「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」とは、骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。
骨粗しょう症は、転倒から骨折、寝たきりになる危険性が高まることで知られていますが、自覚症状に乏しく、骨折してはじめて病気に気づく人も少なくありません。
60代女性の3人に1人がかかるとされる骨粗鬆症であり、骨粗鬆症の潜在患者は1千万人以上といわれるそうですが、自覚症状に乏しいため、実際に治療を受けている人は1割程度なのだそうです。
こういう事情がありながらも、牛乳などの乳製品に含まれるカルシウムが健康に良いということは多くの方はしっているのですが、女性の99%がカルシウム不足であるのはなぜなのでしょうか?
その一つの理由に日本人は乳糖不耐症(牛乳や母乳に含まれる乳糖を消化・吸収する酵素のラクターゼが不足しているために、下痢や腹痛などの症状を引き起こす病気。)であるといわれていることが影響しているのではないでしょうか?
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その前にまず知っておく必要があるのが牛乳が苦手な人の中には「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」があるということ。
どちらも腹痛や下痢といった症状が出るのは同じですが、そのメカニズムが違います。
乳糖不耐症は、乳糖(ラクトース)を消化吸収のため分解するラクターゼという消化酵素が不足するために起きる病気です。
牛乳アレルギーは、カゼインやβラクトグロブリンなどのタンパク質が原因でアレルギー反応を起こす食物アレルギーです。
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【参考リンク】
改めて「日本人は乳糖不耐症である」ということについて考えてみます。
ウワサ16 日本人のほとんどは、牛乳を飲むとおなかをこわす|Jミルクを参考にすると意外な事実がありました。
1)乳糖の摂取量と下痢発生に関するヒト試験(※1)によれば、乳糖を60g(1,200mL)摂取のグループでは50%以上の割合で下痢が起こりましたが、30g(牛乳700mL相当)摂取したグループでも下痢は起こりませんでした。
2)15歳以上の男女10,000人を対象とした調査(※2)では、牛乳を飲んでお腹がゆるくなったり、ゴロゴロしたり、張ったりする症状の自覚を持つ人について、「いつもそうなる」人は7%、「いつでもではないがなる」は13%、「たまになる」は29%でした。
【参考資料】
- ※1 奥恒行, ヒトにおける乳糖の一過性下痢に対する最大無作用量とそれに及ぼす食べ方に関する研究, 牛乳栄養学術研究会委託研究報告書, 2001, 123-141.
- ※2 一般社団法人J ミルク, 牛乳乳製品に関する食生活動向調査2013.
この2つを参考にすると、牛乳1,200mLを飲むと50%以上の割合で下痢が起こったものの、一度に1.2リットルの牛乳を飲むことはほとんどなく、また牛乳を飲んだからと言って、常にお腹がゆるくなったり、ゴロゴロしたり、張ったりする症状があるわけではないということです。
「飲み方・飲む量によって乳糖不耐症の症状に違いが出ることがあるの?」「乳糖不耐症の症状には個人差があるの?」「乳糖不耐症であっても常に症状が出るわけではないの?」といった疑問が出てきますよね。
この疑問を解決するヒントの一つに「腸内細菌叢」があります。
乳糖が小腸で分解されない場合でも、大腸に存在する乳酸菌やビフィズス菌などの有用腸内細菌が多い人では、乳糖が良く分解されて、不快症状が出にくいことが近年の研究により明らかになってきました。
有用腸内細菌が多い人は小腸で分解されなかった乳糖を大腸で分解することにより不快症状が出にくいということがあるそうです。
この研究を参考にすれば、腸内環境が改善されれば乳糖不耐症の症状は出にくいということなんですね。
「牛乳による不快な症状を自覚しやすい人は牛乳など乳製品を取らない、すると乳糖を摂取する機会がないために乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されない、細菌による乳糖分解の助けもないために牛乳をのむと益々乳糖不耐症の症状が自覚されやすい。」という循環が成り立ってしまうためである。
乳糖不耐症を自覚している人は牛乳を避ける
→牛乳を避けることで乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されない
→今回飲むと大丈夫かなと思って牛乳を飲むとやっぱり乳糖不耐症の症状があらわれる
腸内環境が改善されれば、正確に言えば、乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されれば、乳糖不耐症の症状が軽減されるにもかかわらず、このループによって乳糖不耐症の人は症状が軽減されないままになってしまうということなんですね。
乳糖不耐症の人が牛乳などの乳製品を避けるだけであれば何も問題がないように見えるのですが、ある調査によれば、乳糖不耐症を自覚する人はカルシウム摂取量が低いため骨密度も低いという結果が出ているそうです。
ここで問題になることは、乳糖不耐症を自覚する集団は、乳糖不耐症を自覚しない集団に比較して、カルシウム摂取量が低いため骨密度もまた低い、という疫学調査の結果が得られていることである。
そう考えると乳糖不耐症の症状を軽減するために腸内環境を改善=乳糖分解を助ける腸内細菌叢を作りたいところです。
そこで考えられる一つの方法が「毎日飲み続けること」!
乳糖は消化に時間のかかる難消化性オリゴ糖の一種であり、腸内細菌叢に影響します。毎日飲み続けることで、乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できます。
牛乳を毎日飲み続けることで乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できるそうです。
ただ牛乳を毎日飲み続けるには抵抗がある人も多いでしょうが、飲み方を工夫することで少しずつ腸内環境を変えていくことができるそうです。
●数回に分けてゆっくり飲む
一度にたくさん飲むことで乳糖不耐症の症状が出やすくなるので、乳糖が分解しやすくなるように少しずつ数回に分けて飲むとよいそうです。
●温めたり、混ぜたりして飲む
牛乳を温めると消化酵素ラクターゼの働きも盛んになるそうです。コーヒーや紅茶、ココアにして飲む、料理に加えるのもよいそうです。
●牛乳にこだわらずヨーグルトやチーズを食べる
ヨーグルトは乳酸菌の発行によって乳糖が分解され減少しており、またチーズは乳糖のほとんどが製造工程の中でホエーに移って取り除かれているので、乳糖不耐が起こりやすい食品です。
■まとめ
1)牛乳を毎日飲み続けることで乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できる。
2)数回に分けてゆっくり飲む、温めたり混ぜたりして飲む、牛乳にこだわらずヨーグルトやチーズを食べるなど工夫する。
【参考文献】
- Hertzler SR, Savaiano DA. Colonic adaptation to daily lactose feeding in lactose maldigesters reduces lactose intolerance. Am J Clin Nutr. 1996 Aug;64(2):232-6. doi: 10.1093/ajcn/64.2.232. PMID: 8694025.
■【追記】「乳糖を消化しにくい」=「牛乳でお腹を壊す」ではない
乳糖不耐症を考える上で大切なのは、小腸で乳糖を十分に消化・吸収できないこと(乳糖吸収不良)と、実際に腹痛やお腹の張り、下痢などの症状が出ること(乳糖不耐症)は、必ずしも同じではないという点です。
2005年に日本人女性43人を対象に行われた研究では、1回に摂取した乳糖をラクターゼによって消化できる量は10g未満と推定される一方、大腸の腸内細菌は約20~30gの乳糖を発酵できると報告されました。また、一過性の下痢を引き起こさない乳糖の最大許容量は、体重1kgあたり0.72gでした。
つまり、小腸で乳糖を十分に消化できなかったとしても、それだけで必ず症状が出るとは限らず、その後の大腸での腸内細菌による発酵も関係していると考えられます。
さらに2023年には、日本人を対象に、牛乳を少量から徐々に増やしていく研究が報告されています。
牛乳や乳製品を摂ると腹部症状が出る人を調べ、乳糖吸収不良と診断された人に対して、牛乳30mLから始め、4~7日ごとに量を増やし、最大200mLまで摂取する方法を行いました。
この方法を行った32人のうち、29人(90.6%)で症状の改善がみられました。
興味深いのは、症状が改善した人が多かった一方、乳糖吸収不良を調べる20g乳糖水素呼気試験の診断値が改善したのは10人(34.5%)で、16人(55.2%)では変化がみられなかったことです。
つまり、乳糖を吸収する能力そのものが改善しなくても、少量から牛乳を摂取していくことで症状が軽減する可能性があることを示す結果といえます。
また、治療後に症状がなくなった7人では、腸内細菌の一種である「Blautia(ブラウティア)」が有意に増えていたことも報告されています。
これらの研究を見ると、「乳糖を消化しにくいから牛乳を完全に避ける」という単純な話ではなく、一度に摂る乳糖の量や、腸内細菌による発酵、牛乳を少量から徐々に摂取することなども、症状に関係している可能性がありそうです。
ただし、2023年の研究は32人を対象とした臨床試験であり、この方法がすべての乳糖不耐症の人に適しているとまでは言えません。症状が強い場合や、牛乳・乳製品を摂ることで体調を崩す場合には、無理に摂取量を増やすのではなく、医師や管理栄養士などに相談することが大切です。
【参考文献】
Oku T, Nakamura S, Ichinose M. Maximum Permissive Dosage of Lactose and Lactitol for Transitory Diarrhea, and Utilizable Capacity for Lactose in Japanese Female Adults. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 2005;51(2):51-57. doi:10.3177/jnsv.51.51. J-STAGEで論文を読む
Hasegawa M, Okada K, Nagata S, Sugihara S. Efficacy of incremental loads of cow’s milk as a treatment for lactose malabsorption in Japan. World Journal of Clinical Cases. 2023;11(4):797-808. doi:10.12998/wjcc.v11.i4.797. PubMedで論文情報を確認
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投稿日: 2025年5月23日 10:52 編集

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