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アルツハイマー型認知症(AD)の患者の約3分の2が女性である理由とは?男性ホルモン・テストステロンがアルツハイマー型認知症のリスクを下げている!




テストステロンがアルツハイマー型認知症のリスクを低減~性差が認知症リスクを決める?テストステロンとオートファジーの関係を解明~(2025年4月1日、九州大学)によれば、アルツハイマー型認知症(AD)の患者の約3分の2が女性であることが知られているのですが、男性ホルモンであるテストステロンが、脳内の免疫細胞であるミクログリアに作用し、オートファジー(細胞が不要になったタンパク質や細胞内小器官、異常タンパク質などを分解し再利用するしくみ)を活性化することでアミロイドβの蓄積を抑えていることを発見しました。

■まとめ

女性は閉経によってエストロゲンが急激に減少し、最終的には男性よりも低くなります。

一方、男性のテストステロンレベルは、加齢によって緩やかに減少するものの、生涯にわたって女性よりも高いレベルを維持します。

近年、血中テストステロンの低下が AD の発症リスクを高めることや、高齢女性に対するテストステロン補充が認知機能を改善することが報告されています。

これらの知見は、男性にはテストステロンによる AD 発症抑制機構があることを示唆しています。

MCI(軽度認知障害)は女性の方が速く悪化し、腎機能の低下という特徴がみられる|東大教授の調査によれば、軽度認知障害(MCI)の女性は男性よりも症状が悪化しやすく、また、認知障害の悪化が早い女性には腎機能の低下がみられるという特徴がみられたそうです。

今回の研究によれば、女性に比べてテストステロン値の高い男性は、ミクログリアのオートファジーが維持され、アミロイドβ除去能力が高く保たれるため、アルツハイマー型認知症(AD)リスクが低く抑えられていると考えられることがわかりました。

今後は、まずアルツハイマー型認知症について性差の理解を深めること、そして、生物学的な性別を考慮したアルツハイマー型認知症の予防・治療につなげていくことが必要ですね。







橋幸夫さん(82歳)、「アルツハイマー型認知症」発症を発表!陳旧性脳梗塞も明らかに




82歳・橋幸夫「アルツハイマー型認知症」発症を発表 「夢グループ」石田重廣社長が説明会見(2025年5月20日、スポニチアネックス)によれば、橋幸夫さん(82)が「アルツハイマー型認知症」の診断を受けたと発表しました。

診断書によれば、22年に12月に軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、24年12月に中等度のアルツハイマー型認知症と診断されたそうです。

また、「陳旧性脳梗塞」も明らかにしました。

陳旧性とは、「古い」「過去のもの」という意味で、陳旧性脳梗塞とは、以前に脳梗塞を発症し、その痕跡が残っている状態です。

関連したものとして、心筋梗塞には急性と陳旧性の心筋梗塞があります。

心筋梗塞は発症からの時間の経過で異なっており、発症から3日以内(2週間以内の場合もある)の心筋梗塞を急性心筋梗塞と呼び、発症から30日以上が経過し、壊死が繊維化して落ち着いた状態を陳旧性心筋梗塞と呼びます。

陳旧性心筋梗塞は、心筋が繊維化しており、症状も安定していますが、慢性心不全などのリスクが高い状態なので注意が必要です。

→ 脳梗塞の症状・原因・予防 について詳しくはこちら

■アルツハイマー型認知症と関連のある病気・要素とは?

●歯周病・糖尿病

奥歯を失うとアルツハイマー型認知症になるリスクが高まる?

九州大大学院歯学研究院の鮎川保則教授の研究によれば、奥歯のかみ合わせが全てそろっている人に比べ、歯の欠損でかみ合わせが一部失われた人は、認知症の症状が1.34倍表れやすく、前歯も含めてかみ合わせが全くない人だと1・54倍高かったそうです。

奥歯がなくなることと認知症の進行に関係があるのでしょうか?

 今回の研究で奥歯の喪失と認知症の進行との因果関係が特定されたわけではないが、鮎川教授は奥歯の喪失により▽脳血流の減少▽栄養状態の低下▽会話困難や自信喪失による社会活動の低下――が進み、認知症の進行リスクが高まるとみている。

今回の研究では奥歯の喪失自体が認知症の進行に関連しているというものでしたが、これまで紹介した研究を参考に一つの仮説を考えると、歯周病によって奥歯を失われた人は歯周病によって認知症が悪化してしまうのではないかということが考えられます。

歯周病で認知症悪化の仕組み解明|歯周病治療と口腔ケアによるアルツハイマー病発症予防に期待|#名古屋市立大学によれば、マウスの実験で、歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の原因となるアミロイドβを増やし、認知機能が低下したことがわかりました。

歯周病がアルツハイマー病の原因の一つ!?|歯周病菌が作る「酪酸」が酸化ストレスを引き起こすによれば、1)歯周病の原因菌「ジンジバリス菌」などが作る酪酸が細胞内に取り込まれる→2)「鉄分子(ヘム)」「過酸化水素」「遊離脂肪酸」が過剰に作り出される、3)細胞に酸化ストレスを起こして壊してしまう→アルツハイマー病というメカニズムがあると考えられています。

またもう一つの仮説として「脳糖尿病仮説」があります。

九州大の生体防御医学研究所によれば、アルツハイマー病患者は、脳内の遺伝子が糖尿病と同じ状態に変化することがわかったそうです。

【参考リンク】

糖尿病患者の半数でアルツハイマーの初期症状を確認で紹介した加古川市内の病院に勤務する医師らの臨床研究によれば、糖尿病の通院患者の半数以上に、「海馬傍回(かいばぼうかい)」と呼ばれる脳の部位が萎縮(いしゅく)するアルツハイマー病の初期症状がみられることがわかったそうです。

インスリンには記憶、学習機能を高める作用もあり、糖尿病でインスリン反応性が低下することが、アルツハイマー病発症につながっている可能性があるようです。

インスリン抵抗性を伴った2 型糖尿病にアルツハイマーのリスク|九大研究によれば、インスリン抵抗性を伴った2型糖尿病の場合、アルツハイマーの発症に関係があるとされるプラークが形成されるリスクが高くなるという研究結果が発表されたそうです。

九州大学の研究によれば、血糖値の異常が認められた患者にはプラークが形成されるリスクが高いという結果がでたそうです。

論文を執筆した九州大学の佐々木健介さんによれば、インスリン抵抗性がプラーク形成の原因と結論するにはさらに研究を進める必要があるものの、糖尿病をコントロールすることによってアルツハイマーを予防できる可能性があるとしています。

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最近の研究では、歯周病は糖尿病の合併症の一つといわれており、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周病にかかっている人が多いといわれています。

それは、糖尿病になると、唾液の分泌量が減って歯周病菌が増殖したり、免疫機能や組織修復力が低下して、歯周病が発症・進行しやすくなるからだと考えられます。

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加によれば、糖尿病と歯周病の関連性は疫学調査や動物実験などで明らかにされており、糖尿病を多く発症する米アリゾナ州のピマインディアンを対象にした調査では、歯周病の発症率が糖尿病ではない人に比べて二・六倍高い、といったことも分かっているそうです。

なぜ、糖尿病の人は歯周病になりやすく、また治りが遅いのでしょうか?

高血糖状態が長く続くと、血液中に体内のタンパク質に糖が結合した糖化たんぱくが増加し、体内に侵入した細菌やウィルスを捕食・消化し、その情報をリンパ球に伝える働きを持つマクロファージを刺激し、ある特定のサイトカイン(細胞同士の情報伝達を担うタンパク質で、過剰に分泌されると、自らの組織が破壊されることがある)の分泌量が増え、歯周病が悪化するのではないかと考えられるそうです。

糖尿病と歯周病との関連 免疫低下で原因菌増加で紹介した愛知学院大歯学部歯周病科(名古屋市)の野口俊英教授によれば、糖尿病と歯周病には5つの共通点があるそうです。

  1. 初期に顕著な自覚症状がない
  2. 罹患率が高い
  3. 生活習慣病
  4. 慢性疾患
  5. 病気の進行のメカニズムが似ている

今回の研究では奥歯の喪失だけにスポットが当てられていましたが、奥歯の喪失が何によるものか、例えばそれが歯周病であったり、さらに元をたどれば糖尿病から来るものであるとしたら、糖尿病と歯周病とではアルツハイマー病になるメカニズムが違ったとしても、糖尿病と歯周病には共通点が多いということですから、アルツハイマー病を予防するには、歯周病・糖尿病になる生活習慣を改善することが大事ということが言えそうです。

→ 歯周病は糖尿病の合併症の一つ!?糖尿病と歯周病の関係 について詳しくはこちら

→ 歯周病を予防する方法(歯磨き・歯ブラシ) について詳しくはこちら

●認知的予備力

若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?認知機能の予備力を鍛えて認知症が予防できる?で紹介したジョンズ・ホプキンス医科大学の研究によれば、高齢になっても認知機能にまったく問題がない修道女は、脳にアルツハイマー型認知症と同じ変化が確認されているにも関わらず、病気の症状が表れにくいことが分かったそうです。

そのポイントは、10代の頃に高い言語技能を習得していること。

フレイルは「予備力の低下」が主要因として起こりやすい!?によれば、緊急事態や危機的状況で、普段は意識的にコントロールしている力を超えて、潜在的なパワーを発揮する「火事場の馬鹿力」や脳には筋肉や骨に過度な負担がかかるのを防ぐため、普段は100%の力を発揮しないようにする安全装置(リミッター)が備わっているといわれますが、これが予備力なのだと思います。

つまり、フレイルとは加齢に伴い身体や認知機能の予備力が低下して食欲の低下や活動量の低下、筋力低下、認知機能低下、多くの病気を抱えるといった状態と言い換えることができます。

若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくいというのは、若い頃に勉強していたことによって、認知機能の予備力が鍛えられていたからだとは考えられなしでしょうか?

認知症の予防につながる9つのリスク要因|中年期の聴力低下・中等教育の未修了・喫煙・うつ・運動不足・社会的孤立・高血圧・肥満・2型糖尿病認知症の発症リスクが高いのは、脳卒中の経験がある人、糖尿病や心臓病の持病がある人、握力が弱い人、うつ傾向がある人で紹介した国立長寿医療研究センターなどのチームによれば、学校教育の年数が9年以下の人のリスクは、9年を超える人の2倍だったそうです。

中等教育を修了しないのは大きなリスクで、論文の著者たちは、大人になっても学び続ければ脳の「予備力」を増やせる可能性が高いと述べている。

中等教育の未修了だからといって即、認知症になりやすいというのではなく、大人になって学習意欲がある人は「認知的予備力」(人生の過程で頭を使うことによって蓄えられる)を増やせる可能性が高いそうです。

→ デジタル認知症はウソ?テクノロジーで認知症リスク42%減!認知的予備力理論にテクノロジーが役立つ について詳しくはこちら

鼻をほじるとアルツハイマー型認知症になるリスクが高まるって本当?で紹介した近年の研究でアルツハイマー病における神経炎症プロセスが外部から侵入する病原体が関与している可能性があり、鼻をほじると病原菌を押し込むリスクが高まる、鼻毛を抜くとバリア機能が低下するというように感染リスクが増加することから鼻をほじる行為による細菌感染と認知症仮説は研究するに値するものと言えそうです。

■まとめ

日本人の死因第1位は「認知症」/平均寿命は延びたが都道府県格差が広がるによれば、慶應義塾大学や米ワシントン大学の研究グループが日本人の過去30年の健康状態を解析した結果、’15~’21年で最も多い死因が「アルツハイマー病およびその他の認知症」だとする研究成果を国際医学誌『THE LANCET Public Health』に発表しました。

2021年の日本人の死亡原因上位5つは、1)アルツハイマー病およびその他の認知症、2)脳卒中、3)虚血性心疾患、4)肺がん、5)下気道感染で、アルツハイマー病およびその他の認知症は、1990年から2021年の間に6位から1位に上昇しています。

つまり、アルツハイマー型認知症は日本人にとって珍しいものではなくなってきています。

認知症の新たな2つのリスク要因(視力低下とLDLコレステロール値の高さ)が追加!認知症の45%は遅らせたり軽減できる可能性/ランセットによれば、45%の症例は遅らせたり、軽減したりできる可能性があると提言していますので、認知症対策に取り組んでいきましょう!

【子供・青年期】

1)子供たちに初等・中等教育を提供する 5%

【中年期】

2)難聴への対策(補聴器など) 7%
3)外傷性脳損傷を防ぐ(頭部のけがを防ぐ) 3%
4)高血圧対策 2%
5)過度のアルコール摂取を避ける 1%
6)肥満対策 1%

【晩年期】

7)禁煙 2%
8)うつ病予防 3%
9)社会的交流・社会的接触を増やして社会的孤立を防ぐ 5%
10)大気汚染を減らす 3%
11)運動不足を解消する 2%
12)糖尿病予防 2%

【新たに追加された2つの要因】

13)視力低下 2%
14)LDLコレステロール値の高さ 7%

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら







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鼻をほじるとアルツハイマー型認知症になるリスクが高まるって本当?

健康・美容チェック > 認知症 > 鼻をほじるとアルツハイマー型認知症になるリスクが高まるって本当?




「鼻をほじるとアルツハイマー病のリスクを高める…」研究結果発表される(2022/11/9、Newsweek)を簡単にまとめると、これまで「肺炎クラミジア(ヒトに感染して肺炎を引き起こす)」がアルツハイマー型認知症の危険因子のひとつと考えられていて、豪グリフィス大学の研究チームが行ったマウスによる実験を参考にすると、肺炎クラミジアが鼻腔と脳の間に伸びる神経を用いて中枢神経系に侵入し脳に感染したことから、鼻をほじったり、鼻毛を抜く行為で粘膜を傷つけてしまうと脳に侵入する細菌が増えて認知症を起こす恐れがあるそうです。

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら

ただ、鼻ほじりがアルツハイマーのリスク高めるとの研究に異論(2022/11/4、Gadget Gate)によれば、認知症の発症には様々な要因があり、鼻ほじりによる細菌感染と認知症の仮説は飛躍しすぎている可能性があるというのが2022年の段階でした。

鼻ほじりがアルツハイマー型認知症の発症リスクを高めるというアイデアは馬鹿げたもののように思えましたが、2024年にはまだ研究が進んでいました。

Zhou, X.; Kumar, P.; Bhuyan, D.J.; Jensen, S.O.; Roberts, T.L.; Münch, G.W. Neuroinflammation in Alzheimer’s Disease: A Potential Role of Nose-Picking in Pathogen Entry via the Olfactory System? Biomolecules 2023, 13, 1568. https://doi.org/10.3390/biom13111568

鼻ほじがアルツハイマー病のリスクを高める仕組みを科学者が明らかに(2024/2/8、Sciencealert)によれば、近年の研究でアルツハイマー病における神経炎症プロセスが外部から侵入する病原体が関与している可能性があり、鼻をほじると病原菌を押し込むリスクが高まる、鼻毛を抜くとバリア機能が低下するというように感染リスクが増加することから鼻をほじる行為による細菌感染と認知症仮説は研究するに値するものと言えそうです。

また、鼻ほじりの習慣と新型コロナウイルス感染症の感染リスクとの関連性が示されているそうで、手をきれいに洗う、鼻をほじらないということが私たちが日ごろからできるウイルス対策、認知症予防の一つになっていくかもしれませんね。

→ 認知症対策|認知症に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら

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若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?認知機能の予備力を鍛えて認知症が予防できる?

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若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?
若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?

Vlad Sargu|unsplash

「症状が出ないアルツハイマー」:脳と言語技能の関係を研究(2009/7/14、WIRED)

「10代の頃に高い言語技能を習得していると、50〜60年後に認知症になる確率を下げることができる可能性がある」と語るのは、神経病理学者のDiego Iacono氏だ。

<中略>

研究者たちは、高い言語技能を持っていることが、認知機能の低下を防ぐことにつながっているように見える理由を理解できていないが、若い頃にシナプスがより多く形成されていることと何か関係があるのではないかと考えている。

ジョンズ・ホプキンス医科大学の研究によれば、高齢になっても認知機能にまったく問題がない修道女は、脳にアルツハイマー型認知症と同じ変化が確認されているにも関わらず、病気の症状が表れにくいことが分かったそうです。

そのポイントは、10代の頃に高い言語技能を習得していること。

なぜ高い言語技能を習得していることが認知機能の低下を防いでくれるのかはわかっていないものの、結果として認知症を防ぐことにつながっているというのはすごいことです。

よく「生まれ(Nature、DNA)」か「育ち(Nurture、家庭環境)」かが論争の種になりますが、今回のケースで興味深いのが、遺伝子の影響も大きいと思うのですが、修道女たちは同じ環境に暮らしているにもかかわらず、認知症のなりやすさに差が生まれているということ。

考え方のヒントになると思ったのは「エピジェネティクス」です。

エピジェネティクスとは?意味|簡単にわかりやすくまとめました【入門編】【動画・論文・エビデンス】で紹介した「エピジェネティクス」の考え方によれば、遺伝子の影響は大きいから変えられないという考えは間違いであり、自分自身のライフスタイルによって自身の健康は選択できるのです。

若い頃にたくさん勉強したことでシナプスがより多く形成されていることにより認知症によるダメージを軽減したともいえますが、若いころにたくさん学ぶ人は好奇心旺盛だったり、積極的に行動するタイプだったりするのではないでしょうか?

積極的に計画・実行する人はがん・脳卒中・心筋梗塞の死亡リスクが低い|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターによれば、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の行動をとる人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低く、また、脳卒中リスクが15%低く、脳卒中心筋梗塞などで死亡するリスクが26%低いという結果が出たそうです。

その理由としては、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の人は、がん検診や健康診断を受診するため、病気の早期発見につながり、病気による死亡リスクが低下して可能性があるようです。

何事にも好奇心を持って積極的に一つ一つの行動が結果的に認知症のような病気を防いでくれるのかもしれませんね。

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【追記】

フレイルは「予備力の低下」が主要因として起こりやすい!?によれば、緊急事態や危機的状況で、普段は意識的にコントロールしている力を超えて、潜在的なパワーを発揮する「火事場の馬鹿力」や脳には筋肉や骨に過度な負担がかかるのを防ぐため、普段は100%の力を発揮しないようにする安全装置(リミッター)が備わっているといわれますが、これが予備力なのだと思います。

つまり、フレイルとは加齢に伴い身体や認知機能の予備力が低下して食欲の低下や活動量の低下、筋力低下、認知機能低下、多くの病気を抱えるといった状態と言い換えることができます。

若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくいというのは、若い頃に勉強していたことによって、認知機能の予備力が鍛えられていたからだとは考えられなしでしょうか?

認知症の予防につながる9つのリスク要因|中年期の聴力低下・中等教育の未修了・喫煙・うつ・運動不足・社会的孤立・高血圧・肥満・2型糖尿病認知症の発症リスクが高いのは、脳卒中の経験がある人、糖尿病や心臓病の持病がある人、握力が弱い人、うつ傾向がある人で紹介した国立長寿医療研究センターなどのチームによれば、学校教育の年数が9年以下の人のリスクは、9年を超える人の2倍だったそうです。

中等教育を修了しないのは大きなリスクで、論文の著者たちは、大人になっても学び続ければ脳の「予備力」を増やせる可能性が高いと述べている。

中等教育の未修了だからといって即、認知症になりやすいというのではなく、大人になって学習意欲がある人は「認知的予備力」(人生の過程で頭を使うことによって蓄えられる)を増やせる可能性が高いそうです。

→ デジタル認知症はウソ?テクノロジーで認知症リスク42%減!認知的予備力理論にテクノロジーが役立つ について詳しくはこちら







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睡眠時無呼吸症候群と認知症の関係について調べてみた!




睡眠時無呼吸症候群と認知症に関連する論文について調べてみました。

Andrade AG, Bubu OM, Varga AW, Osorio RS. The Relationship between Obstructive Sleep Apnea and Alzheimer’s Disease. J Alzheimers Dis. 2018;64(s1):S255-S270. doi: 10.3233/JAD-179936. PMID: 29782319; PMCID: PMC6542637.

■閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とアルツハイマー病(AD)の関連性

閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とアルツハイマー病(AD)は互いに関連している可能性があります。

OSAは睡眠中の上気道閉塞による低酸素症や睡眠の断片化を引き起こし、認知障害(特に注意力や実行機能)や心血管合併症を伴います。

OSAが睡眠構造の乱れ(睡眠の断片化・低酸素症)、酸化ストレス、心血管リスクを通じてAD発症リスクを高める可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の患者は正常眼圧緑内障のリスクが高い!SAS対策のやり方!によれば、無呼吸発作が起きると、血中酸素飽和度も下がることがわかっています。

AD患者の約50%がOSAを併発し、OSAがAD症状を悪化させる可能性があること、CPAP治療はOSA患者の認知機能低下を遅らせることから、睡眠時無呼吸症候群の人にCPAP治療をすることによって、アルツハイマー型認知症の予防につながる可能性があります。

Ooms S, Overeem S, Besse K, Rikkert MO, Verbeek M, Claassen JA. Effect of 1 night of total sleep deprivation on cerebrospinal fluid β-amyloid 42 in healthy middle-aged men: a randomized clinical trial. JAMA Neurol. 2014 Aug;71(8):971-7. doi: 10.1001/jamaneurol.2014.1173. PMID: 24887018.

■睡眠不足だとアルツハイマー病のリスクが上がる?

脳にあるβアミロイド(Aβ)というタンパク質に睡眠が影響することがわかってきており、睡眠が足りないと、アルツハイマー病になりやすくなるかもしれないと考えられています。

健康な中年男性が1晩寝ないと、脳の中のAβ42という物質がどうなるかを調べたところ、ちゃんと寝たグループではAβ42が6%(25.3 pg/mL)減ったが、寝なかったグループでは減らなかったそうです。

つまり、睡眠不足だと脳にAβ42がたまって、アルツハイマー病のリスクが上がる可能性があるそうです。

睡眠時無呼吸症候群が慢性的な睡眠不足だと捉えると、睡眠時無呼吸症候群はアルツハイマー型認知症のリスクを上げると考えられるのではないでしょうか?

Guay-Gagnon M, Vat S, Forget MF, Tremblay-Gravel M, Ducharme S, Nguyen QD, Desmarais P. Sleep apnea and the risk of dementia: A systematic review and meta-analysis. J Sleep Res. 2022 Oct;31(5):e13589. doi: 10.1111/jsr.13589. Epub 2022 Apr 2. PMID: 35366021.

■睡眠時無呼吸症候群と認知症のリスク

睡眠時無呼吸がアルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症とどう関係するか、過去の研究をまとめて分析したところ、睡眠時無呼吸がある人は、認知症全体(1.43倍)、アルツハイマー病(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)になるリスクが高いことがわかりました。

レビー小体型認知症も1つの研究で2倍になる可能性が示されたが、血管性認知症とのつながりは弱かったそうです。

■まとめ

1)睡眠時無呼吸とアルツハイマー病のつながり

睡眠時無呼吸(OSA)は寝ているときに呼吸が止まり、酸素が減ったり睡眠が乱れたりする病気。これが注意力や心臓に影響を与え、アルツハイマー病(AD)のリスクを上げる可能性がある。AD患者の約半数がOSAを持っていて、CPAP治療で睡眠を改善するとAD予防に役立つかもしれない。

2)睡眠不足がアルツハイマー病を増やす?

睡眠が足りないと、脳にβアミロイド(Aβ42)という物質がたまりやすくなる。実験では、1晩寝なかった人はAβ42が減らず、ちゃんと寝た人は6%減った。睡眠時無呼吸による慢性的な睡眠不足も、同じようにADリスクを高める可能性がある。

3)睡眠時無呼吸と色々な認知症のリスク

睡眠時無呼吸がある人は、認知症全体(1.43倍)、アルツハイマー病(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)になりやすい。レビー小体型認知症も2倍になる可能性があるけど、血管性認知症との関係は弱いことがわかった。

睡眠時無呼吸(OSA)はアルツハイマー病(AD)のリスクを高める可能性があること、また、AD患者の約半数がOSAを持ち、睡眠不足で脳にβアミロイド(Aβ42)がたまることから、慢性的な睡眠不足がADを増やすと考えられること、研究では、OSAがある人は認知症全体(1.43倍)、AD(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)、レビー小体型認知症(2倍)のリスクが上がるが、血管性認知症とのつながりは弱いことから、睡眠時無呼吸症候群の治療をすることが認知症が全面的に役立つとは言えないものの、CPAP治療で睡眠を改善することが認知症予防に役立つ方法の一つと言えそうです。

→ 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状・原因・検査・治療法 について詳しくはこちら

→ 認知症の症状|認知症予防に良い食べ物・栄養 について詳しくはこちら