【目次】
■介護報酬の改定のポイントは「自立支援」強化|介護ロボット(夜間見守りシステム)を導入で加算!?
参考画像:新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット
(2017/11/24、NHK)
新たに対象となるのは、高齢者がベッドから落ちそうになったり、はいかいしたりした場合、センサーが感知して知らせる機器などを入所者数の15%以上の数設置した施設のうち、配置する職員が基準を1割下回る施設です。
一方、高齢者を抱え上げる作業などを手助けする機器は、職員の業務時間の短縮にどこまでつながるか見極めた上で加算の対象にすべきか検討することにしています。
介護労働安定センターの調査によりますと、見守りシステムなどのいわゆる介護ロボットを導入している施設は去年の時点で全体のおよそ2割にとどまり、多くの施設は、予算がないため導入できないとしています。
厚生労働省はこうした方針を来週開かれる審議会で示したうえで加算の金額などを検討することにしています。
介護の現場では肉体的・精神的負担が大きいという負担を減らすことにより職場に定着してもらうことが課題となっていますが、厚生労働省では、2018年4月に行われる介護報酬の改定で、介護ロボットの一つとして考えられる夜間に高齢者を見守るシステムを導入した場合には、配置する職員が基準よりもやや少なくても介護報酬を加算するというように条件を緩和する方針を決めたそうです。
施設によりますと、このシステムが備わったベッドでは、転落事故が起きなくなったほか、夜間の見回りを減らすことができ、職員が巡回を行う時間は平均して1日50分ほど短くなったということです。
一方で、導入費用は1台30万円かかり、購入できたのはまだ7台にとどまっています。
ベッドの上の高齢者の動きをセンサーで感知するシステムによって、ベッドからの転落事故が起きなくなったり、職員による夜間の巡回を行う時間が短くなることで、介護者・被介護者の負担が軽減することができるものの、価格が高いため導入しづらいというのが難点なのだそうです。
■脱おむつで介護報酬アップ!?
(2017/11/25、朝日新聞)
まず、おむつを使う入居者に「ポータブルトイレをベッド脇に置けば自分でできる」などの目標を立てる。そして、実現に向けての支援計画を作り、計画を実施した場合に報酬を加算する方針だ。事業者が加算を得るために入居者に強要することを防ぐため、医者がおむつを外せると判断し、本人が望む場合に加算対象を限定する。
例えば、高齢者の「自立支援」を促す仕組みの具体策として、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などがおむつをしている入居者がおむつなしで暮らせるように支援すると介護報酬を手厚くする方針を固めたそうです。
■まとめ
参考画像:平成28年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省|スクリーンショット
75歳以上同士の「老老介護」初の30%超|65歳以上同士の「老老介護」は過去最高54%に|平成28年国民生活基礎調査によれば、介護をする側と介護を受ける側の両方が高齢者の組み合わせである「老老介護」が話題になっていますが、平成28年国民生活基礎調査で発表された、同居の主な介護者と要介護者等の組合せを年齢階級別にみると、60歳以上同士70.3%、65歳以上同士54.7%、75歳以上同士30.2%となっており、また年次推移でみると、上昇傾向にあるのがわかります。
介護予防・生活支援サービス市場は2025年に1兆3000億円によれば、今後高齢者人口と高齢者世帯の増加に伴いサービス市場は拡大し、介護予防・生活支援サービス市場は2025年に1兆3000億円に迫るそうですが、介護職員は2025年には約38万人不足するおそれがあるそうです。
介護福祉士ピンチ!?介護福祉士を養成する大学や専門学校への定員に対する入学者の割合が約46%によれば、公益社団法人「日本介護福祉士養成施設協会」の調査によれば、2016年度の介護福祉士を養成する大学や専門学校への定員に対する入学者の割合が約46%だったそうです。
入学者割合の低下には、重労働の割に賃金が低い処遇が影響しているのではないかということが理由として挙げられています。
大事なのは、介護に対する負担が大きいにもかかわらず、賃金や労働環境に恵まれていないことです。
介護する側の負担を減らす方法には大きく分けて2つあります。
1.介護度を改善すること、または介護度を悪化させないこと
2.テクノロジーを活用することによって、より簡単な介護をできるアシストをしたり、やらなくてもよい仕事を減らすこと
最近の傾向としては、【IOT×介護】溺水事故を防ぐ!マイクロ波を使った「浴室センサー」|失禁への不安を軽減!排尿センサー|SOMPOのように、介護する側の負担をテクノロジーを活用することによって軽減することを目指すものが増えているように感じます。
介護保険制度の改定のポイントとなっているのも、リハビリなどで利用者の介護状態を改善させた事業者への報酬を加算する仕組みを導入する「自立支援」の強化です。
参考画像:新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)|スクリーンショット
新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)によれば、患者のQOLの最大化に向けて、⾼齢となっても⾃分らしく生きることの出来る「生涯現役社会」の実現に向けて、⾃立支援に向けた介護や質・生産性の⾼い介護の提供の実現が必要であるとして、できないことのお世話中心の介護から、自立支援に軸足を置いた介護への移行が必要であり、効果のある自立支援の取り組みが報酬上評価される仕組みを確立すべきとあります。
要介護度等の改善に対するインセンティブの例として、品川区や川崎市、岡山市や福井県など複数の自治体がインセンティブ措置を講じているそうです。
最近では、介護度改善を応援する国内初の専用保険『明日へのちから』|介護度が軽くなると保険金が払われる保険|アイアル少額短期保険のように、介護度が軽くなると保険金が払われる保険で出てきました。
ここまでみると、利用者の介護状態を改善させた事業者に介護報酬を加算する仕組みというのはすばらしい取り組みかと思いますが、気になる点もあります。
それは、介護保険制度の改定によって、介護報酬が見直されることにより、病気やケガの中には現時点では治る見込みのない被介護者へのケアが行き届かなくなり、サービスの質が低下するのではないかという不安であり、事業者によってはサービスの継続が難しくなるところも出てくるのではないかという意見もあります。
こうしたときに役立つ考え方が「インクルージョン」です。
「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたの周りの世界はやさしくなる!?によれば、「インクルージョン(Inclusion)」とは、包含・含有・包括性・包摂・受け入れるといった意味を持ち、誰も排除せず、様々な人を受け入れるという考え方です。
「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)
ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか 新品価格 |
インクルージョンには様々な側面がある。社会的、経済的、人種的な強者による支配を終わらせること。体の状態や性別、ジェンダーアイデンティティー、性的嗜好によって差別されないということ。生まれた場所や逮捕歴、支持政党などによって参加を阻まれないこと。p69
自分にはどうすることもできない状態で弱者となってしまったと想像してみてほしいのです。
健康で、若く、経済的にも苦境に立たされることなく、性別における差別もなく、生まれた場所も平和で、家族に逮捕歴などもないというような恵まれた状況にあると、見えてこない世界があるかもしれません。
どんなに自分は大丈夫だと思っていても、ある日突然、事故や病気に合ったり、日本円が使えなくなったり、戦争状態に陥ったりしてしまうと、弱者の側に立たされてしまうかもしれません。
「インクルージョン」という考え方を持ちながら、アイデアとテクノロジーによって、介護者・被介護者の介護における負担を軽減するにはどうしたらよいかについて考えていくともっとみんなにとってやさしい世の中になっていくのではないでしょうか?
【関連記事】
- 認知症の改善効果が期待されるコミュニケーション用ロボット「テレノイド」が宮城県の介護施設に導入
- 要介護者の排泄の自立支援、介助者の負荷軽減の目的で作られた『ベッドサイド水洗トイレ』|トイレに自分が行くのではなく、トイレの方が自分のところに来るというアイデア
- 大人用紙オムツの売上が子供用オムツの売上を追い抜いた!?|日本の紙おむつが国際規格化|高齢化社会がビジネスチャンスに変わる!?
- 排泄のタイミングをお知らせするウェアラブルデバイス「DFree」|高齢者・介護分野・車いすユーザーに役立つ期待
【関連記事】
- 「介護用おむつセンサー」|紙おむつにつけたセンサーが排泄をしたときの温度と湿度の変化を検知しスマホに通知
- 見たら体感したくなる!「介護入浴向け泡シャワー装置」が開発された理由・効果|#所さんお届けモノです
- 高齢者向け住まいと医療・介護の連携について考えることが未来の生活・社会を考えることにつながる!?
- これからの介護のための車イスはどのように変わっていくの?
- 排泄のタイミングをお知らせするウェアラブルデバイス「DFREE」|高齢者・介護分野・車いすユーザーに役立つ期待
- 膝や足首への負担を軽減!階段の上り下りをアシストするエネルギーリサイクル階段|ジョージア工科大学・エモリー大学
- SUPERFLEX社、高齢者の動きをサポートして衣服の下から着ることができるパワードスーツ「AURA(オーラ)」を開発
- アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデア
- リハビリや高齢者のフレイル対策に!体重の負担を減らして有酸素運動を行なう反重力(空気圧・水中)トレッドミル
- 「TASTYFLOATS」|超音波による音響浮揚を使って、食べ物を舌に届ける非接触食品配送システム|食事の介助が人がいなくてもできるようになる!?
- トヨタ・ホンダが生活・介護支援ロボット開発でしのぎを削る
- 認知症の改善効果が期待されるコミュニケーション用ロボット「テレノイド」が宮城県の介護施設に導入
- 服薬支援ロボ+介護健診ネットワークの連携で高齢者の服薬管理の改善が期待される
- 日本の働く女性は世界で一番寝ていない!?|睡眠時間が短い理由とは?
【関連記事】
- 郵便番号のほうが遺伝子よりも健康に影響する?|「病気の上流を診る医療」|TED
- 介護が必要とされる期間は?介護に必要なお金・貯金はどれくらい準備が必要なの?
- ケアマネ就業先のICT・介護ロボット導入の現状とは?|解決すべきポイントは「いかに導入のハードルを下げることができるかどうか」
- 介護報酬での改善インセンティブで賛否分かれる|「要介護度の改善=自立支援の成果」には6割が否定的|『自立支援への改善インセンティブの導入』に対するケアマネジャーの意識調査結果
- これからの介護のための車イスはどのように変わっていくの?
- アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデア
- 介護や子育て、ペットの食べこぼし、飲みこぼし、粗相の掃除に!水洗いクリーナーヘッド「SWITLE(スイトル)」|使い方動画・使ってみた感想
- 「少子高齢化による高齢化社会は日本にとってのビジネスチャンス(医療・介護など)になる!」と発想を転換してみない?
- 介護福祉士ピンチ!?介護福祉士を養成する大学や専門学校への定員に対する入学者の割合が約46%
- 「フレイル(高齢者の虚弱)」の段階で対策を行ない、要介護状態の高齢者を減らそう!
- オーラルフレイルを知って健康寿命を延ばそう|自分の歯が多く保たれている人は、健康寿命が長く、要介護期間が短い|東北大学
- 介護施設で「パワーリハビリ」を導入 約8割に介護度を改善したり重症化を防ぐ効果|弘前
- 要介護者の約6割に咀嚼や嚥下に問題がある|嚥下障害チェックテスト・嚥下障害対策(健口体操・嚥下体操)
- 服薬支援ロボ+介護健診ネットワークの連携で高齢者の服薬管理の改善が期待される
- 75歳以上同士の「老老介護」初の30%超|65歳以上同士の「老老介護」は過去最高54%に|平成28年国民生活基礎調査
- 学習機能搭載・排泄検知シート|介護の現場を助けるニオイで検知するシート
- ひざ痛中高年1800万人 要介護へ移行リスク5.7倍|厚生労働省研究班
- ロコモティブシンドロームになると要介護のリスクが高くなる?ロコモの原因・予防のためのトレーニング方法
- 要介護者の4割が低栄養傾向|家族の7割は「低栄養」の意味知らない
- 介護予防・生活支援サービス市場は2025年に1兆3000億円になる!?
- トヨタ・ホンダが生活・介護支援ロボット開発でしのぎを削る
- 認知症の改善効果が期待されるコミュニケーション用ロボット「テレノイド」が宮城県の介護施設に導入
- 社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド)とヘルスケア分野(認知症・がん)の可能性|#サキドリ↑(NHK)
- IOT(MOFFバンド)を活用した高齢者の運動データを可視化することで自立支援をするサービス「モフトレ」開始|MOFF・三菱総合研究所・株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団
- 高齢者の筋内脂肪の蓄積はサルコペニアと運動機能低下に関係する|名古屋大学
- 【初心者向け!5G入門編】5Gで世界はどう変わる?|5Gとは?特徴は超高速・多数同時接続・超低遅延|#5G についてコレだけおさえよう!
- #5G によって産業はどう変わる?|#スマートシティ #自動車 #建設 #VR #スポーツ中継 #ショッピング #金融 #決済 #医療 #農業