三の波には「インパクト投資」も含まれているそうです。

社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド)とヘルスケア分野(認知症・がん)の可能性|#サキドリ↑(NHK)によれば、「社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド、SIB)」とは、障がい者支援や低所得者(貧困)支援、難民、失業、引きこもりの人の就労支援などの社会問題の解決と収益の両立を目指す社会貢献型の投資のことです。

「IoT」や「インパクト投資」といった「第三の波」で社会は大きく変化をしていきますが、社会問題を解決する手段として、一人の力ではなく、これからますますいろんな人たちとのパートナーシップが重要になってくるでしょう。

保険会社はそうしたパートナーシップを築く上での重要なプレーヤーになれるのではないでしょうか。

P.S.

最後にこの言葉をご紹介したいと思います。(アフリカのことわざなのだそうです)

別所哲也(俳優)|有名人の英語ライフ|TOEIC SQUARE

「If you go fast, go alone. If you go further, go together. (早く行きたければ、一人で行きなさい。より遠くへ行きたいのであれば、みんなで行きなさい)」







健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン




■健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン

Numbers And Finance

by Ken Teegardin(画像:Creative Commons)

健保、4分の1超が解散危機=25年度試算-健保連

(2017/9/25、時事通信)

健康保険組合連合会(健保連)は25日、大企業が社員向けに運営する健康保険組合の4分の1を超える380組合が、財政悪化で2025年度に解散危機を迎えるとの試算を発表した。

健康保険組合連合会(健保連)は、2025年度に団塊の世代が全て75歳以上となり、健保組合が高齢者医療に拠出するお金が急増するため、健康保険組合の4分の1超が解散危機を迎えるという試算を発表しました。

試算では、健保組合の平均保険料率は15年度の9.1%から25年度に11.8%に上昇。380組合の25年度推計保険料率は12.5%以上になり、中小企業の社員らが加入する「協会けんぽ」の保険料率を超える計算だ。
 健保組合の保険料率が協会けんぽより高くなると、企業は自前で健保を運営する必要がなくなり、解散につながる。

健保組合の保険料率が協会けんぽの保険料率を超えると、企業は健保組合を運営する必要がなくなるため、解散につながっていくそうです。




■まとめ

健康保険組合の財政悪化、高齢者医療費負担増で(2008/10/9)によれば、健康保険組合(健保組合)の中には、高齢者医療費の増加による負担増により、健保組合を解散したところも出ていて、例えば、西濃運輸健保組合は、高齢者医療への拠出金が増加したため、赤字となり、保険料率を引き上げる必要に迫られたため、解散し、保険料率の低い政管健保に移ることとなりました。

国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることで紹介した日本経済新聞社などが実施したアンケート調査によれば、医師の半数が国民皆保険による医療が「持続不能」と答えているそうです。

年齢階級別一人当たり医療費(平成25年度)
国民医療費の約2割が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めている。(年齢階級別一人当たり医療費(平成25年度))

参考画像:不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~|経済産業省PDF

厚生労働省「人口動態調査」, 「医療給付実態調査報告」, OECD Health Data 2014 OECD Stat Extractsによれば、国全体医療費の23%(9.2兆円)が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めているそうです。

つまり、高齢化は今後も進んでいき、医療費の増大が見込まれることから、健康保険組合の財政が悪化していく傾向は変わりないでしょう。

この状況を変えるためにも、大きく舵を切る必要があるのではないでしょうか?

そのプランとしては2つあり、1つは、現役世代は予防医療・予防医学・予測医療に変えていくということ、もう一つは、高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことです。

■予防医療・予防医学・予測医療に変えていく

「日本は予防型医療へのパラダイムシフトを」

(2017/9/13、日経デジタルヘルス)

2017年版の白書では、疾病の予防や早期発見、早期治療を柱とする「予防(志向)型医療」への転換の重要性を訴えた。これにより、国民の生産性向上と社会的コストの引き下げが可能になるとしている。

在日米国商工会議所(ACCJ:The American Chamber of Commerce in Japan)と欧州ビジネス協会(EBC:European Business Council in Japan)は、持続的な経済成長を促すことを目的に、健康寿命を延ばし病気による経済的負担を軽減するための政策を提言した「ACCJ-EBC医療政策白書2017年版」を共同で発表し、病気の予防や早期発見、早期治療を柱とする「予防型医療」への転換の重要性を訴えています。

例えば、がん検診といった予防医療・予防医学に取り組んでいくことは医療費の削減するためにも今後重要になっていくと考えられますし、また、QOL(生活の質)の向上といった間接的なコスト削減も期待できると考えられます。

積極的に計画・実行する人はがん・脳卒中・心筋梗塞の死亡リスクが低い|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターによれば、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の行動をとる人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低く、また、脳卒中リスクが15%低く、脳卒中心筋梗塞などで死亡するリスクが26%低いという結果が出たそうです。

その理由としては、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の人は、がん検診や健康診断を受診するため、病気の早期発見につながり、病気による死亡リスクが低下して可能性があるようです。

つまり、定期検診などの予防医学・予防医療を導入するということは、病気による死亡リスクが減少し、医療費の削減にもつながるということです。

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■高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なう

「フレイル(高齢者の虚弱)」の段階で対策を行ない、要介護状態の高齢者を減らそう!で紹介した厚生労働省によれば、多くの高齢者が中間的な段階(フレイル)を経て、徐々に要介護状態に陥るそうです。

高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。

そこで、フレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できるというのが今注目されている考え方です。

ただライフスタイルを自分一人で変えていくのは難しいものですので、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことによって脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功したように、また、東京都足立区の取り組みで足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたように、アメリカでは鉄欠乏症を予防するためにも鉄分を加えた強化小麦粉を義務付けているように、普段のライフスタイルの中で自然と健康に良い取り組みに変わっているというのが良いのではないでしょうか?

●イギリス食品基準庁、食品に塩分量の目標値を設定

「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルによれば、イギリスでは脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功したそうですが、その理由としては、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことにあるそうです。

NHKスペシャルの低所得者の疾病リスクに迫った「健康格差特集」に反響の声

(2016/9/21、マイナビニュース)

2006年に85品目の食品に塩分量の目標値を設定し、メーカーに自主的達成を求めた。その理由は、主食であるパンが国民の最大の塩分摂取源となっていたためだが、メーカー側は売れ行き減を懸念。見かねた医学や栄養学などを専門とする科学者団体「CASH(塩と健康国民運動)」がメーカー側に徐々に塩分を下げるように提言した。

この提言に大手パンメーカーによる業界団体も納得し、7年でパンを20%も減塩。こういった取り組みの結果、国民1人当たりの塩分摂取量を15%減らすことにつながり、年間で2,000億円の医療費削減につながったと考えられている。

現在、日本人の一日の塩分摂取量として推奨されているのは、10g未満です。

ただし、高血圧患者ではさらに基準が厳しく、1日6g未満となっています。(日本高血圧学会の高血圧治療ガイドラインより)

減塩のための食事を自分で作るのは大変ですが、食品メーカーが減塩に取り組むことによって、全体的に塩分摂取量が減らすことができるというのは大変いい取り組みだと思います。

→ 高血圧の症状・食事・数値・予防・原因 について詳しくはこちら

→ 血圧を下げる方法(食べ物・サプリメント・運動) について詳しくはこちら

●糖尿病患者を減らした東京都足立区の事例

NHKスペシャルの低所得者の疾病リスクに迫った「健康格差特集」に反響の声

(2016/9/21、マイナビニュース)

まず実行したのは飲食店巡り。お客のお通しに野菜を提供するようにお願いし、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうように店側にお願いした。

その理由は血糖値の変化にある。野菜を炭水化物よりも先に摂取することにより、食物繊維が糖の吸収を遅らせて血糖値の変化量を約30%抑えられる。

東京都足立区の平均年収は23区で最も低い300万円台前半(港区の3分の1程度)で、健康寿命は23区の平均よりも2歳短く、糖尿病の治療件数が最も多いそうです。

そこで足立区は区民が「自然と」健康になるようにする対策として行なったのが、飲食店にはお客のお通しに野菜を提供すること、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうようにお願いをし、また、区立のすべての保育園で野菜を食べる日を設け、調理は子ども自身が担当することで、楽しみながら野菜を摂取してもらうようにしたそうです。

この取り組みによって、足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたそうです。

●鉄欠乏症を予防するアメリカの事例

鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!【#みんなの家庭の医学】

鉄欠乏症を予防するためにも、鉄分を加えた強化小麦粉を義務付けている国があり、アメリカもそのうちの一国。

番組で紹介したアメリカのシリアルの中にはFDA(アメリカ食品医薬品局)が推奨する一日の鉄分摂取量を100%満たすものがあるなど、ほとんどのシリアルに鉄分が豊富に含まれているそうです。

その他の食品も日本と比べると鉄分が多く含まれているそうです。

●鉄分不足による貧血を予防するカンボジアの事例

カンボジアではサプリメントとして鉄分を補給したり、強化小麦粉を義務付けるのではない別の方法によって、鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。

デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」によれば、カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったのですが、カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。

そこで、「Lucky Iron Fish」という鉄の塊を鍋に入れることにより、摂取する鉄分を増やすことができたそうです。

ある業界だけ、自治体だけが医療費の減少のために取り組むのではなく、社会全体で医療費の減少に取り組む時が来ていると思います。

『サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る』(著:スティーブ・ケース)では、第三の波(あらゆるモノのインターネット)によって、あらゆるモノ・ヒト・場所が接続可能となり、従来の基幹産業を変革していく中で、企業や政府とのパートナーシップが重要になると書かれています。

サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)

第二の波では、インターネットとスマートフォンの急速な普及によってソーシャルメディアが激増し、盛況なアプリ経済が誕生した。その中でもっとも成功を収めたスナップチャットやツイッターのような企業は、小規模なエンジニアリング・チームからスタートして一夜にして有名になり、第一の波の特徴であったパートナーシップをまったく必要としなかった。しかし、こうしたモデルは現在がピークであり、新たな時代は第二の波とはまったく違う―そして最初の波とよく似た―ものになることを示す証拠が増えている

この第三の波には「インパクト投資」も含まれているそうです。

社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド)とヘルスケア分野(認知症・がん)の可能性|#サキドリ↑(NHK)によれば、「社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド、SIB)」とは、障がい者支援や低所得者(貧困)支援、難民、失業、引きこもりの人の就労支援などの社会問題の解決と収益の両立を目指す社会貢献型の投資のことです。

例えば、福岡県大川市の高齢者施設では、学習教材を使っての認知症予防への取り組みに社会的インパクト投資が使えるのかの実証実験として、高齢者100人が参加して、5か月間実験したそうです。

実験に参加した多くの高齢者の要介護度が下がり、公的介護費用が削減するという結果になったそうです。

【参考リンク】

みんなが安心して過ごせる社会にするためにも、1.現役世代は予防医療・予防医学・予測医療に変えていくということ、2.高齢者がフレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうこと、について考えてみてほしいです。







【関連記事】
続きを読む 健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプラン

「第二の皮膚(セカンドスキン)」がこれからのビジネスのトレンドになる!?




ミノキシジルを代表とする発毛剤・育毛剤市場の将来性はある?ない?どっち?について考えていた時に、「第二の皮膚(セカンドスキン)」がこれからのビジネスのトレンドになる可能性が高いんじゃないかという考えが浮かびました。

【目次】

■「第二の皮膚(セカンドスキン)」がこれからのビジネスのトレンドになる!?

花王の「Fine Fiber(ファインファイバー)技術」
花王の「Fine Fiber(ファインファイバー)技術」

参考画像:花王 Fine Fiber技術 Kao Fine Fiber Technology|YouTubeスクリーンショット

これまでに、パナソニックの「シミを隠したい」「メイクの時間を短縮したい」という人のために肌に「シート」を貼るというアイデアや花王の第二の皮膚を肌表面に作り出す「ファインファイバー技術」、MITの目の下のしわやたるみを消す「Second Skin」、バイオスキンが体の熱と汗に反応しフラップが開き体を冷やす「Second Skin」というアイデアを取り上げました。

このように「第二の皮膚(セカンドスキン)」というアイデアは少しずつ形になってきており、社会実装も進んできています。

■ウェアラブルも「第二の皮膚(セカンドスキン)」と捉えてみる

この「第二の皮膚(セカンドスキン)」というアイデアを広く捉えると「ウェアラブル」なものも含むのではないでしょうか?

病気を予防するためのウェアラブルデバイスや体の動きを助けるパワードスーツ、皮膚貼り付け型のセンサーなどをすべて含めたデジタルレイヤーのことを「第二の皮膚(セカンドスキン)」と捉えてみると、ヘルスケアに関わる多くの企業が参加してくることが予想されます。

■私たちの清潔に対する意識の高まりも「第二の皮膚(セカンドスキン)」が浸透する理由

この「第二の皮膚(セカンドスキン)」が浸透するのではないかと考えるもう一つの理由として、私たちの清潔に対して求める要求が高まっていることが挙げられます。

料理をする人も手袋をつけるようになったのを見かけるようになりましたし、試食販売をする人の中には手袋、透明のマスクをつけている人もいます。

私たちの清潔に対する意識の高さを反映して企業やお店側が対応しているわけですが、これらの考え方を極端にしていくと、人間はもう一枚の皮膚をまとうようになるのではないかと考えました。

■すでに人間の肌(皮膚)による体温調節機能では対応できない気温になっている?

その他にも、熱中症で倒れる人が夏になると続出しますが、すでに人間の皮膚による体温調節機能では対応できない気温になっていると考えれば、体温調節のための「第二の皮膚(セカンドスキン)」を着用するということも考えられます。

Make It Wearable Finalists | Meet Team Wristify

【関連記事】

このように考えると、「第二の皮膚(セカンドスキン)」市場はかなりの規模になってくるのではないでしょうか?

【まとめ】

「第二の皮膚(セカンドスキン)」がこれからのビジネスのトレンドになる!







【ゆるスポーツ】棒サッカーのようなユニバーサルスポーツを「生きがい」にしてみては?棒サッカーは認知症予防にもつながる!?




【目次】

■「棒サッカー」についてご存知ですか?

「棒サッカー」を知ったのはこのツイートがきっかけです。

棒サッカーについては、ぜひ日本棒サッカー協会のページで一度チェックしてほしいのですが、素晴らしいと思ったのは、このスポーツが座ることや棒を振る力があれば、誰でもいつまでもプレーすることができるユニバーサルスポーツだということです。

棒サッカーは高齢者施設でのレクリエーションの一環としてスタートしたそうですが、老若男女問わず、またハンディキャップの有無を問わず、要介護の高齢者でも楽しむことができるスポーツにまで進化しています。

棒サッカー第1回大会

■棒サッカーのようなユニバーサルスポーツを「生きがい」にしてみては?

意外に多い高齢者のうつ病|なぜ高齢者のうつ病が多いのか?によれば、高齢者のうつ病を予防する方法として、社会的役割を持ち続けること、人のために役立っているという生きがいを持つことが重要であると紹介しました。

働く理由
働く理由

参考画像:働く理由|平成28年版厚生白書|スクリーンショット

厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「高齢社会に関する意識調査」(2016年)によれば、働く理由についてたずねたところ、「経済上の理由(68.1%)」が最も多かったものの、次いで「生きがい、社会参加のため(38.7%)」があり、働くことを通じて、生きがいをもったり、社会とつながりたいという意識を持っている人も多いようです。

働くことだけではなく、スポーツ自体を「生きがい」としてみてもいいのではないでしょうか?

■棒サッカーは認知症予防にもつながる!?

棒サッカー
棒サッカー

参考画像:棒サッカー第1回大会|YouTubeスクリーンショット

Boost Your Brain Health|Rush University Medical Center(ラッシュ大学医療センター)によれば、認知症のリスクを減らす方法として、運動・食事・脳を柔軟にする・人生の目的を持つことを挙げています。

囲碁・将棋・麻雀などの対戦ゲームをすることは認知症対策に有効!?によれば、対戦型ゲームが認知症予防を予防することに役立つ理由として、1.知的なゲームで頭を働かせることがよいから、2.対戦ゲームは相手とのコミュニケーションが必要だから、という理由が挙げられています。

棒サッカーはチームスポーツであり、チームのメンバーが勝つという目標のために協力してコミュニケーションをとっていく必要があります。

認知症予防のために棒サッカーをするのではなく、棒サッカーというスポーツを楽しむことが結果として認知症予防につながるというのがいいとおもいます。

→ 認知症予防に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら

■「ゆる(YURU)」の考え方

■まとめ

40代・50代になると、次第に思ったように体が動かせなくなり、スポーツから遠ざかったりする人もいるのではないでしょうか?

「棒サッカー」に限らず、多くの人が参加できるユニバーサルスポーツにこれからますます注目が集まりそうです!







P.S.

Is this Japanese concept the secret to a long, happy, meaningful life?

(2017/8/9、World Economic Forum)

While there is no direct English translation, ikigai is thought to combine the Japanese words ikiru, meaning “to live”, and kai, meaning “the realization of what one hopes for”.

「生きがい」とは、「生きる理由」の概念や人生の目的を持つ考えの意味ですが、英語には直接的に「生きがい」に当たる言葉はないそうです。

【参考リンク】

超高齢社会の医療課題への準備状況を示した評価指数において日本は13か国中最下位|患者と医療従事者における認識のギャップや新しい医療技術に関する認知不足|#Philips




■超高齢社会の医療課題への準備状況を示した評価指数において日本は13か国中最下位|患者と医療従事者における認識のギャップや新しい医療技術に関する認知不足|#Philips

超高齢社会での医療課題が浮き彫りに 13か国意識調査で日本が最下位
超高齢社会での医療課題が浮き彫りに 13か国意識調査で日本が最下位

参考画像:超高齢社会での、日本が抱える医療課題が浮き彫りに~フィリップスの13か国意識調査で最下位~(2016/6/9、フィリップス・ジャパン)|スクリーンショット

超高齢社会での、日本が抱える医療課題が浮き彫りに~フィリップスの13か国意識調査で最下位~

(2016/6/9、フィリップス・ジャパン)

世界13か国(オーストラリア、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、日本、オランダ、シンガポール、南アフリカ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、イギリス、米国)において、各国の医療環境に対する患者、医療従事者の意識調査「The Future Health Index:How can connected care help answer the Global health challenge?」(未来の医療環境指数:コネクテッド ケアは医療課題にどう対応できるか?)の調査結果によれば、13か国の評価指数の平均が56.5ポイントでしたが、日本の評価指数は13か国中最も低い数値で49.0ポイントでした。




1.医療アクセス

健康な生活、予防、診断、治療、ホームケアへのアクセスについて、患者と医療従事者の間で意識の乖離が存在
健康な生活、予防、診断、治療、ホームケアへのアクセスについて、患者と医療従事者の間で意識の乖離が存在

参考画像:超高齢社会での、日本が抱える医療課題が浮き彫りに~フィリップスの13か国意識調査で最下位~(2016/6/9、フィリップス・ジャパン)|スクリーンショット

・「一連のヘルスケアプロセス」(健康な生活、予防、診断、治療、ホームケア)において、医療に関する情報やリソースへアクセスできると考えている患者の割合はいずれの項目も4割を下回り、医療従事者との間にかい離が存在

「一連のヘルスケアプロセス」(健康な生活、予防、診断、治療、ホームケア)において、「家族/自らの病気に必要な医療リソース」(アクセスできると考える割合:患者18%、医療従事者38%)、「健康的に生活する為の情報/リソース」(患者27%、医療従事者52%)、「病気の予防を助ける薬や治療」(患者34%、医療従事者67%)、「診断の為の検査」(患者37%、医療従事者76%)、「現在/将来の病状に必要な治療」(患者30%、医療従事者68%)となり、医療に関する情報やリソースへアクセスできる(入手・利用ができる)と考えている患者の割合は、医療従事者を大きく下回り、また医療従事者と患者との間には意識に顕著な差が見られました。

・医療従事者は在宅医療へのリソースとアクセスの改善、患者は医療費のコスト削減を求める割合が高い

患者の71%、医療従事者の90%は高齢化を日本の医療が抱える最大の課題と認識しており、高齢化問題への対応について、医療従事者では「在宅医療へのアクセスの改善」を求める意見が最も多く、32%に上ったのに対し、患者では「医療コストの削減」が55%で最多という結果になりました。

・提供されている医療の水準に対するコストについて、医療従事者と患者の意識が異なっている。

患者と医療従事者の意識差は、医療費の自己負担においても顕著に表れており、患者の57%が、提供される医療の水準に比べて、コストが高すぎると回答する一方で、医療従事者の半数に当たる51%は提供する医療の内容とコストのバランスは「適正」と考えており、医療コストについて医療従事者と患者の意識が異なっています。

2.医療の統合

医療の統合の現状について、患者、医療従事者の半数前後が「まったく統合されていない/あまり統合されていない」と回答
医療の統合の現状について、患者、医療従事者の半数前後が「まったく統合されていない/あまり統合されていない」と回答

参考画像:超高齢社会での、日本が抱える医療課題が浮き彫りに~フィリップスの13か国意識調査で最下位~(2016/6/9、フィリップス・ジャパン)|スクリーンショット

・患者、医療従事者の半数前後が、医療の統合が進んでいないとの認識

「医療の統合」(医療界の関係者がそれぞれ独立して患者に対応するのではなく、効果的なコミュニケーションを行いながら、連携して患者の治療に当たる)について、現状については「まったく統合されていない/あまり統合されていない」(患者:46%、医療従事者:59%)と回答しています。

・医療の統合効果として、患者の医療費負担への影響については意見が割れているものの、質の改善については、患者、医療従事者の過半数が有効と考えている

統合がコストに与える影響について、患者では、統合によりコストが「上昇する」と考える人の割合が39%で、「低下する」(32%)、「影響はない」(29%)を上回り、医療従事者では「低下する」(46%)が最も多く、「上昇する」(29%)、「影響はない」(25%)となっています。

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3.「コネクテッドケア技術」の導入

コネクテッドケア技術の導入について、患者、医療従事者ともに半数が賛成
コネクテッドケア技術の導入について、患者、医療従事者ともに半数が賛成

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医療ICTなどを活用し、医療システムの関係者間(医師や患者、病院、保険会社、政府など)における医療情報の共有を可能にする医療技術である「コネクテッドケア」については、在宅医療の推進や、医療の質の向上などに寄与すると考えられているそうです。

・コネクテッド ケアは、患者、医療従事者ともに現状ではほとんど認知がないものの、将来的な技術の導入については半数以上が賛成

日本はコネクテッドケア技術の導入に関する指数が38.4ポイントにとどまり、13か国の平均指数(47.8ポイント)を大きく下回っています。

コネクテッド ケア技術の認知度については、患者の84%、医療従事者の80%が「よく知らない」と回答し、認知度の低さが浮き彫りとなっています。

ただ、コネクテッド ケア技術の導入については、半数の患者(56%)、医療従事者(50%)が賛成しています。

・海外においてはオンラインビデオ診断などのサービスが始まりつつある一方、日本においては患者、医療従事者の半数以上が対面診療を重視

・オンラインの活用については、対面診療に代わるサービスではなく、補完するものとして関心が寄せられている。

コネクテッド ケアに関連して、オンラインを活用した患者と医療従事者のコミュニケーションのニーズについても質問したところ、患者(54%)、医療従事者(59%)が対面診療によるコミュニケーションを希望しました。

また、対面診療をサポートするオンラインサービスの活用法については、「診察予約」(患者:69%、医療従事者55%)、「検査結果の受け取り」(患者:56%、医療従事者48%)、「医学的な質問」(患者:56%、医療従事者44%)に関心があることが分かりました。




■まとめ

今回の意識調査では、将来の医療課題に対する各国の準備状況として、医療アクセス、「医療の統合」に向けた現状、および「コネクテッド ケア技術」の導入状況に対する患者、医療従事者の意識を検証し、「評価指数」として算出したところ、日本は調査対象となった13か国で最も指数が低いことがわかりました。

調査結果からは、患者と医療従事者における認識のギャップや、新しい医療技術に関する認知不足といった、超高齢社会を支えるための医療環境の整備における課題が明らかになりました。

私たちは高齢化に伴う健康や金融リスクを低く見積もりがち!?|英エコノミスト「リアリティ・チェック:健康・経済プラン・QOLが映し出す未来像と現実のギャップ」で紹介した英国の国際経済誌「The Economist」グループの調査部門であるエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が、メットライフ生命の協力の下で、8カ国・地域(オーストラリア・中国・香港・インド・日本・マレーシア・韓国・米国)の計1600人を対象としたアンケート調査を実施し、回答者が考える平均余命や、最も不安に感じている疾患、また退職後の所得に関する自国・地域の相対的なランクなど健康管理や金融資産などに関してまとめた国際調査報告書「リアリティ・チェック:健康・経済プラン・QOLが映し出す未来像と現実のギャップ」によれば、人びとは高齢化に伴う健康や金融リスクを低く見積もっているようです。

国民皆保険制度により、多くの国民が比較的低負担で医療にアクセスできることは、日本の医療制度の大きな特徴なのですが、国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることで紹介した日本経済新聞社などが実施したアンケート調査によれば、医師の半数が国民皆保険による医療が「持続不能」と答えているそうです。

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日本はもっと現状を知り、患者と医療従事者のあいだの認識のギャップを埋め、新しい医療技術に関して知る努力をし、高齢化社会を迎えるための医療システム改革が必要なのではないでしょうか?

Why Artificial Intelligence is the Future of Growth
Why Artificial Intelligence is the Future of Growth

参考画像:Why Artificial Intelligence is the Future of Growth – Accenture|スクリーンショット

AIで日本の経済成長率が3倍に?–2035年の成長予測をアクセンチュアが発表

(2016/11/18、cnet japan)

日本では、AIシナリオにおけるGVA成長率が、ベースラインシナリオの場合に比べて3倍以上になる可能性

アクセンチュアが発表した「Why Artificial Intelligence is the Future of Growth」によれば、2035年の各国の経済規模について2つのシナリオで予測を行っており、日本では「AIシナリオ(AIの影響力が市場に浸透した場合に期待される経済成長を示す)」における粗付加価値(GVA)成長率は、「ベースラインシナリオ(従来予想の経済成長を示す)」と比べると3倍以上になる可能性があるそうです。

ほかの国と比べても日本はAIを活用することによる恩恵が得られるという予測が立てられているのですが、反対に考えると、日本はそれだけ労働生産性が低いとも考えられます。

このことが全て医療システムに当てはまるわけではないでしょうが、高齢化社会を迎えるにあたって、医療システム改革は必須であるので、これまで以上に医療アクセスや医療統合、コネクテッドケアについて関心をもつ必要があるのではないでしょうか?







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