寄生虫によるダイエット効果〜世界で初めて科学的に証明される〜(2019/4/9、群馬大学プレスリリース)で紹介されている群馬大学の下川周子助教と国立感染症研究所の久枝一部長らが行った実験によれば、高脂肪食を与えて予め太らせたマウスに、ある種の寄生虫を感染させると、体重の増加が抑えられることがわかったそうです。
なぜ寄生虫が感染すると体重の増加が抑えられるのでしょうか?
一つの理由は、エネルギー代謝が上がること。
寄生虫が感染すると、エネルギー代謝に関係する脂肪細胞内のUCP1(un-coupling protein 1:ミトコンドリアの内膜に存在する脱共役タンパク質で、脂肪細胞に存在し、ノルエピネフリンが脂肪細胞上のβ3 受容体に結合するとUCP1の発現が上昇しミトコンドリアにおいて熱産生が行われる)の発現が上昇していることがわかったそうです。

UCP1の発現が上昇すると、熱産生が高まり、脂肪細胞は脂肪燃焼するようになるのですが、寄生虫が感染することにより、UCP1の発現が上昇して、ミトコンドリアにおいて熱産生が行われ、やせやすい体になっていると考えられます。
ミトコンドリア脱共役蛋白質(uncoupling protein;UCP)には、褐色脂肪細胞に特異的な UCP1 のほかに、白色脂肪組織や骨格筋、脾臓、小腸など全身に幅広く存在する UCP2,主に骨格筋にある UCP3 などが知られているそうです。
エネルギー代謝調節機構―UCP を中心に|斉藤昌之https://t.co/CMoVauLKe8— ハクライドウ@40代・50代向け健康美容ブログ (@hakuraidou) 2019年3月18日
そこで気になるのが、なぜUCP1の発現が上昇するのかという点。

寄生虫感染マウスの血中ノルエピネフリンの濃度を調べたところ、かなり高い量のノルエピネフリン(神経伝達物質)の濃度が検出されており、寄生虫感染マウスではノルエピネフリンが増加することで交感神経が活性化し、脂肪を燃焼方向へ働かせていることが分かりました。
次に気になるのは、寄生虫がどのようにノルエピネフリンが増加させ交感神経の活性化に働きかけているのかという点です。

寄生虫を感染させたマウスにおいて、バシラス属やエシェリキア属といった、ノルエピネフリンを分泌させるような腸内細菌が優位に増加していることが明らかになりました。

つまり、寄生虫が体重を増加させる一連の流れをまとめると次のようになります。
腸管に寄生する寄生虫がマウスの腸内細菌叢を変化させ、バシラス属やエシェリキア属といったノルエピネフリンを分泌させるような腸内細菌を増加させる
→ノルエピネフリンが増加することによって、交感神経が活性化
→UCP1の発現が上昇
→熱産生
→体重の増加を抑制
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【参考リンク】
- Chikako Shimokawa, Seiji Obi, Mioko Shibata, Alex Olia, Takashi Imai, Kazutomo Suzue, Hajime Hisaeda Suppression of obesity by an intestinal helminth through interactions with intestinal microbiota Infection and Immunity Apr 2019, IAI.00042-19; DOI: 10.1128/IAI.00042-19