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がん診断、尿一滴で判別成功|線虫の習性を活用|九大など

Army scientists energize battery research

by U.S. Army RDECOM(画像:Creative Commons)

※画像と記事の内容とは関係ありません。




■がん診断、尿一滴で判別成功|線虫の習性を活用

がん診断、尿1滴で=線虫の習性利用―10年後の実用化目指す・九大など

(2015/3/12、時事通信)

体長1ミリほどの線虫を使い、がんの有無を1滴の尿から高い精度で判別することに成功したと、九州大などの研究チームが発表した。早期のがんも発見でき、実用化されれば簡単で安くがん診断が可能になるという。研究チームは「精度の向上などを進め、10年程度で実用化を目指したい」としている

九大の広津崇亮助教と伊万里有田共立病院の園田英人外科医長らの研究チームは、体内に寄生した線虫アニサキスを手術で取り除く際に、未発見の胃がん部分に集まっていたことに着目したのがこの研究のきっかけです。

実験で用いられた線虫は、犬と同じくらいの嗅覚受容体を持ち、好きなにおいには集まり、嫌いなにおいから逃げる習性(走性行動)があるそうです。

事前の実験で、がん細胞のにおいを好むことが分かっており、この習性を利用して、がんの有無を判別しようとするのが今回のがん診断方法の仕組みです。




■線虫で検査できるがんの種類・がん検査の精度・費用

早期がんを判別する「線虫」を用いた最新臨床研究の中間結果ご報告

(2016/12/13、PRTIMES 株式会社HIROTSUバイオサイエンスニュースリリース)

今回、臨床研究途中経過報告として本試験では、消化器がん(すい臓がん、大腸がん、胃がん、食道がん、胆のうがん、胆管がん)と診断された患者の尿検体63サンプルについて『N-NOSE』検査を行いました。その結果、57サンプルが陽性を示し感度90.5%。特に発見が難しいとされている胆膵がんについても、N-NOSEは90.0%の高感度を示しました。

●線虫で検査できるがんの種類

●検査の精度

『N-NOSE』検査は90%以上の感度でがんを発見することができるそうです。

●検査の費用

線虫でがん検査、19年末にも=尿1滴で判定、実用化へ-九大ベンチャーと日立

(2017/4/18、時事ドットコム)

費用は1回数千円を想定しているという。

まだ実用化されているわけではないので、費用は決まっていないようですが、1回数千円を想定しているそうです。

■まとめ

ガンを診断する方法としては、血液による診断や呼気に含まれる成分から診断するもの、息に含まれるニオイ成分から診断するものなどが考えだされています。

患者の経済的・肉体的負担のない形で、かつ精度の高い病気の診断方法が生まれるといいですね。




→ 線虫によるがん検査法の実用化を目指し、検査の自動化についての共同研究|日立・九大ベンチャー について詳しくはこちら




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世界初!ロタウイルス(Rotavirus)の人工合成に成功|大阪大学・藤田保健衛生大学

Rotavirus

by NIAID(画像:Creative Commons)




世界初!ロタウイルスの人工合成に成功

(2017/1/31、リソウ 大阪大学)

・ロタウイルスの人工合成に世界で初めて成功
・これまでロタウイルスの人工合成は不可能であったが、ウイルス合成を促進する因子として、細胞融合性タンパク質「FAST」※1 および「RNA キャッピング酵素」※2 を利用することで成功
・ロタウイルスの人工合成技術を用いることでウイルス遺伝子への任意の変異導入が可能となり、病原性や抗原性を制御した新規ワクチン開発が可能に

大阪大学微生物病研究所の金井祐太特任講師、小林剛准教授、藤田保健衛生大学の共同研究によれば、世界で初めてロタウイルスの人工合成に成功したそうです。

この研究により、ロタウイルスの増殖メカニズムの解明やワクチンの開発研究が進むことが期待されます。







他人のiPS細胞から作った網膜を「滲出型加齢黄斑変性」の患者に移植する手術終了|京大・理化学研究所

Boy testing eye site

by Les Black(画像:Creative Commons)

> 健康・美容チェック > 目の病気 > 加齢黄斑変性症 > 他人のiPS細胞から作った網膜を「滲出型加齢黄斑変性」の患者に移植する手術終了|京大・理化学研究所




■他人のiPS細胞から作った網膜を「滲出型加齢黄斑変性」の患者に移植する手術終了|京大・理化学研究所

他人のiPS移植を了承 理研など世界初の臨床研究、今年前半にも手術

(2017/2/1、産経新聞)

今回の計画では、拒絶反応が起きにくい免疫型を持つ健常者の血液から、あらかじめ作って備蓄したiPS細胞を使用。患者自身の細胞から作る場合と比べ費用は5分の1以下、移植までの準備期間も約10分の1に抑えられる見込みだ。

他人のIPS細胞から作った網膜を「滲出型加齢黄斑変性」の患者に移植する臨床研究 世界初|京大・理化学研究所(2016/6/7)によれば、理化学研究所や京都大などiPS細胞から作った網膜の細胞を、滲出型加齢黄斑変性の患者に移植する臨床研究を、移植時に拒絶反応が少ないとされる特殊な型の他人の細胞から作製したiPS細胞を備蓄する京大の「iPS細胞ストック」を利用し、世界初の「他家移植」で再開すると発表していましたが、厚生労働省の審査委員会は、この臨床研究の計画を了承しました。

他人由来のiPS細胞を使う臨床研究は世界初で、今年前半にも手術が行われるそうです。

【追記(2017/11/2)】

他人のiPS移植手術終了…目の難病「加齢黄斑変性」患者5人に

(2017/11/2、読売新聞)

他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した網膜細胞を、目の難病「 加齢黄斑変性かれいおうはんへんせい 」の患者に移植する世界初の臨床研究について、理化学研究所や神戸市立医療センター中央市民病院などのチームは1日、当初の計画通り、5人への手術を終了したと発表した。

理化学研究所や神戸市立医療センター中央市民病院などのチームが加齢黄斑変性の患者に他人のiPS細胞から作成した網膜の細胞を移植する手術を完了したと発表し、現在のところ副作用は出ておらず、移植から1年間の経過を観察したところで結果を発表する方針なのだそうです。

→ 加齢黄斑変性症|症状・原因・治療・サプリメント について詳しくはこちら







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水俣病の原因「メチル水銀中毒」の神経障害メカニズムを解明|新潟大

参考画像:メチル水銀は血管内皮増殖因子の発現亢進により血液脳関門の障害を来すことが明らかに!-水俣病の病態解明と治療開発につながる発見- (2017/1/25、新潟大学)|スクリーンショット




■水俣病の原因「メチル水銀中毒」の神経障害メカニズムを解明|新潟大

メチル水銀は血管内皮増殖因子の発現亢進により血液脳関門の障害を来すことが明らかに!-水俣病の病態解明と治療開発につながる発見-

(2017/1/25、新潟大学)

メチル水銀中毒の神経障害メカニズムとして,血管のバリア機能の障害が重要であることを初めて明らかにしました。

なぜメチル水銀中毒で,小脳や後頭葉が侵され,ふらつきや視野の狭窄といった障害が出現するのかを初めて明らかにしました。

従来有効な治療法がなかったメチル水銀中毒に対し,新たな治療法として,VEGF を標的とする抗体療法を見出しました。

新潟大学の高橋哲哉助教及び下畑享良准教授らが行なったラットの実験によれば、水俣病の原因とされるメチル水銀中毒のメカニズムを解明したそうです。

その結果,VEGF は水俣病で障害のみられる小脳・後頭葉で増加し,特に小脳における顕著な発現が認められました(図)。VEGF は血管バリア機能の破綻を起こしますが,実際に小脳では血管内の物質が,脳組織へ漏れ出していることを確認できました。このためにメチル水銀中毒に伴う血管内の有害物質が脳内に漏れ出して神経障害が生じると考えられました。VEGFの作用を中和する抗 VEGF 抗体を,メチル水銀中毒ラットに投与したところ,運動機能の障害(後肢交叉現象)に改善がみられました。

メチル水銀を投与すると、小脳や後頭葉で血管内皮増殖因子(VEGF;血管バリア機能の破たんを起こす)が増加し、小脳において血管内の有害物質が脳内に漏れ出したことによって、神経障害が生じると考えられます。

また、抗VEGF抗体をメチル水銀中毒ラットに投与したところ、運動機能の障害(後肢交叉現象)に改善がみられたことにより、水俣病の解明と治療法の解明につながることが期待されます。







P.S.

<マグロ過食に注意>妊婦が食べ過ぎると胎児の運動機能や知能の発達に影響がある可能性も|東北大で紹介した東北大チームの疫学調査によれば、水俣病の原因物質であるメチル水銀を比較的多く含むマグロやメカジキなどの魚介類を妊婦が食べ過ぎると、一般的な食用に問題のない低濃度の汚染でも胎児の運動機能や知能の発達に影響がある可能性が分かったそうです。

ヒトのES細胞から腸管の機能を持つミニ腸を作り出すことに成功 世界初|国立成育医療研究センター

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参考画像:ES細胞から機能的で動きも伴う立体臓器(「ミニ腸」)を創り出すことに成功(2017/1/13、国立成育医療研究センターニュースリリース)|スクリーンショット




■ヒトのES細胞から腸管の機能を持つミニ腸を作り出すことに成功 世界初|国立成育医療研究センター

ES細胞から機能的で動きも伴う立体臓器(「ミニ腸」)を創り出すことに成功

(2017/1/13、国立成育医療研究センターニュースリリース)

●ヒト臓器の中でも複雑な構造、機能を有している腸管をヒトESおよびiPS細胞から試験管内で創り出すことに成功した(ミニ腸)。ミニ腸は生体腸管のように蠕動様運動をし、吸収能や分泌能を備えている。

●ミニ腸は試験管内で長期に維持することが可能であり、薬品の試験も繰り返し行うことが出来ることから、創薬開発では極めて革新的なバイオツールになり得る。

●先天性の小腸の病気や潰瘍性大腸炎、クローン病に代表される原因不明の慢性炎症性腸疾患などに対する画期的な治療法開発の手段として期待される。

国立成育医療研究センター 再生医療センター阿久津英憲生殖医療研究部長、梅澤明弘センター長のグループと臓器移植センター笠原群生センター長を中心とした研究グループは、ヒトのES細胞から、腸が食べ物を送り出すときに伸び縮みを行う蠕動(ぜんどう)運動や栄養などを吸収する能力、分泌する能力など腸管の機能を持つ立体腸管(ミニ腸)を試験管内で作り出すことに世界で初めて成功したそうです。




■なぜこの研究は画期的なのか?

ES細胞から創られた『ミニ腸』の蠕動様運動

今回の研究は画期的なものなのだそうですが、なぜ画期的なのでしょうか?

通常、服用された薬は、吸収・代謝をまず腸管で受け、肝臓へと移ります。ミニ腸は創薬開発において腸での吸収・代謝を評価する画期的な手段となり、薬の生体腸管に対する副作用(下痢など)を評価することも期待されます。近年、生体機能を生体外で再現し応用する”生体機能チップ“(Human/Organ‐On‐A‐Chip)”の開発が国際的に進んでいる。しかし、機能は限定的でありかつ類似した方法での国際間の競争は激しいことが予想されます。一方、ミニ腸のように生体臓器に極めて近似した立体臓器用いた評価系はなく、高い臓器機能性を有することからも生体機能チップ分野でもオリジナル性の高い優位性が発揮できます。

LUNG-ON-A-CHIP|肺の仕組みを簡略化してマイクロチップに表現によれば、化粧品メーカーによる動物実験の廃止が世界的な流れとなる中、今後は、医療の分野でも動物実験が廃止していく流れとなっていくのではないでしょうか。

しかし、医薬品の研究開発において、その薬の副作用がどのようなものかを調べることは欠かせないものです。

近年では、ハーバード大学のウィス研究所が発表した、肺の仕組みを簡略化してコンピューターチップに表現した「lung-on-a-chip」のようなものも出てきていますが、今回のニュースリリースを読む限り、ミニ腸のような生体臓器に極めて近い立体臓器で研究したほうが良いようです。







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