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被災のストレスで血圧が上がる「災害高血圧」

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■被災のストレスで血圧が上がる「災害高血圧」

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by Sean(画像:Creative Commons)

被災のストレス「災害高血圧」に注意 脳卒中の引き金に

(2018/7/21、朝日新聞デジタル)

自治医科大の苅尾七臣(かずおみ)教授(循環器内科)によると、「災害高血圧」は被災直後から起こり、生活環境や生活習慣が安定するまで続く。被災のストレスや、普段していた活動ができないこと、食生活の変化による塩分摂取の増加などが原因だ。特に、家族の死亡や家屋の全壊などで大きなストレスがかかった人▽75歳以上の人▽高血圧や糖尿病、心不全などの循環器疾患の既往がある人――は高リスクとされる。

自治医科大の苅尾七臣教授によれば、被災によるストレスなど血圧が上がる「災害高血圧」は生活環境が安定するまで続くそうです。

●ストレスと高血圧

仮面高血圧(職場高血圧)とは?健診では正常、職場では高血圧によれば、ストレスに直面すると闘争・逃走神経である交感神経が血圧を上げます。

また、身体活動量、喫煙、飲酒、及び震災時の自宅被害は、メタボリックシンドロームと有意な関連がある|東日本大震災の被災地の健康状態のコホート調査|東北大・岩手医科大によれば、高血圧等の治療中断率が、内陸部と比べ沿岸部で高く、高血圧治療中断者の収縮期血圧は、通院中の者に比べて高かったので、「災害高血圧」のリスクはさらに高まることが予想されます。

●食生活の変化による塩分摂取の増加と高血圧

避難所の食事は糖尿病が悪化しやすい!?医療チームが糖尿病悪化を防ぐ指導|熊本地震によれば、被災して避難所での生活をしていると、炭水化物の割合が多くなりがちであるため、血糖値が上下動しやすいことが考えられます。

このように避難所の生活では高血圧のリスクが高い人であっても塩分摂取を気をつける食生活ができないため、高血圧のリスクが高まると考えられます。

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●睡眠と高血圧

 苅尾教授は「予防には、20分以上の歩行などで体を意識的に動かすことや、6時間以上の睡眠が大事。水やお茶で水分を」と話す。

また、睡眠障害のある患者は、糖尿病・高血圧・動脈硬化になりやすい?によれば、睡眠障害が、動脈硬化高血圧、血糖値の上昇につながる可能性があるそうです。

メタボリックシンドローム予防には睡眠の改善が必要で紹介した日大医学部の兼坂佳孝講師が2万2000人を対象に睡眠時間とメタボの関係を調べた調査によれば、睡眠7~8時間の人のメタボリスクが最も低く、これを超えても未満でも、糖尿病のリスクが3~5倍に上がったそうです。

■高血圧を予防するためには血圧測定が重要

上(収縮期)の血圧が140を超えることが続くなら、災害高血圧の可能性がある。一方で、上の血圧が100を切り、心拍数が通常よりも20以上多いようなら、脱水や熱中症のサインとなる。

高血圧を予防するためには、血圧測定をすることが重要です。

→ 血圧の測り方|高血圧や動脈硬化を発見するためにも血圧測定方法のポイントをマスターしよう! について詳しくはこちら

ただ、収縮期血圧が100を切り、心拍数が通常よりも20以上多いようなら、脱水や熱中症のサインだということで、夏の暑い時期は熱中症の恐れもあり、塩分摂取をしなければいけないといわれていたりして、自己判断は難しいかもしれません。

→ 高血圧とは|高血圧の症状・食事・予防・原因・対策 について詳しくはこちら

→ 血圧を下げる方法(食べ物・サプリメント・運動) について詳しくはこちら

■まとめ

日常では病気をコントロール出来ていても、被災して避難所の生活を強いられている場合には、病気をコントロールすることができずに、様々な症状が現れますので、体調の違和感を感じたら、医師や看護師などに相談するようにしてほしいですね。

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心房細動患者の脳梗塞リスクを計算する方法

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■心房細動患者の脳梗塞リスクを計算する方法

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by Danilo Vidovic(画像:Creative Commons)

脳梗塞の原因として増えているのが、不整脈の一種である『心房細動』による脳梗塞です。

通常心臓は一定のリズムで一分間に60から100回拍動しますが、心房細動になると、心臓は不規則に300回以上拍動します。

心房細動が起きると、心臓の中の血がよどんで血のかたまり(血栓)ができやすくなり、それが血流にのって、脳の血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。

高齢化で急増、脳梗塞を引き起こす「心房細動」

(2015/2/2、日本経済新聞)

危険因子 点数 例.75歳で高血圧・糖尿病がある場合
高血圧 1点 1点
年齢が75歳以上 1点 1点
糖尿病 1点 1点
心不全 1点 0点
脳梗塞にかかったことがある 2点 2点
合計 計0~6点 計3点

この表はCHADS2(チャッズ・ツー)スコアと呼ばれ、心房細動患者が脳梗塞を発症する危険度を知るための指標として使われており(Gage BF, et al.JAMA. 2001; 285:2864-2870.)、心房細動患者の脳梗塞リスクを算出する方法によれば、点数が大きいほど脳梗塞のリスクが高いそうです。

合計点の約2倍の値が、一年間に脳梗塞を発症する頻度の目安となり、例として、75歳で高血圧・糖尿病がある人の場合は、合計3点となり、この2倍の値は6点となり、一年間に6%の割合で脳梗塞を発症する恐れがあるということになるそうです。

脳梗塞リスク因子は、加齢・高血圧糖尿病・心不全ということですので、しっかりと生活習慣を見直していきましょう。

→ 脳梗塞とは|脳梗塞の症状・原因・予防 について詳しくはこちら







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「隠れメタボ」914万人|男性380万人、女性534万人|厚生労働省研究班

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【目次】




■隠れメタボ914万人

Tokyo

by Teo Ruiz(画像:Creative Commons)

「隠れメタボ」914万人…肥満者同様にリスク

(2016/3/7、読売新聞)

男性の10・9%、女性の13・6%が、体格指数(BMI)25未満で腹囲もメタボの基準未満なのに、高血圧、高血糖、脂質異常のうち二つ以上の異常を持つことがわかった。この数字をもとに、全国で男性380万人、女性534万人の隠れメタボ患者がいると推計した。

厚生労働省研究班(代表=下方浩史・名古屋学芸大教授)によれば、肥満ではない(BMI25未満で腹囲もメタボの基準未満)のにもかかわらず、高血圧・高血糖・脂質異常のうち2つ以上の異常を持つ「隠れメタボリックシンドローム」の患者は全国で914万人に上るとする推計されるそうです。

隠れメタボ 全国で360万人(2012/1/2)によれば、研究班で40歳以上の男女2400人を無作為に選び調査したところ、胴回りが基準より細く、肥満ではないのに血圧や血糖値など2つ以上の項目で基準を超えている人がおよそ5%いたそうで、この数字を日本全体に当てはまると、360万人になるという計算でしたが、今回の数字はこれを大きく上回る結果となりました。

→ メタボリックシンドローム について詳しくはこちら

メタボ健診、非肥満でも危険大 厚労省研究班が大規模調査(2009/4/16)によれば、厚生労働省研究班が全国の40~69歳の男女約3万人を対象に実施した大規模調査で、肥満でなくても血圧や血糖値など血液検査値に異常があれば、死亡の危険性が高まることが明らかになっています。

細身の体型なのに、内臓脂肪が多い?内臓脂肪を減らすには?日本人は欧米人より内臓脂肪がたまりやすい?によれば、日本人は欧米人に比べて内臓脂肪がつきやすい性質があるようです。

日本人はヤセ型でも糖尿病になりやすいといわれていますが、糖尿病“やせ”の人こそ要注意によれば、日本人は、欧米人に比べて血糖値を下げるインスリン分泌能力が低いため、太っていなくても糖尿病になりやすいため、たとえやせていたとしても糖尿病になる可能性があるそうです。




メタボリックシンドロームの診断基準

メタボリック症候群の診断基準はウエストが男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪の面積が100平方センチ以上になっている目安)またはBMI(25以上)が基準以上で、それに加えて

1.中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dl以上かつ/またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)40mg/dl未満、

2.収縮期血圧(上の血圧)130mmHg以上かつ/または拡張期血圧(下の血圧)85mmHg以上

3.空腹時血糖110mg/dl以上

の脂質代謝、血圧、血糖の3項目のうち、2つ以上あてはまればメタボリック症候群だということになっています。

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■隠れ○○

今回は「隠れメタボ」でしたが、他にも隠れ○○について取り上げてきました。

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朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血リスクが36%高まる|大阪大など

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■朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血リスクが36%高まる

Breakfast at CornerStone - Park Hyatt Seoul

by Matt_Weibo(画像:Creative Commons)

朝食なし、脳出血リスク36%増=血圧上昇原因か―大阪大など

(2016/2/4、時事通信)

調査開始時に朝食回数を週に0~2回と答えていた人は、毎日取る人に比べ脳出血になる確率が36%高かった。欠食の頻度が高いほど危険性は高まった。

磯博康大阪大教授と国立がん研究センターなどのチームによれば、朝食を食べる回数が週2回以下の人は、毎日食べる人に比べて脳出血リスクが36%高まるそうです。

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■朝食の欠食状況

朝食欠食状況の変遷|平成28年食育白書
朝食欠食状況の変遷|平成28年食育白書

参考画像:第1部食育推進施策をめぐる状況|平成28年食育白書スクリーンショット

第1部食育推進施策をめぐる状況|平成28年食育白書

普段、朝食をほとんど毎日食べていると回答した成人は83.7%、小学6年生は87.3%、中学3年生は83.3%という結果でした。

一方、朝食の欠食状況について、朝食を「週に2~3日食べる」、「ほとんど食べない」と回答した成人は11.4%だったのに対し、朝食を「あまり食べていない」、「全く食べていない」と回答した小学6年生は4.5%、中学3年生は6.6%という結果でした(図表1-1-5)。

平成28年食育白書によれば、朝食の欠食状況について、朝食を「週に2~3日食べる」、「ほとんど食べない」と回答した成人は11.4%だったそうです。

朝食抜き、30代男性の30%超=10年で10ポイント上昇で紹介した厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」によれば、若い男女を中心に朝食を取らない人の割合が増加傾向にあり、30代男性では10年前に比べ約10ポイント上昇し、30%を超えているそうです。




■なぜ朝食を食べないことが脳出血の危険性を高めるの?

なぜ朝食を食べないことが脳出血の危険性を高めるのでしょうか?

朝食の欠食と脳卒中との関連について|国立がん研究センター

脳出血の最も重要なリスク因子は高血圧で、特に、早朝の血圧上昇が重要なリスク因子であると考えられています。また、朝食を欠食すると空腹によるストレスなどから血圧が上昇することが報告されています。逆に朝食を摂取すると血圧上昇を抑えられることも報告されています。これらの報告から、朝食を欠食することで朝の血圧が上昇し、毎日朝食を摂取する人に比べて脳出血のリスクが高くなっていた可能性が考えられます。

脳出血の危険因子は高血圧で、特に早朝の血圧上昇が重要な危険因子なのだそうです。

朝食を食べないとストレスなどから血圧が上昇すると報告されており、そのことから、朝食を食べないことによって、脳出血リスクを高めると考えられるようです。

朝食を食べると、糖尿病や高血圧の予防になる!?によれば、たっぷり朝食を食べる派の人は、やせやすく、また糖尿病高血圧高コレステロール血症を予防できるという結果が出たそうです。

それは、食後の血糖値の上昇が緩やかであることにより、太りにくく、糖尿病高血圧高コレステロール血症といった病気にもなりにくくなっているようです。

→ 高血圧の症状・食事・数値・予防・原因・対策 について詳しくはこちら

■朝食と健康の関係

●朝食を食べる習慣を持つ人は年収が高い

「所得と生活習慣等に関する状況」のグラフから見えてくるものー厚生労働省調査によれば、性別に関係なく、朝食を食べる習慣を持つ人ほど年収が高い、もしくは、年収が高い人ほど朝食を食べる習慣を持っているといえます。

これは、年収が高い人は結婚している率が高く、結婚していると朝食を食べる習慣を持ちやすいのかもしれませんし、また、年収が高い人は朝食を食べる重要性を認識しているために朝食を食べているのかもしれません。

●朝食を食べない人は、脂肪がエネルギーとして消費されず、コレステロール量が増加してしまう

体内時計 ダイエット|たけしの家庭の医学 5月25日

内臓:朝食がリセット方法

※内臓の時計遺伝子をリセットするには、たんぱく質が必要。

朝食にタンパク質を取ることで、その刺激が小腸に到達し、小腸の時計遺伝子を動かす。

すると、その信号が胃や肝臓にも伝わり、エネルギー代謝がはじまる。

そのため、タンパク質の少ない朝食の場合は、時計遺伝子はリセットされず、内臓の機能も低下したままになります。

すると、すでに活性化している脳が、栄養分が入っていないことを感知し、体が飢餓状態にあると判断します。

そのような状態で昼食をとると、飢餓状態に対応するため、体内に脂肪をため込む機能がスタート。

脂肪がエネルギーとして消費されず、コレステロール量が増加してしまう。

■まとめ

食事バランスガイド|農林水産省
食事バランスガイド|農林水産省

参考画像:食事バランスガイド|農林水産省|スクリーンショット

食事バランスガイドを守ると死亡リスクが減少する!|バランスの良い食事をしようというメッセージは伝わっているの?によれば、食事バランスガイドとは、一日に何をどれだけ食べたら健康に良いかをコマをイメージにして伝えているものですが、食事バランスガイドに沿った食事の人は脳血管疾患死亡リスクが11%減少しています。

この仮説としては、朝食を食べないと食事バランスガイドに沿わない食事になることにより、脳血管疾患のリスクが高まると考えられます。

脳出血のリスクを下げるためにも、朝食をとる機会を増やしましょう。







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心不全を発症させるタンパク質「アンジオポエチン様タンパク質2」発見 高血圧や加齢が過剰分泌の一因|熊本大

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【目次】




■心不全を発症させるタンパク質「アンジオポエチン様タンパク質2」発見 高血圧や加齢が過剰分泌の一因|熊本大

ANGPTL2による心不全の発症・進展のメカニズム
加齢や高血圧などの圧負荷によるストレスを受けた心筋細胞→心筋細胞におけるANGPTL2の産生・分泌の増加(ANGPTL2が心筋細胞自身に作用し、心筋の収縮力維持に重要な機能を低下させる)→心筋の収縮力維持に重要な心筋細胞の機能低下(心筋細胞内のカルシウム濃度調節機能・心筋細胞のエネルギー産生機能)→心筋の収縮力低下→心不全病態の発症・進展

参考画像:心不全の新たな発症メカニズム解明と新規遺伝子治療法の開発|日本医療開発機構(熊本大学プレスリリース)スクリーンショット

<熊本大>心不全促すタンパク質 研究グループ発見

(2016/9/29、毎日新聞)

問題のたんぱく質は「アンジオポエチン様タンパク質2」。本来は組織の正常な働きを助ける作用があるが、心筋細胞内で過剰に分泌されると、細胞のカルシウム濃度の調節やエネルギーを生成する力を弱める。その結果、心筋の収縮低下を招き、心不全を引き起こすという。また、高血圧や加齢が過剰分泌の一因となることも突き止めた。

熊本大大学院生命科学研究部の尾池雄一教授の研究グループによれば、心筋細胞から過剰に分泌されたたんぱく質の一種「アンジオポエチン様タンパク質2」が心不全を発症させることを発見したそうです。

「アンジオポエチン様タンパク質2」は、組織の正常な働きを助ける作用があるそうですが、心筋細胞内で過剰に分泌されると、細胞のカルシウム濃度の調節やエネルギーを生成する力を弱めてしまうことで、心筋の収縮低下を招き、心不全を引き起こしてしまうそうです。

■心不全とは

でんぱ組・最上もがさん、心不全を告白|「疲れなくて息苦しくない体が欲しい。」によれば、心不全とは、心臓の働きが不十分なことが原因で起きている体の状態のことで、病名ではないそうです。

心臓のポンプ機能が低下することによって、肺に多くの血液がうっ滞し、血液のガス交換がうまくいかなくなることで、疲れやすい・息苦しいといった症状が出るようです。

鉄分補給で心臓若返り・心不全予防|たけしのみんなの家庭の医学によれば、心臓は1日に約10万回鼓動していて、加齢とともに心臓機能は落ちていきます。

心臓では収縮や拡張が繰り返されていますが、心臓の機能が弱くなると、十分な血流を送ることができずに、心不全に陥りやすくなってしまいます。

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■アンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)

心不全の新たな発症メカニズム解明と新規遺伝子治療法の開発

(2016/9/28、熊本大学プレスリリース)

熊本大学大学院生命科学研究部の尾池雄一教授らの研究グループは、これまでの研究において、分泌タンパク質であるアンジオポエチン様タンパク質2(ANGPTL2)が、老化した細胞や様々なストレスを受けた細胞から過剰に分泌され、持続的な炎症(慢性炎症)を引き起こすことで動脈硬化性疾患、肥満症、糖尿病等の生活習慣病やがんの発症・進展を促進することを明らかにしてきました。

尾池雄一教授らの研究グループは、アンジオポエチン様タンパク質2(Angiopoietin-like protein 2, ANGPTL2)が過剰に分泌され慢性炎症を引き起こすことで動脈硬化症糖尿病肥満などの生活習慣病がんの発症を促進することを研究してきています。

【参考記事】

メタボリックシンドロームを引き起こす鍵因子を発見(炎症によるメタボリックシンドローム・糖尿病発症メカニズムの解明へ期待)

(2009/9/21、熊本大学プレスリリース)

尾池教授らは今回、肥満の脂肪組織ではアンジオポエチン様たんぱく質2(Angptl2)注2)が多く発現していることに着目し、このたんぱく質の機能について研究を行いました。その結果、Angptl2は肥満の内臓脂肪組織で発現が増加しており、炎症の発症・維持で重要な役割を果たす「単球注3)細胞」を病変部に呼び込んで、脂肪組織の慢性炎症を引き起こすこと、それにより全身でのインスリン抵抗性が生じ、糖尿病の発症につながっていることが分かりました。また、Angptl2の増加が、動脈硬化症の前病変として考えられている血管内皮細胞の炎症性病変を引き起こすことも分かりました。

がんの転移抑制へ期待 がん転移を促進する因子の同定と作用メカニズムを解明!

(2012/2/17、熊本大学プレスリリース)

今回、尾池教授らは、肥満の脂肪組織において慢性炎症を引き起こし、その結果メタボリックシンドロームや糖尿病の誘因となるアンジオポエチン様たんぱく質2(ANGPTL2)が、低酸素や低栄養などのがん組織内微小環境によってがん細胞そのものから分泌されるようになり、がん細胞から分泌された ANGPTL2 は、①がん細胞の転移に重要な血管新生を増加させること、②がん細胞自身に作用しがん細胞の運動性を増強させ、その結果がん細胞の浸潤や転移が促進されることを見出しました。

■ANGPTL2が心不全の発症・進展を促進しているメカニズム

1.ストレスを受けた心筋細胞でのANGPTL2の産生・分泌の増大

2.ANGPTL2による心筋細胞のカルシウム濃度調節やエネルギー産生機能の低下および心不全発症・進展の促進

3.適度な運動による心筋細胞でのANGPTL2の産生量の減少

4.マウス心筋細胞におけるANGPTL2産生増加の抑制をもとにした心不全の新規治療法の開発

5.ヒト心筋細胞におけるANGPTL2産生抑制によるカルシウム濃度調節やエネルギー産生機能増進の可能性

今回の研究によれば、加齢により老化した心筋細胞や高血圧などによるストレスを受けた心筋細胞、心不全患者の心筋細胞では、ANGPTL2の産生・分泌が増大していることを発見したこと、また、適度な運動によって心筋細胞でのANGPTL2産生量が減少することを発見したことから、高血圧を予防する生活習慣や適度な運動をすることが現時点で私たち自身でできる心不全予防法といえるのではないでしょうか。

→ 高血圧とは|高血圧の症状・食事・予防・原因・対策 について詳しくはこちら

→ 血圧を下げる方法(食べ物・サプリメント・運動) について詳しくはこちら

■まとめ

現在、心不全治療は対症療法が主ですが、心筋細胞でのANGPTL2産生増加を抑制する遺伝子治療は、心機能低下のメカニズムそのものにアプローチする根本治療としての新規心不全治療戦略として期待できるだけでなく、健康長寿社会の実現にも貢献することが期待されます。

心筋細胞でのANGPTL2産生増加を抑制する遺伝子治療によって、心不全を根本から治療することができるようになるかもしれません。