女性の痩せ願望に肥満学会が警鐘 「低体重・低栄養症候群」確立を(2025年4月17日、共同通信)によれば、日本肥満学会は低体重や低栄養が原因で生じる骨密度の低下や月経周期異常、体格指数(BMI)が18.5未満、貧血、筋力低下、抑うつや不安などの精神・神経症状、代謝異常、徐脈・低血圧といった症状や状態を含めて、「女性の低体重・低栄養症候群(FUS)」として確立する必要があるとの提言を発表しました。
今回の件に関連した記事をまとめます。
■若いころの極端なダイエットが骨粗しょう症リスクを上げる?
初潮年齢が遅いと、なぜ腰椎骨折のリスクが高くなるの?実は子供の時の食生活が将来の骨粗しょう症のリスクを決めていた!?
骨密度は80%を切ると危険ゾーンで、70%以下になれば骨粗鬆症だとなるのですが、最近の研究では、「初経」前後に、骨密度が25~30%高まることがわかっており、この時期に25%上昇しないと、閉経後並みの骨密度と考えなくてはなりません。
そして大事なことは、米国スポーツ医学会によれば、「女性アスリートは無月経になったらどんな薬を使っても骨密度はあがらない」、「初経前後の骨密度上昇のチャンスを逃すと、大人になってから取り戻すことはできない」そうなのです。
つまり、骨粗しょう症を予防し、いつまでも若々しい顔でいる(頭蓋骨)ためには、「初経」前後に、骨密度を25~30%高められるか、骨量がピークとなる20歳までに栄養を蓄えられるかがカギなんですね。
若いころに極端なダイエットで栄養素が取れていないと、早い段階で骨粗しょう症になる可能性があり、頭蓋骨が縮んで、しわやたるみにつながる可能性があります。
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■やせるために糖尿病治療薬マンジャロを使う女性がSNSで話題に
マンジャロに対してSNSでどのような反応があるの?メリット・デメリットの両面から
「マンジャロ」(糖尿病治療薬やダイエット目的で使われるチルゼパチドのこと)をダイエット目的で使っている人がSNSで話題になっています。
■日本の女子中高生の8割超が無月経などのリスクを抱えている
●日本の女子中高生の8割超が無月経などに陥る「フィーメール・アスリート・トライアド(FAT)」のリスクを抱えている!|順天堂大学女性スポーツ研究センター
順天堂大女性スポーツ研究センターの調査によれば、日本の女子中高生の8割超が「フィーメール・アスリート・トライアド(FAT:運動量に対するエネルギー不足から、女性が無月経や骨粗しょう症などに陥る)」のリスクを抱えているそうです。
女子アスリートの5人に一人が疲労骨折を経験、「無月経」の状態の人も多いで紹介した女性アスリートを対象としたアンケート調査|日本産科婦人科学会によれば、次のような特徴があることがわかります。
●競技レベル別の無月経の頻度は、トップを目指して頑張る、全国・地方大会出場レベルのアスリートに、無月経が多い
●年齢別に見た疲労骨折の件数によれば、16~17 歳の件数が(全体の 40.2%)が最も多い
●競技系列別での無月経の頻度は、持久系(21.7%)と審美系(12.2%)が多い
●競技系列別での既往疲労骨折の頻度は、持久系で(49.1%)が高い
●BMI 低値群で無月経頻度や既往疲労骨折頻度が有意に高い
女性アスリートが陥る3つの障害は「栄養不足」「月経(月経不順や無月経)」「骨」で紹介した順天堂大学付属浦安病院の「女性アスリート外来」で婦人科を担当する窪麻由美さんと中尾聡子さんによれば、陸上選手は貧血症状で診察を受けたところ、月経不順や無月経と診断される人が多いそうです。
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■まとめ
このように主に女性が抱えるヤセ願望からくる身体的・精神的症状はバラバラでは話題になっていましたが、今回日本肥満学会が「女性の低体重・低栄養症候群(FUS)」として大きく一つのものとして提言したことで今までとは見え方が変わってきます。
こうした症状を抱える女性が個々に対策をしていくよりも社会として取り組んでいく姿勢は必要なのではないでしょうか?
例えば鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!|#たけしの家庭の医学によれば、アメリカでは子供の先天病「神経管欠損症」を予防するために、将来妊娠の可能性のあるすべての女性に対し、一日400μgの葉酸を摂取するよう推奨しており、1998年からはパンや穀類に100g当たり140μgの葉酸を強制的に加えるようにしたことで、年間約1300人の発症を未然に防いでいるそうです。
同様に、鉄欠乏症を予防するためにも、鉄分を加えた強化小麦粉を義務付けている国があり、アメリカもそのうちの一国。
番組で紹介したアメリカのシリアルの中にはFDA(アメリカ食品医薬品局)が推奨する一日の鉄分摂取量を100%満たすものがあるなど、ほとんどのシリアルに鉄分が豊富に含まれているそうです。
アメリカでは国策で国民の健康状態を向上させようとしたことで、食品の鉄分が豊富になっているわけです。
また、「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルによれば、足立区は区民が「自然と」健康になるようにする対策として行なったのが、飲食店にはお客のお通しに野菜を提供すること、肉のメニューと野菜のメニューを同時に頼まれても、必ず野菜から出してもらうようにお願いをし、また、区立のすべての保育園で野菜を食べる日を設け、調理は子ども自身が担当することで、楽しみながら野菜を摂取してもらうようにしたそうです。
この取り組みによって、足立区の1人当たりの野菜消費量は年間で5kg増えたそうです。
つまり、一人一人の女性が自分で選んでいる食べ物・食事がすべて健康なものであったら、自然と健康に近づくというアプローチです。
元アメリカ大統領夫人のミシェル・オバマ夫人のエピソードが興味深いです。
ミシェル・オバマ夫人が、記者団に語るシカゴ時代の自分自身のエピソードにこんなものがあります。
「弁護士の仕事を持つ母親として、会議と子供たちのサッカーやバレー教室と駆け回った日の夜には、簡単で安いファーストフードのドライブスルーや、電子レンジで温めるだけの栄養バランスのとれていない食事を子供たちに出していた」--。
自分がそうだったからこそ、多くのアメリカ人が、栄養バランスのとれた食事の大切さは知ってはいるものの、新鮮な野菜や魚などを買うための支出と、手に入れた素材を調理する手間と時間を考えるとき、それよりも数百円で手に入れることができる完成したファーストフードの魅力が大きいと感じてしまう。
これは実感としてとてもよく理解できることだ、というのです。
健康について関心がある人は、新鮮な魚や野菜を買って、料理を作った方が良いということはわかっていると思います。
しかし、仕事・家事をして疲れてしまうという生活をしていると、調理する時間や家計のことを考えてしまい、ファストフードの魅力を感じてしまう人も多いと思います。
そこで、手軽で安いファストフードや冷凍食品に頼りがちの生活になってしまいがちです。
またよく「健康のためにはバランスの良い食事をおすすめします」というメッセージをお医者さんはいいますが、実はこのメッセージは伝わりにくいのです。
『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)によれば、「もっと健康的な食生活を送る」といった総括的な目標は、不明瞭であり、その曖昧さが感情に言い逃れの余地を与え、失敗を正当化しやすくしてしまうそうです。
つまり、「健康のためにはバランスの良い食事をしましょう」というメッセージは、受け取る側としてはわかりづらいもので、結果どうしたらよいかわからず、今まで通りの生活をしてしまうことになってしまいます。
ではどのようにしたらよいのでしょうか?
『スイッチ!「変われない」を変える方法』(著:チップ・ハース&ダン・ハース)ではこのような提案がされています。
例:アメリカ人に健康的な生活をさせるには?
「もっと健康的に行動しよう」と訴えるのではなく、「次にスーパーの乳製品コーナーに立ち寄ったら、ホールミルクではなく低脂肪乳に手を伸ばしなさい」というべきなのだ。
飲食行動を変える必要でなく、購入行動を変える。
「もっと健康的に行動しよう」と伝えても、解釈の仕方はいくらでもある。
よくテレビで紹介されているような、○○の不足が病気の原因となる恐れがあるので、△△を食べましょうというのは、見ている人に伝わりやすく、行動を変えやすいということなんですね。
デザインとアイデアでカンボジアの人を貧血から救った鉄製の魚「LUCKY IRON FISH」によれば、カンボジアでは鉄分不足による貧血によって極度の倦怠感やめまいで悩まされている人が多かったそうです。
しかし、カンボジアの食生活は魚と米から成り立っていて、鉄分の摂取が不足していたそうです。
「魚は幸運の印である」という地元の俗説を利用して、カントロップという魚の形に成形した鉄の塊(Lucky Iron Fish)を調理中の料理にしたところ、Lucky Iron Fishを使っている地域では鉄欠乏性貧血が50%減少したそうです。
普段食べている食事にLucky Iron Fishという鉄の塊を入れるだけで鉄欠乏性貧血が解消するというのは実にわかりやすい方法です。
「バランスの良い食事にしましょう」というのは最も正しいメッセージですが、最も伝わりづらいメッセージでもあります。
だからこそ、個人個人で健康的な食事を選択してもらうよりも、食品スーパー、コンビニ、飲食店、お弁当屋さんなどがそもそもできるだけ健康な食べ物を提供していれば、自然と健康になっていくというアイデアが大事だと思うんです。