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「煮物は冷める時に味がしみる」は本当?調理科学から調べてみた!

「煮物は冷める時に味がしみ込む」

料理をしていると、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

私自身もこれまで、

煮ている時よりも、火を止めて冷めていく時に食材が煮汁を吸い込み、味が中まで入っていく

というイメージを持っていました。

ところが、この料理の“常識”を調べてみると、少し違う姿が見えてきました。

結論からいうと、

「冷めるから味がしみる」というより、味は高温の方が移動しやすく、火を止めた後も煮汁の中に置いておくことで味の移動が続いている

と考えた方が実態に近いようなのです。

■「冷める時に味がしみる」を実際に調べた研究がある

この疑問について、日本調理科学会で非常に興味深い研究が発表されています。

研究では、

ジャガイモ
ダイコン
コンニャク

を2cm角に切り、1%の食塩水で加熱。

その後、0℃、30℃、50℃、80℃、95℃に設定した1%食塩水に移し、5分、10分、30分後に食材内部の食塩濃度を測定しました。

もし「冷めることで味が入りやすくなる」のであれば、温度が下がる過程に何らかの特徴的な変化が現れそうです。

ところが結果は、

「いずれの場合においても高温に保った方がNaCl濃度は高い傾向」

でした。

研究者らは、

「今回の実験でも冷めるときに味が染み込むことは確認出来なかった」

と結論づけています。

つまり少なくともこの実験では、

「冷めること自体が味を食材内部へ押し込んでいる」

という現象は確認できなかったわけです。

■味がしみ込む基本は「拡散」

では、味はどうやって食材の中へ入っていくのでしょうか。

重要なのが拡散です。

煮汁の中にある塩分やアミノ酸などの成分が、濃度差によって食材内部へ徐々に移動していきます。

そして、この拡散は温度の影響を受けます。

化学工学のモデル計算では、煮たダイコン内部にアミノ酸が浸透する場合、20℃で想定した拡散係数より98℃で想定した拡散係数の方が大きいため、高温の方が内部への拡散に必要な時間が短くなるとされています。

つまり、

冷たい状態より熱い状態の方が、味の成分は移動しやすい

ということです。

■それなら、ずっと煮続ければいい?

ここで一つ疑問が出てきます。

味が高温ほど入りやすいのであれば、

「味がしみるまで、ずっと煮ておけばいいのでは?」

と思いますよね。

ところが料理では、そう単純にはいきません。

化学工学のモデルでも、高温なら拡散時間を短縮できる一方で「煮崩れ」が問題になることが指摘されています。

味を入れることだけを目的に加熱時間を延ばしてしまえば、食材の食感という別の大切な要素を損なう可能性があります。

ここで「火を止めて冷ます」という昔ながらの調理法に意味が出てきます。

■大切なのは「冷めること」より「時間」

煮物ができたところで火を止めても、味の移動が突然止まるわけではありません。

食材を煮汁の中に置いておけば、その間にも味の成分の移動は続きます。

化学工学のモデルでは、食材への熱伝導が分単位で進むのに対し、味の成分の拡散は時間単位の現象になることが示されています。

ここが、「冷める時に味がしみる」という経験則が生まれた理由を考えるうえで重要です。

たとえば、

煮上がった直後に食べる

のと、

火を止めて煮汁に浸した状態でしばらく置いてから食べる

のとでは、後者の方が味が移動するための時間を長く取っています。

その間、料理は当然冷めていきます。

そのため私たちは経験的に、

「冷ましたら味がしみていた」
↓
「冷める時に味がしみる」

と理解してきたのかもしれません。

ただ、研究結果を踏まえると、

「冷めたから」ではなく、「冷めている間も煮汁に浸かっていて、時間が経過したから」

と考えた方が正確でしょう。

■昔からの料理の知恵が間違っていたわけではない

ここがこの話で一番面白いところです。

「煮物は一度冷ます」という料理方法そのものが間違っているわけではありません。

むしろ合理的とも考えられます。

高温を維持すれば味の拡散は速くなります。

しかし、ずっと加熱してしまえば食感などに影響する。

そこで、

必要なところまで加熱する
↓
火を止める
↓
煮汁につけた状態で置く
↓
追加の強い加熱を避けながら、味が移動する時間を確保する

という調理法になります。

つまり昔から伝えられてきた、

「煮物は一度冷ますと味がしみる」

という料理の知恵は、実際の料理としては理にかなっていても、その理由を

「冷めるという現象そのものによって、味が食材に吸い込まれる」

と説明すると正確ではない可能性があるわけです。

実際に「ばあちゃんの料理教室」でも、大根を下ゆでしてから出汁や調味料と合わせて煮る「大根の煮物」を紹介しています。

理屈を知ったうえで実際の煮物を作ってみると、「火を通すこと」と「味をしみ込ませること」が必ずしも同じではないことがイメージしやすくなります。

→ ばあちゃん直伝!大根の煮物の作り方・レシピ

■「冷める時に味がしみる」を言い換えてみる

では、料理を誰かに教えるなら、どう説明すればよいのでしょうか。

従来なら、

「煮物は冷める時に味がしみるから、このまま冷ましましょう」

だったところを、

「ここで火を止めて、このまま煮汁につけておきましょう。味は高温の方が移動しやすいのですが、煮続ける必要はありません。火を止めた後も味の移動は続くので、食感を損なうような追加加熱をせず、時間を使って味をなじませます」

と説明すると、実際に起きている現象にかなり近づきます。

■まとめ:「冷めるから」ではなく「冷めている間にも」

今回調べてみて面白かったのは、

料理の経験則そのものが間違っていることと、その理由についての説明が正確ではないことは別

だということです。

「一度冷ました煮物は味がなじむ」という料理人の経験まで否定する必要はありません。

ただ、

味が一番入りやすくなる特別な現象が「冷める瞬間」に起きている

と考えるのは、少なくとも日本調理科学会の実験結果とは一致しません。

より正確に表現するなら、

味の成分は高温ほど速く拡散する。火を止めた後も煮汁に浸しておけば味の移動は続くため、食材を必要以上に加熱せず、時間をかけて味をなじませることができる。

ということになりそうです。

ですから、

「味は冷める時にしみ込む」

ではなく、

「冷めている間にも、味はしみ込み続けている」

と覚えておくと、昔ながらの料理の知恵と調理科学の両方をうまく説明できるのではないでしょうか。

■実際に煮物を作ってみる

「ばあちゃんの料理教室」では、大根に隠し包丁を入れ、下ゆでしてから調味料と一緒に煮る「大根と白菜と豚バラの煮物」を紹介しています。

料理に昔から使われている「味をしみ込みやすくする工夫」と、今回紹介した調理科学を見比べてみるのも面白いですね。

→ 大根と白菜と豚バラの煮物の作り方・レシピ

【参考文献・参考資料】

奥本牧子・畑江敬子「加熱後の温度履歴が煮物野菜における調味料の拡散に及ぼす影響(第2報)」平成21年度日本調理科学会大会、日本調理科学会大会研究発表要旨集、2009年。DOI: 10.11402/ajscs.21.0.1083.0。ダイコン、ジャガイモ、コンニャクを用いて温度条件とNaCl濃度との関係を検討し、高温保持条件の方がNaCl濃度が高い傾向となり、「冷めるときに味が染み込むことは確認出来なかった」と報告しています。

「煮物は冷めるときに味がしみるというのはなぜ-伝熱と拡散のはなし-」『化学工学』Vol.73, No.2, p.98、2009年関連資料。ダイコンをモデルとして伝熱とアミノ酸の拡散を比較し、温度による拡散係数の違いと、伝熱に比べ味の拡散には長い時間が必要になることを解説しています。

「素材に味がしみ込む③」料理科学の森、2023年6月27日。ジャガイモ・ダイコン・こんにゃくを用いた食塩拡散実験を紹介し、高温で保温した場合ほど食塩量が多く、温度低下過程による味のしみ込み効果は見られなかったと解説しています。

株式会社セイボリー「煮物は『冷めるときに味が染みる』って本当?科学的に正しい“味染み”のコツ」2025年10月3日。「冷ますこと」自体ではなく、温度と時間のバランスという観点から味の浸透を解説しています。







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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単発の健康情報やレシピの話ではありません。

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BBQでは肉だけじゃなく、野菜の焼き方にもこだわってみよう!野菜によって焼き方を変えるともっと面白い

BBQといえば、やっぱり主役はお肉。

「この肉は強火で焼こう」
「表面を焼いてからじっくり火を通そう」

など、お肉の焼き方にはこだわるのに、野菜はというと、

切った玉ねぎ、ナス、ピーマンなどを網の空いているところに並べておく。

そんな焼き方になっていないでしょうか?

ところがXでBBQについて見ていたところ、

「野菜をそのまま焼くのではなく、オリーブオイルなどを塗ったり、蒸し焼きにしたりした方がおいしい」

という趣旨の投稿が話題になっていました。

確かに、野菜を切ってそのまま焼いていると、水分が抜けたり、焼き上がる前に表面が焦げたりすることがあります。

そこで気になりました。

世界ではBBQの野菜をどうやって焼いているのでしょうか?

調べてみると、野菜の焼き方にはいろいろな方法がありました。

1.オイルをまとわせて焼く

まずは、野菜にオリーブオイルなどの油をまとわせてからグリルする方法。

ナスやズッキーニ、パプリカなどをグリルするときに使われる定番の方法です。

野菜をただ網の上に置くのではなく、油を使いながら表面を香ばしく焼いていく。

BBQというと「炭火で焼く」というところにばかり興味が向きますが、

「焼く前に野菜をどう準備するか」

も、おいしさを左右するポイントなのですね。

2.ホイルで包んで「蒸し焼き」にする

もうひとつがホイル焼きです。

野菜をアルミホイルで包んで加熱すると、中では野菜から出た水分を利用した蒸し焼きのような状態になります。

直火で表面を焼くのとは違い、

野菜をやわらかく、ジューシーに仕上げたいとき

には面白い方法です。

玉ねぎやジャガイモ、キノコ類など、いろいろ試してみたくなります。

3.「切ってから焼く」のではなく、丸ごと焼いてみる

そしてもう一つ面白いのが、

「そもそも細かく切らない」

という発想です。

野菜を丸ごと、あるいは大きな状態のままじっくり加熱します。

BBQインストラクターが紹介する方法にも、皮付きの野菜を丸ごと、遠火でじっくり焼くという方法があります。内部の水分を逃がしにくくして仕上げる考え方です。

実はハクライドウでも以前、「フライパンで焼きナスの作り方・レシピ/なすは丸ごと加熱する」という記事を紹介しています。

一方で、野菜を「切って焼く」ことにも利点があります。

Weberでは、野菜を切って網との接触面を大きくすることで、グリルによる風味を引き出す方法を紹介しています。

つまり、

「切るか、丸ごとか」も、野菜や食べたい仕上がりによって変えていい。

ということなのかもしれません。

4.そして、加熱すると野菜の「うま味」にも変化が起こる?

さらに面白い研究があります。

「野菜の加熱にともなうグアニル酸の生成」という研究では、ナスを蒸し加熱したところ、うま味に関係する「グアニル酸」が100gあたり0.65mgから1.70mgへ増加しました。

さらに、トマト、ニンジン、ダイコン、ネギ、ホウレンソウでも、蒸し加熱に伴うグアニル酸の増加が確認されています。

つまり野菜を加熱するというのは、単に「硬いものを柔らかくする」だけではなく、味に関係する成分にも変化が起きているということです。

5.「野菜は水分を逃がしたらダメ」とも限らない

ここが今回調べていて特に面白かったところです。

野菜をジューシーに仕上げるなら、水分を逃がしにくくする方法があります。

ところが、それだけがおいしい焼き方ではありません。

先ほどの研究では、調理用トマトを250℃のオーブンで15分加熱すると約24%重量が減少する一方、グアニル酸は100gあたり1.10mgから1.77mgへ増加しました。

研究では、水分が失われることによる呈味成分の濃縮に加え、グアニル酸の生成も確認しています。

となると、

「野菜=水分を逃がさず焼けばおいしい」

と単純には言えそうにありません。

水分を保ちながらじっくり火を通す。
オイルをまとわせて表面を香ばしく焼く。
あえて焼いて水分を減らし、味を濃縮させる。

野菜によって、そしてどんな味や食感にしたいかによって、焼き方を変える。

これがBBQをもっと楽しむポイントなのではないでしょうか。

6.スペインでは「焼き野菜」そのものが料理

世界に目を向けると、野菜を焼くこと自体を楽しむ料理もあります。

例えばスペイン・カタルーニャ地方のエスカリバーダ(Escalivada)。

ナスやパプリカ、玉ねぎなどを焼いて作る料理です。

BBQで、

「お肉の横で、とりあえず野菜も焼いておこう」

とするのとは発想が違います。

野菜をどう焼けばおいしくなるのか。

それ自体が料理なのです。

BBQでは「この野菜をどう焼こう?」と考えてみよう

今回調べてみて感じたのは、

BBQでは肉の焼き方だけでなく、もっと野菜の焼き方にもこだわってみると面白い

ということでした。

例えば、

香ばしさを楽しみたいなら、オイルをまとわせてグリル
水分を逃がしにくくしたいなら、大きいまま・丸ごとじっくり加熱
やわらかくジューシーにしたいなら、ホイルで蒸し焼き
焼くことによる味の濃縮を楽しむ

など、ひと口に「野菜を焼く」といっても考え方はいろいろあります。

何でも同じ大きさに切って、全部同じように網に並べる必要はないんですね。

ナスならどう焼こう?
玉ねぎなら?
トマトなら?
パプリカなら?

そんなふうに、肉だけでなく一つひとつの野菜に合った焼き方を考えてみる。

それだけで、いつものBBQがちょっと違う料理になるのではないでしょうか。

「BBQの野菜=肉の付け合わせ」から、「今日は野菜をどう焼こう?」へ。

次のBBQではぜひ、野菜の焼き方にもこだわってみてください。

【参考文献・関連記事】
堀江秀樹「野菜の加熱にともなうグアニル酸の生成」日本調理科学会誌 Vol.45, No.5, 346-351(2012)
ハクライドウ 「フライパンで焼きナスの作り方・レシピ/なすは丸ごと加熱する」







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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

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クルクミンが大腸腺腫(大腸ポリープ)の増大を抑える?徳島大学が約600人を2年間調査

カレーの黄色い色のもととして知られる「クルクミン」。

ウコン(ターメリック)に含まれる成分ですが、このクルクミンと大腸がん予防について興味深い研究結果が発表されました。

徳島大学などの研究グループが全国26施設、約600人を対象に2年間のランダム化比較試験を行ったところ、クルクミンを摂取したグループでは、6mm以上の比較的大きな大腸腺腫(ポリープ)の発生リスクが約44%低かったことがわかりました。

ただ、この研究は「クルクミンを摂れば大腸がんを予防できる」という研究ではありません。

では、何がわかったのでしょうか?

■クルクミンを2年間摂取するとどうなった?

今回の研究対象となったのは、大腸腺腫を内視鏡で摘除した約600人です。

研究では対象者を、

高吸収型クルクミン「セラクルミン®」を摂取するグループ
有効成分を含まないプラセボを摂取するグループ

に無作為に分けました。

患者と医療者の双方がどちらを摂取しているかわからない「二重盲検法」で2年間投与し、その後、大腸内視鏡検査で新たに発生した腺腫を調べています。

その結果、まず押さえておきたいのは、主要評価項目である「大腸腺腫全体の発生率」については、クルクミン群とプラセボ群で有意な差がなかったことです。

つまり、クルクミンを摂取すれば大腸ポリープそのものができなくなる、という結果ではありませんでした。

ところが、腺腫の「大きさ」に注目すると違いがありました。

■6mm以上の比較的大きな腺腫が13.3%から7.5%に

6mm以上の腺腫の発生率は、

プラセボ群:13.3%
クルクミン群:7.5%

となり、クルクミン群では発生リスクが約44%低くなりました(相対リスク0.56、95%信頼区間0.33~0.95)。

さらに、6mm以上の腺腫の個数もクルクミン群で少なく、発生した腺腫全体についても、その大きさが小さかったことがわかりました。

研究グループは、この結果について、クルクミンは腺腫ができること自体を完全に防ぐというより、腺腫が大きくなることや進展することを抑えている可能性を示しています。

では、なぜ「腺腫が大きくならなかった」ことが重要なのでしょうか?

■大腸がんと「腺腫」の関係

ここで知っておきたいのが、大腸がんと「大腸腺腫(腺腫性ポリープ)」との関係です。

大腸がんには複数の発生経路がありますが、国立がん研究センター「大腸がんファクトシート2024」でも、大腸がんの主な発生経路の一つとして「adenoma-carcinoma sequence(腺腫・がん連続説)」が挙げられています。

また、国立がん研究センター「大腸がんのリスクファクター」では、大腸がんの大部分は腺腫性ポリープから発生する一方で、ほとんどの腺腫性ポリープは良性であり、がん化するのは一部であると説明されています。

大事なのはここからです。

ポリープは大きいほど大腸がんになるリスクが高く、また、ポリープのできやすい人は大腸がんになるリスクが高いとされています。

つまり、大腸がん予防を考えるうえでは、

腺腫を見つけて適切に取り除く

ことに加えて、

「大きくしない」「繰り返し増えるのを抑える」

というアプローチも研究する価値があるわけです。

以前HAKURAIDOUでも、「大腸ポリープの手術内容・大腸ポリープ切除後の食事の注意点」の記事で、ポリープの大きさとできやすさに注目し、「大腸ポリープをいかに小さく、またできにくくするかは大腸がん予防の一つのアプローチ」と紹介しました。

今回のクルクミン研究は、まさにこの点で興味深い研究なのです。

■ポリープができやすい人にも注目

もう一つ興味深い結果があります。

今回の研究では、過去に摘除された大腸腺腫の数が多い人ほど、クルクミンによる再発抑制効果が高くなる傾向がみられました。

特に過去に6個以上の腺腫を摘除していた人では、2年後に4個以上の腺腫が発生するリスクが、プラセボ群より低くなりました(リスク比0.40)。

つまり今回、

「比較的大きな腺腫が少なくなった」

だけでなく、

「もともと腺腫を繰り返していた人ほど効果が大きくなる可能性が示された」

という結果が出たわけです。

ポリープの大きさが大きいほど大腸がんになるリスクが高く、ポリープのできやすい人ほど大腸がんリスクが高いとされていることを考えると、この2つに関係する結果が得られたことが今回の研究の興味深いポイントといえます。

■「クルクミンで大腸がんを予防できる」という研究ではない

ただし、ここは非常に重要です。

今回確認されたのは、大腸がんそのものの発症が減ったことではありません。

研究グループも、今後さらに長期間追跡することによって、クルクミンが大腸がんそのものの発症予防につながるのかを検証する必要があるとしています。

そして、もう一つ注意したいポイントがあります。

今回の研究で使われたのは、普通のカレーやウコンそのものではなく、通常のクルクミンより吸収性を高めた高吸収型クルクミン「セラクルミン®」です。

したがって今回の結果から、

「カレーをたくさん食べれば大腸がんを予防できる」

と考えたり、市販のクルクミンサプリメントに同じ結果をそのまま当てはめたりすることはできません。

■それでも今回の研究が面白い理由

今回の研究の面白さは、「クルクミン=がん予防」という単純な話ではありません。

むしろ、

「大腸がんにつながる可能性がある腺腫を、大きくしない、繰り返し増やさないための方法になりうるのではないか」

という可能性を、実際に人を対象とした臨床試験で調べたところにあります。

約600人を対象に、全国26施設が参加するランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験として2年間検証され、6mm以上の腺腫の発生率・個数・大きさについて抑制が認められました。また、有害事象の発生頻度について両群に差はありませんでした。

大腸腺腫そのものを完全に防ぐことはできなかった。

けれども、「大きくなるのを抑える」という別の可能性が見えてきた。

そして、その意味を考えるとき、大腸がんと腺腫の関係が重要になってくるわけです。

今後、長期追跡によって大腸がんそのものの発症予防につながるのかが明らかになれば、さらに興味深い研究になりそうです。

→ 大腸がんの症状(初期症状)チェック・原因・予防 について詳しくはこちら

【関連記事】
大腸がんになりにくい体質にするための方法|#ガッテン(#NHK)
腺腫と大腸がんの関係について紹介しています。
大腸ポリープの手術内容・大腸ポリープ切除後の食事の注意点
実際に大腸ポリープの手術を受けた方へのインタビューです。
ドランクドラゴン塚地さんにガン化の可能性の高い直径8mmの大腸ポリープが見つかる
ポリープの大きさと大腸がんリスクについて紹介しています。

【参考文献・参考資料】
徳島大学「カレー粉成分クルクミンが大腸前がん病変の再発を抑制 ~全国26施設・約600人のランダム化比較試験を実施~」、2026年9月25日。
Takayama T, Okamoto K, Ishikawa H, et al. Curcumin Suppresses Growth of Recurrent Colorectal Adenoma After Endoscopic Resection: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled, Multicenter Trial. The American Journal of Gastroenterology. Accepted manuscript, August 28, 2026. DOI: 10.14309/ajg.0000000000004193.
国立がん研究センター「大腸がんファクトシート2024」。大腸がんの発がんメカニズム、リスク、検診などについての資料。
井上真奈美・田島和雄「大腸がんのリスクファクター」国立がん研究センター。腺腫性ポリープの大きさ・できやすさと大腸がんリスクについて。
国立がん研究センターがん対策研究所「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン 2024年度版」。

脳の「老廃物を排出する仕組み」を外から動かす?アルツハイマー病研究で注目されたグリンパティック系

SNSで「アルツハイマー病の脳内プラークを、手術や薬を使わず10分ほどで排出する方法が見つかった」という興味深い情報を見かけました。

メガネを超音波洗浄機できれいにするように、脳に超音波を当てて老廃物を洗い流す。そんなイメージを持ってしまいそうですが、原論文を確認すると少し違います。

研究で使われたのは超音波(ultrasound)ではなく、40.68MHzの超短波(ultrashort wave:USW)です。

また「10分」というのも、アルツハイマー病のプラークが10分で消えたという意味ではありません。健康なマウスに超短波を照射したところ、10分以内にグリンパティック系の液体の流れが増強したという結果です。

では、この研究の何が興味深いのでしょうか。

■脳には老廃物の排出にかかわる仕組みがある

私たちの脳では、脳脊髄液などが循環しながら、代謝によって生じた老廃物の排出にかかわっています。

その仕組みの一つとして注目されているのが「グリンパティック系(glymphatic system)」です。

脳脊髄液が脳組織へ入り、組織の間にある液体と物質を交換しながら、代謝によって生じた老廃物の排出にかかわっています。この働きには、アストロサイトに存在する「AQP4(アクアポリン4)」という水チャネルが関係しています。

アルツハイマー病との関係では、この排出機能の低下によって、アミロイドβやタウといったタンパク質が病的に蓄積することとの関連が研究されています。

■この「排出システム」を外から動かせないか?

今回の研究の面白さはここにあります。

研究者らがマウスに40.68MHzの超短波を照射したところ、グリンパティック系への液体の流入と流出が促進されました。

その際、脳ではデルタ波の神経活動の同期が増え、さらにAQP4の働きにかかわる変化が確認されました。AQP4を薬理学的に阻害すると、この効果はみられなくなりました。

つまり単純に、「外から刺激して脳の汚れを洗い流した」という話ではありません。

脳がもともと持っている老廃物の排出システムの働きを、外部からの刺激によって高められる可能性が示されたというところが重要です。

■アルツハイマー病モデルマウスでも研究

さらに研究者らは、アルツハイマー病モデルマウスでも実験を行いました。

その結果、グリンパティック機能が改善し、認知機能の低下も改善したと報告しています。

ただし、これはあくまでマウスを使った前臨床研究です。人のアルツハイマー病を超短波で治療できることが確認されたわけではありません。

■「老廃物を取り除く」から「排出する仕組みを動かす」へ

最初は「10分で脳内プラークを取り除く」という情報に目を引かれました。

しかし原論文を確認してみると、この研究の興味深さは別のところにありました。

脳に蓄積した物質を直接取り除くのではなく、脳が本来持っている老廃物排出システムの働きを外部から調節する。

そんなアプローチの可能性が動物実験で示されたことです。

以前、「脳のゴミ捨てルートが鼻にあった?Cell論文から考える嗅覚と認知症」という記事で、脳脊髄液が嗅球周辺から硬膜リンパ管、鼻腔リンパ管などを経て排出される経路について紹介しました。

前回が「脳の老廃物はどこを通って排出されるのか」という研究だとすれば、今回は「その排出システムの働きを外から高めることはできないか」という研究です。

まだ人のアルツハイマー病治療につながるかどうかは分かりません。

それでも、こうした研究を続けて見ていくと、「脳にはどのような老廃物排出の仕組みがあり、その働きをどう維持・調節できるのか」というテーマが、アルツハイマー病などの神経疾患を考えるうえで注目されていることが見えてきます。

→「脳のゴミ捨てルートが鼻にあった?Cell論文から考える嗅覚と認知症」

【参考文献】

Noninvasive ultrashort wave neuromodulation enhances glymphatic clearance to alleviate traumatic brain edema and Alzheimer’s pathology. Science Advances. 2026;12(42):eaeh8870. DOI: 10.1126/sciadv.aeh8870.

【関連記事】
脳のゴミ捨てルートが鼻にあった?Cell論文から考える嗅覚と認知症

【マツコの知らない世界】抜け毛の世界/抜け毛が気になる人に必要な栄養素とは?鉄分・亜鉛・たんぱく質とおすすめ食品

2026年10月20日放送の「マツコの知らない世界」では「抜け毛の世界」が取り上げられ、女性の抜け毛と食生活について紹介されました。

番組では、「肉を食べない」ことが抜け毛につながる可能性について触れられ、肉に含まれる鉄分や亜鉛などの栄養素が話題になりました。

そこで今回は、

・抜け毛と栄養不足にはどんな関係があるのか
・なぜ鉄分や亜鉛が重要なのか
・髪の健康を考えるならどんな食品を選べばいいのか

について見ていきます。

→ 薄毛や抜け毛の原因(男性・女性)・対策・予防・チェック について詳しくはこちら

■髪も食べたものから作られている

髪の主成分は「ケラチン」というたんぱく質です。

そのため髪を健康に保つには、たんぱく質だけでなく、細胞の働きにかかわる鉄や亜鉛、各種ビタミンなどを不足させないことが大切です。

極端なダイエットや急激な体重減少、栄養不足などが、休止期脱毛のきっかけになることがあります。

ただし、ここで注意したいのは、

鉄や亜鉛をたくさん摂れば、髪が増えるという意味ではありません。

抜け毛には栄養不足以外にもさまざまな原因があります。栄養については「たくさん摂る」のではなく、不足させないという考え方が重要です。

■抜け毛と鉄分

鉄というと「貧血」のイメージがありますが、髪との関係についても研究されています。

特に女性の脱毛については、体内の貯蔵鉄の指標となるフェリチンとの関連が研究されています。一方、鉄不足ではない人が鉄を追加で摂取することで抜け毛が改善するという話とは区別する必要があります。

■鉄を摂れる食品

鉄分は、全身の細胞に酸素を運ぶ「ヘモグロビン」の構成成分となる必須ミネラルです。

主に赤身の肉や魚に含まれるヘム鉄と、野菜などに含まれる非ヘム鉄があり、鉄が不足して貧血になると、筋力低下や疲労感などにつながることがあります。

日常の食事なら、例えば、

・赤身の肉
・レバー
・魚介類
・貝類
・大豆・大豆製品
・鉄を含む野菜類

など、いろいろな食品から摂ることができます。

→ 鉄分の多い食品 について詳しくはこちら

野菜などに含まれる非ヘム鉄は、肉や魚に含まれるヘム鉄と比べて吸収されにくい特徴があります。

そこで、非ヘム鉄を含む食品を食べるときは、ビタミンCを含む食品を一緒に摂るのも一つの工夫です。

ビタミンC(アスコルビン酸)は、非ヘム鉄を吸収されやすい形に還元し、鉄の吸収を助けます。そのため、野菜や大豆製品など鉄を含む食品と、ビタミンCを含む野菜や果物などを組み合わせて食べるとよいでしょう。

■抜け毛と亜鉛

もう一つ注目したいのが亜鉛です。

亜鉛はたんぱく質合成や細胞分裂などに関係するミネラルで、亜鉛欠乏では脱毛がみられることがあります。

今回のニュースでは「牡蠣」が登場しました。

確かに牡蠣は亜鉛を多く含む代表的な食品です。

→ 牡蠣(カキ)の栄養 について詳しくはこちら

ただし、亜鉛を摂れる食品は牡蠣だけではありません。

亜鉛を摂れる食品
牡蠣
牛肉
豚肉
レバー
チーズ
卵
魚介類

などがあります。

→ 亜鉛の多い食品 については詳しくはこちら

つまり、

「牡蠣を食べられない=亜鉛を摂れない」ではない

わけです。

アレルギーなどで特定の食品が食べられない場合も、一つの食品に頼るのではなく、食べられる食品の中から選択することがポイントになります。

■忘れてはいけない「たんぱく質」

鉄や亜鉛とともに忘れてはいけないのが、たんぱく質です。

髪の主成分はケラチンというたんぱく質です。

そのため、髪の健康を考えるうえでは、特定の栄養素だけに注目するのではなく、たんぱく質をはじめ、鉄や亜鉛などの栄養素を不足させないことが大切です。

例えば、牛赤身肉なら、たんぱく質・鉄・亜鉛をまとめて摂れる食品の一つです。

一方で肉をあまり食べない場合は、

魚・卵・大豆製品+鉄や亜鉛を含む食品

というように組み合わせて考えられます。

「髪にいい食品を一つ探す」のではなく、

髪をつくる材料を普段の食事で不足させない

という考え方です。

■髪のためにサプリメントを飲めばいい?

「抜け毛が気になるから亜鉛サプリ」「鉄サプリ」と自己判断で大量に摂取するのはおすすめできません。

鉄や亜鉛については、不足している場合には補う意味がありますが、不足していない人への補充で脱毛が改善するかについては根拠が限定的です。また、栄養素によっては過剰摂取にも注意が必要です。

抜け毛が急に増えた、長期間続いている、髪全体が薄くなってきたなど気になる変化がある場合には、食事だけで判断せず、皮膚科などの医療機関に相談することも大切です。

■まとめ|髪のためにも「不足させない食事」を

今回の「抜け毛の世界」をきっかけに考えたいのは、特定の食べ物を食べれば髪が生えるという話ではありません。

髪も私たちの体の一部です。

髪の材料になるたんぱく質、そして体のさまざまな働きを支える鉄や亜鉛などの栄養素を、普段の食事から不足させないことが基本です。

肉を食べないなら魚や卵、大豆製品などを組み合わせる。

牡蠣が食べられないなら牛肉やほかの魚介類などから亜鉛を摂る。

「髪にいいスーパーフード」を探すよりも、いろいろな食品を組み合わせて必要な栄養素を摂る。

抜け毛が気になるときは、まず普段の食生活を振り返ってみましょう。

ただし、抜け毛の原因は栄養不足だけではありません。急に抜け毛が増えた、長く続いている、薄毛が進行しているといった場合には、自己判断でサプリメントを摂取するだけでなく、皮膚科などの医療機関に相談しましょう。

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