揚げ物は、コロッケやフライドポテト、唐揚げ、天ぷらなど、私たちの食生活にとても身近な料理です。
一方、揚げ物では油を高温で加熱するため、気になるのが油の酸化です。
では、料理に使う身近なハーブによって、揚げ油の酸化を抑えることはできるのでしょうか?
この疑問について興味深い研究があります。
研究者たちがブラックペッパー、ショウガ、ターメリック、ローズマリー、オレガノを比較したところ、ローズマリーが最も高い抗酸化能力を示しました。
さらに実際にローズマリー粉末を加えた油でジャガイモを揚げたところ、油の酸化安定性が改善することが確認されています。
■揚げ物ではなぜ油が酸化するの?
油に含まれる脂質は、酸素や熱などの影響によって酸化します。
特に揚げ物では、高温になった油が空気中の酸素に触れるため、酸化が進みやすい環境になります。
そこで研究者たちが注目したのが、植物に含まれる天然の抗酸化成分です。
「抗酸化作用のあるハーブやスパイスを油に加えれば、加熱中の油の酸化を抑えられるのではないか?」と考えたわけです。
■ブラックペッパーやショウガなど5種類を比較
研究では、
ブラックペッパー
ショウガ
ターメリック
ローズマリー
オレガノ
という、料理でもおなじみの5種類のハーブ・スパイスが調べられました。
抗酸化能力やフェノール化合物などを比較すると、最も高い抗酸化能力を示したのがローズマリーでした。
そこで研究者たちは、ローズマリー粉末を植物油に加え、実際の揚げ調理でも効果があるのかを調べました。
■ローズマリーを入れた油でジャガイモを揚げてみた
研究では、ひまわり油、オリーブ油、菜種油にローズマリー粉末を0.5%(w/v)加え、180℃の油でジャガイモを揚げる実験を行いました。
その結果、ローズマリーを加えなかった場合と比較して、油の酸化安定性が、
ひまわり油:128.91%向上
オリーブ油:55.61%向上
菜種油:73.20%向上
しました。
ここで注意したいのは、「酸化物質が128.91%減った」という意味ではないことです。
酸化に対する油の安定性が高くなったという結果です。
つまり簡単にいえば、
ローズマリーを加えることで、高温で揚げ物をしたときにも油が酸化しにくくなった
と考えるとわかりやすいでしょう。
■菜種油では酸化に関連する指標の増加も抑えられた
研究では、油の酸化に関連する指標である「共役ジエン(CD)」や「共役トリエン(CT)」についても調べています。
菜種油では、ローズマリーを加えなかった場合、揚げ調理後に共役ジエンが29.25%増加しましたが、ローズマリーを加えた場合は7.71%の増加でした。
共役トリエンについても、ローズマリーなしでは211.76%増加したのに対し、ローズマリー入りでは60.56%の増加でした。
この結果から、少なくとも菜種油では、ローズマリー粉末の添加によって揚げ調理中の脂質酸化が抑えられたことが示されています。
ただし、この結果はすべての油で同じようにみられたわけではありません。
■なぜローズマリーにはこんな働きがあるの?
ローズマリーというと、肉料理や魚料理に香りをつけるハーブというイメージがあります。
しかしローズマリーには、さまざまな抗酸化成分も含まれています。
この論文では、ローズマリーの強い抗酸化作用に関係する成分として、カルノシン酸(carnosic acid)やカルノソール(carnosol)などのフェノール性ジテルペンが挙げられています。
ローズマリーについては、これまでにもカルノシン酸や抗酸化・抗糖化などの観点から取り上げてきましたが、今回の研究で興味深いのは「人が摂取した後の働き」ではなく、「調理中の油そのものの酸化」に注目している点です。
つまりローズマリーは、香りづけだけではなく、調理中に起こる油の酸化という面からも研究されているハーブなのです。
■「ローズマリーを入れれば揚げ物が健康になる」という意味ではない
ただし、今回の結果を「ローズマリーを入れれば揚げ物が健康になる」と解釈するのは注意が必要です。
今回の研究で調べられたのは、主に植物油の酸化安定性や酸化に伴う指標の変化です。
人間を対象に、ローズマリーを加えた揚げ物を食べることで病気のリスクや健康への悪影響が減少するかを調べた研究ではありません。
したがって今回の研究からいえるのは、「ローズマリー粉末を加えることで、揚げ調理時の植物油の酸化を抑えられる可能性が示された」というところまでです。
■ローズマリーは「香り」だけではなかった
ローズマリーというと、料理の香りを良くするために使うイメージが強いかもしれません。
しかし今回の研究からは、ローズマリーに含まれる天然の抗酸化成分が、揚げ物をするときの油の酸化を抑える可能性が示されました。
料理がおもしろいのは、食材の組み合わせによって味や香りだけでなく、調理中に起きる化学反応まで変わる可能性があることです。
「揚げ物=体に悪い」「ローズマリーを入れれば健康になる」と単純に考えるのではなく、
どんな油を使うのか、どのように加熱するのか、そして何を組み合わせるのかによって、調理中に油で起こる変化も違ってくる。
そんな料理と科学の関係を示す興味深い研究といえるでしょう。
【参考論文】
Redondo-Cuevas L, Castellano G, Raikos V.
Natural antioxidants from herbs and spices improve the oxidative stability and frying performance of vegetable oils.
International Journal of Food Science & Technology. 2017;52(11):2422-2428.
DOI: 10.1111/ijfs.13526
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