■スマホは教育に役立つか?|スマホ・タブレットは睡眠時間・学力・体力・視力・コミュニケーション能力を奪ってしまう!?
by WolfVision GmbH(画像:Creative Commons)
(2016/2/15、毎日新聞)
東京都渋谷区は2017年度、区立小中学校の全児童生徒と教職員に各1台のタブレット端末を貸し出し、授業や家庭学習に活用する。家庭への持ち帰りを認めるほか、モバイル通信回線で場所を選ばずインターネットを利用できることが特徴。
東京都渋谷区は小中学校の児童生徒約8000人と教職員約600人を対象にタブレット端末を貸し出し、授業や家庭での学習に活用するそうです。
ネットに接続できる時間を午後10時までに設定したり、閲覧範囲を制限するなどでトラブルを防止していくようです。
(2016/2/15、毎日新聞)
ポスターは「スマホの時間 わたしは何を失うか」と問いかけ、「睡眠時間」「学力」「脳機能」「体力」「視力」「コミュニケーション能力」の六つを挙げている。それぞれ文部科学省のデータやイラストなどを使って解説。学力に関しては、全国学力・学習状況調査(2014年度)で、小中学校とも普段スマホや携帯電話の利用時間が長い人ほど平均正答率が低い傾向がみられた。
日本小児科医会と日本医師会は、過度のスマホの使用を警告するポスターを作製したそうです。
同じ新聞ですが、一方がタブレット端末が教育に役立つという視点からのニュースであるのに対して、もう一方は過度のスマホが学力低下を招くという視点のニュースになっています。
日本小児科医会と日本医師会が作製したポスターは
「睡眠時間」「学力」「脳機能」「体力」「視力」「コミュニケーション能力」
という6つが過度のスマホの使用によって失われると紹介しています。
そこで、過度のスマホの使用によって心配される点について考えてみたいと思います。
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■過度のスマホの使用による影響とは?
●睡眠不足
子どもの寝不足|睡眠不足の原因・子どもの脳と睡眠の関係・睡眠不足を解消する方法やアメリカは「睡眠大不況」?|睡眠不足の原因・健康に与える影響・ぐっすり眠る方法によれば、スマホ・ケータイ・タブレットなどを就寝前に見ることによって睡眠時間が削られるだけでなく、眠りづらくなっているということです。
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睡眠不足がすべての原因とはいえないでしょうが、睡眠不足をもたらす生活習慣によって、太りやすくなり肥満の原因となったり、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることが考えられます。
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- 睡眠時間が減ると認知能力と反応速度が低下
低体温の子ども、「意欲」が低下によれば、低体温の傾向にある子供は、眠気やダルさ、頭痛や腹痛、学習や運動意欲の低下といった症状が出ているようです。
その原因としては、生活リズムの乱れから体温調節に関わるホルモンや自律神経の働きがおかしくなっていることが関係しているようです。
渋谷区のケースでは、ネットに接続できる時間は午後10時までに設定するようにして、睡眠時間に影響が出ないように気を付けているようです。
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●学力
【スマホによって学力が低下する】
なぜ、スマホ禁止で成績が向上するのか?|「携帯禁止で成績向上、週1時間の勉強時間追加に相当 英研究」よりによれば、ロンドン大学経済政治学院(LSE)の研究チームによれば、学校が携帯電話の使用を禁止すると、生徒の成績が大幅に向上したそうです。
なぜ、LINEなどのコミュニケーションアプリを使うと、学力が下がるのか?で紹介した東北大学によれば、LINEなどの無料通信アプリの長時間使用が、睡眠時間や学習時間の不足より大きく学力低下に影響を与えると発表しています。
このニュースを初めて読んだときは、コミュニケーションアプリを長時間使用したことによって、睡眠時間や学習時間が不足したことによって学力低下に影響しているのだから、コミュニケーションアプリの問題ではないでしょうと思いました。
しかし、平日1日当たりの通信アプリの使用時間は、勉強時間や睡眠時間の短さによる学力低下への影響力よりも強かったことから、コミュニケーションアプリの使用自体が成績を下げる影響があるのではないかと考えられるそうです。
その理由として考えたのは2つ。
一つ目は、集中力が奪われるため。
コミュニケーションアプリでメッセージのやりとりをする実際の時間はそれほど長くなくても、頭の片隅でそのやりとりについて考えてしまっているため、集中力が欠けてしまっているのではないでしょうか。
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2つ目は、ネット漬け生活でポップコーン脳になってしまう!?によれば、人間の脳は手っ取り早く得られる快感と迅速性、テクノロジーの予測不可能性を求める仕組みになっているため、継続的に刺激が得られるネットに依存するそうで、学習による刺激よりも、コミュニケーションアプリでのやりとりによる刺激が強いため、脳に学習の記憶が残りにくくなるのではないでしょうか。
駆け込みドクター 5月17日|認知症|認知症チェック・認知症予防にアマニ油・デジタル認知症によれば、デジタル認知症とは、スマホやタブレットに依存しすぎることによって、次のような症状が出ることを言うそうです。
- 書けたはずの字が書けない
- 昨日食べたものを忘れる
- 自宅の電話番号、人の名前が思い出せないなど物忘れがひどくなる
現時点では、デジタル認知症は正式な病気ではなく、まだまだ分かっていないことが多いそうですが、「なぜ、コミュニケーションアプリを使うと、学力が下がるのか?」の謎を解明する鍵の一つとして考えられるのではないでしょうか。
3つ目は、認知的疲労です。
リツイートはあなたの決断力を疲労させ、誤った決定を行なってしまう原因になる!?で紹介したデンマーク国立社会研究所の調査によれば、遅い時間帯に受けたテストの方が得点が低いことがわかったそうです。
これには、午前中よりも午後のほうが認知力(特に集中力)が低下していることが関係していると考えられています。
午前と午後、どちらの方が試験でいい点数を取れる?(研究結果)
(2016/2/24、ハフィントンポスト)
午後のテストで点数が低くなった結果は、これまでにわかっている認知的疲労についての研究と合致している。認知的疲労とは、精神的に疲れる作業をしてエネルギーを使い果たした時に、認知力(特に注意力)が減少した状態をいう。
「私たちの集中力や決断力、瞬発力は認知的疲労に左右されます。これまでの研究から休憩が生産性を高めることがわかっていますが、今回の研究は認知的疲労による認知能力が低下することを明らかにしています。これは従来の研究データと一致しています」と研究のリーダー、ハンス・ヘンリック・シーベルトセン博士は説明する。
認知的疲労とは、精神的に疲れる作業をしてエネルギーを使い果たした時に、認知力(特に注意力)が減少した状態であり、私たちの持つ認知力(特に注意力)は筋肉を使えば疲れるように、使えば使うほど消耗してしまうのです。
【スマホによって学力がアップする】
(2013/10/25、NIKKEI STYLE)
手軽に動画を視聴できるスマホの特性を生かし、分からなかった問題は3~5分の動画による解説でしっかり理解できるようにした。英語の文法や数学の方程式など、回答方法を順を追って確認できる。どれくらい勉強したかや、達成度合いをグラフにして見ることも可能だ。
動画による解説や単語帳のように反復練習に役立つ学習ツールとしてのスマホの可能性が紹介されています。
気になる点としては、周りのアプリの誘惑に子供がどれだけ打ち勝つことができるかという点でしょうか。
ある種マシュマロ実験のようなものかもしれません。
[vimeo]https://vimeo.com/5239013[/vimeo]
スタンフォード大学ウォルター・ミッシェルが行った実験によれば、マシュマロを食べずに長い時間我慢できた子のほうが、僅かな時間でマシュマロを食べてしまった子よりも、後の学校の成績がはるかによく、問題行動も大幅に少なかったそうです。
『「無意識」があなたの一生を決める 人生の科学』(著:デイヴィッド・ブルックス)
この実験で子供たちは、短期的な欲求と長期的な報酬の間の葛藤に直面することになる。より大きな長期的報酬を得るため、短期的な欲求を抑えることができる子かどうかが明らかになるのだ。
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●体力
子どもの肩こりを解消する方法|猫背と肩こり・猫背の子どもが増えている理由(浮き指)によれば、扁平足は先天的な要素として遺伝もあるそうですが、後天的な理由として運動不足(=たくさん歩いていない)も関係しているそうです。
香川県の小4の血液検査で1割の子どもが肝機能、脂質、血糖値の異常値を示すで紹介した香川県の調査によれば、検査値が異常だった子どもは、食べ過ぎ、早食い、ゲーム時間が長い、運動不足といった生活習慣が多かったそうです。
ただ、スマホの使用時間が増えることと運動不足は関係がありそうですが、昔はテレビ画面でテレビを見ていたり、マンガを見ていたりしていたため、スマホだから体力が低下したという結論を出すのは難しいのではないでしょうか。
また、なぜ子ども・高齢者の体力は向上しているのに30代女性の体力は低下しているのか?|2015年度体力・運動能力調査で紹介したスポーツ庁が公表した2015年度「体力・運動能力調査」の結果によれば、小学生~大学生では向上傾向が続いているそうですので、そもそも影響が出ているのかどうか気になるところです。
しかし、体力面以外での健康の影響は気になる面もあります。
子どもの「スマホ疲れ」|女子高生のスマホ使用時間が5.5時間に減少によれば、以前に比べて女子高生のスマホ使用時間は減少しているものの、ケータイ・スマホの使用によって、「寝不足で注意力散漫になった」「頭痛等の回数が増えた」「食欲がなくなった」「イライラするようになった」などと心身の不調を訴える声が前回に比べて約2倍に増えているそうです。
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●視力
裸眼視力が1・0未満の子供の割合が小学校で31.46%と過去最高|2016年度学校保健統計調査(速報値)で紹介した文部科学省の2016年度学校保健統計調査(速報値)によれば、裸眼視力が1・0未満の子供の割合が小学校で31.46%と過去最高となっています。
その理由には、スマホなどで近くのものを見続ける機会が増えていることが挙げられています。
スマホやPCといったデジタルスクリーンを長時間見続けることによって、目の充血、肩こり・頭痛、目の痙攣、目のかすみといった目の疲れ(眼精疲労)の症状が出ます。
そうしたパソコンなどのディスプレイを使用した作業のことをVDT(Visual Display Terminal:ビジュアル・ディスプレイ・ターミナル)作業といい、長時間のVDT作業による目の疲れといった症状をVDT症候群といいます。
→ VDT症候群の症状・原因・対策 について詳しくはこちら
スマホとパソコンとで異なるのが「距離」です。
パソコンの場合、通常45センチ程度の間隔をあけて操作しますが、スマホの場合、近い場合では15センチ程度で使用している人もいるくらいです。
近くでモノを見続けるというのは、つまり、ピントを合わせ続けているということです。
スマホを見る際には、近くにピントを合わせるために毛様体筋の調節を行っているのですが、目を酷使することで、この毛様体筋に負担がかかっているからです。
また、スマホやパソコンが原因の「夕方老眼」の人が増加している!?によれば、スマホは強い光を発していて、目に入る光の光量を抑えるための虹彩筋にも負担がかかっているようです。
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●コミュニケーション能力
97%の大学生が場の空気を読んで、自分の意見を言わないことがある!?によれば、東京工芸大学が全国の4年制大学生を対象に行ったアンケート調査によれば、多くの大学生が場の空気を読むことや人の顔色をうかがうことを重視していることがわかったそうです。
ネット漬け生活でポップコーン脳に?!で紹介したスタンフォード大学の社会心理学者クリフォード・ナス氏によれば、人とのコミュニケーションスキルは、経験を通じて学習するものであり、ネットに集中する時間が長いと、直接人と接触する機会が少なくなることから、感情の読み取り方を学ぶことができなくなるようです。
ネット依存で失った4つのものとは?では、1.対面の人を優先すること、2.ひとつのところにとどまり考えること、3.余裕をもって考えること、4.予想外の刺激が失われているのではないかと紹介しました。
スマホやパソコンに依存すると、目の前にいる人とのコミュニケーションが希薄になったり、ゆっくり何かについて考えなくなったり、偶然の出会いのような刺激が得られにくいのではないでしょうか。
スマホ・パソコンの使用制限で会社内のコミュニケーションが活発になる!?では、スマホやパソコンとの距離感を企業側が使用制限をすることでとるという例を紹介しましたが、本来ならば自分たち自身で道具との距離感をとっていく必要があります。
もし、あなた自身が以前に比べて、人とのコミュニケーションが希薄になっていたり、考える時間が少なくなっていたり、毎日同じような生活ばかりだと感じているなら、もしかすると、スマホやパソコンの使い過ぎかもしれません。
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■まとめ
スマホやタブレット端末をどう捉えるかによって見えてくるものが違ってくるのではないでしょうか。
スマホをツールとして使いこなしている人からすれば、スマホによって能力がアップし、コミュニケーションの幅が広くなったという人もいるでしょう。
電話が発明された時も、電話という新しいコミュニケーション手段が直接の交流を避ける様になるのではないかと悲観的に考えられていました。
新たなコミュニケーション手段が発明されるたびに、テクノロジーが共同体に与える影響をめぐり、過去数世紀にわたって議論が繰り返されてきた。
悲観論者はこんな懸念を表明する。
新たなコミュニケーション手段のせいで昔ながらの人間関係が薄まり、人々は他人との直接の交流をあらゆる面で避けるようになるのではないだろうかと。
「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」(著 ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー)
しかし、悲観論者が考えていたような電話は社会的コミュニケーションを減らすものではないということはあなたの周りを見ればわかるはずです。
電話と同様、スマホも自分たちの能力を引き上げてくれるツールであったり、社会的交流を補うツールだと考えれば、世界は広がっていくはずです。
スマホ自体に問題があるわけではなくて、スマホをどのように使うかがポイントです。
ただ、スマホの中のアプリには誘惑されてしまうようなSNSや動画アプリ、ゲームアプリ、マンガアプリがあるので、スマホを学習ツールとするときにはそうしたアプリを制限できる機能がつくとよいのかもしれません。
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