炎症は炎症を呼ぶ? なぜ炎症は特定の臓器につながるの?

最近、健康について調べていると「炎症(慢性炎症)」という言葉をよく目にします。

歯周病では歯茎に炎症が起こります。

アトピー性皮膚炎なら皮膚、鼻炎なら鼻の粘膜です。

それぞれ別の場所で起きている炎症ですが、ここで素朴な疑問が浮かびました。

炎症が、別の場所の炎症に影響することってあるのでしょうか?

そして、もし影響することがあるのなら、

なぜ「つながりやすい炎症」と「つながりにくい炎症」があるのでしょうか?

調べてみると、どうやら炎症を「その場所だけの問題」と考えるだけでは見えてこないことがありそうです。

■歯周病は「歯茎だけの問題」なの?

この疑問を持つきっかけの一つになったのが歯周病です。

歯周病は、歯を支えている組織で慢性的な炎症が続く病気です。

興味深いことに、歯周炎の治療と全身の炎症との関係を調べた研究があります。

2023年のTreatment of periodontitis and C-reactive protein: A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trialsでは、26件のランダム化比較試験、2,579人分のデータを解析しています。

その結果、歯周炎を治療した人では、6か月後に血液中の炎症の指標であるCRPが平均0.69mg/L低下していました。ただし、研究ごとのばらつきが大きいことや、より長期間のデータが限られていることには注意が必要です。

ここで面白いと思ったのは、

「歯茎を治療したのに、血液中の炎症の指標にも変化がみられた」

ということです。

歯周病は、口の中だけで完結している問題ではないのかもしれません。

■歯周炎とアトピーにも関連がある?

さらに調べてみると、意外な研究もありました。

2025年に発表されたRisk of atopic dermatitis in periodontitis patients with and without dental scaling: A retrospective cohort studyでは、台湾の医療データを使って、歯周炎とアトピー性皮膚炎との関係を調べています。

この研究では、歯周炎のある人では、歯周炎のない人より、その後のアトピー性皮膚炎の発症リスクが高いという「関連」がみられました。また、歯周炎のある人の中では、歯石除去を受けた人ほどアトピー性皮膚炎のリスクが低いという関連も報告されています。

もちろん、ここは慎重に考える必要があります。

これは観察研究なので、

「歯周病がアトピーを引き起こす」

と証明されたわけではありません。

まして、

「歯周病を治療すればアトピーが治る」

という話でもありません。

この研究では生活習慣や食事、身体活動などの情報も十分に評価できていないため、なぜ両者に関連がみられたのかについては、まだ分からない部分があります。

それでも、

歯茎の炎症と皮膚の炎症に、なぜ関連がみられるのだろう?

という疑問は残ります。

■炎症は一つの場所だけで完結していない?

調べていくと、そもそも全身性炎症を「一つの臓器だけの問題」として考えない研究があることが分かりました。

2026年のInter-organ crosstalk in systemic inflammation: a narrative review of molecular mechanisms and pharmacological modulation in the muscle–adipose–liver axisでは、全身性炎症を、孤立した組織の反応ではなく、臓器間のコミュニケーションによって成り立つネットワークとして捉えています。

その情報伝達には、サイトカインだけでなく、細胞外小胞、脂質メディエーター、代謝物など、さまざまなものが関係するとされています。

だとすると、複数の場所で起きている炎症も、免疫系などの共通のネットワークを介して影響し合うことがあるのではないか?

そんな疑問が浮かびました。

以前、腎臓について調べたときに、「心腎連関」「肝腎連関」「脳腎連関」「肺腎連関」のように、一つの臓器だけを見るのではなく、臓器同士のつながりを見る考え方を知りました。

炎症についても、それに似た見方ができるのかもしれません。

■では、なぜ全部の炎症がつながらないの?

ここで、もう一つの疑問が出てきました。

仮に一つの場所の炎症が、全身の免疫系を介して別の場所に影響することがあるのなら、

なぜ、すべての炎症がすべての臓器に影響するわけではないのでしょうか?

言い換えると、

なぜ「つながりやすい炎症」と「つながりにくい炎症」があるのでしょうか?

ここが私にはとても興味深く感じられます。

■炎症にも「発信側」と「受信側」がある?

ここからは、研究で確立された説明ではなく、私自身が理解するためのイメージです。

炎症にも、

「発信する側」と「受信する側」

のような関係があるのではないでしょうか?

ある場所で慢性的な炎症が起こる。

そこから炎症や免疫に関係する何らかの情報が発信される。

その情報が体内を巡る。

けれど、すべての臓器が同じように反応するわけではない。

ある臓器は反応する。
別の臓器はほとんど反応しない。
あるいは、何か別の条件が重なったときだけ反応する。

実際、臓器間の炎症性コミュニケーションについて、サイトカイン、細胞外小胞、脂質メディエーター、代謝物など複数の経路が研究されています。

そう考えると、

「炎症という火が別の場所に燃え移る」

というより、

「ある場所から発せられた炎症に関する情報を、別の場所が受け取って反応する」

とイメージした方が分かりやすいのかもしれません。

ただ、これはあくまで理解するためのたとえです。

■「体はつながっている」と「何でもつなげる」は違う

ここまで考えていると、「実は体の不調は全部つながっているのでは?」と思いたくなります。

でも、ここは一度立ち止まった方がよさそうです。

最近、家族の病気について医師から説明を受ける機会があり、印象に残ったことがありました。

いくつもの症状を無理に一つの病気で説明するのではなく、

「この症状にはAという病気が関係している。一方、この症状にはBという病気が関係している。それらが重なって、今の状態になっている」

という考え方でした。

これは炎症について考えるときにも大切なのではないかと思います。

体の中で臓器や免疫がつながっているからといって、同時に起きている炎症をすべて結びつけてよいわけではありません。

つながっているものもあれば、それぞれ別の原因によって起きているものもある。

たとえば、ある人に歯周炎とアトピー性皮膚炎が同時にあったとしても、それだけで「歯周炎がアトピーを引き起こした」とはいえません。

反対に、一人の人で関連がみられなかったからといって、集団全体でみられる関連まで否定できるわけでもありません。

医学研究では「必ずこうなる」という話だけではなく、「ある条件では起こる確率が高くなる」「低くなる」という形で示されることが少なくありません。

つまり、

「つながりを見つけること」と「何でもつなげてしまうこと」は違う。

この区別は、健康情報を見るうえでも大切なのではないかと思います。

■なんだか「ツボ」の話に似てきた?

ここまで考えていると、自分でも少し不思議な気持ちになりました。

「離れた場所同士がつながっている」という話は、東洋医学の「足のツボを刺激すると別の場所に作用する」といった話にも少し似て聞こえるからです。

ただ、今回調べているのは「どこかがつながっているはず」という話ではありません。

現代の炎症研究では、サイトカイン、代謝物、細胞外小胞など、臓器間で情報を伝える仕組みそのものが研究されています。

とはいえ、「人体を一つ一つの臓器に分けて見るだけでは分からないことがある」という発想には、どこか共通するところがあるのかもしれません。

■「炎症は悪いから下げればいい」という話ではない

そして、ここは間違えたくないところです。

炎症そのものは、本来、体を守るために必要な反応でもあります。

ですから、

「炎症は悪い。だから、とにかく炎症を下げよう」

という話にしてしまうのは違います。

一方で、歯周炎のように、局所の慢性炎症を治療すると血液中の炎症指標にも変化がみられた研究があります。

だから、

治療できる慢性炎症をそのまま放置しないことには、その場所を治療する以上の意味があるのだろうか?

ということも気になります。

これも今の段階では、私が持っている「疑問」です。

そして、今回このことを調べてみようと思った理由がもう一つあります。

もし慢性的な炎症が、その場所だけの問題ではなく、何らかの形で全身の健康と関わっているのであれば、

「慢性的な炎症を起こしにくい生活を心がけること」や「治療できる慢性炎症を放置しないこと」には、目の前の症状を改善する以上の意味があるのではないか?

と思ったからです。

もちろん、

「炎症を抑えれば病気にならない」

という意味ではありません。

健康的な食事や運動については、それぞれさまざまな慢性疾患の予防との関連が知られています。WHO(世界保健機関)も、健康的な食事が糖尿病、心疾患、脳卒中、がんなどの非感染性疾患から健康を守ることにつながるとしています。

またCDCも、健康的な食事、定期的な身体活動、禁煙、過度の飲酒を避けること、十分な睡眠や予防医療などを慢性疾患予防のための基本として挙げています。

食事と炎症の関係についても研究が行われており、特定の食品だけでなく、地中海食などの食事パターンと炎症マーカーとの関連が調べられています。

そのため、これまでこのブログでも「抗炎症」という視点から食品や食生活を取り上げてきました。

ただ、今回調べてみて改めて感じたのは、「この食品を食べれば炎症が消える」と考えることと、「日々の食生活が長期的な炎症状態に関係する可能性を考えること」は分けた方がよいということです。

「抗炎症食品」を特効薬のように探すのではなく、食事全体、運動などの生活習慣、そして治療が必要な慢性炎症を放置しないことまで含めて考える。

もし局所の慢性炎症と全身の健康が何らかの形で相互に関係しているのであれば、こうした日々の積み重ねには、私たちが考えている以上の意味があるのかもしれません。

そして、歯周病など治療が必要な慢性的な炎症があるなら放置せず、適切な治療を受ける。

そのことが結果として、別の病気のリスクにも何らかの影響を与える可能性があるのだろうか。

それは今回、私が知りたいと思ったことの一つです。

■炎症は炎症を呼ぶのだろうか?

最初の問いに戻ります。

炎症は炎症を呼ぶのでしょうか?

今のところ、

「ある場所に炎症があると、それが別の場所に新しい炎症を起こす」

と単純に説明できるものではなさそうです。

一方で、炎症や免疫を一つの臓器だけではなく、臓器同士のコミュニケーションを含むネットワークとして捉える研究も進んでいます。

だとすれば、

複数の場所で起きている炎症が、免疫系などの共通のネットワークを介して影響し合うことはあるのだろうか?

そして、

なぜ「つながりやすい炎症」と「つながりにくい炎症」があるのだろう?

発信する炎症の違いなのでしょうか。

受け取る臓器側の違いなのでしょうか。

それとも、その人が持つ別の条件によって「つながりやすさ」が変わるのでしょうか。

私自身、この疑問にまだ答えを持っていません。

「炎症があるから、別の病気になる」と単純につなげることもできません。

それでも、歯周炎を治療すると全身の炎症指標であるCRPにも変化がみられる研究があるように、局所の慢性炎症がその場所だけの問題ではない可能性については研究されています。

だから今のところ私が考えているのは、とても普通のことです。

特別な「抗炎症法」だけに頼るのではなく、健康的な食事や運動など、慢性疾患の予防にもつながる基本的な生活習慣を心がけること。

そして、

治療できる慢性炎症があるなら放置せず、きちんと治療すること。

それが目の前の病気だけでなく、将来の別の病気を防ぐことにも何らかの意味を持つのだろうか?

そこまでは、まだ分かりません。

だからこそ興味があります。

身体はつながっている。でも、何でもつなげればいいわけではない。

つながっているものと、つながっていないもの。

その違いを一つずつ確かめていくことが、科学なのかもしれません。

炎症は炎症を呼ぶのか?

呼ぶことがあるとすれば、なぜ特定の臓器なのか?

もう少し追いかけてみたいテーマです。

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【参考文献】

Treatment of periodontitis and C-reactive protein: A systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Journal of Clinical Periodontology. 2023;50(1):45-60. DOI: 10.1111/jcpe.13709.

Risk of atopic dermatitis in periodontitis patients with and without dental scaling: A retrospective cohort study. PLOS ONE. 2025. DOI: 10.1371/journal.pone.0333877.

Inter-organ crosstalk in systemic inflammation: a narrative review of molecular mechanisms and pharmacological modulation in the muscle–adipose–liver axis. Frontiers in Pharmacology. 2026;17:1849847. DOI: 10.3389/fphar.2026.1849847.

WHO: Healthy diet

CDC: Preventing Chronic Diseases: What You Can Do Now







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