カレーの黄色い色のもととして知られる「クルクミン」。
ウコン(ターメリック)に含まれる成分ですが、このクルクミンと大腸がん予防について興味深い研究結果が発表されました。
徳島大学などの研究グループが全国26施設、約600人を対象に2年間のランダム化比較試験を行ったところ、クルクミンを摂取したグループでは、6mm以上の比較的大きな大腸腺腫(ポリープ)の発生リスクが約44%低かったことがわかりました。
ただ、この研究は「クルクミンを摂れば大腸がんを予防できる」という研究ではありません。
では、何がわかったのでしょうか?
■クルクミンを2年間摂取するとどうなった?
今回の研究対象となったのは、大腸腺腫を内視鏡で摘除した約600人です。
研究では対象者を、
高吸収型クルクミン「セラクルミン®」を摂取するグループ
有効成分を含まないプラセボを摂取するグループ
に無作為に分けました。
患者と医療者の双方がどちらを摂取しているかわからない「二重盲検法」で2年間投与し、その後、大腸内視鏡検査で新たに発生した腺腫を調べています。
その結果、まず押さえておきたいのは、主要評価項目である「大腸腺腫全体の発生率」については、クルクミン群とプラセボ群で有意な差がなかったことです。
つまり、クルクミンを摂取すれば大腸ポリープそのものができなくなる、という結果ではありませんでした。
ところが、腺腫の「大きさ」に注目すると違いがありました。
■6mm以上の比較的大きな腺腫が13.3%から7.5%に
6mm以上の腺腫の発生率は、
プラセボ群:13.3%
クルクミン群:7.5%
となり、クルクミン群では発生リスクが約44%低くなりました(相対リスク0.56、95%信頼区間0.33~0.95)。
さらに、6mm以上の腺腫の個数もクルクミン群で少なく、発生した腺腫全体についても、その大きさが小さかったことがわかりました。
研究グループは、この結果について、クルクミンは腺腫ができること自体を完全に防ぐというより、腺腫が大きくなることや進展することを抑えている可能性を示しています。
では、なぜ「腺腫が大きくならなかった」ことが重要なのでしょうか?
■大腸がんと「腺腫」の関係
ここで知っておきたいのが、大腸がんと「大腸腺腫(腺腫性ポリープ)」との関係です。
大腸がんには複数の発生経路がありますが、国立がん研究センター「大腸がんファクトシート2024」でも、大腸がんの主な発生経路の一つとして「adenoma-carcinoma sequence(腺腫・がん連続説)」が挙げられています。
また、国立がん研究センター「大腸がんのリスクファクター」では、大腸がんの大部分は腺腫性ポリープから発生する一方で、ほとんどの腺腫性ポリープは良性であり、がん化するのは一部であると説明されています。
大事なのはここからです。
ポリープは大きいほど大腸がんになるリスクが高く、また、ポリープのできやすい人は大腸がんになるリスクが高いとされています。
つまり、大腸がん予防を考えるうえでは、
腺腫を見つけて適切に取り除く
ことに加えて、
「大きくしない」「繰り返し増えるのを抑える」
というアプローチも研究する価値があるわけです。
以前HAKURAIDOUでも、「大腸ポリープの手術内容・大腸ポリープ切除後の食事の注意点」の記事で、ポリープの大きさとできやすさに注目し、「大腸ポリープをいかに小さく、またできにくくするかは大腸がん予防の一つのアプローチ」と紹介しました。
今回のクルクミン研究は、まさにこの点で興味深い研究なのです。
■ポリープができやすい人にも注目
もう一つ興味深い結果があります。
今回の研究では、過去に摘除された大腸腺腫の数が多い人ほど、クルクミンによる再発抑制効果が高くなる傾向がみられました。
特に過去に6個以上の腺腫を摘除していた人では、2年後に4個以上の腺腫が発生するリスクが、プラセボ群より低くなりました(リスク比0.40)。
つまり今回、
「比較的大きな腺腫が少なくなった」
だけでなく、
「もともと腺腫を繰り返していた人ほど効果が大きくなる可能性が示された」
という結果が出たわけです。
ポリープの大きさが大きいほど大腸がんになるリスクが高く、ポリープのできやすい人ほど大腸がんリスクが高いとされていることを考えると、この2つに関係する結果が得られたことが今回の研究の興味深いポイントといえます。
■「クルクミンで大腸がんを予防できる」という研究ではない
ただし、ここは非常に重要です。
今回確認されたのは、大腸がんそのものの発症が減ったことではありません。
研究グループも、今後さらに長期間追跡することによって、クルクミンが大腸がんそのものの発症予防につながるのかを検証する必要があるとしています。
そして、もう一つ注意したいポイントがあります。
今回の研究で使われたのは、普通のカレーやウコンそのものではなく、通常のクルクミンより吸収性を高めた高吸収型クルクミン「セラクルミン®」です。
したがって今回の結果から、
「カレーをたくさん食べれば大腸がんを予防できる」
と考えたり、市販のクルクミンサプリメントに同じ結果をそのまま当てはめたりすることはできません。
■それでも今回の研究が面白い理由
今回の研究の面白さは、「クルクミン=がん予防」という単純な話ではありません。
むしろ、
「大腸がんにつながる可能性がある腺腫を、大きくしない、繰り返し増やさないための方法になりうるのではないか」
という可能性を、実際に人を対象とした臨床試験で調べたところにあります。
約600人を対象に、全国26施設が参加するランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験として2年間検証され、6mm以上の腺腫の発生率・個数・大きさについて抑制が認められました。また、有害事象の発生頻度について両群に差はありませんでした。
大腸腺腫そのものを完全に防ぐことはできなかった。
けれども、「大きくなるのを抑える」という別の可能性が見えてきた。
そして、その意味を考えるとき、大腸がんと腺腫の関係が重要になってくるわけです。
今後、長期追跡によって大腸がんそのものの発症予防につながるのかが明らかになれば、さらに興味深い研究になりそうです。
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【参考文献・参考資料】
徳島大学「カレー粉成分クルクミンが大腸前がん病変の再発を抑制 ~全国26施設・約600人のランダム化比較試験を実施~」、2026年9月25日。
Takayama T, Okamoto K, Ishikawa H, et al. Curcumin Suppresses Growth of Recurrent Colorectal Adenoma After Endoscopic Resection: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Trial. The American Journal of Gastroenterology. Accepted manuscript, August 28, 2026. DOI: 10.14309/ajg.0000000000004193.
国立がん研究センター「大腸がんファクトシート2024」。大腸がんの発がんメカニズム、リスク、検診などについての資料。
井上真奈美・田島和雄「大腸がんのリスクファクター」国立がん研究センター。腺腫性ポリープの大きさ・できやすさと大腸がんリスクについて。
国立がん研究センターがん対策研究所「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版」。