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MITが開発した針なし注射器「PRIME」|Portal Instrumentsと武田薬品工業、針を使わない医療用デバイスの開発および商品化について提携契約を締結




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■MITが開発した針なし注射器「PRIME」|Portal Instrumentsと武田薬品工業、針を使わない医療用デバイスの開発および商品化について提携契約を締結

MITが開発した針なし注射器「PRIME」|Portal Instruments
MITが開発した針なし注射器「PRIME」|Portal Instruments

参考画像:Portal Instruments|Vimeo|スクリーンショット

MIT Newsによれば、マサチューセッツ工科大学(MIT)のIan Hunter教授の研究チームが開発した「PRIME」は、先端にノズルの付いた使い捨て容器に薬剤を充填し、容器をデバイスにつけると、リニア電磁アクチュエータが容器の中のピストンを押し出し、薬剤を加圧し、ノズルを通して、髪の毛ほどの細さのジェットを高圧で噴射し、約200m/秒のスピードで皮膚と組織に送られる、注射の針がなく、痛みを感じない注射器です。

Portal Instruments|Vimeo

このテクノロジーを引き継いだポータル・インスツルメンツ(Portal Instruments)社は、武田薬品工業と提携し、第一候補薬候補は、潰瘍性大腸炎またはクローン病治療薬である「Entyvio®(一般名:ベドリズマブ)」となる予定なのだそうです。

Portal Instruments社との針を使わない医療用デバイスの共同開発について

(2017/11/8、武田薬品工業)

Portal Instruments社の針を使わない医療用デバイスは、針のかわりに加圧液体を使用して生物学的製剤を投与するものです。針を使用する標準的な注射と比べて、痛みが少なく患者さんに好まれていることが臨床試験で示されています。この針を使わないデバイスは患者さんが在宅で自己投与することを想定しています。

今回の提携は、静脈内注射が必要な慢性疾患を抱える患者さんには、負担軽減につながる選択肢を用意したい武田薬品工業と患者さんの注射に伴う痛みや不安を軽減し、さらには注射にかかる時間を短縮する最先端の次世代自己投与ドラッグデリバリー技術で貢献したいPortal Instruments社という両社が叶えたいことが一致したものとなりそうです。




■「PRIME」は以前芝浦工業大学が開発したアイデアに近い!?

今回紹介した「PRIME」は以前芝浦工業大学が開発したアイデアに近いようですね。

高速発射気泡による「針なし注射器」の開発に成功~マイクロレベルの気泡で高精度の試薬輸送を実現
高速発射気泡による「針なし注射器」の開発に成功~マイクロレベルの気泡で高精度の試薬輸送を実現

参考画像:高速発射気泡による「針なし注射器」の開発に成功~マイクロレベルの気泡で高精度の試薬輸送を実現~(2014/12/2、芝浦工業大学)

注射器嫌いの人に朗報!「針なし注射器」の開発に成功|芝浦工大では芝浦工業大学機械工学科の山西陽子准教授が開発した、液中で微細な気泡を連続して打ち出し、マイクロレベルの微細な穴を空けると同時に、試薬をまとった気泡を輸送できるメスである「マイクロバブルインジェクションメス」を改良して作った「針なし注射器」は、高速で発射した気泡がはじける力で細胞に微細な穴(穴の直径は4μメートルほどで、細胞へのダメージも少ない)を空け、その穴から、試薬をまとった微細な気泡を細胞内に注入し、気泡のガスは細胞内で収縮し、試薬だけが患部に届くというものです。

Portal Instrumentsの動画を見てみると、スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスに薬を投与するタイミングを知らせる通知が来て、「PRIME」に薬を取り付け投与し、安全に捨てることができることが紹介されています。

■アドヒアランスの向上がポイント

気になるところは、患者さんがそのタイミングに合わせて利用してくれるかどうかです。

緑内障 患者判断で治療中断18.7%によれば、「大した症状がない」、「継続受診が面倒」、「治療効果が実感できない」など病気自体への理解度が低いことや治療効果についての理解が低いという理由で、患者判断で緑内障の点眼治療を中断してしまっているそうです。

糖尿病患者の治療継続は半数にとどまるによれば、糖尿病の合併症に不安を感じ、糖尿病の治療の重要性を認識していても、治療を継続できている人は半数なのだそうです。

高齢者宅には年475億円分の残薬(飲み残し・飲み忘れの薬)がある!?|解決する4つの方法で紹介した日本薬剤師会が2007年に薬剤師がケアを続ける在宅患者812人の残薬を調査したところ、患者の4割超に「飲み残し」「飲み忘れ」があり、金額ベースでは処方された薬全体の24%にあたり、厚労省がまとめた75歳以上の患者の薬剤費から推計すると、残薬の年総額は475億円になったそうです。

なぜ高齢者の薬のもらい過ぎという問題が起きるのか?によれば、次のような理由で高齢者の薬のもらい過ぎという問題が起きています。

  • 高齢者になると複数の病気にかかることが多い
  • 複数の医療機関・複数の薬局にかかる
  • 薬剤師は「お薬手帳」で患者がどんな薬を飲んでいるか把握するが、薬の重複がわかっても、薬の整理までは手が及ばない
  • 医療機関に問い合わせてもすぐに返事がもらえず、患者を待たせないため、処方箋通りに薬を渡せばよいと考える薬剤師がまだ多い
  • 薬の情報が、医師や薬剤師間で共有されていない

処方された薬を適切に服用できずに、その結果、症状が悪化して薬が増えてしまい、また、その薬を飲み残してしまい、症状が更に悪くなっていく悪循環に陥ってしまうこともあるようです。

そこで、最近では服薬忘れ問題を解決するための様々なアプローチが開発されています。

●デジタルメディスンで服薬のデータを記録する

世界初のデジタルメディスン「エビリファイ マイサイト(ABILIFY MYCITE®)」 米国FDA承認|大塚製薬・プロテウスで紹介した「デジタルメディスン」は錠剤に胃液に接するとシグナルを発すセンサーを組み込み、患者さんの体に張り付けたシグナル検出器で服薬の日時や活動量などのデータを記録します。

そのデータをもとに、患者さん自身がアプリで服薬状況や活動量を確認したり、医師や看護師などの医療従事者と情報共有することにより、アドヒアランス(患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること)を向上し、治療効果を高めることが期待されます。

●IoTを活用した服薬忘れ防止システム

その問題を解決する方法の一つとして注目されているのが、いま注目のIoT(モノのインターネット)を利用して、アプリや薬剤ケース・ボトルを連動させて薬を飲むタイミングを通知する飲み忘れ防止システムです。

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●PillPackのアイデア

PillPackは人の習慣を活用して薬の飲み忘れを防ぐリマインダーアプリを開発中によれば、患者の中には、積極的に治療方針の決定に参加し、治療を受ける人がいる一方で、そうではない人がいて、薬にお金を使いたくないという人や薬が効くと信じていないという人、また、物忘れではなくて習慣が影響している場合もあるそうです。

人の習慣を利用して「ちゃんと薬を飲む」ようにしてくれるアプリ

(2015/8/8、WIRED)

パーカーはもともとアドヒアランスをある程度理解していた。薬剤師である父親が、処方箋を患者にわたすのを少年時代に見ていたからである。薬を飲み忘れる理由は単なる物忘れだけでなく、習慣も関係する。

「薬を受け取る余裕がない、薬にお金を使いたくない、さらに、あるいは薬が効くと信じていないという人もいる」と、アーカンソー大学薬学部の准教授セス・ヘルデンブランドは言う。これは意図的な「ノンアドヒアランス(nonadherence、患者が治療に対して積極的でないこと)」と呼ばれる。

このアプリは、意図的でないノンアドヒアランスの人を対象に設計されている。「アプリを使うために多くの入力を患者に強いることで、アドヒアランスを更に高める必要はない」とヘルデンブランドは言う。

パーカーはコンテクスト・アウェアネスをアプリでより実現し、より直感的なものにしている。

Pillpackでは、薬局や保険給付のデータを集めて、誰にどのような処方箋が出ているかがわかる「データベース」をつくることで、基本情報を入力すれば、患者の処方箋を自動で設定できるようになっているそうです。

こうした仕組みをバックグラウンドで動かすことによって、アプリユーザーの入力の手間を省き、薬の飲み忘れを防ぐためのお知らせをするシンプルなシステムになっています。

また、コンピュータが状況や変化を認識!『コンテキスト・アウェア・コンピューティング』|コベルコシステムによれば、

今までのように、個人が必要な情報を検索したり、スケジュールを確認したりするのではなく、過去の行動履歴、現在の時刻・スケジュール・位置情報などに基づいて、次の行動に必要な情報がシステムの側から積極的に提供されます。

ということで、Pillpackでは、ユーザーの位置情報に基づいてアラートを設定できるそうです。

つまり、習慣の強力な力を活用して、薬の飲み忘れを防ごうというアイデアですね。

●自動的に薬を投与するインプラント

そして最近では適切なタイミングで自動的に薬を投与するというアイデアも実現してきています。

生体工学で健康管理|緑内障を調べるスマ―ト・コンタクトレンズという記事で、このブログでは、定期的にインシュリンを注射しなければならない糖尿病患者の皮膚に超薄型で伸縮自在の電子装置を貼り付け、自動的に注射できるような仕組みというアイデアを考えてみました。

妊娠をコントロールする避妊チップの開発に成功ービル・ゲイツ財団出資の企業によれば、海外では腕の内側などにホルモン剤を含んだ細長いプラスチック製の容器を埋め込む「避妊インプラント」が広く普及しているそうで、将来的には、糖尿病治療も同様の方法をとっていくことが予想されます。

糖尿病治療用「スマート・インスリンパッチ」が開発される(2015/6/24)によれば、米ノースカロライナ大学とノースカロライナ州立大学の研究チームは、血糖値の上昇を検知し、糖尿病患者に適量のインスリンを自動的に投与できるパッチ状の治療器具を開発したそうです。

糖尿病患者に朗報!?グラフェンを使った血糖値測定と薬の投与を行なう一体型アームバンドによれば、韓国の基礎科学研究院の研究者たちは、ユーザーの汗をモニターして、血糖値を測定し、血糖値が下がってきている場合には、極小の針で薬を注射するという血糖値の測定と薬の投与の一体型デバイスを糖尿病患者のためにデザインを行なったそうです。

「薬の飲み忘れ」を根本から解決!複数の薬を異なる速度で自在に放出できるゲルの開発に成功|東京農工大学によれば、東京農工大学大学院の村上義彦准教授の研究グループは、体内に薬を運ぶための入れ物である「薬物キャリア」として利用されている構造体(ミセル)に着目し、「物質の放出を制御できる機能」をゲルの内部に固定化するという新しい材料設計アプローチによって、「複数の薬を異なる速度で自在に放出できるゲル」の開発に成功しました。

「複数の薬を異なる速度で自在に放出できる」というアイデアが実現することになれば、「残薬(飲み残しの薬)が減ることによって医療費削減」「認知症などの人が飲み忘れることがなくなる」「治療継続の負担がなくなる」といったことが期待されます。

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現状の方法では治療を継続していくのは難しいということがわかっているため、継続しやすい新しい治療方法を考える必要があるのは間違いなく、すでに世界的にも自動で数値を検知して、適量の薬を投与するという方向に進んでおり、今後はこうした研究がどんどん出てくるのではないでしょうか。

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