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ミニ肝臓のヒト肝細胞は生体内の肝細胞により近い状態に分化することを確認|横浜市立大学

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■ミニ肝臓のヒト肝細胞は生体内の肝細胞により近い状態に分化することを確認|横浜市立大学

Army scientists energize battery research

by U.S. Army RDECOM(画像:Creative Commons)

iPS細胞を用いてヒト肝臓発生の複雑なメカニズムを解明

(2017/6/15、横浜市立大学・科学技術振興機構)

生体内のヒト肝細胞、平面培養したヒト肝細胞、ミニ肝臓内のヒト肝細胞を比較したところ、平面培養で分化誘導した肝細胞に比べて、ミニ肝臓内の肝細胞は生体内の肝細胞により高い相関を持つことが明らかとなりました。これが、平面培養した肝細胞に比べ、ミニ肝臓の方が肝障害に対する高い治療効果が得られることの理由のひとつではないかと考えられます。

横浜市立大学の関根圭輔助教、武部貴則准教授、谷口英樹教授らの研究グループは、ドイツ・マックスプランク研究所のBarbara Treutlein、シンシナティ小児病院と共同で行なった研究によれば、ミニ肝臓の肝細胞は、平面培養により分化誘導した肝細胞に比べて、生体内のヒト肝細胞により近い状態に分化することがわかり、このことがミニ肝臓が肝障害に高い治療効果が得られる理由の一つであると考えられるそうです。

ミニ肝臓における生体肝臓シグニチャー
ミニ肝臓における生体肝臓シグニチャー

参考画像:iPS細胞を用いてヒト肝臓発生の複雑なメカニズムを解明(2017/6/15、横浜市立大学・科学技術振興機構)|スクリーンショット




■まとめ|ミニ肝臓とは?

ミニ肝臓とは、どういうものでしょうか?

iPS細胞を用いてヒト肝臓発生の複雑なメカニズムを解明

(2017/6/15、横浜市立大学)

ヒトiPS細胞から分化誘導した肝内胚葉細胞と、血管内皮細胞、間葉系細胞を最適な比率で混ぜ合わせることで、in vitro培養条件下で自律的に創出した肝臓の基となる立体的な肝芽(ミニ肝臓)のこと(Nature 499(7459): 481-4, 2013; Nature Protocol 9(2): 396-409, 2014)。さらに、この革新的な3次元培養技術(器官原基法)を他器官の作製に応用し、肝臓のみならず、膵臓、腎臓、腸、肺、心臓、脳から分離した細胞から3次元的な器官原基を創出することを報告している。創出された3次元器官原基は、移植後すみやかに血流を有する血管網を再構成し、機能的な組織を自律的に形成することができる(Cell Stem Cell. 16(5): 556-65, 2015)。

移植医療に朗報!「臓器製造システム」の実力

(2015/2/3、東洋経済オンライン)

iPS細胞から肝細胞になる手前の前駆細胞を作り、そこへ血管のもととなる内皮細胞、接着剤の役割を担う間葉系細胞の2種類の細胞を混ぜて培養。すると、すべての細胞が48~72時間でボール状に集まってきた。これが網目状の血管構造を持つミニ肝臓だ。

今回の研究によって、ミニ肝臓の作製技術は、再生医療にとっての重要な技術であることが有効であることがわかっただけでなく、臓器の発生プロセスを解明するツールになることが期待されます。

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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の細胞死を引き起こすメカニズムを解明|活性化カルパインが核膜孔複合体構成因子を切断し、核-細胞質輸送を障害|東大




■筋萎縮性側索硬化症(ALS)の細胞死を引き起こすメカニズムを解明|活性化カルパインが核膜孔複合体構成因子を切断し、核-細胞質輸送を障害|東大

ALS運動ニューロンで起こる核膜孔複合体を介した細胞死カスケード
孤発性ALSの病態を示すモデルマウスの脊髄運動ニューロンでは、活性化されたカルパインが核膜孔複合体(NPC)の構成因子(Nucleoporin)を切断し、核-細胞質輸送を障害する。その障害により細胞の遺伝子発現が抑えられ、生理機能が阻害され細胞死に陥ることが示唆される。

参考画像:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の細胞死を引き起こすメカニズムを更に解明-活性化カルパインが核膜孔複合体構成因子を切断し、核-細胞質輸送を障害- (2017/1/3、東京大学プレスリリース)|スクリーンショット

筋萎縮性側索硬化症(ALS)の細胞死を引き起こすメカニズムを更に解明-活性化カルパインが核膜孔複合体構成因子を切断し、核-細胞質輸送を障害-

(2017/1/3、東京大学プレスリリース)

本研究グループは、ALS の病因解明研究を進めるなかで、異常なカルシウム透過性 AMPA受容体(注4)が発現していることが病因に関わる疾患特異的分子異常であり、細胞内カルシウム濃度の異常な上昇がカルパインの活性化を通じて ALS 運動ニューロンに特異的に観られる TDP-43 病理を引き起こすことを既に明らかにしていました。今回、カルパインの活性化がNPC の構成因子であるヌクレオポリンを異常に切断することで、核-細胞質輸送を障害することを解明しました。この障害は運動ニューロンでの必要な遺伝子発現を抑えるので、細胞の生理活動が阻害され細胞死に陥ることが考えられます。

国際医療福祉大学臨床医学研究センター郭伸特任教授(東京大学大学院医学系研究科)、山下雄也特任研究員(東京大学大学院医学系研究科)らの研究グループは、東京医科大学相澤仁志教授との共同研究で、カルパイン(細胞に広く発現しているカルシウムにより活性化するタンパク分解酵素)の活性化が核膜孔複合体(Nuclear Pore Complex;NPC)の構成因子であるヌクレオポリンを異常に切断しすることで、核と細胞質輸送が障害され、細胞死を引き起こすメカニズムを解明しました。

この障害が運動ニューロンでの必要な遺伝子発現を抑えるので、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因メカニズムであることが明らかになりました。







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新規T細胞「HOZOT」を活用したがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発|岡山大




新規T細胞「HOZOT」を活用したがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発|岡山大

新規T細胞「HOZOT」を活用したがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発|岡山大
新規T細胞「HOZOT」を活用したがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発|岡山大

参考画像:広がったがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発 新規T細胞「HOZOT」のウイルス療法への応用(2016/12/16、岡山大学プレスリリース)|スクリーンショット

広がったがん細胞へ選択的に治療薬を届ける新技術を開発 新規T細胞「HOZOT」のウイルス療法への応用

(2016/12/16、岡山大学プレスリリース)

今回、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原教授、大学院生の大西医師、岡山大学病院新医療研究開発センターの田澤准教授、株式会社林原の中村研究員らの研究グループは、新規の制御性 T 細胞「HOZOT」のがん細胞への選択的な細胞内侵入効果(Cell-in-Cell activity)を利用して、腫瘍融解ウイルスを搭載した HOZOT 細胞を作製。がん細胞へ選択的に腫瘍融解ウイルスをデリバリーする技術を開発しました。

腫瘍融解ウイルスを搭載した HOZOT 細胞は、がん細胞への選択的なデリバリー機能によってがん細胞内に侵入してウイルスを拡散させるため、腹腔内に広がったたくさんのがん細胞を死滅させる事を動物モデルで証明しました(図)。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器外科学分野の藤原俊義教授、岡山大学病院新医療研究開発センターの田澤大准教授らのグループによれば、新規の制御性 T 細胞「HOZOT(ホゾティ)」のがん細胞への選択的な細胞内侵入効果を利用して、腫瘍融解ウイルス(「テロメライシン」)を搭載したHOZOT細胞を作成し、がん細胞へ選択的に運搬する技術の開発に成功したそうです。




■ピンポイントで治療薬を届けるアイデアの例

Deliveries

by John Loo(画像:Creative Commons)

最近、病気の部位にピンポイントで治療薬を届ける方法が注目を集めています。

ナノカプセルで疾患部位にピンポイントで治療薬を届ける技術|ドラッグデリバリーシステム(DDS)によれば、「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」というナノカプセルの中に薬を入れて、体の中の疾患部位にその薬を届けるという技術です。

GOOGLEX、ナノ粒子とウェアラブル端末を用いてがんを早期発見するプロジェクトを発表によれば、「Google X」で生体研究プロジェクトを統括しているAndrew Conrad氏が先日発表したのは、ナノ粒子とウェアラブル端末を用いてがんなどを早期発見するというプロジェクトです。

ナノ粒子を用いたアテローム性動脈硬化症の新治療法とは−米研究によれば、ナノ粒子に抗炎症薬を組み込んで運ばせ、プラークが蓄積されている部位で治療薬を放出させるという研究が行われているそうです。

血液の中を泳いで薬を届ける「3Dプリント魚」が開発される|カリフォルニア大学サンディエゴ校によれば、3Dプリントでできた魚型ロボットが、人間の血液の中を泳いでいって、毒素を探知したり、目的部位に薬を運んだりすることができるようになるかもしれないそうです。

ROBOT ORIGAMI |折り紙からインスピレーションを受けて作られた小さな医療用ロボットが開発によれば、小さな医療用ロボットが人体内部の奥深くに薬品を届けたり、医療行為を行ったりするのに利用できる可能性が期待されています。

パラダイムシフトを起こす!?塩1粒ほどの大きさのカメラを作製することに成功|独シュツットガルト大学によれば、独シュツットガルト大学(University of Stuttgart)の研究チームが考えたのは、直径が毛髪2本分の光ファイバーの先端に3Dプリンターで作製した3つのレンズを備えたカメラを取り付けたもので、侵襲性を最小限に抑えた内視鏡としての活用も期待できるそうです。

■まとめ

今後、個々のがん患者の血液から HOZOT 細胞を樹立する事ができれば、それぞれの患者に合った腫瘍融解ウイルスのがん細胞への選択的なデリバリー技術が可能となり、難治性の腹膜播種転移に対する新たな治療戦略となる事が期待されます。

個人個人のがん患者の血液からHOZOT細胞を作ることができれば、拒絶反応を抑えることができ、がん細胞のみに侵入してウイルスを拡散し、がん細胞を死滅させることができるかもしれません。







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ネフロン前駆細胞から腎臓再生(尿を作る臓器を体内に作ること)に成功|東京慈恵会医科大学

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■ネフロン前駆細胞から腎臓再生(尿を作る臓器を体内に作ること)に成功|東京慈恵会医科大学

ネフロン前駆細胞から腎臓再生(尿を作る臓器を体内に作ること)に成功|東京慈恵会医科大学
ネフロン前駆細胞から腎臓再生(尿を作る臓器を体内に作ること)に成功|東京慈恵会医科大学

参考画像:ネフロン前駆細胞から腎臓再生成功―臨床応用に向けた最終段階へ―(2017/11/23、日本医療研究開発機構プレスリリース)|スクリーンショット

ネフロン前駆細胞から腎臓再生成功―臨床応用に向けた最終段階へ―

(2017/11/23、日本医療研究開発機構プレスリリース)

●既存ネフロン前駆細胞を薬剤誘導システムにより除去することにより、外来性の前駆細胞から腎機能を持った成熟腎臓を再生することに成功。

●再生腎臓への3ステップ(➀iPS細胞からネフロン前駆細胞樹立、➁ネフロン前駆細胞から再生腎臓樹立、➂尿排泄経路の構築)のうちの第2ステップが完遂したことで、臨床応用が一気に現実化する。

東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科の横尾隆教授、山中修一郎助教らの研究グループは、薬剤誘導型ネフロン前駆細胞除去システム(遺伝子操作により薬剤存在下で既存の前駆細胞を除去することにより外来性の前駆細胞のみニッチ内で成熟できるシステム)を開発し、腎臓発生ニッチ内の既存ネフロン前駆細胞を外来性に置き換えることにより、100%外来性前駆細胞由来腎臓の再生に成功しました。

参考画像:ネフロン前駆細胞から腎臓再生成功―臨床応用に向けた最終段階へ―(2017/11/23、日本医療研究開発機構プレスリリース)|スクリーンショット

腎臓再生には、(1)患者由来のiPS細胞からネフロン前駆細胞(腎臓の芽)を作る、(2)ネフロン前駆細胞から尿を作る臓器を体内に作る、(3)尿を体外に排泄させる経路を作る、の3ステップがあると考えられるそうですが、これまでの研究において、ステップ(1)については多くの研究者が効果的な方法を編み出しており、ステップ(3)についても効果的なシステムが開発(Yokote, et al. Proc Natl Acad Sci USA 2015:.112(42): 12980-12985.)されており、残すはステップ(2)のみでした。

今回の研究により、再生腎臓への3ステップのうちのステップ(2)である「ネフロン前駆細胞から尿を作る臓器を体内に作る」が完成したことにより、3つのステップが出揃いました。

ただ、研究はラットとマウスの実験に基づくため、次のステップであるヒト臨床試験に進むためには、、ヒトiPS細胞由来ネフロン前駆細胞でも証明する必要があるそうです。

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■まとめ

透析患者数、新規透析導入患者数、死亡患者数について
透析患者数、新規透析導入患者数、死亡患者数について

参考画像:糖尿病・人工透析の現状(PDF)|厚生労働省

透析導入患者の主要原疾患の推移(年別)
透析導入患者の主要原疾患の推移(年別)

参考画像:糖尿病・人工透析の現状(PDF)|厚生労働省

透析人口は32万448人|糖尿病腎症・慢性糸球体腎炎で全体の7割を占める|日本透析医学会で紹介した日本透析医学会によれば、2014年末現在の日本の透析人口は32万448人で、このうち透析の原因となる病気は糖尿病腎症が11万8,081人と最も多く、その次に慢性糸球体腎炎が9万6,970人と続き、糖尿病腎症と慢性糸球体腎炎の2つの疾患で透析人口の全体の7割を占める結果となっています。

人工透析減らせ、予備軍2500人を5年間徹底指導|厚生労働省によれば、糖尿病や腎炎、高血圧などで腎臓の働きが低下すると、血液中の老廃物や余分な水分を尿として体外に排出しにくくなります。

そのまま放置すれば生命の危険もあるため、健康時の1割程度になると、腎臓の働きを代行する人工透析が必要になります。

この透析患者は高齢化や糖尿病の蔓延により爆発的に増えており、現在33万人が透析を行なっています。透析患者は食事や生活の制限を強いられ著しいQOL(生活の質)の低下が余儀なくされます。また透析関連医療費は一人当たり年間約500万円を超え、その年間総額は1.4兆円以上にのぼり、国庫に大きな負担をかけています。一方海外に目を向けると、高額な透析が受けられない貧しい国々で200万人以上の人々が腎不全でなくなっており新たな国際問題に発展しています。この様な現状から、慈恵医大腎臓再生グループでは、以前から腎臓を臓器としてまるまる『再生』する腎臓再生に取り組んできました。

高齢化や糖尿病患者の増加によって透析患者が増えている現状があり、透析関連医療費の年間総額は1.4兆円以上に上っているそうです。

腎臓の機能には、老廃物のろ過と排出、血圧の調節、ホルモンの分泌という機能があるだけでなく、腎臓は『心腎連関』『脳腎連関』『肺腎連関』『肝腎連関』など臓器同士が連携するネットワークの要|#NHKスペシャルで紹介した京都大学大学院医学研究科の柳田素子教授によれば、腎臓は『心腎連関』『脳腎連関』『肺腎連関』『肝腎連関』など臓器同士が連携するネットワークの要となっているそうです。

アメリカ腎臓学会の調査チームによる分析によれば、入院患者のうち5人に1人が急性腎障害(AKI)を発症していたそうです。

人工透析技術の進歩によって、腎臓が悪化したという直接的な原因が死因になることは少ないのですが、腎臓は様々な臓器と関係があり、最近では、急性腎障害(AKI)になると、さまざまな臓器に炎症が出たり、障害が出ることがわかってきているそうで、それが多臓器不全につながっていたり、多臓器不全から急性腎障害(AKI)が起きるということがあるそうです。

再生腎臓によってネットワーク自体がつながるのかどうかはまだわかりませんが、もし再生腎臓が臓器同士が連携するネットワークの要になりうるものだとしたら、再生腎臓研究は多くの人の命を救う研究になるのではないでしょうか。







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心筋梗塞後の病態を改善するタンパク質「MFG-E8」発見 新たな心筋梗塞の治療法の可能性|九州大学

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■心筋梗塞後の病態を改善するタンパク質「MFG-E8」発見 新たな心筋梗塞の治療法の可能性

ExeterUniMedSch April2013-19

by University of Exeter(画像:Creative Commons)

心筋梗塞後の病態を改善する新たな蛋白質の発見~新たな心筋梗塞の治療法の開発に道~

(2016/12/6、九州大学)

心筋梗塞時の死細胞の貪食を MFG-E8(※2)というタンパク質が促進している事、そしてこの MFG-E8 を介した貪食が、梗塞部位に多く存在し、これまで貪食能を持つ事が知られていなかった筋線維芽細胞(※3)という細胞群によって担われていることを見出しました。さらに興味深いことに、心筋梗塞をおこした通常のマウスの心臓に MFG-E8 を投与すると、心筋梗塞後の病態が大きく改善されることを世界で初めて見出しました。

九州大学大学院薬学研究院薬効安全性学分野の仲矢道雄准教授と黒瀬等教授を中心とする研究グループが行なった研究によってわかったことは主に3つ。

心筋梗塞後の病態を改善するタンパク質「MFG-E8」発見 新たな心筋梗塞の治療法の可能性
心筋梗塞後の病態を改善するタンパク質「MFG-E8」発見 新たな心筋梗塞の治療法の可能性

参考画像:心筋梗塞後の病態を改善する新たな蛋白質の発見~新たな心筋梗塞の治療法の開発に道~ (2016/12/6、九州大学)|スクリーンショット

1.心筋梗塞が起きた時に死んだ細胞の貪食をタンパク質「MFG-E8」が促進していること

研究グループは、今回、心筋梗塞時において死んだ細胞の貪食細胞による取り込みに MFG-E8 が関与することを初めて突き止めました。MFG-E8 は、死んだ細胞と貪食細胞との橋渡しをして貪食を促進するタンパク質です(下図 2)。MFG-E8 は、正常な心臓においてはほとんど存在していませんが、心筋梗塞がおこると、心臓において発現量が増加します。

MFG-E8(Milk fat globule-EGF factor 8 protein):細胞が死ぬと、その細胞膜表面上に露出する脂質である、phosphatidylserine と貪食細胞の膜表面上の貪食促進受容体である、インテグリンの両方に結合し、両者の橋渡しをして、貪食を促進する。

「MFG-E8(Milk fat globule-EGF factor 8 protein)」とは、死んだ細胞と貪食細胞との橋渡しをして貪食を促進するタンパク質で、この「MFG-E8」は正常な心臓においてはほとんど存在していないのですが、心筋梗塞時に増加して死んだ細胞の「貪食(どんしょく:死んだ細胞を食べて取り除く)」を促進しているそうです。

2.組織の繊維化を行う筋線維芽細胞がMFG-E8を介して死んだ細胞を貪食すること

筋線維芽細胞:組織が損傷した際に、コラーゲン等の細胞外マトリックスタンパク質を産生して、線維化を実行する細胞群。組織が正常な際には存在せず、組織の損傷時に様々な細胞が分化する事により生じる。

研究グループは、この筋線維芽細胞が MFG-E8 を介して死んだ細胞を効率よく貪食することを初めて見出しました。MFG-E8 を発現する筋線維芽細胞は、マウスのみならず、ヒトの心筋梗塞患者の梗塞部位においても認められました

組織の繊維化を担う筋線維芽細胞は、これまでは死んだ細胞を貪食することが知られていませんでしたが、今回の研究において、筋線維芽細胞がMFG-E8を介して死んだ細胞を貪食することがわかったそうです。

3.心筋梗塞を起こしたマウスの心臓にMFG-E8を投与すると、心筋梗塞後の貪食細胞による死んだ細胞の取り込みが促進され、心臓の炎症の程度が弱まり、病態が大きく改善したこと

心筋梗塞を起こしたマウスの心臓にMFG-E8を投与すると、心筋梗塞後の病態が大きく改善しそうです。

■まとめ

今後死んだ細胞を素早く取り除き、心筋梗塞の悪化を抑えるということが新しい心筋梗塞の治療法のひとつになっていくかもしれません。

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